Weekly News
2006年12月28日
2006年カナビス10大ニュース
アメリカ・ワシントンDC発
1.患者対照研究、カナビス喫煙は肺ガン、上気道ガンと関連なし
過去最大級の患者対照研究の結果によれば、カナビスは、たとえ長期間喫煙しても、肺ガンの発症率には明確な関連はない ことが明らかになった。研究者たちは、「タバコの喫煙などの可能性のある要因を統計的に補正したところ、たとえ長期にわたってヘビーにカナビスを使っていても肺ガンになるような関係を全く見出すことはできなかった」 と結論づけている。さらにデータでは、節度を持った生涯ユーザーの場合は、カナビス喫煙と肺ガンの間には逆相関のあることも示された。この5年におよぶ研究は、アメリカ国立衛生研究所が資金提供していたもので、論文全文は、ガンの疫学・バイオマーカーと予防ジャーナルの10月号に掲載されている。
2.アメリカ人のほぼ半数が、カナビスをアルコールと同様に合法管理することに賛成
NORMLファンデーションの依頼で世論調査会社ゾグビー・インターナショナルが有権者1004人に対して行った3月の全国世論調査によると、アメリカ人のおよそ2人に1人が、連邦法を修正して 「酒類やギャンブルと同じようにカナビスに課税して合法的に管理規制する」 ことを支持していることがわかった。全体では、回答者の46%がアルコールと同様の方法でカナビスを連邦に管理させることを支持している。地域的には、東部沿岸地区では53%、西部沿岸地区では55%が支持し過半数を超えていた。また、18から29才の年齢層ではおよそ3人に2人(65%)、50から64才では半数が連邦法を修正してカナビスを管理べきだとしている。
3.2005年のカナビスの逮捕者数過去最高
アメリカ連邦捜査局(FBI)が9月に発行した犯罪統計によると、2005年に警察がカナビス事犯で逮捕した人の数は78万6545人で過去最大になっている。また、アメリカの全ドラッグ事犯の42.6%にものぼり、現在、アメリカでは40秒に一人の割合でカナビス・ユーザが逮捕されていることになる。
4.バポライザーは「安全で効果的」なカナビノイド搬送システム、臨床試験で実証
この春に発表された薬学ジャーナルに掲載された臨床試験データによると、カナビスをバポライズ(蒸気)にして吸引するシステムは、即座にカナビノイドの薬効を得たいが喫煙のような呼吸器官へのリスクを避けたい患者にとって「安全で効果的」な方法になっている。オランダのライデン大学生物学研究所の研究者たちは、ボルケーノ・バポライス・システムが呼吸毒の吸入を避けながら毎回確実に必要なTHCを患者に搬送してくれる装置であると結論づけている。
5.カナビノイドが脳腫瘍の成長を止める、患者臨床研究では史上初
カナビノイドの抗ガン作用を調べていた臨床研究で、THCを投与すると人間の再発性多形神経膠芽腫(GBM)の増殖を抑えることが明らかにされた。人間の臨床研究でカナビノイドの抗ガン作用が直接確認されたのは史上初めてのことになる。また、以前に行われた別の研究でも、カナビノイドやエンドカナビノイドがさまざまなガン細胞株で腫瘍の進行を遅らせ、細胞の死を誘発することが示されている。そうしたガン細胞には、乳ガン、 前立腺ガン、 結腸ガン、皮膚ガン、 膵臓腺癌 などがある。
6.連邦議会で民主党が多数獲得、カナビス法改革へ期待
11月の選挙では、民主党が上下両院で過半数を獲得し、2007-08年のカナビス法改革が進む情勢になった。NORMLのアレン・ピエール事務局長は、「私たちは、アメリカ下院が新しい民主党リーダーをむかえて、いよいよ、医師の承認による医療カナビスの合法化と、責任ある大人のカナビス使用の非犯罪化へ向けて公聴会が開かれるようになることを願っています」 と語っている。
7.カリフォルニア高裁判決、州の医療カナビス政策は連邦法に抵触せず
12月に、カリフォルニア州高等裁判所は、10年の歴史のある州の 医療カナビス法が、連邦法を犯すことを要求しているわけではないので合法だとする判決を下し、州の医療カナビス法が連邦の規制薬物法のよって無効化されるはずだと訴えていたサンディエゴ郡政執行官側の 訴訟 を却下した。これに対して、郡政執行官は控訴すると発表している。
8.連邦議会、ドラッグ事犯奨学金禁止を緩和
アメリカ連邦議会は、暴力を伴わないドラッグ事犯学生に対する 連邦奨学金の支給禁止法、いわゆる高等教育法の「ドラッグ事犯排除規定」を一部緩和する決定を下した。このの修正で、過去にドラッグ事犯の犯歴を持つ学生でも連邦奨学金が受けられるようになったが、暴力を伴わないマリファナの軽微事犯であっても大学在籍中に起こした場合は引き続き連邦奨学金は剥奪される。1998年に導入された禁止法では、これまで20万人の学生が連邦奨学金の支給を拒否されている。
9.アラスカ高裁、カナビス再犯罪化法を却下
アラスカ州高等裁判所は、7月、個人の家庭内でのカナビスの少量所持を再犯罪化することを求めた新州法条項を州憲法違反として認めない判決を下した。6月に施行された新しい州法では、1オンス以下の少量のカナビス所持を懲役もある刑事犯罪として再犯罪化するとともに、カナビス4オンス以上の所持を重罪と規定していた。
10.最新レポート、カナビスが病気の進行を抑える
9月にNORMLファウンデーションから発表された最新の総合報告書によると、カナビスの医療利用に関して最近発表された臨床および臨床前研究で、カナビノイドには生命を脅かす深刻な病気の進行を抑制する働きがあることが明らかにされた。特に、多発性硬化症、関節リウマチ、炎症性腸疾患などの自己免疫障害、さらに、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症 などの神経障害に対して顕著な効果が認められている。報告書は、10以上の疾患に対するカナビノイド治療の有用性について調べた最新の論文140件以上を集約したもので、糖尿病、C型肝炎、ツーレット症候群 などが含まれている。
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・Marijuana Use and the Risk of Lung and Upper Aerodigestive Tract Cancers: Results of a Population-Based Case-Control Study Cancer Epidemiology Biomarkers & Prevention Vol. 15, 1829-1834, October 2006
・カナビスの喫煙と肺がんは無関係、過去最大の患者対照研究
・煙の中に消えたカナビスの肺がん神話