検察が大麻有害論の書証を証拠提出しました。内容は「ダメ。ゼッタイ。」ホームページなど、根拠不明なものであったため、弁護側が強く反論。次回公判が設定され、弁護側による反証が行われます。
桂川さんは、多発性硬化症や末期癌の病人たちに大量の大麻を無償譲渡していた事実を証言。さらに次回公判でも桂川さん本人に対する質問が行われる予定。
・桂川さん控訴審第3回公判
2004年11月24日(水) 午後3時30分より
大阪高等裁判所
* アナナイ通信創刊準備号完成!-桂川救援全国勝手連からのお知らせ-
獄中の桂川直文氏との交信を目的とするミニコミ誌『アナナイ通信』を、定期的に発行する予定です。購読希望者は下記へお申し込み下さい。一審の判決や控訴趣意書の抜粋、桂川さん自身による意見書などが掲載されている創刊準備号をお送りします。(年間購読料1000円)
〒369-1216 埼玉県大里郡寄居町冨田3604-27 山田塊也
TEL・FAX 048-582-1899
郵便振替 00130-0-89779
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〔桂川さん裁判〕
―以下、傍聴した桂川救援全国勝手連のスタッフ他からの伝聞です(文責:白坂)―
大阪高裁で13日に開かれた控訴審第2回公判はほぼ満席の傍聴席の注視のなか、証拠調べから行われ、弁護側からは追加分の減刑嘆願署名が出され、今回新たに検察からは大麻有害論の書証が提出されました。
しかし、その有害論の内容は「(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター」の“「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ”から大麻に関する記述を印刷したものと警察学論集の資料(大麻非犯罪化の非論理性や危険性についての論述とのこと)で、弁護側は有害論の根拠になっていないと反論し、“「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ”の責任者を証人喚問するよう求めましたが、容れられませんでした。
懲役5年の実刑判決を受けている桂川さんにとって、このような根拠といえない有害論で服役するのは納得のできないことであり、検察の有害論に反証するための機会が必要であるとして、丸井弁護士の強い主張により、さらに次回の公判が設けられることになりました。
これまで「公知の事実」とされてきた大麻有害論の根拠が、法廷の場で厳しく問われることになったわけです。今や形勢は逆転しつつあり、被告側が攻めに転じている感があります。
前回に続き弁護人による被告人質問も行われ、桂川さんは自ら栽培していた大麻を、多発性硬化症や末期癌に苦しむ病人たちに無償で大量に譲渡していた事実も述べました。
また、公判に先立って行われた桂川救援全国勝手連主催の集いには、前回を越える人数が参集し、座る場所もないほどの盛況だったそうです。
これまで桂川さんの人柄を知る地元の者たち中心で取り組まれてきた減刑嘆願署名ですが、公判後の報告会では、傍聴した有志の方たちから、自分たちも減刑嘆願署名を行いたいという自発的な意見が出され、今後、地元の域を超えた視点で減刑嘆願署名に取り組むことも検討課題に上ってきました。
控訴審に入り、桂川さん裁判の状況は大きく変化しています。
控訴審公判第3回は、検察の出した大麻有害論について弁護側の反証が予定されています。桂川さん本人への質問も続けられるとのことです。状況は、桂川救援全国勝手連の大阪支部ができつつあるまでに盛り上がりを見せています。
桂川さん控訴審第3回公判
2004年11月24日(水曜) 午後3時30分より
大阪高等裁判所
前日の晩、桂川救援全国勝手連主催の集いがあります。詳細は分かり次第お知らせします。
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桂川さんの控訴審第2回公判が下記の期日に開かれます。
1回目に続き、弁護士による本人への質問があり、桂川さん自身が証言します。
2004年10月13日(水) 午後3時から3時30分
大阪高等裁判所1008号法廷
公判後、弁護士会館2F小会議室で報告会が行われます。
▼ 金井塚主任弁護士から以下のような通知(10/7付)が届きました。
「検察官の報告書の書証の形で、大麻の有害性についてのホームページや医学論文、警察学論集の論文(90年代初期までのもの?)等が提出されてきました。裁判所の指示で出してきたものでしょうが、一応、論争の形にはなってきました。」
これまで、大麻の有害性を「公知の事実」であるとして証拠調べすらしてこなかった司法が、検察に裏付けを求めたということでしょうか。丸井弁護士による重層的な数々の論証により、裁判官としても、歪んだ現状を支えきれなくなっているのかもしれません。
桂川さんの裁判、面白いことになってきました。
検察の出した「大麻の有害性についてのホームページ」、現物を確認していませんが、(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターに直接問い合わせてその無根拠を確認し、上告趣意書にも書いた者としては、大変に興味があるところです。
検察はどう言い繕うつもりなのやら。
長期的に展望すれば、 いずれ、必ず、勝機は来ると思います。
大麻問題に関心を持つ方は、ぜひ、傍聴にお出かけ下さい。
▼ 桂川救援全国勝手連主催の集い
公判に先立って桂川さんを支援する集いが開かれます。
ミニコミ「アナナイ通信」創刊準備号も配布される予定とのことです。
10月12日(火)午後7時より
・場所 お好み焼き「てんご」(大阪東天満 谷町筋の一筋西)
・電話 06-6881-5134
・企画 桂川救援全国勝手連
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第2回公判に向けて検察が提出した大麻有害論の書証、表紙は下記の通りです。
捜査報告書
平成16年9月28日
大阪高等検察庁刑事部長 清水治殿
大阪高等検察庁
検察官検事 藤田義清(印)大麻取締法違反等 被告人 桂川直文
上記の者に対する頭書各被告事件につき、下記のとおり、大麻の薬効等に関する書籍及び資料を収集しましたので、末尾添付の上報告します。
記
1.資料1
厚生労働省外郭団体 財団法人「麻薬・覚せい剤濫用防止センター」ホームページ抜粋2.資料2
「薬物事件執務提要(改訂版)」最高裁判所事務総局刑事局監修3.資料3
「薬物事犯に関する裁判例」警察庁生活安全局薬物対策課4.資料4
「欧米諸国における薬物解禁論の非論理性と危険性」警察学論集第50号ないし第8号
注)量が多くて転載できませんが、各資料の発行所等、下記の通りです。
1.「タメ。ゼッタイ。」ホームページ中、大麻に関する記述の印刷
大麻とはhttp://www.dapc.or.jp/data/taima/2.htm
大麻の症状http://www.dapc.or.jp/data/taima/3.htm
大麻の身体的影響 http://www.dapc.or.jp/data/taima/3-1.htm
大麻の身体的影響(詳細)http://www.dapc.or.jp/data/taima/3-3.htm
大麻の精神的影響 http://www.dapc.or.jp/data/taima/3-2.htm
2.「薬物事件執務提要(改訂版)」最高裁判所事務総局刑事局監修
平成13年6月25日 第1版第1刷発行 発行人 白木勇 発行所財団法人法曹会
〒100-0013 東京都千代田区霞ヶ関1-1-1 電話03-3581-2146
3.「薬物事犯に関する裁判例」警察庁生活安全局薬物対策課
「四訂版発刊に寄せて」は平成13年8月に記載.
4.「欧米諸国における薬物解禁論の非論理性と危険性(一)」鎌原俊二(香川県警察本部長)
警察大学校編集-警察学論集-立花書房発行第50巻第5号 平成9年5月10日発行
「同(二)」第50巻第6号 平成9年6月10日発行
「同(三)」第50巻第7号 平成9年7月10日発行
要約がなくてすいません。関心のある方は原文に当たってみて下さい。
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〔桂川さん裁判〕
<ラバーズの掲示板から転載>
第1回公判、傍聴を呼び掛けながら私は行けませんでしたが、傍聴した複数の人の話によると、桂川さんは堂々と自分の見解を述べていたそうです。次回も引き続き桂川さん本人が話す時間を取ったそうなので、都合のつく方はぜひ傍聴して下さい
弁護側が提出した証拠のうち、証人関係は悉く不採用とのことで、厳しい状況ではありますが、本人はお元気そうです。公判後に届いた手紙には「8日の裁判では言いたいことを充分言いましたので気分はすっきりしています」とありました。
桂川さんを支援する「桂川救援全国勝手連合」のく●さんにもコメントを出したほうがいいとコメントしているのですが、多忙のうえ逮捕以来の支援活動で疲れもたまっているようなので、気長に待っているところです。
桂川さん控訴審第2回公判
大阪高等裁判所
2004年10月13日(水)午後3時00分から
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平成16年(う)第835号大麻取締法違反等被告事件
被告人 桂川 直文
控訴趣意書1の要約と補充2
平成16年8月26日
弁護人 丸井 英弘
大阪高等裁判所第6刑事部 御中
記
第1。大麻取締法は、社会的必要が無いのに、占領政策として一方的に制定されたものであり、無効でる。
原判決は、この無効な法律を適用して、有罪判決をしているのであるから、刑事訴訟法第380条の法令適用の誤りがあるので、破棄すべきである。
1。第2次大戦前の日本における大麻の栽培風景は、1929年の第16回二科展に発表された清水登之氏の「大麻収穫」という次の絵のとおりである。清水氏は栃木県出身であり、その絵は1920年代の栃木県鹿沼地方での大麻収穫風景を描いたものである。(控訴趣意書1添付資料1「地球維新 vol.2」扉の裏参照)
また、中山康直氏著の「麻ことのはなし」評言社2001年10月10日発行の46頁で農業絵図文献よりの引用で「古来から日本の各地の畑で見られた麻刈りの風景」という題で次の絵が紹介されている。
さらに、昭和12年9月に栃木県で発行された大麻の生産発展を目的にして発行された「大麻の研究」という文献あるが、その45頁で日本における麻の分布図を引用しているがであるが、その内容は次のとおりであり、大麻が日本全国において縄文時代の古来から栽培利用されてきたことは明らかである。なお、「大麻の研究」の末尾で著者(栃木県鹿沼在住)の長谷川氏は次のように述べている。
「斯る折に本書が発刊されこの方面に関心を持つ人達に愛玩吟味されて日本民族性と深い因縁のある大麻に対する認識を新たにし、是が生産発展上に資せられたなら望外の幸と存じます。」(控訴趣意書1添付資料1「地球維新 vol.2」6~7頁参照)
2。大麻の栽培が日本の伝統的な文化財であることは、大分県日田郡大山町小切畑で大麻すなわち麻の栽培をしている矢幡左右見さんが 1996年6月26日、文化財保存技術保持者として文部大臣から認定を受けたことからも明らかである。大山町のホーム頁でその記事の要約を次のとおり紹介している。このように、大麻の栽培者が文化財保存技術保持者として文部大臣から認定を受けているのであり、大麻すなわち麻を犯罪として取り締まることが不適切であることは、明白である。
『 矢幡さんは、昭和6年に栽培を始め、49年から福岡県久留米市の久留米絣(かすり)技術保存会から正式な依頼を受けて粗苧の製造 を始めました。以来、矢幡さんは毎年、粗苧20Kgを出荷しています。粗苧(あらそ)とは、畑に栽培され、高さ2メートルに成長した麻を夏期(7月中旬頃)に収穫して葉を落とし、約3時間半かけて蒸し、さらにそぎ取った表皮を天日で一日半ほど乾燥させて、ひも状にしたものです。粗苧は、国の重要無形文化財である「久留米絣」の絣糸の染色の際の防染用材として使われ、久留米絣の絣模様を出すためには欠かせないものです。しかし、栽培・管理の手間に比べて利益率が低いことから生産者は減少の一途をたどり、現在では矢幡さん一家を残すのみとなりました。 久留米絣の模様は粗苧なしではできないといわれており、粗苧が無形文化財の保存・伝承に欠くことのできないものであるということから、今回の認定になりました。矢幡さんは、「ただ、自然にやってきたこと だけなのに、とても名誉なことです。」と話しています。』
また、「麻 大いなる繊維」と題する栃木県博物館1999年第65回企画展(平成11年8月1日ー10月24日)の資料集では、次のあいさつを紹介している。
「ごあいさつ
麻は中央アジア原産といわれ、わが国への渡来も古く、古代より栽培されています。
表皮を剥いで得られる繊維は、他の繊維に比べ強靱で、肌ざわりがよく、木綿や羊毛、化学繊維が登場するめで、衣服や漁網、下駄の鼻緒の芯縄、各種縄などに用いられてきました。その一方では麻は特別や儀礼や信仰の用具に用いられ、現在でも結納の品や神社の神事には欠かせない存在となっています。麻は実用のみならず信仰・儀礼ともかかわる、まさに大いなる繊維でした。
ここでは、質量とも日本一の「野州麻」の産地である足尾山麓一帯で使用された麻の栽培・生産用具、麻の製品、ならびに東北地方の一部で使用された麻織物に関する用具や麻織物を展示するものです。
麻がどのように生み出され、利用されてきたか、大いなる繊維「麻」について再認識していただければ幸いです。
おわりに、本企画展の開催にあたり、御指導御協力をいただきました皆様にこころより、御礼申し上げます。
平成11年8月1日 栃木県立博物館館長 石川格 」
そして、表紙の2頁目では、次の鹿沼市立北小学校校歌が紹介されているが、このような麻が第2次大戦後の占領米軍による占領政策でもって犯罪視されてしまったのである。
「鹿沼の里に もえいでし
正しき直き 麻のこと
世の人ぐさの 鏡とも
いざ 伸びゆかん ひとすじに 」
3。米軍による軍事占領下の1948年(昭和23年)7月10日に大麻取締法が制定されてからすでに56年が経過した。そして、1950年に日本全国で25118名いた大麻栽培者は、1998年には102名まで減少してしまった。この減少した理由は、毎年の免許更新手続きが面倒な大麻取締法による規制のためと安価で大量に生産できる石油化学繊維の台頭によって麻製品の市場がなくなったことによると思われる。
しかしながら、大麻には、控訴趣意書1で述べたような有益性があるのであるから(逆に大麻にはこのような有益性があるから、日本をアメリカ系の石油系産業の市場とするために占領政策として大麻産業を規制したのが大麻取締法である)、占領政策である大麻取締法の当否を根本からみなおすべき時期に来ていると考える。
第2。原判決には、刑事訴訟法第381条の量刑不当があるので、破棄されるべきである。
現判決は、「被告人を懲役5年及び罰金150万円に処する」と判断しているが、その具体的根拠が明らかでは無いので、破棄されるべきである。
控訴趣意書1の要約と補充の8頁で述べた「被告人の大麻の栽培は社会的に公認されていた」との点を補充する。(同頁の下から8行目の「父親や支援者の話しによれば被告人の生活していた地方はかった大麻の生産地であり」を「父親や支援者の話しによれば被告人の生活していた地方はかって大麻の生産地であり」と訂正する。)
1。被告人の居住している長野地方もかって大麻すなわち麻の生産地として栄えたところであるが、最近その麻栽培を地域起こしとして復活しようという動きが起こっている。
被告人の居住している池田町のとなりにある美麻村では、商工会が中心になって「道の駅 美麻フェステバル2004」というイベントが開催されたが、その案内(別添資料1)で次のように述べている。なお、別添資料2として、美麻村の麻の館というパンフレットを紹介する。
● 開催のねらい
弥生時代から栽培され、村の特産品で、村名ともなったr麻」をテーマにしたはじめてのお祭りです。北アルプスの白馬へ行く道沿いにあるr道の駅ぽかぽかランド美麻」の施設を貸し切って開催されます。昔から美しい麻がとれることで全国的に知られていた美麻村では、1980年代を最後に麻栽培の歴史は途絶えてしまっていますが、国の重要文化財である旧中村家住宅(屋根材に麻殻を利用)や麻の資料館である「麻の館」があります。今日の麻を巡る世界情勢及び日本での動きを美麻村から新しい時代の鼓動として発信し、長野県及び日本全国に広げていきたいと考えています。麻に御縁のある方々の来場を心よりお待ちしております。美麻村商工会
● 目的
・美麻村の「麻」文化の再発見
・一般にはほとんど知られていない「麻」商品情報の発信
・「麻」復活の機運を盛り上げる
2。弁護人は、本件8月16日の午後、被告人の自宅を訪問して被告人の父親および支援者と会合をした。その際、弁護人が被告人が大麻を栽培していた場所を調査したところ、大量の大麻が生育していた。その大麻は自然に自生してきたとのことであるが、公道からも丸見えの状況であった(参考資料として本年8月25日に弁護人の依頼によって被告人の友人の白坂氏が撮影した現場の状況写真を資料3として添付します)。地元の人は大麻の栽培が違法であるという認識はないとのことで、地元の警察や長野県当局から、その自生している大量の大麻を取り去るようにとの指導は全くないとのことである。なお、被告人の父親の話しでは被告人の祖父が、昭和10年頃自宅で大麻の栽培をしていたとのこである。
このような状況の下において、被告人が大麻の栽培は社会的に公認されていたと考えたのは無理からぬものであり、原審の量刑はあまりにも重いものである。
添付資料
1。「道の駅 美麻フェステバル2004」と題するチラシ
2。「麻の館」というパンフレット
3。被告人の自宅で野生化している大麻の状況を写した写真4枚
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桂川直文氏の控訴審第1回公判が下記の通り開かれます。
日時 2004年9月8日(水曜) 午後3時00分から
場所 大阪高等裁判所
都合のつく方はぜひ傍聴にお出かけ下さい。
被告人質問で、桂川さんが証言する予定です。
裁判の行方は予断を許しませんが、関心を寄せる多くの人たちに傍聴して頂けたらと思っています。
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平成16年(う)第835号 大麻取締法違反被告事件
被告人 桂川 直文
控訴趣意書2
2004年(平成16年)7月20日
大阪高等裁判所 第6刑事部 御中
上記被告人に対する頭書被告事件について、弁護人の控訴の趣意は、先にご提出した控訴趣意書1、同補充1ないし3のほか、下記のとおりである。
主任弁護人 金井塚 康弘
弁護人 丸井 英弘
記
第1 緒論
原判決の言い渡した「被告人を懲役5年及び罰金150万円に処する」等とした判決は、刑事訴訟法335条2項の犯罪の成立を妨げる理由である違憲性の主張をとりあげたものの、証拠に基づかず合憲との判断をしたものであり、犯罪事実についても一部事実誤認があり、また、被告人が本件各行為を行った行為の目的、態様、さらに、長野県薬務課の対応の不手際等の本件の個別的な諸般の事情、また、1審判決後の情状等も併せ鑑みれば、量刑が重きに失するので、破棄を免れないものである。
第2 大麻取締法の違憲性
1 原判決とその誤り
原判決は、弁護人が大麻の有害性は証明されていないこと、大麻取締法が合憲とされる立法事実は、法制定時と大きく異なってきていること等を指摘し、法令違憲、適用違憲を主張したことに対して、大麻の「有害性が否定できないことは公知の事実といえる」(判決書5頁)と証拠もなく有害性ありと断じることを糊塗するために「公知の事実」論を持ち出し、その「大麻の有害性に鑑みると」と憲法13条、25条違反の主張を排斥しているが(判決書6頁)、もとより誤りである。
公知の事実とは、「世間一般の人が疑いをもたない程度に知れ渡っている事実をいい、例えば、歴史上の事実、大きな社会的事件、周知されているルールなど」をいうとされ、被告人が某日施行のA市長選挙に立候補して当選した事実はA市付近では公知であるとされたり(最判S31.5.17、刑集10巻5号685頁)、都内の制限時速は毎時40キロメートルであることは道路標識により公知である」と認定されたりしている(最判S41.6.10、刑集20巻5号365頁)。これらの判例の判示と原判決の認定態度は全く相反している。
大麻の花穂、葉等の部分に向精神作用のある物質(テトラヒドラカンナビノールTHC)が含まれていることは公知であるとしても、その「有害性」、刑罰法令の合憲性を基礎付けるほどの「有害性」は、公知の事実とは到底言い得ない。むしろ「有益性」「有用性」が近時特に科学的、医学的根拠に基づき指摘され、欧州各国や米の一部州では法改正さえされているところである。
2 大麻と人類
(1) 大麻と人類の歴史
歴史的に見ても、大麻の「有害性」の公知性はない。むしろ、1937年アメリカで法規制されて以降、各国で法規制されるまでの長い人類の歴史において、大麻は広く使用されていたことが、むしろ公知の事実である。
大麻は、学術名をCannabis staivaといい、桑科の1年草である。原産国は、中央アジア、カスピ海周辺だといわれており、新石器時代の初期から栽培植物となり、その生命力故にか現在では赤道をはさんで緯度60度付近にまで広く分布している。ギリシャの歴史家ヘロドトスは、その著書「歴史」の中でエジプト人の衣服が亜麻(Flax)からできていること、ミイラに巻く布も亜麻であることを記述している。
カスピ海周辺では、紀元前5世紀ごろ、小アジアの遊牧民族スキタイのシャーマンが使用し、4000年前のペルシャで大麻(Hemp)が栽培されていた記録がある。中国では少なくとも2700年前から生産されていたという。インドでは医薬用の栽培もされており、ヒンドゥー教では大麻に積極的な価値付がされていて「意識を変える草」として宗教文化的意味合いを持たされて利用されてきた歴史がある。
(2) 日本国と大麻
日本国でも1万2000年くらい前の縄文時代の遺跡である福井県の島浜遺跡で大麻の種が発見されている。縄文土器の文様は麻縄によるものである。日本国と関係が深いのは芋麻(Ramie、カラムシ)と大麻である。実は食用に、茎から得られる繊維で織物や紐、漁網や釣り糸、弓の弦、各種紐や縄に広く使用されていたと考えられている。
正倉院には麻のセルロースで作られた紙に書かれた1000年以上前の仏典が保管されており、万葉集には、麻に関する歌は約30首あると言われている。身分の高いものの衣服は絹であったが、多くの民衆の衣服は麻で作られた。
日本国の土着宗教というべき神道でも大麻は穢れを祓う神聖な植物とされ、しめ縄等に使用されている。国技相撲の横綱のまわしも結婚の儀礼の際の結納等の飾りものも同様の理由から麻で作成される。
伊勢神宮のご神体は天照御大神の御神札であり神宮大麻と呼ばれ、現在でも例えば長野県神社庁が「お正月は神宮大麻と共に迎えましょう」等と呼びかけているように(弁15)、人々の晴れの場の習俗となってきている。仏教においても、特に密教において、座禅、祈祷等の際の護摩などに使用されてきたことは周知のとおりである。
このように、かつては日本国において大麻は広く自生し、また、栽培されていたのであり、長野県では現在でも大麻が自生している場所もある。長野県内の麻の生産量は、昭和35年ころまでは200トン程度あり、農家の経済を支えてきたが、以降激減したという(弁16、120頁)。
3 大麻の有用性
大麻の「有害性」が公知でないばかりか、最近では、大麻は地球を救う、とその産業的有用性、また、医薬的有用性、嗜好的ないし娯楽的有用性等が、わが国を含む各国で見直されてきている。
大麻は、将来においても、地球環境や人類に大きく貢献する可能性を有している。大麻油を軽油化した燃料は、軽油に比べて硫黄酸化物を出さない点で環境負荷が小さいとされており、その繊維は建築素材や土に分解可能なプラスチックとして活用され得る。農薬や化学肥料なしに3か月で生育し半年で2メートルにも生育する。その過程でCO2を吸収することも注目されている(弁7、8頁以下、弁10ほか)。
麻の実は、消化吸収されやすいタンパク質としてビタミン類、リノール酸や各種脂肪酸、植物繊維が豊富に含まれている。
酒や煙草と同様の娯楽としての嗜好品としての利用のほか、後に詳しく述べるが医薬品としても癌、エイズ、多発性硬化症、関節炎、緑内障、食欲不振、うつ病等の治療についても有用性が肯定され、2001年(平成13年)カナダを皮切りに、昨年はオランダでも医薬品としての利用が開始されるようになった(弁10、特に10頁以下、弁25、弁29、弁30ほか)。
4 大麻の危険性・有害性について
大麻に仮に危険性や有害性があるとしても、それは、合法的に使用されている煙草やアルコールに有害性があるのと同じことであり、あるいは、酒や煙草の有害性よりも少ない有害性に対比して、より大きな有用性が大麻にあるとすれば、両側面を冷静に、また、合理的に比較考量しながら使用の是非、あるいは、処罰の是非や軽重を決するのが理にかなう態度である。
そこで、大麻の有害性と有益性、有用性の立法事実を十分に検討し、比較考量して、処罰の是非、軽重を決する必要がある。まず、大麻の危険性、有害性について、有無、程度を証拠に基づき検討する。
(1) 大麻の依存性の有無、程度
大麻の依存性については、「文字通り世界の医師のバイブルとして無数の人々の治療に役立ってきた」医学書の権威である「メルクマニュアル」(第17版日本語版)によれば,「大麻の慢性ないし定期的使用は精神的依存を引き起こすが,身体的依存を引き起こさない。」「多幸感を惹起して不安を低下させるあらゆる薬物は(精神的)依存を惹起することがあり,大麻もその例外ではない。しかし,大量使用されたり,やめられないという訴えが起きることはまれである。」「大麻は社会的,精神的機能不全の形跡なしで,時に使用できることがある。多くの使用者に依存という言葉はおそらく当てはまらないであろう。」「多量使用者は薬をやめたときに睡眠が中断されたり神経質になると報告されている。」が「この薬をやめても離脱症候群はまったく発生しない」(弁27、「メルクマニュアル」第17版日本語版第15節精神疾患195章薬物使用と依存「大麻(マリファナ)類への依存」)
したがって,大麻には依存性も耐性もほとんどなく,特に身体的依存は皆無であるといえる。
(2) 大麻の毒性の有無
大麻草成分である「テトラヒドロカンビナール(以下「THC」という。)はきわめて安全な薬剤である」(弁29、「マリファナの科学」197頁)。「大麻の不正使用は広く行われているが,大麻の過量摂取で死亡した例はほんのわずかしかない。英国では,政府統計で1993年~95年までの間に大麻による死亡例が5件挙げられているが,くわしく事情を調べるといずれも嘔吐物が喉に詰まったことが原因で,大麻に直接起因するものではない(英上院報告,1998)。ほかの一般的な娯楽用薬物と比較すると,この統計は際立ってくる。英国では毎年,アルコールに起因した死亡者が10万名以上,タバコに起因した死亡者が少なくともこれと同数だけ発生している」(同書197頁)。「どんな基準に照らし合わせても,THCは急性効果,長期的効果できわめて安全な薬剤だと考えなくてはならない」(同書200頁)。
マリファナの身体的効果については,マリファナ研究について最も権威のある報告書とされるマリファナ及び薬物乱用に関する全米委員会の1972年報告(以下「全米委員会1972年報告」という。)で「身体機能の障害についての決定的証拠はなく,極めて多量のマリファナであってもそれだけで人体に対する致死量があるとは立証されていない。また,マリファナが人体に遺伝的欠陥を生み出すことを示す信頼できる証拠は存在しない。」「結論として通常の摂取量ではマリファナの毒性はほとんど無視してよいといっている」とされている(弁31、「法学セミナー」1980年7月号31頁)。
「大麻の使用は薬物問題ではあるが,その毒物学的意味は不明である」としかいいようがない(弁27、「メルクマニュアル」)。
したがって,大麻には毒性もなく、少なくとも毒性までは医学的、化学的に証明されてはいない。
(3) 大麻の有害性その有無、程度
検察官は大麻の有害性を強調する。「マリファナを批判する人々は有害作用に関する数多くの科学的データを引き合いに出すが,重篤な生物学的影響があるとする主張の大部分は,比較的大量の使用者,免疫学的,生殖機能についての積極的な研究においても,ほとんど立証されていない」のである(弁27「メルクマニュアル」)。
マリファナの吸引について「習慣的使用者のかなりの割合で慢性の気管支炎を引き起こし,長期的に見た場合に気道のがんとのつながりが指摘される恐れがあるため,安全上長期的使用を勧めることができない。」とされるが,これはあくまでもタバコの吸引と同様自らの健康の問題であり,他者に対する有害性はない。しかも,米国医学研究所はその報告「マリファナと医薬」(1999)のなかで,安全性の問題について「マリファナはまったく害のない物質というわけではない。さまざまな効果をともなった強力な薬物である。だが,吸引にともなう弊害を除き,そのほかの用途ではマリファナによる副作用は許容範囲内にあるといえる。」(弁29、「マリファナの科学」231頁ないし232頁)とされている。
したがって,マリファナの有害性は証明がなく、その煙の吸引に関して、あるとしてもタバコと同程度か、それ以下の有害性しかないことが医学的、化学的にははっきりしている。
(4) 大麻使用による他者に対する危険性の有無と程度
刑事規制にとって大切なことは、他者への危害のおそれ、それを誘発するという危険性の証拠が明らかか否か、ということが指摘できる。
前記の全米委員会1972年報告によれば「マリファナが暴力的ないし攻撃的行動の原因になることを示す証拠もない」。さらに1973年報告によればマリファナ使用と犯罪との関係について,「マリファナの使用は,暴力的であれ,非暴力的であれ,犯罪の源ともならないし,犯罪と関係することもない。」と結論している(弁31、「法学セミナー」1980年7月号31頁)。「マリファナの科学」(弁29)でも、「アルコールは大麻と違って攻撃的な行動を促す傾向がある。アルコールは家庭内暴力(DV)の大きな要因である。」等と警告されている(同書、229頁)。
したがって,マリファナは他者の法益を侵害する危険性もないか、煙草や特にアルコールより、その危険性は少ない。このことは、刑事罰をもって違反行為に対処しなければならないものか、刑事規制を肯定する根拠がないということを示している。
5 大麻の有用性:特に医療利用
(1) 原判決とその誤り
次に大麻の有用性、特に医療利用の有用性について検討する。
この点、原判決は、「大麻を用いた治療が国際的な医学界で標準的な治療方法と承認されているとも認められない。」として弁護人の違憲論の「前提を欠いている」等とするが(判決書6頁)、誤りである。
大麻の医薬的有用性を認め刑事規制の違憲性を論じることと「国際的な医学界で標準的な治療方法と承認されている」かどうかは、無関係である。もちろん、国際的医学界で標準的な治療方法と承認されていれば、日本国での規制、特に刑事罰を伴うような規制が無意味である、違憲であると優に言い得るが、そこまでの治療法と確立されていないものであれ、例えば、ハーブ療法や癌の代替治療とされているものは、合法的に行われ得るし、現に行われている。
逆に、日本の薬事法の規制があることから、世界的に効用が承認されている抗癌剤でさえも日本では(まだ)使用できない、使用すれば薬事法違反の問題が生じる(当然刑事罰も付されている)という問題点も近時指摘されている。国際的な治療法の確立と法規制の合憲性は、直接に結びつくものではないことに注意が必要である。
(2) 大麻の医薬的有用性
証拠として提出した文献によれば、「20世紀のほとんどの期間,西洋医学は大麻利用にわずかな関心しか示さず,大麻の使用が米国で1937年,法的に禁じられたのを皮切りに,1970年代には英国をはじめほとんどのヨーロッパ諸国がこれに追随する動きを見せた」が,「英国医師会(BMA)は、1997年,治療現場での大麻利用についてまとめた影響力のある報告のなかで『多くの通常法を順守する市民―おそらく先進国の何千という人たち―が,治療のために大麻を非合法的に使っている。』…と記している」のであり、「こうした非合法の自己治療にもっとも深いかかわりをもつのが,他の鎮痛薬では治すことのできない慢性の痛みに苦しむ人たちである。具体的には,痛みをともなう筋痙攣を頻繁に起こす脊髄損傷やそのほかの痙攣症状をもつ患者や,エイズ患者,多発性硬化症(MS)をわずらう患者などである」(弁29、「マリファナの科学」146頁)。
つまり、「大麻を使って自己治療している患者が指摘するような医療効果の一部を,そのような領域の人たちが享受できる現実的な可能性がある。自己治療の患者は通常,既存の薬が効かなかった人たちであり,症状を治すためのオルターナティヴ・メディスン(代替医療)に切り替えようとしている。大麻は多くの人たちにとって,何世紀もの間,民話や民間医療に根づいてきた自然療法・薬草療法として,付加的な魅力を備えている」からでもある(同書153頁)。
大麻に対して規制緩和傾向のヨーロッパ、カナダ(弁10、弁23、弁25、弁26、弁29。弁30ほか)に対して、アメリカ合衆国では強い規制が続けられているが、医療用としての使用は、アメリカ各州でも1970年代から広く試みられている(弁30、「医療マリファナの奇蹟」)。医療用としても有用性を認めようとしない厚生省(当時)の態度は全く科学的ではなく、有用性、有効性についての研究等もせずに非合理な刑罰をもってしての規制を続けていることは批判されるべきである(同書207頁等)。
21世紀に入り、世界の趨勢は、ソフト・ドラッグとしての大麻の規制緩和、非刑罰化に急速に大きく動き出している(弁10、弁21、弁25ほか)。
(3) 控訴審での立証予定
およそ薬に完全に有用なものも完全に有害なものもあり得ない。憲法13条の保障すなわち、自立的個人の幸福追求権を最大限保障すべきことを踏まえつつ、大麻の有用性、有害性の冷静で合理的な比較考量、刑事規制を根拠付けることができるのかを検討することこそが、今こそ必要である。
日本国における大麻の有用性、特に医療用大麻の有用性について、その立法事実に踏み込んで、控訴審においては、さらに書証、人証をもって、立証する予定である。
6 大麻取締法の違憲性
(1) 原判決とその問題点
原判決は、先に批判した証拠にも基づかない有害性認定とそれを根拠にした合憲論と「懲役刑の下限の低さ等に照らし」て罪刑の均衡に反するものではないとする合憲論を併せて展開するが(判決書6頁)、誤りである。
(2) 大麻取締法の規定とその問題点
まず、下限論で言えば、選択刑としての罰金刑がないことは、欧州の立法例等と比較して、つとに指摘されているところである。
大麻取締法は,大麻の栽培,輸出入について懲役7年以下,所持,譲渡について懲役5年以下という重罰が規定され,選択刑としての罰金刑が予定されていない(罰金は併科される)。
そもそも、この大麻取締法の保護法益は判然としない。毒物及び劇物取締法1条や麻薬取締法1条のような目的規定がないため法文上明確ではないからであるが,通常国民の保健衛生であると考えられる。しかし,国民の保健衛生といった抽象的な概念が保護法益とされていること自体問題である(弁7、3頁以下、弁10)。
また,アルコールやタバコが大麻の吸煙以上に保健衛生上害があることは前述のとおり医学的にも明らかであり、なぜ大麻がより強く規制されなければならないかという点も全く不明確であり、不合理極まりない(弁10)。大麻取締法は、1948年(昭和23年)制定されたが、GHQの要請で一方的に制定されたと考えられるのみで、その法律を支える立法事実はまったく不明確である。
立法当時はもとより、また、現在においても、強い刑罰を伴う規制を必要とする立法事実は希薄である。少なくとも十分に科学的な根拠のある議論、また、国民的な議論を経ているとは、とても言い難い状況である(同法受理人員数は、検察統計年報によれば、統計資料のある1951年(昭和26年)以降、1962年(昭和37年)まで、1952年(昭和27年)を除き年間わずか50件以下であり、その後100件台になり、1964年(昭和39年)から1969年(昭和44年)までは400件まで、1970年(昭和45年)以降、800件から70年代に1000件に達するも、1500件前後を推移し現在に至っている(弁10、4頁ほか))。裁判所による現時点での立法事実の検討が急務である。
(3) 大麻取締法の違憲性(法令違憲)
基本的人権は「公共の福祉に反しない限り」最大限尊重されなければならない。とりわけ自立的個人の幸福追求権は各種人権の源ともいうべき包括的権利であり、刑事罰、特に懲役刑は人の身体,行動の自由に対する重大な制約であり、人権保障の観点からして必要最小限のものでなければならないことは当然である。
したがって,大麻取締法による刑罰規制が憲法13条や31条(適正手続の保障)に適合するためには,その保護法益が具体的で明確でありその立法目的、規制目的に比例適合したもの,すなわち法定刑も適正なものでなければならない。
ところが,大麻取締法の保護法益はきわめて抽象的であり,しかも大麻は他人にも自らの健康にもアルコールやタバコ以上には害を与える危険すらないのである。
また,大麻が医療利用され,大麻を使って自己治療している患者が医療効果を享受しているにもかかわらず,大麻取締法をもってこれを禁ずることは患者の自分の望むより良い医療を受ける幸福追求権や生存権をも侵害するものである。
よって,大麻取締法の罰則規定は,幸福追求権(憲法13条)ならびに生存権(憲法25条)を侵害し,その制約は必要最小限のものではなく,さらにその法定刑は一律に過度に重いことから,憲法13条、同25条及び同31条に反し違憲である。
(4) 大麻取締法の違憲性(適用違憲ないし運用違憲)
また,本件の場合,栽培及び所持は主に医療利用目的,一部自己使用であるところ,少なくともかかる医療目的及び他者に迷惑をかけない自己使用の栽培及び所持に懲役刑が主体の大麻取締法の罰則を適用することは,その限りで憲法13条,25条,31条に違反すると思料する。
(5) 最高裁判例の問題点
大麻取締法の合憲性は、最高裁判所が認めているとされているが(最決昭和60年9月10日、同9月27日等)、20年も前の知見等に基づく判断であり、その後、少量の大麻製品の非常習的な自己使用目的の行為は訴追を免除すべきであると結論付け、大麻法自体と基本法違反と断じた少数意見も付されているドイツ連邦憲法裁判所の1994年3月9日決定(弁6)等の海外の動向も参考にされるべきであり、また、21世紀に入って加速している大麻についての欧米の最近の非刑罰化、非犯罪化、医療用合法化等の顕著な合法化傾向(弁10、弁21、弁25、弁26ほか)からも、規制緩和が要請されているわが国の昨今の社会情勢(特に薬事法の数次の規制緩和のための改正)からも、見直しが求められている。
上記の最高裁判例の再検討は、犯罪学者等からも指摘されているところである(弁11、吉岡一男 京都大学教授、法学教室67号110頁、弁6、44頁以下、工藤達朗 中央大学教授ほか)。
(6) 控訴審での立証予定
弁護人としては、控訴審においては、専門家証人による鑑定等での違憲性の立証を予定している。
裁判所におかれては、大麻取締法の違憲性については、現時点での立法事実にも是非ご判断頂きたく、科学的、合理的根拠に基づき、国際的評価に耐え、世人の納得できる判示をして頂きたいと考える。
第3 情状
1 緒論
第2に述べたとおり、大麻取締法の刑罰規定が違憲(法令違憲あるいは適用違憲)・無効とすると同法違反事件について、被告人は無罪である。
仮にしからずとしても、被告人には、本件各犯罪事実に関して、次に述べる諸般の情状が存する。原判決の言い渡した「被告人を懲役5年及び罰金150万円に処する」等とした量刑は、重きに失し破棄を免れない。
2 家族、経歴等について
(省略)
3 2003年(平成15年)10月22日付 ●●●に対する譲渡罪について
(省略)
4 2003年(平成15年)10月22日付訴因変更にかかる大麻所持罪、覚せい剤ほか所持罪、大麻栽培罪について
これら罪についても事実はそのとおりであるが、大麻以外の薬物等は他人が手みやげ等に置いていったものをそのままに放置し存在すら忘れていたものである点、各分量も微量であり多量とはいえない点が考慮されるべきである。また、古いもの、マジックマッシュルームなどは、法規制される以前に譲り受けたものであること等が考慮されていない。
大麻の栽培については、前科に処せられて以降は、合法的な栽培と大麻の有効性等の研究、作物としての品種改良等を指向し、そのためにわざわざ栽培者許可まで受けて栽培していたものであること、少なくとも1998年(平成10年)9月17日より2000年(平成12年)12月31日までは栽培者免許を有した合法的栽培であった点(弁1、弁2)が十分に考慮されていない。
2001年(平成13年)以降においても、正々堂々と神経性疾患等の治療のために「個人的に使用すること」を栽培目的に明記して許可を申請しており(弁3)、免許不交付となったがあくまでも異議申立をして合法的に争っており(弁4)、それを放置した長野県知事にも相応の責任があること、被告人が自分は栽培や使用が欧州並に認容、黙認等されたと勘違いしたこと等の酌むべき事情も斟酌されていない。
被告人は、前刑の執行猶予の満了した1998年(平成10年)9月、長野県知事から「採取した繊維から名刺用の紙を制作し販売すること」等を条件に大麻栽培者としての大麻取扱者免許を取得し、以降、毎年更新して、少なくとも2000年(平成12年)12月31日まで、2年3か月余り、大麻取扱者免許を有していた(弁1、弁2)。
さらに被告人は、2年余の実績等を踏まえて、2001年(平成13年)3月27日、長野県知事に対して、「大麻草の茎、実以外の葉、花穂を神経性疾患の治療薬・予防薬として経口及び喫煙摂取して個人的に使用する。」との栽培目的で大麻取扱者免許の申請を行った。事実上黙認等されていた実体を申請内容に合致させようとしたもので、被告人は県薬務課担当者らにも、自己使用を従来から公言していた。
ところが、同年6月26日に至り、長野県知事は、被告人の申請を認められない旨の免許交付却下の処分を行った(弁3)。しかし、同年8月21日、被告人は、却下処分に対する行政不服審査法4条に基づく異議申立を行った(弁4)。その理由は、大麻草の繊維、種子を採取しようとすれば、当然、葉や花穂も付帯して収穫できるのであり、法律上は、葉や花穂は処分物の扱いとされるも、使用自体には罰則はもともと規定されていない(大麻取締法に使用罪はない)。大麻使用が、人間生活に有益なものであることは先進諸国では国民周知の明白な事実であり、それを実地に体験し、正確に認識している者が、自身の健康のために自らが栽培した麻の葉、花穂を使用することを率直に栽培目的に明記することは、自然かつ合理的であり、大麻取締法第2条2項に該当する等とするものである。長野県知事に対しては、納税者から薬務行政を付託された者として行政が大麻問題の正確な認識、大麻解禁、合法化に向けた将来的展望を示すべきであると意見し、処分の撤回を求めたのである(以上 弁4の[理由])。
長野県知事は、この異議申立に対して、何らの応答もせず、被告人が公道近くで遮蔽物もないので大麻を栽培していることが容易に見渡せるところで前年と同様に大麻栽培を継続していることを知悉しながら、焼却を指示したりしたことがなかったことは勿論、何らの対応策も対処策も執らなかった(被告人質問、弁13ほか)。
これらのことから、被告人は、自身の栽培がヨーロッパと同様に当局からも黙認状態になったとの誤解をしてしまい、大麻の栽培、使用を事実上継続してしまったもので、ことさらな犯意ないし他意はなかった(被告人質問)。
控訴審においては、長野県薬務課が放置していた問題点もさらに立証する予定である。
5 2003年(平成15年)12月4日付 中島裕之こと中島らも に対する譲渡罪について
この罪についても事実はそのとおりであり、被告人としては前田耕一氏が作家で文化人である中島氏を紹介してくれるというので大麻論をはじめ色々な文化論を懇談したさにわざわざ長野から大阪まで会いに行ったものである。対価も被告人の方から要求したものではなく、グラムあたりで商売として売買したものではなく、被告人としてはあくまでも近づきの印としての手みやげであった。商売としての営利性がなかった点を十分に考慮頂いていない。
また、中島氏側からしても、眼病や抑うつ症等の治療という医療目的の譲り受けで、いわばやむにやまれぬ側面があった(中島証言)。
被告人は、大麻草を癌や多発性硬化症、緑内障、不眠症等の治療のためにと患者等から所望されれば分けたことがあり、治療ないし症状の緩和を感謝されたことは数限りがない。カンパを払える人からもらったことはあるが、被告人から要求したものではなく、商売として行っていたものではない。分け与えた先を公表等できないのも上記のとおり病人を告発することになる事情による。決して暴力団等に流出させているわけではない(被告人質問)。
控訴審においては、この中島氏の使用例のように、医薬治療目的の利用等について、さらに人証等で立証する予定である。
第4 結語
以上に述べたとおり,大麻取締法は違憲であり,その点で被告人は無罪であるが,仮に違憲でないとする場合にも,先に述べた医薬利用目的や長野県の対応の不手際等の諸般の情状に照らし、刑期をできる限り短期間とした上で、保護観察付の執行猶予判決とし、故郷安曇野の地で、友人知人ら隣人の支えのもとに更生と社会復帰の道を歩ませるのが相当な事案である。
原判決は重きに失し、破棄しなければ著しく正義に反する、と考える次第である。
以上
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平成16年(あ)第956号
決 定
本籍 ■■県■■市■■■■村723番地
住居 長野県■■■郡■■村■■■■番地
被告人 白坂和彦
昭和37年5月4日生
上記の者に対する大麻取締法違反被告事件について、平成16年4月6日大阪高等裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から上告の申立てがあったので、当裁判所は、次のとおり決定する。
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人織間三郎及び被告人本人の各上告趣意は、いずれも違憲をいうが、大麻が人の心身に有害であるとした原判決は相当であるから、所論は前提を欠き、刑訴法405条の上告理由に当たらない。
よって、同法414条、386条1項3号、181条1項ただし書により、裁判官全員一致の意見で、主文の通り決定する。
平成16年7月15日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 上 田 豊 三
裁判官 金 谷 利 廣
裁判官 濱 田 邦 夫
裁判官 藤 田 宙 靖
これは謄本である。平成16年7月15日
最高裁判所第三小法廷
裁判所書記官 杉 浦 幸 太 郎
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大麻取締法は憲法違反だと主張した裁判の記録です。
■桂川さん裁判
■白坂裁判
・嗜好目的大麻免許申請記
■Nさん裁判
■MHさん裁判
■Ⅰさん裁判
■ナタラジャ裁判
■KYさん裁判
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平成16年(う)第835号大麻取締法違反等被告事件
被告人 桂川 直文
控訴趣意書1の補充3
控訴趣意書1の憲法違反の主張を以下のとおり追加・補充する。
平成16年7月14日
弁護人 丸井 英弘
大阪高等裁判所第6刑事部 御中
記
大麻取締法第4条4号・第25条の違憲性について
大麻取締法第4条4号は、大麻に関する広告を禁じているが、右規定は大麻に関して公に意見を発表することを刑事罰(同法第25条で1年以下の懲役または20万円以下の罰金に処せられる。)でもって一律に禁止するものであり、憲法第13条・第19条・第21条に明白に違反するものである。
このような明白な違憲規定を有する大麻取締法は、法律それ自体の保護法益が不明確なこととあいまって、大麻取締法全体が違憲と評価されるべきである。
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元祖フリークス(?)のポン(山田塊也)さんから手紙をもらった。下記の詩が添えられていた。
獄中の麻爆弾犯人 桂川氏に捧ぐ
<麻の仕組み >(*1)
辛酸 佳境に入る ラスト・ステージ
追いつめられ 閉ざされていく 心の世界
右翼民族主義に 外堀を埋められ
左翼合理主義に 内堀を埋められ
国家権力に包囲された 本丸で
やがて 待ちに待った 運命の日に
われら規格外れのフリークスが
全員 腹を決めて 身を淨め
祭り衣装で身を包み 晴れやかな笑顔を揃えて
「ラヴ&ピース」と 非暴力の勝利を祈り
世界同時革命の"麻爆弾"を 一発決めて
「オーム ボン シャンカール!」
********
おお 三千世界一度に開く 麻の花!
まことの世界が 黄泉がえるぞよ!
さあ 世直しじゃ 建て替えじゃ!
アナナイ様のお出ましじゃ!(*2)
********
(*1) 戦前大弾圧を受けた大本教出口王仁三郎の「霊界物語」より
(*2) アナナイ(麻柱)=高い所へ登る足がかり、足場。(広辞苑)
柱は神を指す。「霊界物語」に麻柱教あり。
縄文12004年 夏至
桂川救援全国勝手連 代表 山田 塊也
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平成16年(あ)第956号大麻取締法違反事件
被告人 白坂和彦
上 告 趣 意 書
平成16年6月 日
最高裁判所第三小法廷御中
弁護人弁護士 織 間 三 郎
頭書被告事件の上告趣意は次の通りである。
記
1 本事件について第一審判決は「大麻取締法第24条1項、第24条の2第1項を適用し、被告人を懲役3年、執行猶予5年の有罪とし第二審判決も第一審判決を支持し控訴棄却の判決を下している。
2 しかしながら、第一、二審の弁護人はいずれも大麻取締法が違憲の法律であることを主張し、被告人の無罪を主張している。
3 本弁護人も以下の通り大麻取締法は違憲で有る事を主張するものである。
1 そもそも大麻取締法は昭和23年に制定され、昭和38年(1963年)に現在のように重罰を科するように改正されたものである。それは大麻が非常に毒性が強く、社会に流される害悪も強いと云った認識、主張からなされて来たものである。
2 しかし、大麻についてその後研究がなされ大麻についてはそれ程の毒性も害悪も無い事が明らかになって来ているものである。
即ち第一審弁護人提出の報告書(1)のメルクマニアル第17版日本語版(1999年12月発行)、報告書(2)の第二東京弁護士会司法制度調査会の調査報告書、報告書(3)の丸井弁護士の法学セミナー掲載の大麻に関する論文、報告書(4)のマリファナの科学(2003年5月発行)等により大麻の毒性、害悪はアルコールやタバコの毒性や害悪より少ないことが研究され立証されて来ているのである。
そして、多くの国で取り締まりを緩和して来ている経過がある。
3 しかるに我が国に於いては昭和38年(1963年)改正の儘の法律をもって未だに強く、厳罰をもって規制している。
しかしこれは国が必要な研究を怠り、その毒性、害悪の少ない事を無視し昔の儘の法律を放置している結果である。害悪と比較し衡平を保った立法をすべき努力を怠っている事に由来している刑罰である。
4 大麻取締法は前記報告書に明らかな如くタバコやアルコールより毒性、害悪の少ない事が明らかな大麻をタバコやアルコールより強く規制処罰の対象としているのであるが、これは憲法14条、13条、31条に違反しているものである。
1 即ち、憲法14条「法の下の平等」は立法においても刑罰の衡平、平等を考えるべきで、刑罰は社会に対する害悪の軽重より衡平、平等であるべきであると考える。タバコ、アルコールより毒性や害悪の少ない大麻をタバコ、アルコールの規制より重く規制されている事は衡平、平等を欠く法律であり憲法14条に違反するものである。
2 憲法13条「個人の尊重、幸福追求の権利」の規定にも違反するものである。
タバコやアルコールより害悪や毒性の少ない大麻についてタバコやアルコールより重く規制し且つ処罰する事は何等の理由の無い事である。理由の無い規制自体個人の行動を理由も無く規制し、幸福追求の行動を制約し憲法13条に違反するものと云える。
3 以上の規制は理由の無い規制と云うべきものである。理由のある法律で処罰すると云う憲法31条「法定の手続の保障」の精神にも違反するものである。
5 裁判所は法律があるからそれに従って処罰規制すると云うかも知れないが、その取締り、罰則の根拠となる毒性、害悪について新しい研究がなされ、その取締まりについて多くの疑問が呈せられているのに国として調査、研究もなさず新しい根拠資料も示さず(それは国民を納得させていない事になる)処罰の正当性について古い判例を挙げ取締り、処罰をする事は国家機関の怠慢と云う他はない。その怠慢により規制処罰する事は国民に苦痛を与える事であり、それは法を執行する国の機関として憲法尊重遵守の義務にも反しているものである。
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