日本政府(内閣府薬物乱用防止対策推進本部及び同本部構成省庁)と主要政党に提出する「大麻取締法の改正を求める意見書」の最終案がまとまりました。本会スタッフの腫瘍内科研究医であるフロッガーさんの意見を受け、修正を施してあります。
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日本政府宛に意見書を提出します。具体的には内閣府に設置された薬物乱用対策推進本部、同本部構成省庁、主要政党への提出を考えています。内容について、談話室やメールでみなさんのご意見をお寄せ下さい。よろしくお願い致します。
大麻取締法の改正を求める緊急意見書
第1 意見の趣旨
大麻取締法制定時の国会会議録には、「大麻草に含まれている樹脂等は麻藥と同樣な害毒をもつている」という発言が多数見られるが、近時の信頼性の高い研究によって、大麻の有害性はアルコールやタバコ以下であり、大麻の適切な使用が様々な疾病や不快な症状に対して治癒的な効果を示すことが明らかにされている。しかし、わが国においては、大麻の所持や栽培、譲渡が量や理由の如何を問わず、懲役刑をもって全面的に禁止されている。大麻取締法違反は近年増加傾向にあるが、大麻に関する最新の知見に鑑みれば、末端の使用者に逮捕・拘禁を伴う刑事罰を課す措置は、憲法13条、25条及び31条に違反する重篤な人権侵害であり、個人や家庭、社会が被る損害は甚大である。このような立法の不作為による現在の状況の問題点を一刻も早く改善するために、大麻取締法を以下のように速やかに法改正すべきである。
1.未成年者への関与を除く、成人による公衆衛生に悪影響を及ぼさない、大麻の個人使用目的の所持、栽培及び営利を目的としない少量の譲渡については刑事罰の対象から除外し、特に著しく公衆衛生に悪影響を及ぼすと認められる場合については、注意や警告、過料などの措置を講ずる。
2.大麻取締法第4条の2及び3を廃止し、大麻の医療上の目的の所持、栽培及び譲渡を法規制の対象から除外する。
第2 意見の理由
1.はじめに
人類と大麻の共生の歴史は古く、大麻は中央アジアにおいて1万年以上も前から栽培されていたといわれている。中国では紀元前4000年、トリキスタンでも紀元前3000年ころには栽培が始まったと考えられている。医薬品としての利用も古く、インド、中国、中東、南東アジア、南アフリカ、南アメリカでは長い歴史を持っている。
大麻が医薬品として使われたことを示す最初の記録は、5000年前の中国を統治していた神農帝が出版したとされる草本録(神農本草経)にみられ、マラリア、便秘、リウマチ痛、放心、婦人病の薬としてあげている。その他にも、中国の薬草医は、手術の際の沈痛薬として、大麻と松ヤニと酒を調合した薬について触れている。〔1〕
わが国においても、大麻は古来より穢れを祓う神聖な植物であると考えられており、様々な宗教的な儀式や神事、生活用品などに用いられてきた。戦前は、国家によってその生産が奨励されていたこともあり、繊維や種子を採取する目的で全国各地で広く栽培されていた。また、医薬品としても使用されており、日本薬局方には、1886年に公布されて以来、1951年の第五改正薬局方まで大麻が「印度大麻草」、「印度大麻草エキス」、「印度大麻チンキ」という製品名で収載され、鎮痛剤、鎮静剤、催眠剤などとして用いられてきた〔2〕。
このように、大麻は戦前の日本人にとって身近な植物であったが、戦後、連合国軍の占領下において、昭和20年9月にポツダム宣言ノ受諾二伴ヒ発スル命令二関スル件(昭和20年勅令第542号)が公布・施行され、これに基づき、大麻の規制についてはいわゆるポツダム省令、すなわち、麻薬原料植物ノ栽培、麻薬ノ製造、輸入及輸出等禁止ニ関スル件(昭和20年厚生省令第46号)が制定され、これにより、大麻についても麻薬としての規制が行われ、大麻草の栽培等が全面的に禁止された。その後、大麻取締規則の制定によって、麻薬から独立して大麻の規制が行われるようになり、用途を限定して許可制の下に大麻草の栽培が認められるようになった。
昭和23年、大麻取締規則が廃止され、大麻取締法(昭和23年法律第124号)が制定(同年7月施行)された。同法は、大麻の用途を学術研究及び繊維・種子の採取だけに限定し、大麻の取扱いを免許制とし、免許を有しない者による大麻の取扱いを禁止するとともに、違反行為を規定して罰則を設けた〔3〕。
大麻取締法制定の経緯については、同法案を審議する国会会議録において、「大麻草に含まれている樹脂等は麻藥と同樣な害毒をもつているので、…(以下略)」〔昭和23年06月12日 衆議院厚生委員会 8号 厚生大臣 竹田儀一氏による発言〕、「大麻草に含まれている樹脂等は、麻藥と同様な害毒をもつているので、…(以下略)」〔昭和23年06月19日 衆議院本会議 67号 厚生委員長山崎岩男氏による発言、昭和23年06月24日 参議院厚生委員会 厚生大臣 竹田儀一氏による発言〕、「麻藥と同様な害毒を持つておるのでありますから、…(以下略)」〔昭和23年06月28日 参議院本会議 54号 厚生委員長塚本重藏氏による発言〕などの発言が度重なってみられるが、このような事実を示す証拠は明らかにされておらず、また、現在の大麻の健康への影響に関する科学的知見とも大きくかけ離れていることから、同法制定の過程において重大な事実誤認があったことが窺われる。
その後、大麻は、1961年の麻薬に関する単一条約(麻薬単一条約)によって、特に危険な特性を有するものとして、附表I及び附表Ⅳに分類され、ヘロインやモルヒネと同等に最も厳しい規制を受けている。大麻がこのように分類されているのは、1957年のWHOによる大麻の「身体的中毒性」を持つという定義に依るものであるが、当時、大麻の依存性についてどこまで科学的に把握できていたかは疑問が残る。事実、1965年のWHOによる大麻の依存性に関する定義では、大麻の身体的依存性はほとんどないと述べられており、また、1997年のWHOによる大麻に関する報告書では、「これまでのところ、退薬症候群の生成について一般的な合意がない。」と述べられている[4]。また、近年の大麻に関する研究には著しい進歩があり、信頼性の高い複数の研究によって、大麻の有害性はアルコールやたばこより低いことが報告されている[5]。また、大麻の適切な使用が様々な疾病や不快な症状に対して治癒的な効果を示すことが明らかにされている。このような科学的事実に基づいて、先進諸国では、大麻に関する規制を改める動きが盛んである。一方わが国においては、もはや根拠の無い60年前の法律に基づいて、大麻使用者を逮捕・拘禁する厳罰政策が続けられているが、このような措置は重篤な人権侵害であり、早急にこれを改める必要がある。
2.大麻使用の社会や健康への影響
近年の大麻使用の社会や健康への影響に関する研究には著しい進歩があった。現在の科学的知見は、大麻が「麻藥と同様な害毒をもつている」と考えられていた大麻取締法制定時とは大きく異なり、信頼性の高い複数の研究によって、大麻の有害性は、ヘロインやモルヒネ、コカインのみならず、現在は規制の対象外であるアルコールやたばこより低いことが報告されている。さらに、大麻の適切な使用が様々な疾病や不快な症状に対して治癒的な効果を示すことが明らかにされている。世界で最も権威ある臨床医学雑誌の一つ、英国医師会のランセットは、「大麻の喫煙は、たとえ長期にわたる場合でも健康に害はない。…大麻は、それ自体は社会へのハザードではないが、さらに続けて非合法な状態に追いやるならばハザードとなり得るであろう。」と結論づけ、大麻の規制の改正を支持する内容の文章を掲載している〔6〕。
このような大麻に関する最新の科学的な研究の結果の示す事実に基づき、政府は大麻のリスクを過大評価しすぎている現在の政策から、リスクとベネフィットの比較を通した大麻のリスクの正当な評価を反映する、使用者の人権に最大限配慮した政策へと方針の転換を図るべきである。大麻に関する最新の知見に鑑みれば、現在の大麻使用の最大のリスクは逮捕・拘禁されることである。
(1)大麻のリスク
結論:大麻はアルコールやタバコよりも害が少ない
EMCDDA(欧州薬物・薬物中毒監視センター)によって、2008年6月に発表された研究書には、「精神賦活性物質のスペクトルにおける大麻の公衆衛生上の重要性」と題し、大麻とアルコールやタバコ、その他の精神賦活性物質の害の潜在力を過量摂取、酩酊の度合い、依存性、より包括的な評価など様々な危険性の局面から多面的に比較・検証する論文が掲載されている。大麻はいずれの危険性の局面においても相対的に低い危険度を示しており、論文は、大麻使用が一部のユーザーと、ある状況に対して有害であり得るとした上で、’多くの関係各国には、しばしば大麻の外側に定められるディフェンシブラインと共に、国際的なコントロールシステムと等しい国家的なシステムの現状を保つ、非常に大きな責務がある。しかし、精神賦活性物質とその害の可能性に関する広義の公衆衛生の観点からすれば、現在の国際的なドラッグコントロール、統制システムにおいて、タバコとアルコールは非常に規制が低い一方で、大麻に関する規制はあまりにも厳しすぎるということは明白である。’と結論付けている〔7〕。
(2)大麻のベネフィット
大麻の適切な使用が、ストレスや精神の緊張の緩和を促し、体内の様々な器官での恒常性維持機能を高める働きをもたらすことは広く知られている〔8,9〕。大麻は、多発性硬化症に伴う神経因性の疼痛[10]やオピオイド系薬剤による治療で効果の見られない末期がんの患者の疼痛[11]、AIDS患者の進行性食欲減退や体重減少などの症状を伴う消耗症候群[4]、アルコール依存症[12]など、様々な疾病の治療に有効であり、各種運動障害などの治療、依存性薬物の依存症[13]、神経保護作用薬[14]、精神疾患治療[15]などへの応用が期待されている。実際に、大麻や、大麻からの抽出物を主成分とした薬剤が治療薬として認められ、処方されている国もあり、2007年2月14日、大塚製薬株式会社は、イギリスGW製薬で臨床研究され、カナダで医薬品として認可・使用されている大麻からの抽出物を主成分とした薬剤「サティベックス(SativexR)」の米国における開発・販売に関するライセンス契約を2月14日に締結している。
大麻の治癒的な効果が報告され、臨床適用が調査されている症例には、吐き気と嘔吐、多発性硬化症とその他の神経疾患、がんやエイズの食欲減退と体重減少、疼痛、眼圧の上昇、不眠症、不安や抑うつ状態、 てんかん、喘息、オピオイドの退薬、 原発性腫瘍、解熱性や抗炎症性の活性、駆虫性、抗片頭痛、分娩誘発などがある。このうち、大麻といくつかのカンナビノイドは、制吐薬と鎮痛薬、眼圧を下げる薬剤として有効である。特定の神経疾患、エイズとある種のがんにおいて、症状の緩和と幸福感(well-being)の向上のエビデンスがある。カンナビノイドは不安を減少させ、睡眠を改善する可能性がある。抗けいれん薬としての活性は解明を必要とする。基礎研究によって特定されたその他の特性は評価を待つ。多くの関連した疾患に対する標準的な治療は不十分である。大麻は過量投与については安全であるが、 一般的に、鎮静作用、陶酔、不器用さ、めまい、口渇、血圧の低下あるいは心拍数の増加などの不必要な効果をしばしば生じさせる。特定のレセプターや天然のリガンドの発見は薬剤の発展を導くかもしれない。 投薬の用量と経路を最適化し、治癒的な効果と望ましくない作用を定量化し、相互作用を調べるために研究が必要である〔16〕。
3.国際法と先進諸国における大麻に関する規制の現状と傾向
(1)国際法
大麻、大麻樹脂並びに大麻のエキス及びチンキは、1961年の条約のSchedule I、この条約に基づいて適用される全ての統制措置の対象とされ、依存症を引き起こす可能性があり、乱用の深刻な危険性を示す特性の物資の中にリストされている。大麻と大麻樹脂は、既に1961年の条約のSchedule Iに登録されている、乱用の危険性と非常に限られた治療的な価値という有害な特徴によって、特に危険であると考えられる15の物質から成るSchedule IVにもリストされている。これら15の物質の中に、ヘロインや大麻を見出すことが出来るが、コカインは見出すことが出来ず、それはSchedule Iにのみリストされている。
したがって、1961年の条約は大麻に最も厳しい統制を適用することを示唆するが、その様な統制の必要性の解釈において、加盟国にある程度の柔軟性を委ねると考えられる。締約国は、附表Ⅳに掲げる薬物の特に危険な特性に照らして、'必要であると認める’特別の統制措置を執るものとされている。この基準の非義務性は、事実上その履行のための条件であり、1961年の条約に関する国連のコメンタリーによって確証される。そこでは、加盟国は、’それが必要であると信じる場合にのみ、特別な措置を適用する義務がある’と再び述べられている。
(2)先進諸国における大麻に関する規制の現状と傾向
ⅰ.ヨーロッパ
EMCDDA(欧州薬物・薬物中毒監視センター)によって、2008年6月に発表された研究書には、’大麻の有害性はアルコールやタバコより低く、タバコとアルコールは非常に規制が低い一方で、大麻に関する規制はあまりにも厳しすぎるということは明白である’と結論付ける論文や’大麻は無害な物質ではないが危険性は誇張されており、個人的な使用罪は、刑事制裁を必要としない。’と結論付ける論文が掲載されている。ヨーロッパでは、このような最新の知見を反映して、少量の大麻使用を有罪とする措置は社会全体に対してより大きな害をもたらすという信念に基づき、周囲の状況を悪化させることの無い少量の個人使用目的の大麻の所持や使用に対する刑事罰の代替処置の開発において共通の傾向が見られる。罰金、注意、執行猶予、刑罰の免除やカウンセリングが大部分のヨーロッパの司法制度に支持されている〔17〕。
(状況を悪化させることのない少量の個人使用目的のための)大麻所持に関する法実務についての仮説
個人使用目的の大麻所持に対して適用されうる措置〔18〕
ベルギー:記録のみ。刑罰は、初犯75-125ユーロ;2回目(同年の再犯)130-250ユーロ;3回目(同年の2回目の再犯)250-500ユーロ及び8日から1ヵ月までの拘留。
デンマーク:10gまでの初犯:罰金;10g以上:罰金;2回目の再犯:0-10g:罰金40ユーロ;10-15g:罰金67ユーロ;50-100g:罰金135ユーロ
ドイツ:積極的な警察の捜査は行われない;訴訟の取り下げ(6-30g)
ギリシャ:(法廷における)刑罰の罰金への転換;訴訟の差し止めあるいは取り下げ。
スペイン:(公共の場所における使用)違反は罰金301-30 000ユーロあるいは運転免許の停止。
フランス:逮捕される可能性が高い(24時間の拘留の見込み、24時間延長できる)。
アイルランド:最初の2回の違反に対して罰金が課される。初犯、罰金63ユーロ、2回目の違反、罰金127ユーロ;3回目の違反から拘留の可能性がある:最高1年の拘留及び/または罰金317ユーロ。
イタリア:初犯:訴訟の取り下げ;それ以降の違反:最高3ヶ月の運転免許の停止及び強制的な治癒的評価。
ルクセンブルグ:違反は罰金250-2500ユーロによって処罰される。
オランダ:警察は個人使用目的の所持を捜査せず、それはコーヒーショップにおいて一定の条件を前提として許容される。
オーストリア:初犯:警察による捜査と執行猶予(2年);それ以降の違反:強制的な治癒的な評価。
ポルトガル:個々の定量による平均の10日分:警察による捜査と行政権の照会。執行猶予による処罰の停止。;再犯に対しては罰金又はその他の処罰。
スウェーデン:警察による捜査と起訴。軽微な違反については(まれに)訴訟の取り下げ。
フィンランド:警察による捜査と起訴。まれに訴訟の取り下げ。
イギリス:警察による警告
ⅱ.アメリカ合衆国
アメリカ合衆国では連邦法によって大麻の所持・栽培・配布が医療目的でさえ禁止されているが、2006年には829,625人が大麻に関連した違反で逮捕されており、医療大麻の合法化や大麻の個人使用目的の所持の非犯罪化を求める声が高く、実際にいくつかの州では医療大麻が公的に支持され、個人使用の非犯罪化が達成されている。
●非犯罪化
一般的に非犯罪化は、個人消費のための少量の所持の初犯の違反に問われた者に対して、拘留あるいは犯罪記録を課さないことを意味する。その行為は軽微な交通違反のように扱われる。
以下の州では大麻の非犯罪化法案を可決している〔19〕。
アラスカ、カリフォルニア、コロラド、メーン、ミネソタ、ミシシッピ、ネブラスカ、ネヴァダ、ニューヨーク、ノースカロライナ、オハイオ、オレゴン
(2004年、11月8日現在)
●医療大麻に対する公的な支持
1996年以降、12の州― アラスカ、カリフォルニア、コロラド、ハワイ、メイン、モンタナ、ネバダ、ニューメキシコ、オレゴン、ロードアイランド、ヴァーモントとワシントン ― の有権者は、医師の監督の下で大麻を使用している患者を州の刑事罰から免除する州民発案(Initiative)を採択した。
参考文献
1.History of Cannabis as a Medicine By Lester Grinspoon, M.D., August 16, 2005
(http://www.maps.org/mmj/grinspoon_history_cannabis_medicine.pdf)
カナビスの医療利用の歴史
(http://www.cannabis-studyhouse.com/20_medical_cannabis/40_mmj_history/mmj_history.html)
2.法学セミナー(日本評論社)1990年7月号より マリファナ解禁と大麻取締法 丸井英弘弁護士
(http://www.asahi-net.or.jp/~IS2H-MRI/seminar_1.html)
3.平成9年版 犯罪白書 第1編/第2章/第2節/2
(http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/38/nfm/n_38_2_1_2_2_2.html)
4.WORLD HEALTH ORGANIZATION:Cannabis : a health perspective and research agenda
英文 (http://whqlibdoc.who.int/hq/1997/WHO_msa_PSA_97.4.pdf)
日本文 (http://www.asayake.jp/thc2/)
5.House of Commons Science and Technology Committee: Drug classification: making a hash of it? Fifth Report of Session 2005-06 HC 1031
(http://www.publications.parliament.uk/pa/cm200506/cmselect/cmsctech/1031/1031.pdf)
David Nutt, Leslie A King, William Saulsbury, Colin Blakemore: Development of a rational scale to assess the harm of drugs of potential misuse
The Lancet - Vol. 369, Issue 9566, 24 March 2007, Pages 1047-1053
(http://www.ukcia.org/research/developmentofrationalscale/DevelopmentOfARationalScale.pdf)
Jack E. Henningfield, PhD for NIDA, Reported by Philip J. Hilts, New York Times, Aug. 2, 1994 "Is Nicotine Addictive? It Depends on Whose Criteria You Use."
(http://drugwarfacts.org/addictiv.htm)
6.British Medical Association's Lancet Supports Marijuana Law
Reform:The Lancet(The Lancet is a British medical journal)
Volume 346, Number 8985, November 11, 1995, p. 1241
Editorial
(http://norml.org/pdf_files/Lancet_Supports_Marijuana_Law_Reform.pdf)
7.A cannabis reader: global issues and local experiences:EMCDDA, Lisbon, June 2008 Volume 2,Part II,Chapter 7: The public health significance of cannabis in the spectrum of psychoactive substances :Robin Room
(http://www.emcdda.europa.eu/publications/monographs/cannabis)
8.Robert Melamede:Harm reduction-the cannabis paradox
Harm Reduction Journal Date: 22 September 2005
(http://www.harmreductionjournal.com/content/2/1/17#B2)
9.渡辺和人,木村敏行,舟橋達也,山折 大,山本郁男:大麻文化科学考(その15) 第15章 大麻からの創薬 -治療薬への応用-
Kazuhito Watanabe,Toshiyuki Kimura,Tatsuya Funabashi,Satoshi Yamaori,Ikuo
Yamamoto:A study on the culture and sciences of the cannabis and marihuana XV
北陸大学 紀要 第28号 (2004) pp.17~32
(http://www.hokuriku-u.ac.jp/library/pdf/kiyo28/yaku2.pdf)
10.H.M. Meinck, P.W. Schonle, and B. Conrad:EFFECT OF CANNABINOIDS ON SPASTICITY AND ATAXIA IN MULTIPLE SCLEROSIS
J Neurol (1989) 236: 120-122
11.大塚製薬News Release2007年2月14日
(http://www.otsuka.co.jp/company/release/2007/0214_01.html)
12.Tod H. Mikuriya:Cannabis as a Substitute for Alcohol:A Harm-Reduction Approach
Journal of Cannabis Therapeutics, Vol. 4(1) 2004
(http://www.mikuriya.com/cw_alcsub.pdf)
13.Taku Yamaguchi, Yumi Hagiwara, Hiroyuki Tanaka, Takayuki Sugiura, Keizo Waku,Yukihiro Shoyama, Shigenori Watanabe and Tsuneyuki Yamamoto:Endogenous cannabinoid,2-arachidonoylglycerol, attenuates naloxone-precipitated withdrawal signs in morphine-dependent mice
Brain Research Volume 909, Issues 1-2, 3 August 2001, Pages 121-126
14.Carol Hamelink1, Aidan Hampson1, David A. Wink, Lee E. Eiden, and Robert L.Eskay:Comparison of Cannabidiol, Antioxidants, and Diuretics in Reversing Binge Ethanol-Induced Neurotoxicity
Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics. 2005
(http://jpet.aspetjournals.org/cgi/reprint/314/2/780.pdf)
15.Wen Jiang, Yun Zhang, Lan Xiao, Jamie Van Cleemput, Shao-Ping Ji, Guang Bai and Xia Zhang:Cannabinoids promote embryonic and adult hippocampus neurogenesis and produce anxiolytic- and antidepressant-like effects
The Journal of Clinical Investigation. 115(11): 3104-3116 (2005)
(http://www.jci.org/articles/view/25509/pdf)
16.PHILIP ROBSON:Therapeutic aspects of cannabis and cannabinoids
The British Journal of Psychiatry (2001) 178: 107-115
(http://bjp.rcpsych.org/cgi/content/full/178/2/107#FN1)
17.A cannabis reader: global issues and local experiences:EMCDDA, Lisbon, June 2008 Volume 1,Part II,Chapter 7: Cannabis control in Europe
Danilo Ballotta, Henri Bergeron and Brendan Hughes
(http://www.emcdda.europa.eu/publications/monographs/cannabis)
18.EMCDDA:Illicit drug use in the EU: legislative approaches (11/2/2005)
(http://eldd.emcdda.europa.eu/html.cfm/index10079EN.html)
19.NORML:States That Have Decriminalized
(http://norml.org/index.cfm?Group_ID=6331)
20.NORML:Public Support for Medical Marijuana
(http://norml.org/index.cfm?Group_ID=5441)
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2.大麻使用の社会や健康への影響
近年の大麻使用の社会や健康への影響に関する研究には著しい進歩があった。現在の科学的知見は、大麻が「麻藥と同様な害毒をもつている」と考えられていた大麻取締法制定時とは大きく異なり、信頼性の高い複数の研究によって、大麻の有害性は、ヘロインやモルヒネ、コカインのみならず、現在は規制の対象外であるアルコールやたばこより低いことが報告されている。さらに、大麻の適切な使用が様々な疾病や不快な症状に対して治癒的な効果を示すことが明らかにされている。世界で最も権威ある臨床医学雑誌の一つ、英国医師会のランセットは、「大麻の喫煙は、たとえ長期にわたる場合でも健康に害はない。…大麻は、それ自体は社会へのハザードではないが、さらに続けて非合法な状態に追いやるならばハザードとなり得るであろう。」と結論づけ、大麻の規制の改正を支持する内容の文章を掲載している〔6〕。
このような大麻に関する最新の科学的な研究の結果の示す事実に基づき、政府は大麻のリスクを過大評価しすぎている現在の政策から、リスクとベネフィットの比較を通した大麻のリスクの正当な評価を反映する、使用者の人権に最大限配慮した政策へと方針の転換を図るべきである。大麻に関する最新の知見に鑑みれば、現在の大麻使用の最大のリスクは逮捕・拘禁されることである。
(1)大麻のリスク
大麻はアルコールやタバコよりも害が少ない
http://asayake.jp/modules/report/index.php?storytopic=34
より転載
(2)大麻のベネフィット
大麻の適切な使用が、ストレスや精神の緊張の緩和を促し、体内の様々な器官での恒常性維持機能を高める働きをもたらすことは広く知られている〔7,8〕。大麻は、多発性硬化症に伴う神経因性の疼痛[9]やオピオイド系薬剤による治療で効果の見られない末期がんの患者の疼痛[10]、AIDS患者の進行性食欲減退や体重減少などの症状を伴う消耗症候群[4]、アルコール依存症[11]など、様々な疾病の治療に有効であり、各種運動障害などの治療、依存性薬物の依存症[12]、神経保護作用薬[13]、精神疾患治療[14]などへの応用が期待されている。実際に、大麻や、大麻からの抽出物を主成分とした薬剤が治療薬として認められ、処方されている国もあり、2007年2月14日、大塚製薬株式会社は、イギリスGW製薬で臨床研究され、カナダで医薬品として認可・使用されている大麻からの抽出物を主成分とした薬剤「サティベックス(Sativex?)」の米国における開発・販売に関するライセンス契約を締結している。
大麻の治癒的な効果が報告され、臨床適用が調査されている症例には、吐き気と嘔吐、多発性硬化症とその他の神経疾患、がんやエイズの食欲減退と体重減少、疼痛、眼圧の上昇、不眠症、不安や抑うつ状態、 てんかん、喘息、オピオイドの退薬、原発性腫瘍、解熱性や抗炎症性の活性、駆虫性、抗片頭痛、分娩誘発などがある。このうち、大麻といくつかのカンナビノイドは、制吐薬と鎮痛薬、眼圧を下げる薬剤として有効である。特定の神経疾患、エイズとある種のがんにおいて、症状の緩和と幸福感(well-being)の向上のエビデンスがある。カンナビノイドは不安を減少させ、睡眠を改善する可能性がある。抗けいれん薬としての活性は解明を必要とする。基礎研究によって特定されたその他の特性は評価を待つ。多くの関連した疾患に対する標準的な治療は不十分である。大麻は過量投与については安全であるが、一般的に、鎮静作用、陶酔、不器用さ、めまい、口渇、血圧の低下あるいは心拍数の増加などの不必要な効果をしばしば生じさせる。特定のレセプターや天然のリガンドの発見は薬剤の発展を導くかもしれない。投薬の用量と経路を最適化し、治癒的な効果と望ましくない作用を定量化し、相互作用を調べるために研究が必要である〔15〕。
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第2 意見の理由
1.はじめに
人類と大麻の共生の歴史は古く、大麻は中央アジアにおいて1万年以上も前から栽培されていたといわれている。中国では紀元前4000年、トリキスタンでも紀元前3000年ころには栽培が始まったと考えられている。医薬品としての利用も古く、インド、中国、中東、南東アジア、南アフリカ、南アメリカでは長い歴史を持っている。
大麻が医薬品として使われたことを示す最初の記録は、5000年前の中国を統治していた神農帝が出版したとされる草本録(神農本草経)にみられ、マラリア、便秘、リウマチ痛、放心、婦人病の薬としてあげている。その他にも、中国の薬草医は、手術の際の沈痛薬として、カナビスと松ヤニと酒を調合した薬について触れている。〔1〕
わが国においても、大麻は古来より穢れを祓う神聖な植物であると考えられており、様々な宗教的な儀式や神事、生活用品などに用いられてきた。戦前は、国家によってその生産が奨励されていたこともあり、繊維や種子を採取する目的で全国各地で広く栽培されていた。また、医薬品としても使用されており、日本薬局方には、1886年に公布されて以来、1951年の第五改正薬局方まで大麻が「印度大麻草」、「印度大麻草エキス」、「印度大麻チンキ」という製品名で収載され、鎮痛剤、鎮静剤、催眠剤などとして用いられてきた〔2〕。
このように、大麻は戦前の日本人にとって身近な植物であったが、戦後、連合国軍の占領下において、昭和20年9月にポツダム宣言ノ受諾二伴ヒ発スル命令二関スル件(昭和20年勅令第542号)が公布・施行され、これに基づき、大麻の規制についてはいわゆるポツダム省令、すなわち、麻薬原料植物ノ栽培、麻薬ノ製造、輸入及輸出等禁止ニ関スル件(昭和20年厚生省令第46号)が制定され、これにより、大麻についても麻薬としての規制が行われ、大麻草の栽培等が全面的に禁止された。その後、大麻取締規則の制定によって、麻薬から独立して大麻の規制が行われるようになり、用途を限定して許可制の下に大麻草の栽培が認められるようになった。
昭和23年、大麻取締規則が廃止され、大麻取締法(昭和23年法律第124号)が制定(同年7月施行)された。同法は、大麻の用途を学術研究及び繊維・種子の採取だけに限定し、大麻の取扱いを免許制とし、免許を有しない者による大麻の取扱いを禁止するとともに、違反行為を規定して罰則を設けた〔3〕。
大麻取締法制定の経緯については、同法案を審議する国会会議録において、「大麻草に含まれている樹脂等は麻藥と同樣な害毒をもつているので、…(以下略)」〔昭和23年06月12 日 衆議院厚生委員会 8号 厚生大臣 竹田儀一氏による発言〕、「大麻草に含まれている樹脂等は、麻藥と同様な害毒をもつているので、…(以下略)」〔昭和23年06月19日衆議院本会議 67号 厚生委員長山崎岩男氏による発言、昭和23年06月24日 参議院厚生委員会 厚生大臣 竹田儀一氏による発言〕、「麻藥と同様な害毒を持つておるのでありますから、…(以下略)」〔昭和23年06月28日 参議院本会議 54号 厚生委員長塚本重藏氏による発言〕などの発言が度重なってみられるが、このような事実を示す証拠は明らかにされておらず、また、現在の大麻の健康への影響に関する科学的知見とも大きくかけ離れていることから、同法制定の過程において重大な事実誤認があったことが窺われる。
その後、大麻は、1961年の麻薬に関する単一条約(麻薬単一条約)によって、特に危険な特性を有するものとして、附表I及び附表Ⅳに分類され、ヘロインやモルヒネと同等に最も厳しい規制を受けている。大麻がこのように分類されているのは、1957年のWHOによる大麻の「身体的中毒性」を持つという定義に依るものであるが、当時、大麻の依存性についてどこまで科学的に把握できていたかは疑問が残る。事実、1965年のWHOによる大麻の依存性に関する定義では、大麻の身体的依存性はほとんどないと述べられており、また、1997年のWHOによる大麻に関する報告書では、「これまでのところ、退薬症候群の生成について一般的な合意がない。」と述べられている[4]。また、近年の大麻に関する研究には著しい進歩があり、信頼性の高い研究によって、大麻の有害性は、アルコールやたばこより低いことが報告されている[5]。また、大麻の適切な使用が様々な疾病や不快な症状に対して治癒的な効果を示すことが明らかにされている。このような科学的事実に基づいて、先進諸国では、大麻に関する規制を改める動きが盛んである。一方わが国においては、もはや根拠の無い60年前の法律に基づいて、大麻使用者を逮捕・拘禁する厳罰政策が続けられているが、このような措置は重篤な人権侵害であり、早急にこれを改める必要がある。
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第1 意見の趣旨
近時の信頼性の高い研究によって、大麻の有害性はアルコールやタバコ以下であり、大麻の適切な使用が様々な疾病や不快な症状に対して治癒的な効果を示すことが明らかにされているが、わが国においては、大麻の所持や栽培、譲渡が量や理由の如何を問わず、懲役刑をもって全面的に禁止されている。大麻取締法違反は近年増加傾向にあるが、大麻に関する最新の知見に鑑みれば、末端の使用者に逮捕・拘禁を伴う刑事罰を課す措置は、憲法13条、25条及び31条に違反する重篤な人権侵害であり、個人や家庭、社会が被る損害は甚大である。このような立法の不作為による現在の状況の問題点を一刻も早く改善するために、大麻取締法を以下のように速やかに法改正すべきである。
1.成人による大麻の個人的な使用目的の所持及び栽培並びに未成年者への関与を除く 営利を目的としない少量の譲渡については刑事罰の対象から除外し、特に著しく公衆衛生に悪影響を及ぼすと認められる場合については、注意や警告、過料などの措置を講ずる。
2.大麻取締法第4条の2及び3を廃止し、大麻の医療上の目的の所持、栽培及び譲渡を法規制の対象から除外する。
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私は、大麻の医療上の目的、個人的な使用目的、非営利的な目的の為の所持及び栽培で逮捕することや懲役刑をもってこれを禁止することは、憲法に違反する重篤な人権侵害であることから違憲無効であると主張しており、司法はこのような事例については、緊急非難的な人権救済措置として直ちに違憲立法審査権を行使すべきであると考えています。
しかし、現状では、まともな裁判が行われているとはいえない状況が続いており、司法は古い誤った知見や情報に基づく過去の判例のみに固執し、充分な証拠が何一つ示されないままに大麻使用者が有罪とされています。
こうした問題を解決する手段として、司法に大麻取締法の違憲性を問う目的で、市民的不服従の権利あるいは良心的拒否権の行使として、敢えて同法を犯した場合、そのような行為は広く世間に大麻問題を訴える効果はあるものの、最新の科学的知見に基づく証拠を示したとしても、現状で無罪とされる可能性は低く、訴えを起こした本人や家族に対する精神的、経済的なダメージが大きすぎると考えます。
これは明らかに司法の怠慢によるものであり、司法と国家は将来的にもその責を逃れることは出来ないと思います。
このような司法の状況を改善するためには、私たちが力を合わせて正常な政治的反対、政治的多数者への通常の訴えかけなどを行い続ける必要があります。
この考えの背景となるわが国の違憲審査制に関する法制の基本的な概念と市民的不服従と良心的拒否の権利の考え方について以下に示します。
わが国における違憲審査制の基本的な概念について
わが国においては、違憲審査をするための特別の機関が設けられておらず、また、最高裁は、具体的事件を離れて抽象的に法律、命令等が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有するものではないもの、(「わが現行の制度の下においては、特定の者の具体的な法律関係につき紛争の存する場合においてのみ裁判所にその判断を求めることができるのであり、裁判所がかような具体的事件を離れて抽象的に法律命令等の合憲性を判断する権限を有するとの見解には、憲法上及び法令上何等の根拠も存しない」)として訴えを却下した(日本国憲法に違反する行政処分取消請求 最大昭和27年10月8日判決)例もあり、『付随的違憲審査制』を採ると解するのが一般的です。
これは、日本国憲法が、「第6章 司法」の章に、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」(第81条)と定めるからでもあります。
付随的違憲審査制とは、違憲審査をするための特別の機関を設けず、通常の裁判所が、係属した事件に法令を適用するに際し、必要な限りにおいて違憲審査をする方式です。
違憲の法令を適用することに対する個人の権利保護に重点を置く点で私権保障型(ここでいう私権は私人の権利という程度の意味であり、私法上の権利という一般的な用法とは異なる)ともいい、アメリカに由来することからアメリカ型ともいうようです。
34年前の長沼一審判決において、憲法81条に基づいて裁判所が違憲審査権を積極的に行使すべき場合の要件として、次の三つが挙げられています。(1)「憲法の基本原理に対する黙過することが許されないような重大な違反の状態が発生している疑いが生じ」、(2)「その結果、当該争訟事件の当事者をも含めた国民の権利が侵害されまたは侵害される危険があると考えられる場合」、(3)「裁判所が憲法問題以外の当事者の主張について判断することによってその訴訟を終局させたのでは、当該事件の紛争が根本的に解決できないと認められる場合」であります。
市民的不服従と良心的拒否について
ロールズによれば、市民的不服従とは、「(勿論完全にとはいわないでも)かなりの程度正義にかなっている民主政体においてそれが正当化される場合、通常、多数者の正義感覚に訴えて、異議の申し立てられている措置の再考を促し、反対者達の確固たる意見では社会的協同の諸条件が尊重されていないことを警告するという政治的行為として理解することができる。」
「市民的不服従(略)この理論は正義に近い社会、すなわち大方秩序立ってはいるが、なお依然として正義に反するある重大な事態が起こるような社会という特定の事例にのみあてはまるものである。正義に近い状態は民主主義体制を必要とする、と私は仮定しているので、この理論は合法的に確立された民主主義的権威に対する市民的不服従の役割とその妥当性を問題にする。」(p281)
「私は初めに市民的不服従を、通常、法や政府の政策を変えさせることをねらってなされる行為であって、法に反する、公共的、非暴力的、良心的、かつ政治的な行為と定義したい。」(p282)
「危害を加え、苦痛を与える可能性のある暴力行為に参加することは、請願の一形式としての市民的不服従とは両立しがたい。」(p284)
「良心的拒絶は多数派の正義感に訴える請願の一形態である。」(p286)
「正義論はこれらの実践的考察について特別なことは何も述べない。」(p291)
「だが、ひとたび、社会が平等な人々の間の協働組織として解釈されるならば、重大な不正義によって侵害された人々は服従する必要はないのである。実際、市民的不服従は(また、良心的拒絶も同様に)立憲体制を安定化させる方策の一つ(だが、定義によって非合法な方策)である。(略)法に対する忠誠の範囲内で不正義に抵抗することによって、市民的不服従は正義からの乖離を抑制するのに役立ち、そして、そうした乖離が生じるとき、それを是正するのに役立つのである。」(p296)
「そのとき、民主主義社会では、各市民は正義の諸原理に関する自己の解釈とそれらの原理に照らした自己の行動に責任をもっている、ということが認められる。」(p301)
「だが、もし正当化される市民的不服従が市民の和合を脅かすように思われるならば、その責任は抗議をする人々にかかるのではなく、権威や権力を濫用することによって、そのような反対を正当化している人々にかかるのである。」(p302)
ロールズの市民的不服従の定義をふまえて、その行使が正当化される不正義の条件としてあげられるのは、「平等な市民権の自由あるいは機会均等に対する明らかな侵害であり、正常な政治的反対にもかかわらず、長期間にわたって、多かれ少なかれ故意になされてきた侵害である。」このような条件が存在し市民的不服従の行使がなされる場合でも、選挙民全体としての市民の政治的な正義の要求についての十分な合意がある限り、無政府状態の危険はない。明らかに正義にもとる法や政策を保守するために、権威や権力の濫用を行うことこそが責任を問われるのである。
ロールズは市民的不服従の正当化のために三つの条件を提示する。第一に、市民的不服従は平等な自由の原理と機会の公正な平等という原理(18)に対する深刻な侵害に向けられるべきである。たとえば、参政権の否定や就職差別などがこれにあたる。第二に、政治的多数者への通常の訴えかけがすでに行われており、それが失敗に帰したために、最終的な手段として市民的不服従が行われるべきである。第三に、市民的不服従はすべての少数者集団に平等に参加の正当性が認められるべきである。
ハーバーマスも「まさに市民的不服従こそ民主主義の道徳的基盤が適切に理解されているかどうかを知る試金石に他ならない」(19)という点で、ロールズと考えが一致している。ハーバーマスによれば、法治国家は歴史的に見て完成したものではなく、まだまだ多くの誤謬の可能性を含んでいる。それゆえ、正当な法秩序のたえざる創出、再解釈、修正、革新の歴史的プロセスの途上にあるものとして法治国家をとらえなければならない。そこでハーバーマスは、ロナルド・ドゥオーキンの『権利論』に言及しながら、次のように市民的不服従を正当化しようとする。
「法と政治は絶え間ない適応と修正のなかで把握されるものである以上、一目見たところでは不服従であることも、行われないまま時の過ぎた是正と革新のためのペースメーカーであることが、いくらもたたないうちに判明することがありうる。こうした場合、市民的な違法行為は道徳的に基礎づけられた実験である。そのような実験がなければ、活力ある共和国でもそれ自体の革新能力や市民による正当性への信頼を保持できなくなってしまう。もし代表制をとる憲法が全員の利害に関わる異議申し立てを前にして身動きできなくなるようなら、国民は国民に属する市民として、いや一人一人の市民として、主権者の本源的権利の行使に踏みきることが許されなければならない。民主的な法治国家は最終的にはこうした正当性の番人を頼りにしているのである。」
市民的不服従は「主権者の本源的権利」の行使にほかならない。にもかかわらず、「法は法だ」とか「非暴力的な市民的不服従であっても違法行為にかわりはない」という態度で安直に片づけてしまうならば「権威主義的リーガリズム」(21)に陥ることになってしまう。そのような因習的な国家理解、法理解から市民的不服従を攻撃する人々は、成熟した民主主義国家の道徳的基盤とその政治文化を理解できていないのである。ハーバーマスの批判は痛烈である。
参考文献
第11回 違憲審査権の意義--81条(水島朝穂-憲法から時代をよむ)
違憲審査制 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
トランスナショナルな市民的不服従 時安邦治
ジョン・ロールズ『正義論』1971年
社会教育における「市民教育」の可能性― 「正義感覚」の役割と育成の問題を中心に ― 小林建一
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大麻報道センター(旧大麻取締法変革センター)が提出した提言・要望書・意見書です。
●主要11政党と衆参国会議員70名に郵送 2010年12月13日
国会における大麻の科学的検証についての要望書
●放送倫理検証委員会(BPO)宛 2009年12月25日送付
「NHKによる一連の大麻関連番組に関する意見と要望」
●国連麻薬委員会宛 2008年3月10日提出
A Proposal for Reforming Cannabis Control under the International Treaties
●日本政府(薬物乱用防止推進本部関係省庁)宛 2008年2月27日提出
「国際条約による大麻規制の見直しを求める提言」[pdf 27.83KB]
●厚生労働省と(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター宛 2007年5月31日提出
「ダメ。ゼッタイ。」ホームページに記述されている薬物情報の見直しについての要望書
添付資料PDF:【「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ 薬物データベース: 薬物別解説/大麻について」に対する医学的検証】(301.15KB)
●(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター宛 2007年5月14日提出
薬物情報を見直す委員会についての要望書
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外務省より、’1961年の麻薬に関する単一条約を改正する1972年の議定書により改正された同条約の日本語翻訳版(麻薬単一条約)’についての開示決定通知書が届いた。
単一条約の日本語翻訳版の全文は官報の有料制のページでは閲覧できるようであるが、その他にweb上で閲覧できるものは見つけることが出来なかった。大麻取締法による規制の正当性を主張する者は、その根拠として大麻が単一条約によって規制されている物質であることを理由に掲げるが、果たしてその内容はどのようなものなのか?WEB上で閲覧できる情報を基に検証してみた。
単一条約による大麻に関する規制の内容については、「第28条 大麻に関する規制」において
1.締約国が大麻あるいは大麻樹脂の生産のための大麻草の栽培を許可する場合には、第23条に示されるケシに関する規制の制度を適用する。
2.この条約は、産業用途(繊維と種)あるいは園芸用途に限られた大麻草の栽培には適用されない。
3.締約国は、大麻草の葉の乱用と不正な取り引きを防ぐ為に必要な方策を採択する。
と定められている。[野中訳]
SINGLE CONVENTION ON NARCOTIC DRUGS, 1961
As amended by the 1972 Protocol amending the Single Convention on Narcotic Drugs, 1961,UNITED NATIONS (pdf)
単一条約の大麻に関する規制は、47年前の古い情報に基づいて制定されているために、アルコールやタバコよりも有害性が低く、様々な疾病やストレスに対して高い治癒的な効果を示すという科学的知見が現在では常識となっている大麻の生産のための大麻草の栽培や供給をヘロインやモルヒネ、あへんの原料となるケシと同等に厳しく規制する内容となっており、結果として大麻使用者を危険なハードドラッグの売人と接触する機会を増大させ、犯罪組織に巨額の不正収益をもたらすなど、社会に様々な弊害をもたらしており、改正を強く求める要望が上がっている。
2008年の3月20日には、各国の代表が出席して、1998年の国連のドラッグに関する特別総会(UNGASS)で採択された10年間政策を総括する会合が開かれることになっており、この問題を提起する絶好の機会となっている。
<参照記事 カナビススタディハウス「オランダ、もっと柔軟なドラッグ政策が必要、元首相、現市長らがバルケネンデ首相に書簡」>
さらに、単一条約による規制の内容を検証してみると、同条約は、「個人」使用目的でのいかなるドラッグの所持・生産・配布をも刑事犯罪として扱うことを締約国に義務付けるものではないことがわかる。
こうした解釈は、少なくとも、国連では条約に相反するものではないとして受け入れてきた。このことは、国連自身による単一条約に関する公式の見解によっても明確に述べられている。(‘Commentary on the Single Convention on Narcotic Drugs’, 1961, United Nations, New York, 1973.)
最も権威ある解釈は、条約会議の全権主任草稿委員を務めた事務次長アドルフ・ランド教授によるもので、「単一条約で罰則規定として使われている『所持』や『売買』という用語は、違法な流通目的での所持や売買を意味しているだけで、結果として、個人の使用目的でのドラッグの所持や入手に関しては単一条約の対象になる必然はなく、罰すべき罪や重大犯罪として扱うように定めているわけでもない」 としている。(A. Lande The International Drug Control System in Drug Use in America: Problem in Perspective, Appendix, Technical Papers, Vol. III, p 129.)
また、1969年の条約法に関するウィーン条約では、国際条約の条項の「選択的廃棄」手順が明文化され、条約そのものの 「事実誤認」 や 「環境の根本的な変化」 などを含むさまざまな理由で、国が条約の一部を一方的に廃棄できるようになっている。(The relevance of these provisions is considered in: Lienward The International Law of Treaties and US Legalisation of Marijuana, Columbia J Transnet. Law 1971 10(2) 413.)
<参照記事 「カナビススタディハウス「単一条約をめぐる神話」」>
◎ 憲法と単一条約、大麻取締法の関係
大麻取締法による大麻の規制の正当性を主張する者は、大麻が単一条約で規制されている物質であることを引き合いに出すが、上記のような単一条約による大麻に関する規制の内容と大麻取締法を照らし合わせて検証してみると、大麻の自己使用目的ないし医療利用目的の栽培や所持を懲役刑をもって禁止することには、国際法的な視点から見ても正当な法的根拠は存在しない。
また、憲法と条約の優位性の問題という視点から見ても、原則として、憲法98条1 項で最高法規とされた憲法に適合する条約のみが国内法的効力をもち、「違憲の条約」は効力を否定されると解されるため、単一条約による大麻の規制は、大麻の有害性がアルコールやタバコよりも低く、医療用として幅広い可能性があり、重要な治療の選択肢となることが明らかになっている現代において、大麻の自己使用目的ないし医療利用目的の栽培や所持を懲役刑をもって禁止することは憲法違反であると考えられることから、これを正当化する理由には当たらない。
実際に、オランダ・ドイツ・スペイン・スイスなどでは、麻薬に関する処罰設定の自由は各国の議会にあるという考え方が条約解釈として採用されており、わが国においても大麻の自己使用目的ないし医療利用目的の栽培や所持を取締りの対象から外す政策を採ることは充分に可能である。
<参照記事 「憲法の最高法規性と条約--98条 (水島朝穂-憲法から時代をよむ)」「Taku博士の薬物政策論 検証ダメゼッタイ「大麻について」(1)」 >
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近年の信頼性のある研究によって、大麻の慢性ないし定期的使用は精神依存を引き起こすが、身体依存は引き起こさず大麻をやめても離脱症候群はまったく発生しないこと、精神依存、身体依存を引き起こすアルコールと比較した場合、有害性が高いとは言えないこと、大麻を批判する人々は有害作用に関する数多くの科学的データを引き合いに出すが、重篤な生物学的影響があるとする主張の大部分は、比較的大量の使用者、免疫学的、生殖機能についての積極的な研究においても、ほとんど立証されていないことなどが明らかになっている。
<参考資料 メルクマニュアル 第17版 日本語版 1999年米国メルク社発行>
また、英国下院科学技術特別委員会の報告書においても、大麻の有害性はアルコールやタバコよりも低いことが報告されている。
<参考資料 House of Commons Science and Technology Committee;Fifth Report of Session 2005.06>
大麻の作用の多くは△9.テトラヒドロカンナビノール(△9-THC)を初めとするカンナビノイドと総称される化合物(カンナビノイドは、大麻に含まれる生理活性物質の総称で、テトラハイドロカンナビノールやカンナビダイオールなどが含まれる。これらの生理活性物質が、CB1やCB2といったカンナビノイド受容体に結合することによりさまざまな生理作用を引き起こす。その働きは近年徐々に明らかになってきており、今後、疼痛治療の分野だけではなく、精神疾患治療などへの応用が期待されている。)によるものであるが、脳や人体のほかの部分に、カンナビノイド受容体が幅広く存在していることから、医療用として幅広い可能性があり、喘息、緑内障、向鬱、食欲刺激、鎮痙などを含め、管理された研究により治癒的効果が実証されつつあり、この分野における調査は継続されるべきであること、より良い医薬品が発見されるため、THCとその他のカンナビノイドに関するより多くの基礎的神経薬理学的研究が必要とされていることなどがWHOの1997年のレポートによって報告されている。
実際に、2007年2月14日、大塚製薬株式会社とGWファーマシューティカルズplc.は、米国において開発中のカンナビノイド系がん疼痛治療剤「サティベックス(英語表記:Sativex®)」の米国における開発・販売に関するライセンス契約を締結した。
「サティベックス」は大麻からの抽出物であるテトラハイドロカンナビノールとカンナビダイオールを主成分とする溶液で、口腔内スプレーで薬剤を投与する。カンナビノイド受容体に作用する事により、モルヒネとは異なる作用機序を介して鎮痛効果を発揮する。
<参考資料 WHO 1997年 薬物乱用プログラム・レポート、大塚製薬News Release2007年2月14日>
これらの近年の信頼性のある研究に基づく医学的知見や社会背景と、平成15年(わ)第4650号、第6421号、第7567号大麻取締法違反(変更後の訴因大麻取締法違反、覚せい剤取締法違反、麻薬及び向精神薬取締法違反)被告事件における、弁護人の「大麻の使用の有害性は証明されておらず、あるとしてもタバコやアルコール以下であり、鎮痛作用等に着目した医療用の有用性があることも認められるから、大麻を罰則をもって禁止している大麻取締法は憲法13条で保障する幸福追求権を侵害しており、少なくとも自己使用目的ないし医療利用目的の栽培や所持を懲役刑をもって禁止する限りで、憲法13条、25条及び31条に違反して無効である」という主張を、「大麻取締法の立法事実である大麻の有害性ないしその使用による影響については、大麻には幻視・幻覚・幻聴・錯乱等の急性中毒症状や判断力・認識能力の低下等をもたらす精神薬理作用があり、個人差が大きいとしても、長期常用の場合だけでなく、比較的少量の使用でもそのような症状の発現があることが報告されており、有害性が否定できないことは公知の事実といえる。また、大麻を用いた治療が国際的な医学界で標準的な治療方法として承認されているとも認められない。」「上記のような大麻の有害性に鑑みると、大麻の所持等を禁止している大麻取締法は憲法13条、25条に違反するとはいえず、また、その処罰規定は、懲役刑の下限の低さ等に照らし、過度に重い刑罰を定め罪刑の均衡を失するものとはいえないから、憲法31条に違反するものではない。」として退けた判決は相容れないものである。
近時の医学的知見や社会背景に鑑みれば、大麻取締法は少なくとも自己使用目的ないし医療利用目的の栽培や所持を懲役刑をもって禁止する限りで、憲法13条、25条及び31条に違反して無効であり、そのような事例に対し、同法を適用することは、極めて重篤な人権侵害行為である。
司法は、「どのような罰則を定めるかは、原則として国民の代表者によって構成される国会の立法裁量にゆだねられていると解される」などとして判断を避けているが、違憲立法審査権を行使することは、三権分立制の下での立法権、行政権と司法権の対等性の保持と、裁判を通じて、国民の権利と自由(基本的人権)を保障し、社会の法秩序を維持することによって社会の平和を保全していく役割とを果たす重要なものであることから、裁判官の自己保身の為のこのような態度は司法の怠慢であるという批判を免れないばかりか、法治国家に対する国民の信頼性そのものを低下させる原因となるものである。
<参考資料 平成15年(わ)第4650号、第6421号、第7567号 大麻取締法違反(変更後の訴因大麻取締法違反、覚せい剤取締法違反、麻薬及び向精神薬取締法違反)被告事件 控訴審判決文平成16年(う)第835号>
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