THC4MS 有罪

多発性硬化症患者用医療カナビス・チョコレート配布運動


マーク&レズリー・ギブソン (THC4MS)

Source: The Times
Pub date: 16 Dec 2006
Subj: Cannabis chocolate makers guilty
Author: Russell Jenkins
http://www.ukcia.org/news/shownewsarticle.php?articleid=12033
http://www.mapinc.org/norml/v06/n1697/a03.htm


昨日、多発性硬化症患者用のカナビス入りチョコレートを配布していたイギリス・ケンブリッジシャー州のグループに陪審は有罪の判断を下し、医療用カナビス合法化運動が手痛い敗北を喫した。

カーライル刑事裁判所は、自ら多発性硬化症患者でもあるレズリー・ギブソン(42)と夫のマーク・ギブソン、協力者のマーカス・デビエス(36)の3人に対して、カナビスを共謀して供給したとして有罪を宣告した。

ノースペニネスにあるアルストン村に住むギブソン夫妻は、多発性硬化症患者の痛みの緩和を目的に非営利のギフト・ショップを運営していたが、自分たちの活動については、患者さんたちを痛みから救うことでは国の保健サービスよりも多くの貢献をしてきたと訴えた。また、マーク氏は、政府の実施したカナビスのダウングレードに伴い、医療目的の利用に関しては法の抗弁が成り立つはずだと主張した。

ギブソン夫妻のキャンペーン・グループ・THC4MS (多発性硬化症患者のためのカナビス医療援助)では、昨年の6月に手入れを受けるまでに、1800人の患者さんに対しておよそ3万6000個のカナビス・チョコレートを送り出している。

患者さんには、多発性硬化症であることを確認するために医師の診断書や看護師などの推薦状の提示を求め、郵送費にあてるために1.5から5ポンド(300〜1000円)の献金をお願いしていた。しかし、お金の受領の有無にかかわらず、3.5gのカナビス入り150gのチョコレートは発送することにしていた。

法廷で、レズリーさんは、ヘア・ドレッサー・サロンを開く夢を抱いていたが、21才の時に多発性硬化症と診断され夢が砕かれたと事の始まりを語った。5年以内に失禁するようになり、車椅子生活になると告げられ、従来から使われている唯一の医薬品であるステロイドを処方されたが、風船のように体重が増えて、ひげまで生えてきてしまったと言う。そんなときにカナビスの治療効果に気がついた。

彼女とマークさんは、以前からカナビス・チョコレートを配布していたオークニーに住む多発性硬化症患者のビズ・アイボルさんからカナビス入りのチョコレートの作り方の手ほどきを受けた。アイボルさんは、その後2004年に亡くなり、本格的に引き継ぐようになった。チョコレートは、アイボルさんにちなんで「Canna-Biz Chocolate」と名付けられた。

この運動は口コミで広まっていった。その様子を彼女は、「いつも、新聞やテレビやラジオで話題になっていて、患者さんたちからも連絡をもらうようになりました。『アリストン村、硬化症夫人様』という宛名で手紙も届くようになって大変でした」 と話している。

続いて、車椅子に座った多発性硬化症患者さんの一人がカナビスの効用について証言をした。マイケル・ウッドさんは、法律関係の仕事をしていたが、病気のためにリタイヤしなければならなくなった。カナビス・チョコレートにはとても助けられたと言う。

マークさんによると、カナビス・チョコレートの製造については1個につき約3.5ポンド(800円)の費用が必要で、カナビスの大半は寄付されたもので賄っていた。チョコレートは、ベルギー・グリーン&ブラッグ社製のオルガニック・クッキング・チョコレートで、専用の鍋(500ポンド、11万円)で融かしてカナビスを混ぜる。

このプロジェクトで入ってきたお金は、カナビスの合法化運動のためにあちこちに出向くために使ったりしたが、利益は全く受けていないと彼は証言している。

陪審の票決が告げられたとき、傍聴席からは息を詰まらせたすすり泣きの声があちこちから聞こえ、レズリーさんは泣き崩れた。

レズリーさんは,外で、「全くがっかりしました。私は法を犯したと認めましたが、法が間違っているのです。今、いったい誰が1600人もの多発性硬化症患者の面倒を見ているというのでしょうか?・・・私には、なぜ、苦しみを抱える人々のために誰も立ち上がらないのか理解できません」 と語った。

また、患者さんがカナビス・チョコレートを使うことに推薦状を書いた医師や看護師たちが、法廷に出て、自分たちに有利な証言をすることを拒んだことにはとても落胆させられた、とも述べた。

夫妻は、来月末(1月26日)に刑量の判決を受けるために法廷に出向くことを言い渡されて、昨晩自宅に戻った。裁判官からは、刑務所に送るようなことはないと言われている。

多発性硬化症リソース・センター(MSRC)のローレンス・ウッド代表は、「人気スターが繰り返し所持で捕まってもわずかな罰金で済むというのに、多発性硬化症に苦しむ人たちは、苦しみの中で生きていくために通りの密売人に頼ることを強いられているのです。もう、社会はこうした現実に目を背けず正面から向き合うべき時なのです」 と語っている。

17日に、ギブソン夫妻は控訴することを発表している。


医療カナビス運動小史

ビズ・アイボル: イギリス北部オークニー州の多発性硬化症患者で2004年に56才で亡くなった。彼女は、ノンスモーカーの痛みの緩和用にカナビスとチョコレートを組み合わせることを思いついた。2003年に、カナビスの栽培と所持、配付で起訴されたが、裁判途中で体調を崩し、裁判は中止された。

クリス・ボールドウイン: 足のひきつけでカナビスを使っている。サセックス州のワーシングでダッチスタイルのコーヒーショップ、クオンタム・リーフを開き、2004年に6ヶ月の懲役刑を受けた。

コリン・デビエス: 48才。エリザベス女王にカナビスの花束を手渡したことで知られるアクティビスト。怪我で脊髄を損傷し、痛みの緩和のためにカナビスを治療に使い始めた。2002年に仲間の患者たちのためにストックポートにコーヒショップ、ダッチ・エクスペリエンスを開店したが、開店当日に手入れを受け、警察官の面前でジョイントを吸って逮捕されて、3年の懲役刑を受けた。

   

レズリーたちは、今回の裁判以前にも何度も逮捕されたこともあるが、多発性硬化症の緩和の医療利用ということで酌量されてきた。まだ当時はカナビス・チョコレートに配付は本格的に行っていなかったという事情もあるが、「必要性の弁解(the defence of necessity)」 が大きな効力を持っていた。

しかし、2005年5月27日、両足を膝下切断で失って痛みと幻想肢に苦しむバリー・クオリーの控訴院判決で、旧コモンローの 「必要性の弁解」 はカナビス使用の弁護には適用できないとする裁定が下されてから、状況が変わった。

今回の裁判ではこのことが事前に告げられ、弁護の根拠を最初から剥奪されてしまった。レズリーたちは医療上の理由を再三訴えたが、結局は通じず、裁判官や警察は、自分たちの仕事は法律をつくることではなく、現在ある法律を執行したに過ぎないと、逃げ回るだけだった。

医療カナビスの弁護を却下、イギリス控訴院

医療カナビス・チョコレート配布運動
多発性硬化症、レズリー・ギブソン
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