昨日、沖縄地方裁判所石垣支部で開かれたNATAの公判、国選弁護人に話を聞きました。一回で結審し、求刑は2年6月とのことです。次回、判決公判は4月20日午後1時20分から。都市部と違い、公判の間隔がとても短いそうです。
誰に危害を加えたわけでもなく、傷つけたわけでもなく、ボランティアスタッフとして非犯罪化運動にも積極的に、熱心に貢献してきたNATAに、できるだけ軽い判決が出ることを祈る思いです。国選の弁護士には大麻取締法の問題点や違憲論裁判資料などを提供してきましたが、残念ながら活かされませんでした。
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昨日、沖縄地方裁判所石垣支部で開かれたNATAの公判、国選弁護人に話を聞きました。一回で結審し、求刑は2年6月とのことです。次回、判決公判は4月20日午後1時20分から。都市部と違い、公判の間隔がとても短いそうです。
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2月に逮捕されたナタの初公判が14日にあります。プライバシーを保護する観点から本名を伏せており、公開することはできませんが、ナタの減刑を求める嘆願書を提出する予定です。時間がありませんが、ナタの減刑嘆願に賛同して頂ける方には署名用紙をお送りしますので、thc@asayake.jpまでご連絡下さい。よろしくお願いいたします。以下、嘆願書の内容です。
減刑嘆願書
今般、大麻取締法と麻薬及び向精神薬取締法で逮捕された◇◇◇◇君について、裁判官殿に同君の減刑をお願いしたく、申し上げます。
◇◇君は大麻取締法による逮捕という前科があり、今回の事件はその執行猶予中のことでした。そのような境遇であるにも拘らず、今回の事態を招いたこと、友人宛の手紙でも、自らの軽率な行動を本人はとても深く反省し、後悔し、恥じており、「死にたい」とまで書いております。
◇◇君が法を犯したことは事実ですが、誰かを傷つけたり、騙したりといった加害を為したわけではなく、保護されるべき法益を侵害した事実もありません。むしろ、◇◇君は、争いごとを好まぬ、穏やかで、とても心の優しい青年で、多くの友人からも愛されています。執行猶予中であったこともあり、厳しい判決が予想される事態に、私ども友人一同は、◇◇君の将来を深く憂慮し、案ずるものです。
大麻についていえば、先進諸国や欧州各国、イスラム諸国、中南米の国々で、逮捕されるような犯罪とはされておりません。他者や社会に対する法益の侵害が存在しないからであります。
大麻も、LSDも、精神的な病の治療、心の病を癒すために利用されてきた歴史があり、◇◇君は、無自覚・無意識にせよ、そのような効果を欲していたものであると解されます。薬物事犯については、現在のような殺人罪並みの刑罰を伴う規制が果たして正当なものであるのかどうか、人権尊重の立場からは、多くの専門家からも疑問視する声があります。昨今では現在のような厳罰主義こそが人権侵害ではないかという疑問も呈され、特に大麻取締法については、各種の疾病に治療的効果を有することが各国の研究でも証明されている事実があり、わが国における規制のあり方こそが憲法に違反するものであるとして、その違憲性を問う主張が各地の裁判で弁護側から提起され、医療大麻の使用を求めるものを含め、規制のあり方の見直しが多数の市民団体から求められてもいます。何ら法益を侵害した事実もない者を刑務所送りにする現在のあり方こそが、遵法精神を阻害するという指摘も存在します。
裁判官殿、◇◇◇◇君は反社会的な人物などでは決してありません。勤務先の社長も、◇◇君の表裏なく真摯に仕事に取り組む姿勢を評価して下さっています。
裁判官殿、どうかお願いいたします。◇◇君を刑務所送りにしないで下さい。それは何ら解決になりません。今後の◇◇君の去就につきましては、ご両親とも力を合わせ、友人一同厳しく監督し、二度と法を犯すようなことがないよう、精神的な支えになりたいと望んでおります。
賢明なる裁判官殿におかれましては、何卒温情のある判決をお願いしたく、以下一同、伏してお願いを申し上げる次第です。◇◇君を助けて下さい。よろしくお願いを申し上げます。
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<2005年3月15日 高松高裁 午前10時過ぎ>
書記官:起立願います。
裁判官:そこに座ってください。
それでは前回にひきつづいて審議を進めていきますが、今日はまず弁護人の方から追加の証拠として書証の請求、それから処理と鑑定の請求とがありますが、書証について検察官ご意見お願いします。
検察官:同意でお願いします。
裁判官:それでは7号書から9号書まで提出して下さい。用紙のコピーはよろしいですか?
弁護人:大丈夫です。
裁判官:はいそれでは提出してください。えっと写しになるんですよね?
弁護人:はい写しです。
裁判官:検察官、写しとして請求ということでよろしいですかね?
検察官:はい。
裁判官:では書証3点取り調べするということにします。書証は以上ということでよろしいですか?
弁護人:はい。以上です。
裁判官:あとは先ほど申しましたように証人等鑑定ということでよろしいですね?
弁護人:はい。
裁判官:では証人申請ならびに鑑定申請は却下するということにいたします。それでは書面提出して頂いていますけど、弁論ということにしましょうか?
弁護人:はいお願いします。
裁判官:この通りということでよろしいですかね?
弁護人:はい。
裁判官:検察官何かございますか?
検察官:ございません。
裁判官:それでは終結致します。判決言い渡し期日を決めさせて頂きます。4月19日火曜日ということでご都合よろしいですか?
弁護人:はい。4時ぐらいがいいです。
裁判官:検察官大丈夫ですか?
検察官:はい。
裁判官:では次回判決言い渡しで4月19日火曜日午後4時ということで、それでは今日はこれでおわります。
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平成17年3月11日宣告 裁判所書記官 櫻井 秀史
平成16年(う)第835号
判 決
本籍 ×××××
住居 ×××××
桂川 直文
上記の者に対する大麻取締法違反(変更後の訴因 大麻取締法違反,覚せい剤取締法違反,麻薬及び向精神薬取締法違反)被告事件について,平成16年4月14日大阪地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官藤田義清出席の上審理し,次のとおり判決する。
主 文
本件控訴を棄却する。
当審における未決勾留日数中270日を原判決の懲役刑に算入する。
理 由
本件控訴の趣意は,弁護人丸井英弘作成名義の「控訴趣意書1」「控訴趣意書1の訂正と補充」「控訴趣意書1の補充2」「控訴趣意書1の補充3」「控訴趣意書1の要約と補充」「控訴趣意書1の要約と補充2」並びに弁護人金井塚康弘及び同丸井英弘連名作成名義の「控訴趣意書2」に記載されているとおりであるから,これらを引用する。
原審で取り調べた証拠を調査し,当審における事実取調べの結果を併せて検討し,以下のとおり判断する。
第1 控訴趣意中,理由不備の主張について
論旨は,原判決は,大麻の有害性を証拠に基づかずに公知の事実として認定しており,道路交通法で薬物使用が規制されている以上に大麻取締法で大麻を規制する具体的理由を説明していないから,原判決には理由不備がある,というのである。
ところで,控訴理由として刑訴法378条4号前段に規定された,いわゆる理由不備というのは,同法44条1項,335条1項により必要とされている判決に付すべき理由の全部又は重要な部分を欠く場合をいうものである。所論のいう大麻の有害性や大麻取締法で大麻を規制する理由は,被告人側が原審において大麻取締法が憲法に違反する旨主張した上で問題とされたいわゆる立法事実にすぎないから,刑訴法44条1項,335条1項は,これを認めた理由まで判決に記載することを必要とするものではない。原判決が刑訴法378条4号前段に規定された判決に付すべき理由を付しているのは明らかであるから,原判決に理由不備はない。
論旨は理由がない。
第2 控訴趣意中,原判示第1及び第3の事実(大麻営利目的譲渡)に関する事実誤認の主張について
論旨は,原判決は,原判示第1及び第3の事実として,被告人が営利の目的で大麻を譲り渡したと認定したが,被告人には商売としての営利性がなかったから,原判決には,事実の誤認がある,というのである。
しかしながら,関係証拠によると,営利の目的を認め,原判示第1及び第3の大麻営利目的譲渡の事実を認定した原判決の認定,判断は,正当として是認することができ,原判決が「弁護人の主張に対する判断」として説示するところも十分首肯することができる。
すなわち,関係証拠によれば,被告人は,自ら大量の大麻を栽培しては,これを不特定多数の大麻愛好家に譲渡してカンパという名目で1回数万円から10万円程度の代金を得ることを繰り返して,年間数百万円の代金を得て,自己の生活費や大麻栽培の経費等に充てていたところ,その一環として,原判示第1及び第3の相手方に対し,大麻を渡し,これに対して8万円ないし10万円を受け取ったことが認められる。大麻取締法にいう営利の目的があるというには,商売としての営利目的があるまでの必要はなく,財産上の利益を上げるという意味での営利の目的があれば足りるところ,上記認定事実から,被告人に財産上の利益を得る営利の目的があったと認定されるのはやむを得ないところである。
その他,所論に即して検討しても,原判示第1及び第3の事実に関して所論の事実誤認はなく,論旨は理由がない。
第3 控訴趣意中,原判示第2の事実(大麻営利目的栽培)に関する事実誤認の主張について
論旨は,原判決は,原判示第2の事実として,被告人が営利の目的で大麻を栽培したと認定したが,被告人は,長野県から大麻栽培を黙認されたと誤信しており,犯意がなかったから,原判決には,事実の誤認がある,というのである。
しかしながら,関係証拠によると,長野県から大麻栽培が黙認されたと被告人が考えたとは到底認められないとして,原判示第2の大麻営利目的栽培の事実を認定した原判決の認定,判断は,正当として是認することができ,原判決が「弁護人の主張に対する判断」として説示するところも十分首肯することができる。
すなわち,関係証拠によれば,被告人は,平成5年に大麻栽培を含む大麻取締法違反の罪で懲役2年,4年間執行猶予の判決を言渡しを受けたにもかかわらず,その後も,大麻の使用は妨げられるべきでないなどと主張し,平成13年に,長野県知事に対し,経口及び喫煙摂取する目的で大麻を栽培する免許を申請したが,これを却下され,これに対し異議申立てをしていたことが認められる。これらの事実に照らすと,被告人は,長野県から大麻栽培を黙認されたと誤信したわけではなく,大麻栽培を許可されておらず,大麻栽培が違法な犯罪であることを十分に承知した上で,あえて,法律を犯して大麻を栽培していたものと認められる。被告人の故意等の主観的要素に欠けるところはない。
その他,所論に即して検討しても,原判示第2の事実に関して所論の事実誤認はなく,論旨は理由がない。
第4 控訴趣意中,法令適用の誤りの主張について
論旨は,(1)大麻取締法の罰則規定は,大麻に有害性がないこと,あるいは,仮にこれがあるとしても,刑事罰をもって規制しなければならない程度の有害性がないことなどに照らして,憲法13条,25条,31条等に違反し,(2)大麻取締法は,社会的必要性がないのに,第二次世界大戦後の占領政策として制定されたものであって,法制定過程そのものに問題があり,憲法31条,12条,13条等に違反して立法された法律であって,無効であり,(3)大麻に関する広告を禁じる大麻取締法4条1項4号,25条は,憲法13条,19条,21条に違反し,法律の保護法益が不明確なこととあいまって,大麻取締法全体が違憲であり,(4)本件の大麻の栽培等は,主に医療利用目的,一部自己使用目的でなされたものであるので,これに大麻取締法の罰則を適用することは,その限りで憲法13条,25条,31条に違反し,いわゆる適用違憲ないし運用違憲であるから,本件に大麻取締法を適用した原判決には法令適用の誤りがある,というのである。
1 所論(1)について
大麻の有害性は,かねてより所論が指摘する最高裁判所の決定を含む多くの裁判例において肯定されており,多くの裁判所においては公知の事実として扱われるに至っているものであるけれども,所論が大麻の作用に関する医学的研究の進展等を指摘するので,あらためて検討してみても,関係証拠によれば,近時の医学的文献において,大麻には,幻覚・幻聴・錯乱等の急性中毒症状や判断力・認識能力の低下等をもたらす精神薬理作用があり,初心者などに対して急性の精神症状をもたらすことがあるなどとされており,大麻が人の心身に有害であるとはいえても,有害性が極めて低いとはいえないことが認められる。
弁護人から大麻の有害性の有無に関する証拠として提出された書証は,大麻関連物質に関連した異常行動の発現及び治療薬への応用について平成16年の時点において大学研究者らによって研究が継続されていることを指摘するもの,大麻は状況によっては精神異常を引き起こすが,治療効果もあるとし,大麻の毒性は使用方法や使用量と関係があることを示唆する精神科医の見解,大麻が相応の精神薬理作用を有することを認めつつ,大麻が長期的に人体に影響を及ぼすかどうかについて解明されていない点があることや,大麻の精神薬理作用が覚せい剤等よりも軽いことなどを指摘する各種の研究や調査結果を報告するもの,大麻の個人による使用を刑罰をもって規制しない国があることを紹介するもの,大麻の経済的有用性や歴史的意義等を指摘する文献等であり,上記大麻の有害性の認定を左右するものではない。また,この点に関する被告人の供述も,大麻の精神薬理作用が覚せい剤等よりも軽いものであるとしつつも,大麻が相応の精神薬理作用を有するものであること自体は認めるものであって,上記大麻の有毒性の認定を左右するものではない。
大麻が精神薬理作用を有する薬物であって,その有害性も否定できないことから,これを国民の保健衛生上の危険防止という公共の利益の見地から規制することは十分に合理的であるから,どの範囲で法的規制を加え,どのような罰則を定めるかは,原則として国民の代表者によって構成される国会の立法裁量に委ねられていると解される。そして,大麻の譲渡等に対する罰則規定は覚せい剤や麻薬の譲渡等に対する罰則と比較して重いものではないことなどに照らすと,国民の代表者により構成される国会の立法がその裁量を逸脱したものであるとは認められない。したがって,本件大麻の営利目的の譲渡,栽培及び所持に関する大麻取締法の罰則規定は,憲法13条,25条,31条等に違反しない。
2 所論(2)について
前記のとおり,大麻を国民の保健衛生上の危険防止という公共の利益の見地から規制することは十分に合理的であるから,第二次世界大戦後の占領政策がきっかけとなって国会で審議の上大麻取締法が制定されたとしても,国会における審議そのものに憲法が反する点がうかがわれない以上,大麻取締法の制定過程に問題があり,同法が,憲法31条,12条,13条等に違反して立法された法律であるとはいえない。
3 所論(3)について
大麻に関する広告を制限する大麻取締法4条1項4号,25条の規定は,本件大麻の営利目的の譲渡,栽培及び所持に関する大麻取締法の規定とは別個の独立した規定であるから,仮に大麻取締法4条1項4号,25条が,憲法に違反しても,大麻取締法が全体として違憲であるとはいえないし,本件に関係する大麻取締法の規定が違憲であるともいえない。また,前記のとおり,大麻取締法は,大麻の有毒性が否定できないために,大麻を国民の保健衛生上の危険防止という公共の利益の見地から規制するものであるから,大麻取締法の保護法益が不明確であるとはいえず,大麻取締法が全体として違憲であると解すべき理由はない。
4 所論(4)について
関係証拠によれば,被告人は,大量に栽培していた大麻を医療関係者に販売するのではなく,不特定多数の大麻愛好者に反復継続して販売し,年間数百万円の代金を得て,財産上の利益を得ていたこと,大麻の医療的な効用や利用方法については研究の途中であって,医療的な利用方法が確立していないこと,一部の大麻の譲渡人においては,被告人やその知人が宣伝している大麻の薬効について関心を有していたが,医療関係者の助言に基づいて譲り受けているわけではないことなどが認められ,これらの事実に照らすと,被告人が主に医療利用目的,一部自己使用目的で大麻の栽培等に及んだとはいえないから,本件についていわゆる適用違憲ないし運用違憲をいう所論は前提を欠いている。
以上,所論はいずれも採用できない。
論旨は理由がない。
第5 控訴趣意中,量刑不当の主張について
論旨は,要するに,被告人を懲役5年及び罰金150万円に処した原判決の量刑は重過ぎて不当である,というのである。
本件は,営利目的による大麻の譲渡2件(原判示第1,第3),営利目的による大麻の栽培1件(同第2),営利目的による大麻の所持と非営利目的による覚せい剤,麻薬及び麻薬原料植物の所持1件(同第4)の事案である。
被告人は,平成5年に大麻取締法違反の罪で懲役2年,4年間執行猶予の判決の言渡しを受けたにもかかわらず,大麻の使用は妨げられるべきでないなどと主張して,本件大麻取締法違反に及んだのみならず,本件覚せい剤取締法違反,麻薬及び向精神薬取締法違反にも及んでいるのであって,犯行に至る経緯及び動機に酌むべき点がない。被告人は,営利の目的で,94本もの大麻草を栽培し,3.5キログラム以上の大麻を所持し,少なくない量の大麻を譲渡していたのであって,悪質な犯行態様である。被告人が所持していた薬物は,被告人が無害であると主張する大麻のみではなく,覚せい剤,麻薬,麻薬原料植物に及んでおり,被告人の薬物への親和性は顕著である。これらの事情に照らすと,被告人の刑事責任は相当に重い。
そうすると,被告人が今後は合法的に活動する旨述べていること,従兄弟が今後の監督を約していること,父親も今後の指導を約する手紙を提出していることなど,被告人のために酌むべき諸事情を十分に考慮しても,原判決の量刑はやむを得ないものであって,これが重過ぎて不当であるとはいえない。
論旨は理由がない。
よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却し,当審における未決勾留日数の算入につき刑法21条を適用して,主文のとおり判決する。
平成17年3月11日
大阪高等裁判所第6刑事部
裁判長裁判官 近江 清勝
裁判官 渡邊 壯
裁判官 西崎 健児 (※「崎」は異体字)
これは謄本である。
平成17年3月14日
大阪高等裁判所
裁判所書記官 櫻井 秀史 (印)
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平成17年(う)第275号 大麻取締法違反被告事件
控訴趣意書
平成17年3月14日
東京高等裁判所第12刑事部 御中
被告人 ■■ ■■
弁護人 髙濱 豊彦
第1 大麻取締法24条の2第1項の違憲性
原審は、本件に大麻取締法24条の2第1項を適用しているが、同項は、少なくとも大麻「所持」に関する部分において憲法13条、14条及び31条に違反するものとして無効であるから、本件は構成要件該当性を阻却される。この点において原審判決は判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤り(刑事訴訟法380条)を含むものである。
以下、憲法の規定ごとに論ずる。
1. 憲法13条(幸福追求権の保障)との関係
(1)原審は、大麻につき、種々の精神薬理作用として衝動的あるいは興奮状態、不安恐怖状態、妄想や幻覚の発現等々の症状を列挙した上で、大麻が人体に有害なものであることは公知の事実である、とし、どのような範囲で法的規制を加えてどのような刑罰をもって臨むのかについては原則として立法政策の問題であるとして、大麻取締法の規定は憲法13条に違反しているものではない、としている。
(2)しかし、大麻その他の物質の使用、特に本件のような鎮痛剤としての利用を含む医療的利用は、ライフスタイルに関わるものとして個人の自己決定権の一内容をなし、したがって憲法上幸福追求権(13条後段)に含まれるから、その規制手段は、規制目的との関係で必要性・合理性の認められるものでなければならず、原審のいうような「立法政策」あるいは「立法裁量」の問題とされている訳ではない(在監者の喫煙規制に関する最大判昭和45年9月16日:民集24巻10号1410頁参照)。
大麻の有害性としては、原審の列挙した「衝動」、「興奮状態」、「不安恐怖状態」、「錯乱状態」については特に存在せず、「妄想」、「幻覚」、「幻視」、「幻聴」といった精神分裂症的症状は、大麻によって発症するかどうかについては勿論、既に精神分裂症に罹患している者の症状を昂進させるかどうかについて未だ争点として残されており、せいぜい既に罹患している者の症状を昂進させる可能性があるとされているに止まる(WORLD HEALTH ORGANIZATION「Cannabis : a health perspective and research agenda」(世界保健機関「大麻:健康の視点と研究課題」)(1997年(平成9年)4月)以下「WHO報告書」という)。
確かに、原審のいうように「パニック反応などの症状が生ずることもあり、」また「多用者や常用者については精神的依存性がみられ」得るが、「慢性的な人格障害として、自発性、意欲、気力の減退、生活の退嬰化が生じ得る」というのはあくまでも仮説上の異状にすぎず、仮説の基礎となっている臨床観測は適切に管理されたものでもない。更に、このような無気力症候群自体明確に定義されてきたものでもないのである(WHO報告書)。
このように大麻の有害性自体疑問の余地の大きいものであるから、原審のように「人体に有害なものであることは公知の事実である」とするのは不当である。
また、大麻は、癌の化学的療法における嘔吐・吐き気の抑制剤として、及びHIV(AIDS)の衰弱症候群における食欲刺激剤として、また緑内障の上昇した眼の内圧を下げるのに有用であることが立証されてきており、更に、本件のように強力な鎮痛剤としての効能も認められている(WHO報告書)。
以上のような大麻の有害性に関する多くの疑問点、加えて医療的利用における確立された有用性からすれば、大麻の単なる所持、特に医療的利用のための所持までも規制し処罰する大麻取締法24条の2第1項は、社会全体の保健衛生上の危険防止という規制目的を達成するための手段として合理性・必要性を欠いていることが明らかである。
したがって、上記規定は憲法13条に違反し無効である。
2. 憲法14条(法の下の平等)との関係
(1)原審は、「アルコール飲料や煙草は、古くからその社会的効用が認められ、広く一般に受け入れられてきたものであり、また、その摂取による心身に及ぼす影響についてもよく知られて」いるが「大麻についてはこれらの事情が歴史的に異なる」などとして、両者の「規制が異なるからといって、直ちに不合理な差別とは言え」ないとしている。
(2)確かにタバコやアルコールは心身に及ぼす悪影響についてよく知られているが、その社会的効用までもが古くから一般に認められてきたとするのは甚だ疑問であり、少なくとも大麻との差別的取扱いを正当化するだけの理由が欠けていることは明らかであり、この点で原判決は理由不備を免れない。
(3)また、原審は、前記1で引用したように、先に大麻が「人体に有害なものであることは公知の事実である」としながら、ここでは、タバコやアルコールは心身に及ぼす影響についてもよく知られているが大麻についてはそれとは異なる、すなわちよく知られていない、としており、論旨の内部矛盾を含む点において原判決は理由齟齬をきたしているともいえる。
(4)憲法14条の法の下の平等については、事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づくものでないかぎり差別的な取扱いをすることを禁止する趣旨と解すべきである(旧尊属殺人重罰規定に関する最大判昭和48年4月4日:刑集27巻3号265頁参照)。
(5)そこで大麻とタバコ及びアルコールの有害性について比較してみると、末尾の比較表のように、総じて大麻はタバコあるいはアルコールと大差ない、あるいはむしろタバコやアルコールの方が有害性において上回っている分野もある(以下の比較は、WHO報告書、厚生労働省「たばこと健康に関する情報ページ」、社団法人アルコール健康医学協会ホームページに依拠した)。
すなわち、脳・行動への影響については、大麻の場合急性的に学習能力・精神運動能力を損ない、自動車運転において事故発生の危険を増大させ、慢性的には認知機能への微妙な影響、大麻への依存、精神分裂症患者において症状の促進の可能性があるが、タバコの場合脳卒中の罹患率を上昇させニコチン依存症の原因となり、アルコールでは急性的に暴力的・衝動的になるという人格変化、死亡の危険、飲酒運転による事故発生の危険の増大、慢性的には学習能力・集中力・記憶力の低下をきたし、アルコール依存症の原因となる、というように、大麻よりアルコールの有害性の方が大きいことが明らかである。
次に心臓・血管への影響についてみると、大麻は頻脈となる可能性があるものの、血圧増加は10パーセント未満であるのに対し、タバコは心筋梗塞、狭心症等の虚血性心疾患の罹患率を上昇させ、アルコールは、心拍数・心臓の負担の増大、更には急激な血圧上昇の原因となる、というように、むしろ大麻よりもタバコ・アルコールの有害性の方が大きい。
呼吸器系への影響では、大麻の長期にわたる継続的使用により肺の炎症、慢性気管支炎の原因となる可能性があるに止まるのに対し、タバコでは肺癌の危険度を増大させるという点で、タバコの方が有害である。
肝臓・消化器官への影響では、大麻は殆ど、あるいは全く悪影響が存在しないのに対し、タバコは口腔・咽頭癌、食道癌、膀胱癌の危険を増大させ、アルコールは喉頭癌、食道癌、肝硬変、胃炎、胃潰瘍の危険を増大させるという点において、タバコ及びアルコールの有害性が明らかに上回っている。
妊娠中の女性が大麻を使用した場合、出生後の子における精神運動能力への影響は極めて僅かなものであり、母親の超重度使用のときのみ子に注意力減退・衝動性の増大がみられるのに対し、タバコでは出生後の子において体重減少、早産、自然流産、周産期死亡の危険が高く、アルコールでは子の知能発達の遅延、様々な奇形の原因となるというように、ここでもタバコ・アルコールの有害性の方が大きい。
加えて、前記1で述べたとおり、大麻には、タバコあるいはアルコールにはない医療的利用という大きな有益性が認められる。
以上のことからすれば、未成年者についてのみ使用を禁じ親権者等を科料、販売者を罰金に処するに止まるタバコ・アルコールにおける取扱い(未成年者喫煙禁止法1条・3条・5条、未成年者飲酒禁止法1条・3条)、更にはこれらが事実上放置されているという運用実態と比較して、単なる所持も含めて全面的に使用を禁じた上で違反者は常に懲役刑に処し、逮捕・勾留も伴うという大麻における取扱いは差別的取扱いとして合理性を欠いていることが明らかである。
したがって、大麻取締法24条の2第1項は、少なくとも「所持」については憲法14条に違反し、この点からも無効たるを免れない。
3. 憲法31条(適正手続の保障)との関係
(1)原審は、憲法31条との関係においても「原則として立法政策の問題であり」「立法裁量」の問題とした上で、法定刑が1月以上5年以下の懲役であって選択刑として罰金刑のない現行大麻取締法24条の2第1項も同条に違反しない、としている。
(2)しかし、憲法31条との関係では、「およそ刑罰は、国権の作用による最も峻厳な制裁であるから、特に基本的人権に関連する事項につき罰則を設けるには、慎重な考慮を必要とすることはいうまでもなく、刑罰規定が罪刑の均衡その他種々の観点からして著しく不合理なものであって、とうてい許容し難いものであるときは、違憲の判断を受けなければならないのである。」(「猿払事件」に関する最大判昭和49年11月6日:刑集28巻9号393頁参照)
そこで大麻取締法24条の2第1項の特に「所持」に関して検討すると、前記1・2において述べたような大麻の性質、特にタバコ・アルコールと比較しても有害性が下回りタバコ・アルコールにない医療的効能を有する点からすれば、このような大麻の単なる所持、就中医療的利用のための所持に対して常に懲役刑を科し、選択刑として罰金刑もなく、初回には刑の執行が猶予されるとしても逮捕・勾留という長期間の身柄拘束を伴い、保釈には極めて高額の保証金を要し、その間失職の危険を生じ、2回目以降には確実に実刑となる現行法の規定及び運用は、罪刑の均衡及び実質的制裁の大きさという観点から著しく不合理なものであって、とうてい許容し難いものであるから、全体として憲法31条に違反するものといえる。
第2 正当行為・緊急避難行為としての大麻所持
原審は、被告人の大麻所持が正当行為ないしこれに準ずるものであるといえないことは明らかである、として行為の違法性を肯定しているが、被告人の本件行為は以下のとおり正当行為及び緊急避難行為の要件を充足し違法性が阻却される。この点においても、原審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤り(刑事訴訟法380条)がある。
1. 正当行為(刑法35条)としての大麻所持
(1)原審は、被告人の大麻使用が医師の処方に基づくものでないという理由で、被告人の大麻所持が正当行為ないしこれに準ずるものであるといえないことは明白である、としている。
しかし、大麻使用について医師の処方を受けることは、少なくともわが国内では不可能であり、原審の掲げる理由は不備ないし齟齬があるといえる。
(2)本件における被告人の大麻所持・使用は、次のとおり、大麻の鎮痛剤としての効能を知悉していた被告人が医療行為の一環として行ったものであり、その行為態様・結果からして社会的相当性が認められ、正当行為として違法性が阻却される。
すなわち、被告人は、中学1年のときバスケットボールを始め、中学時代は社会人のチームに所属し週5日・1日約2時間、高校時代には部活動で週6日・1日約2時間、加えて社会人のチームで週4~5日・1日約2時間、試合・練習等に励んだ。
中学2年のころから被告人には腰痛の症状があり、当時の■■県■■市の医師に「腰椎椎間板症」と診断され、中学時代に2,3回通院した他、中学2年・3年時には■■市内の整骨院に週3回通院した。
その後、平成12年2月に被告人は学生ビザで渡米し、写真を学ぶためにロサンゼルス・シティ・カレッジに転入し、平成16年7月に帰国するまで、途中1,2か月間帰国した以外はずっと在米生活であった。
被告人の腰痛は高校時代は殆ど出なくなっていたが、在米中の平成16年1月ころから腰痛が悪化し、同月の末ころには動けないほどになったため、同年2月からロサンゼルス市の南方にあるトーレンス市で開業している医師のツネオ・ヒラバヤシ氏のところへ行き、そこに4回くらい通院し、バイキリンという鎮痛剤を処方してもらったが、実際に服用してみたところ、眠気・できもの・食欲不振・便秘などの副作用が出たので、被告人は、同月ころ、カリフォルニア州内にある飲食店のオーナーの知人であるアメリカ人医師に相談した。
すると、その医師が「WEED」(雑草)つまりマリファナを奨めたので、被告人が上記オーナーに相談したところ、そのオーナーは「医療用大麻だよ」と言いつつ、赤十字マークの箱に入れられていた乾燥したカリフラワー状の大麻を被告人に譲った。被告人がそれをほぐして紙巻きにして煙を吸ってみると、約10分後に顕著な鎮痛効果が出た。なお、このとき何ら副作用らしきものは出なかった。
被告人はその後、平成17年2月に学生ビザが切れるので今度は職業ビザを取得しようと考え、また、悪化していた腰椎椎間板症の治療のために、平成16年7月16日に帰国した。
帰国後、被告人は、友人の■■■という整体師のもとに腰痛治療のため通ったりしたが、平成16年8月13日、朝からずっと腰痛が酷かったため、同日午後6時ころに東京・新宿の長距離バスの停留所でバスに乗車できなかった後、中野総合病院、聖路加国際病院に電話したが、いずれも整形外科の医師がいないと言われた。
通常の薬剤では強い副作用が出るが大麻では副作用が出ずに抜群の鎮痛効果のあることを記憶していた被告人は、大麻を入手しようと思い立ち、渋谷へ向かい、午後8時すぎに特に組織暴力などと関係のない人物から大麻樹脂を購入し、点火してその煙を吸ったところ、明らかに痛みが軽快した。
その後被告人は、京王井の頭線に乗り吉祥寺駅で午後11時ころ下車した後、近くの路上を歩行中、再び腰痛に見舞われたために、もう一度大麻の煙を吸い、それによって腰痛が消失した。
以上述べたとおり、被告人は本件大麻所持を、腰痛軽減のための鎮痛剤として使用する行為の一環として行ったものであり、通常の薬剤では強い副作用が出、また医師の治療を受けることができなかったという事情があり、実際に鎮痛効果には顕著なものがあったのであるから、被告人の本件行為は刑法35条の定める正当行為として違法性が阻却される。
2. 緊急避難行為(刑法37条)としての大麻所持
前記1のとおり、被告人の本件行為は、腰椎椎間板症による強い腰痛という自己の身体に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為であり、前記第1で述べたとおり、これによって生じた害は小さく、避けようとした上記の腰痛という害の程度を超えないことが明らかであるから、刑法37条に規定する緊急避難の要件を充足し、この点からも違法性が阻却される。
第3 結論
以上述べたところからすれば、被告人の本件大麻所持行為は構成要件該当性及び違法性が阻却され犯罪が成立しないことが明白であり、原判決は破棄を免れない。
以上
平成17年(う)第275号 大麻取締法違反被告事件
事実取調請求書
平成17年3月14日
東京高等裁判所第12刑事部 御中
被告人 ■■ ■■
弁護人 髙濱 豊彦
書証
(1)WHO「Cannabis : a health perspective and research agenda」
(世界保健機関「大麻:健康の視点と研究課題」)(平成9年4月発行)
(立証趣旨)
大麻の人体に対する影響及び医療的効能という医学上の経験則を立証する。
(2)厚生労働省「たばこと健康に関する情報ページ」(平成17年2月14日時点)
(立証趣旨)
タバコの人体に対する影響という医学上の経験則を立証する。
(3)社団法人アルコール健康医学協会ホームページ(平成17年2月14日時点)
(立証趣旨)
アルコールの人体に対する影響という医学上の経験則を立証する。
以上
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ヘルニア痛を抑える目的で大麻を所持していたのだから無罪であるとして、「懲役6月執行猶予2年」の判決を不服とし、控訴したNさんの控訴趣意書が届きましたので掲載します。Nさんの主張と情報を基に、国選弁護人が書いたものです。大麻取締法が違憲であることを論証しています。
公判日時が分かり次第お伝えします。東京地方の方、ぜひ傍聴にお出かけ下さい。
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弁護側が提出した山本氏の証人申請と大麻の鑑定請求、古川博裁判長の「却下します」の一言で片付けられてしまい、公判は僅か5分で終了。結審となりました。弁護士によると、「アッという間に終わられちゃった」そうです。
桂川裁判に続き、大麻有害論の証拠として新たな論文を提出した点、内容は措くとして、検察の姿勢は肯定的に受け止めて良いのではないでしょうか。
一方、桂川裁判でも示された通り、今や死後硬直した感のある「バカ(司法)の壁」をどう崩すか。それが裁判闘争における課題の焦点として浮き彫りになってきたように思われます。
司法を訴えるにはどうしたら良いのだろう。そんなことを考えてしまう昨今です。
既に判例が出ているのだから裁判闘争はやるだけ無駄だという意見も聞きます。
果たしてそうでしょうか。検察から「公知の事実」の「証拠」を引き出したのは、快挙ではないでしょうか。
志を同じくする者たちが、協同的に、このまま進んで行けば良いのではないかと思っています。
現実に、逮捕され、裁判で違憲を主張する者たちがいます。
そのような者たち、志を共有できる者たちと連帯し、壁を崩したい。
ようやく、裁判闘争を、本格的に、連携的に、公開しながら展開できるようになったのだと思います。
諦めるのは早すぎます。始まったばかりなのに。
桂川控訴審で得た成果は、着実につながっています。
前回とは別の方が傍聴に来て下さったとのこと。ありがとうございました。
近日中に速記録を掲載します。
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MHさん控訴審第2回公判のお知らせ
大麻取締法違憲論を主張して高松高裁で争っているMHさんの控訴審第2回公判が明日15日午前10時から開かれます。
明日の公判では、検察が提出した2点の大麻有害論について、弁護側が反証の予定です。そのうちのひとつ、警察学論集については既に桂川さん裁判で弁護側が論駁したものです。
もう1点は今回MHさん裁判で新たに出された「大麻の文化と科学-この乱用薬物を考える―山本郁夫氏著」についての反論で、実際に山本氏が記述するような毒性が大麻にあるのかどうか、鑑定請求と共に、山本氏を証人として申請します。
桂川裁判の控訴棄却で意気消沈している人も少なくないようですが、大麻の有害性について実質的な審理の道を開いた功績は大きいでしょう。過大な期待はできないとしても、まだ最高裁への上告の道も残されています。
MHさん裁判でも、MHさん自身の強い意思と、支援している友人の熱意と誠意もあり、弁護人提出の趣意書に対して、検察が新たな証拠(山本論文)を提示する展開につなげることができました。これは自然現象などではなく、黙して得た展開ではなく、対峙すべき相手としっかり対峙することで得たMHさん裁判での成果です。
たかが大麻24グラム弱の所持と8本の栽培で、誰にも、どこにも、迷惑も被害もないのに、1年6ヶ月もの実刑に処することが許されて良いのでしょうか。改めて強い憤りを感じます。
MHさんの明日の公判は、山本論文の内容を検証する上でも、大麻の有害性について法廷でさらに審理を促すためにも、とても大切な意味を持つと思います。
大麻で逮捕されない社会をめざす者は、そこを目標地点として展望と見通しを持ち、着実に歩みを進めることが大切ではないでしょうか。桂川裁判の控訴棄却は改めて司法の思考停止を証明しましたが、これは桂川さんの負けではなく、悪く言ってドロー、検察と法廷で議論できる展開を開いた点を評価すれば貴重な前進を果たしたとも言えるでしょう。そしてそれはMHさん裁判にも踏襲されたのです。
長期的な展望を持つことが大切ではないでしょうか。桂川裁判しか目に入らないと落胆しかない判決かもしれませんが、長期的に俯瞰すれば、桂川さんが勝ち取った成果は決して小さくないと思われます。
一人でも多くの方の傍聴を、心よりお願い申し上げます。公判の様子については、傍聴されるMHさんの友人に内容を確認のうえ、ご報告します。また、後日、速記録をお伝えできると思います。
MHさん裁判で、敢えて山本論文を追加して提出した検察には、引き続き、大麻の有害性を法廷の場で検証するためにも、弁護側請求の申請等について、逃げず、拒否せず、正々堂々と受けて立って頂きたいものです。それこそが検察が選択しうる正義ではないでしょうか。
お時間のある方、お近くの方、明日の公判傍聴、ぜひ、よろしくお願いします。
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弁護側提出の最終弁論1が金井塚弁護士より届きましたので公開します。
18ページのものをスキャンしてそのまま3ページに分けて<1-6.7-12.13-18>貼ってあります。
桂川さん控訴審判決は3月11日午後4時から大阪高裁です。
それに先立ち、ヘンプパレードなどで盛り上げようという企画があるようです。お時間のある方はぜひ立ち寄って下さい。
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一審判決文抜粋
(弁護人の主張に対する判断)
1. 弁護人は、(1)大麻取締法は憲法13条、14条、22条1項、25条、31条、36条に違反する、(2)本件には実質的ないし可罰的違法性がないので、このような事案に大麻取締法を適用することは憲法13条、14条、22条1項、31条、36条に違反する、(3)被告人が本件大麻を所持していたことは認めるが、その目的は腰の痛みを軽減するためであり、その所持目的には正当性があり、刑法35条の正当行為に準ずるものであり、みだりに所持していたのではなく、正当行為である旨主張するので、以下判断する。
2. 大麻が以下のとおり精神薬理作用を有しており、人体に有害なものであることは公知の事実である〔注1〕。大麻は摂取することによって陶酔的になったり多幸感をもたらす反面、衝動的あるいは興奮状態や不安恐怖状態になったり、妄想や幻覚の発現、パニック反応などの症状が生ずることもあり、特に多量に摂取した場合には、幻視、幻聴が現れたり、錯乱状態になることがある。多用者や常用者については精神的依存性がみられ、慢性的な人格障害として、自発性、意欲、気力の減退、生活の退嬰化が生じうる。したがって、大麻の有害性を否定することはできない。
3. 所論は、仮に大麻が有害なものであるとしてもこれを規制する手段として懲役刑を科することの不合理性をいうが、大麻の有害性が上記のような内容及び程度を有しており、個人のみならず、社会全体の保健衛生上の危険防止という公共の利益の見地から規制することは十分に合理的である。また、どのような範囲で法的規制を加えて、どのような刑罰をもって臨むのかについては原則として立法政策の問題であり〔注2〕、現行の大麻取締法による規制のうち、本件に関する法定刑は1月以上5年以下の懲役であり、選択刑として罰金刑はないが、その下限は懲役1月であり、その刑期も幅が広いし、執行猶予制度もあることからすると、前記規制の内容及び程度が立法裁量の範囲を逸脱しているものとはいえない〔注3〕。以上のことから、本法の規定は憲法13条、25条、31条、36条に違反しているものではない。また、被告人の大麻所持が吸引あるいは摂取する目的であって、栽培を職業とするものとは何ら関係がないので、憲法22条1項違反をいう点は失当であって、理由がない〔注4〕。
4. 心身に有害とされるアルコール飲料や煙草に対する規制と大麻取締法による規制との不均衡が憲法14条に違反するとの主張について
アルコール飲料、煙草と大麻とでは、それらの心身に及ぼす影響が異なるため、有害性の程度を単純に比較することは困難である。また、有害物に対する規制の内容・程度は規制対象となる物の有害性の内容・程度、それぞれの有害性の社会的認知度、規制対象物の文化的歴史的背景、その社会的効用の内容・程度、これらに対する国民の意識等を踏まえて検討されるべきであって、アルコール飲料や煙草は、古くからその社会的効用が認められ、広く一般に受け入れられてきたものであり、また、その摂取による心身に及ぼす影響についてもよく知られており、したがって過剰摂取等への対応も歴史的になされてきているのに対し、大麻についてはこれらの事情が歴史的に異なるのであるから〔注5〕、その規制が異なるからといって、直ちに不合理な差別とは言えず、憲法14条に違反するとはいえない〔注6〕。
5. 前記のとおり、大麻に有害性があり、その内容・程度からこれを規制することについて、合理性が認められる以上、その所持について、実質的ないし可罰的違法性があることは当然である〔注7〕。
6. 被告人の大麻使用は、腰の痛みを緩和するためであるというが、被告人は痛みを和らげるために、大麻を吸いたいと思って、渋谷のセンター街に出て、中東系の外国人に声をかけて、4000円で大麻樹脂を購入して使用したものであり、医師の処方に基づいて使用したものでないことが認められ、被告人の大麻所持が正当行為ないしそれに準ずるものであるといえないことは明らかである〔注8〕。
(量刑の理由)
大麻の使用が規制され、刑事罰に処せられることは上記説示したとおりである。
被告人は、アメリカに留学して、大麻を使用するようになり、平成16年7月に帰国した後、本件当日前述した経過で、大麻樹脂を購入して、これを所持していたのを警察官の職務質問を受け、通常逮捕されたものである。
しかしながら、被告人は大麻所持について、正当性を主張しているが、本件によって逮捕、勾留されており、犯罪となることについて、自覚する機会が与えられていること、被告人の母親が出頭して、被告人を監督する旨述べていること、被告人にこれまで前科前歴がないことなどを考慮して、今回に限り、刑の執行を猶予することとした。
【メモ】
〔注1〕 大麻の薬理作用等には議論の余地があり、原審のいうように人体に有害なものであることが「公知の事実」となっているとはいえない。
〔注2〕 本件の大麻所持はライフスタイルにかかわるものとして個人の自己決定権に含まれるが、憲法13条の幸福追求権の一内容をなすものとして、その規制は、規制目的の正当性を前提として、規制手段は合理性・必要性の認められる範囲内に止められるべきであって、「原則として立法政策の問題」にすぎないとするのは不当。また、憲法31条の定める適正手続の観点からは、刑罰規定が罪刑の均衡の点で著しく不合理なものであるときは同条違反となる。
〔注3〕 大麻取締法の規制目的が正当であると仮定しても、大麻の単なる所持も含めていかなる場合も規制の対象としている点で、合理性・必要性は認められない。また、常に懲役刑をもって規制している点、2回目からは確実に実刑となる点、執行猶予の場合も含めて逮捕・勾留を伴い、起訴後の保釈には極めて多額の保証金を要する点など、軽微な行為に対し過度に重い規制手段がとられているという面で罪刑の均衡を失し、著しく不合理な規制であるといえる。
〔注4〕 上記の理由から、大麻取締法は憲法13条・31条に違反し無効である。これに対し、憲法25条(生存権)、36条(拷問・残虐な刑罰の禁止)、22条1項(職業選択の自由)は、本件とは関係がない。
〔注5〕 原審は一方で大麻が人体に有害なものであることは公知の事実であるとしながら(注1参照)、他方で、アルコール飲料や煙草は心身に及ぼす影響についてよく知られているが大麻はそれと異なる(知られていない)、と言っている。この点で原審は自己矛盾を含んでいる。
〔注6〕 例えば、喫煙に対する規制は、未成年者喫煙禁止法はあっても事実上野放しであり、健康増進法25条は学校、飲食店等の管理者に受動喫煙を防止するための必要な措置を講ずる努力義務を課しているが義務の内容は不明確であり違反しても罰則等の制裁はない。千代田区の条例では、路上禁煙地区での路上喫煙に対し過料2万円以下(当面は2000円)、逮捕者は出ていない。 これと比べた場合、大麻は本件のような単なる所持に対しても懲役刑が科され、罰金刑の余地もなく、逮捕・勾留の事例も相次いでいるものであり、その差別的取扱いは合理性を欠き、法の下の平等を定めた憲法14条に違反することが明らかである。
〔注7〕 実質的ないし可罰的違法性の理論は、具体的行為が仮に違法性を欠くとはいえないとしても、可罰性が否定されるものであるが、原審は本件について具体的な検討をせず抽象論のみで結論を導いており、不当。
〔注8〕 原審は医師の処方がないことを根拠として正当行為でないと断じているが、本件のような場合医師の処方を求めること自体、少なくとも国内では不可能である。
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ヘルニア治療による大麻所持は無罪であることを主張して控訴したNさんの原審判決文を掲載します。
Nさんは、国選弁護人とも相談のうえ、大麻取締法違憲論を主論とした控訴趣意書を3月14日の提出期限に向けて作成中です。 国選弁護人でもきちんとした法廷闘争ができるかどうか、試金石になるかと思います。
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MHさん裁判で検察が提出した大麻規制を正当化する資料のコピーが届きました。
1.「大麻の文化と科学―この乱用薬物を考える」(より第10章「大麻主成分の毒性及び薬理作用」)
山本郁男 著 廣川書店(ISBN 4-567-44430-2 C3047)
2.警察学論集 第50巻 第5-8号
欧米諸国における薬物解禁論の非論理性と危険性」 鎌原 俊二
以上の二論です。『「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ』の印刷は入っていませんでした。あれではなんの根拠にもならないことに検察も気が付いたのでしょうか。ザッと見ただけですが、山本氏の論文中に、大麻の致死量について記述がありました。
「自殺目的で多量の大麻を喫煙し、4日間昏睡状態にあった20歳のフランス人のケースより推定されたヒトの致死量は、Δ9-THCに換算して体重1kg当たり70mg、すなわち体重70kgのヒトで約5グラムである。」
Δ9-THCに換算して5グラムって、バッズに換算するとどのくらいの量なのでしょうか。それにしても、自殺目的で多量の大麻を喫煙したフランス人の話、ホントでしょうか?大麻を吸うと蛍光灯や靴を食うようになるという学説?と似た、失礼ながら眉に唾の印象です。
警察学論集は桂川さん裁判と同じものです。
大麻規制を正当化する根拠として、桂川さん裁判とMHさん裁判で、検察は複数の文献を提出していますが、厚生労働省の外郭団体である「財団法人・麻薬覚せい剤乱用防止センター」の『「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ』は今回の「証拠」にありません。
大麻取締法を所管する省庁である厚生労働省自身の持つデータはこれまで一切提出されていません。
検察には、御用学者や身内が著した文献ではなく、厚労省自身が持つ大麻有害論のデータを出してもらいたいものです。
【注:】 「Δ9-THC」とは、「Δ9型‐テトラ・ヒドロ・カンナビノール」のことで、即ち大麻の精神作用活性成分です。他にも「8型」などがあるようですが、通常単に「THC」と呼ぶ場合、一般的にこれらの型まで区別はされないようです。
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<2005年2月8日 高松高裁>
ついに裁判の日がきました。
車を飛ばし五分前にぎりぎり到着。法廷に入ると弁護士とまず目が合い会釈を交わしました。弁護士の反対側に検事がいました。高裁専用の検事と聞いていたのでお年を召した頑固そうな方を想像していましたが若くてお笑いのアリとキリギリスの小さい人に似た人でした。後は書記の人と思われるPCを前に座っている人が二人、裁判官の座るところの一列前の両脇にいました。さすが高裁となると傍聴席も100人は座れそうな広さでおもおもしい空気がただよっていました。
傍聴席には予想はしていましたが誰もいなかったので一番前の真ん中の席に座ると記録係の人にそこは記者席ですからずれてくださいといわれたので仕方なく右の列の一番前に座りました。
しばらくするとM君が刑務官二人に連れられて入ってきました。なにか自分のことのようにどきどきしてきました。 少し緊張している顔をしていましたが、顔色もよく一時期よりは元気そうでした。
M君は裁判官の正面の席に刑務官二人を両脇にすわりました。こちらに気づいたのかちらりと後ろを振り返ったので目が合いましたが、刑務官に気を使ったのかすぐ前に向きました。
ついにこの日が来たねM君。一審が終わってから色々あったけど何とか形になることが出来てよかった。今日はねじまがった日本の仕組みにおもいっきりうっぷんをぶつけてやりましょう。
とか思っていると僕たちだけと思っていた傍聴席に二人の男性が座りました。よかった。M君もずいぶん励みになることでしょう。ありがとうです。
しばらくして最上段の扉が開き裁判官が入ってきました。さすが高裁、裁判官が3人もいました。すぐに一同起立して一礼、いよいよ裁判が始まりました。
まずは本人確認をし、検事、弁護士ともに主意の確認をし、証拠資料の提出をしました。
検事の有害性の立証に対する回答のとき、弁護士がまだ資料がそろってなく次回にと言ったところ、裁判官は今回で終わらすつもりだったらしく、いやそうにしていましたが、弁護士が何とかクリアしてくれました。もし今回だけで終わるようなことになれば、今まで応援してくれた方やM君が戦おうとしている気持ちや努力を全然出せないまま結審となるとこでした。それでは悔しすぎます。よかった、よく耐えてくれました。次回につながった、ありがとう藤沢さん。と心で何回も唱えました。
そしてすぐ弁護人のM君への被告人質問が始まりました。がんばれM君ここからが勝負だ。言いたいことゆってやれ。
まずは、一審で検察が言っていた致死量があるとか、最高裁判例から始まりました。
この時のために独居房に入ってまで集中して考えていたはずですが、M君、緊張しているのかうまいこと言葉が出て来ない様子でしたが、次の有害性の根拠のなさや、覚せい剤と同様に規制され、刑が厳しすぎるといった事を述べているうちにだんだん調子が上がってきました。
そして最後に、禁止されているのでもうしないが、生活を立て直し、大麻についての運動はやっていくということで閉めました。
途中裁判官を見ると一人はずっとなぜかにやけていましたが、後の二人は無関心というか、なんと言うか。
「ちゃんと聞いてる、あんたたち」
と怒鳴ってやろうかと何回も思うような印象でした。心のこもった裁判官はいないのかしら。
次に検察の質問が始まりました。
音楽が好きか?大麻がなければ音楽できないか?吸って車に乗るか?とか、だらだらくだらんこと聞くなって感じでした。
もちろん大麻と音楽は相性バッチリだけど、無くても出来るのかとは失礼な事を聞く人だ。本当に。自分に言われているように腹立ってきました。
それから有害性の話になりマニュアルのような質問が始まりました。
M君は何度もどもりながらも有害性の意見には根拠が無く、大麻推進の意見は化学的根拠等の裏付けや有用性がいくらでも存在する事をがんばって答えていました。
しかし検察は質問をしておいてM君が答えるとそれには何も言わずまた次の質問という風にこなしているだけでした。
結局検察も裁判官も国の人というのは公務員でしかないという事をつくづく感じました。争っているのだからもっと熱くなりましょうよ。けど実際はこんなもんなのですかね。くそー、って落ちていても仕方が無い。とりあえず次に繋がったしこれからだ。がんばろうM君。
次回裁判は3月15日。時間の許す方はぜひ傍聴に集まってください。
今度は多くの方々にも協力していただける予定で、最強のサポート体制で臨むことが出来そうです。必ず面白くなるでしょう。M君も自分のことも含め、これからの未来に続く様にがんばっていきます。
マニュアルどおりの裁判をさせないため、検事、裁判官を緊張させるため、出来るだけ多くの人が集まることがこれからの明るい未来に繋がっていくことと思います。
M君の応援、よろしくお願いします。
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