イギリスのカナビス分類変更

科学者たちが反対に発起

Source: The Guardian
Pub date: 25 Nov 2008
Scientists attack plan to upgrade cannabis
Author: Ian Sample, science correspondent
http://www.guardian.co.uk/science/2008/nov/25/
drugs-alcohol-medical-research-society


イギリス政府は、自分自身のドラッグ諮問委員会が出した勧告の受け入れを拒否して、カナビスの法的区分をもっと危険なドラッグ区分に変更しようと計画しているが、指導的な立場にある一流の科学者や議員たちが、その計画の無謀さを非難する書簡を作成して マスコミを通じて発表 した。

ブラウン内閣のジャッキー・スミス内務大臣は、カナビスの法的区分を現在のC分類から、アンフェタミンやバルビツール系睡眠薬と同じB分類にアップグレードする意向を示しているが、大臣のこの決定は、政府のドラッグ乱用問題諮問委員会(ACMD)の分類をアップグレードすべきではないという繰り返し出されていた勧告を無視するかたちで行われた。

イギリスでは、ドラッグ分類の変更は、法律の改正によるものではなく、科学者や医学関係者からなる諮問委員会(ACMD)の答申を経て、分類を変更するかどうかは内務大臣一人の意志決定によって行われる。変更したい場合は最終的には議会の承認を経てから発効することになっているが、普通は多数を握る内閣の意向が通る。承認のための議会は2009年の始めに行われる見通しになっている。

「極めてダメージの大きい」 としてこの決定を覆そうとする今回の書簡は、結集した科学者や政治家の投票を経て作成されたもので、署名者には、サー・デビッド・キングACMD前委員長、元政府の科学アドバイザーであるロバート・メイ卿、コリン・ブラックモア前医学研究協議会委員長、イギリス医学アマデミー脳科学・中毒・ドラッグに関するワークグループのサー・ガブリエル・ホーン委員長なども加わっている。

書簡では、カナビスの分類を変更すれば、2004年のダウングレードから下降を続けているカナビスの使用傾向が逆転する恐れあるだけではなく、現在のB分類のドラッグがカナビスと同様にそれほど危険ではないという健康メッセージを社会に送ることにもなると警告している。また、議員たちに対しては、分類変更を阻止するために、決定を2010年まで延期する修正案に投票するように強く求めている。

「政府が今回、議会にこの変更を求めるに当たっては、政府自身が指名した専門家の圧倒的多数の賛成によって出された変更すべきではないという勧告の受け入れを拒否した。このような暴挙は、30年前にACMD発足してから初めてのことになる」 と書いている。

この書簡について自由民主党のエバンス・ハリス科学担当広報官は、専門家による科学的アドバイスを無視する政府に対する科学コミュニティ側の怒りを表していると語っている。「証拠を無視したり科学者たちを黙らせておくことなどできないことを政府に理解させるために、専門家たちは役職を辞することも考えられます。」

ドラッグ乱用問題諮問委員会(ACMD)は、2002年以来3回にわたってカナビスの分類について見直すように諮問されてきた。昨年の7月に提出された3回目の諮問では、効力の強い「スカンク」が広く出回るようになって危険が増したという懸念が理由とされた。

しかしACMDの報告書では、室内栽培された強い品種が市場に多く見られるようになったことは確かだが、カナビスと統合失調症などの精神病との関連を示すエビデンスはごく弱いと指摘している。

また報告書では、カナビスの分類を変更しても使用が減ることはありそうもないが、その一方では、脆弱な人たちが犯罪者の烙印を押されてしまうリスクが増えると警告している。実行すべき政策としては、カナビスの栽培場に対する捜査の強化、カナビス関連用具を販売しているショップの取締まり、公衆衛生キャンペーンの刷新などをあげている。

政府の計画を承認しないように上院に働きかける土壇場の試みも行われている。バロネス・ミーチャー上院議員は、分類変更の決定を2年間先延ばしにすることで、新たにACMDに見直す機会を与える修正案を提出している。

5月には、スミス内務大臣は下院議会で、カナビス分類の最終決定を行うのに当たっては、社会一般の意見や政策に対する反対なども考慮に入れると表明している。