イギリス政府諮問委員会(ACMD)答申

カナビスはC分類に据え置くべき

Source: Evening Standard (London, UK)
Pub date: April 03, 2008
Subj: Cannabis set to remain Class C drug
after government's advisory council delivers slap in the face to Brown
http://drugpolicycentral.com/bot/article/thisislondon16573.htm


イギリス政府のドラッグ乱用問題諮問委員会(ACMD)は会合を開いて、カナビスの分類をC分類に据え置き、再分類しないように答申することを決定した。この結果はゴードン・ブラウン首相の期待を裏切るもので、政府のドラッグ政策は混迷を深めることになる。

2日前の行われた定例記者会見では、ブラウン首相は、カナビスが 「違法であるばかりではなく容認もできない」 というメッセージをティーンたちに明確に伝えたいと語っていた。

昨日開かれた諮問委員会の会合では、1970年代から90年代のカナビス使用の増加と統合失調症の関連を調べたキール大学の最新研究で、カナビスと統合失調症発症の間に関連があるとする理論を支持する証拠は何も見出されていないという報告が発表された。

23人の委員のうち20人が再分類に反対し、委員長のミシェル・ローリンズ卿はそれを受けて、カナビスをC分類から動かすのには十分な科学的根拠がないとする意見をまとめた。

だが、ブラウン政権には、自身の諮問委員会の勧告を受け入れるというオプションの他にも、自らの主張を押し通して2004年以前と同じB分類に戻すという選択肢が残されている。

カナビスをB分類に戻すべきかどうかを諮問したジャッキー・スミス内務大臣は、カナビスの使用が危険だと強く思っているとしながらも、「まだ報告書を見ていないので、その内容がどのようなものなのか知りません」 と語っている。

「諮問委員会に分類を戻すべきかどうかを問いかけたことは正しかったと考えていますが、コメントを出す前に報告書の詳細を見るのが正しいとも思っています。いずれにしても、カナビスの使用が違法とされるほど危険なことで、現に違法であることには何ら変わりません。」

ドラッグ問題に関してイギリスでは最も権威あるとされるACMDは過去30年間にわたって数々の答申を行ってきたが、今まで勧告を無視されたことはなく、もし今回、政府が答申に従わなければ初めてのことになる。

カナビスの分類をめぐっては、2001年のデビッド・ブランケット内務大臣がB分類からC分類へダウングレードすべきかどうかを諮問し、2002年3月に出された答申に従って2004年1月からC分類にダウングレードされた。

しかし1年後の2005年3月に、後任のチャールス・クラーク内務大臣が、カナビスと精神病の関連を示す新しい研究が出てきたとして、B分類に戻すべきかどうかを再諮問した。

2006年1月の答申では、害は認めつつも、「疫学的なリスクは小さく、CからBに引き戻す根拠にはならない」 という結論が出された。この時も、クラーク大臣は諮問委員会の勧告を無視する意向をみせたが、結局は勧告に従って分類を据え置くことを決定している。

ブラウン首相が再びカナビスの分類を見直したいと表明したのは、昨年の6月の首相就任直後のことで、新政権の主要政策の一つと位置づけられていた。

火曜日に行われた記者会見では、「スカンク」と呼ばれる新しい種類のカナビスの効力が以前のものよりはるかに強力で、危険が増していると強調しながらも、「諮問委員会の勧告は政府全体としてしっかりと受け止めて、どのような意味を持っているのか検討する」 とも述べている。

諮問委員会の正式な報告書は今月下旬に提出され、政府の最終決定は5月の初旬にも出されるものと見込まれている。

今回のACMDの報告書:
ACMD: Cannabis: Classification and Public Health (2008)

イギリスでは、ここ数ヶ月すさまじい 「リーファー・マッドネス」 キャンペーンが繰り広げられ、THCを注射しておかしくなったというような無茶苦茶な ドキュメンタリー も放映されるほどにエスカレートしている。

しかし、諮問委員会が一般の意見を聞くために行った 公聴会 では、強力なスカンクが蔓延しているという主張を裏づける証拠や、精神科への入所が増えているといったデータは何ら示されず、今回の決定は別に意外なわけでも驚くべきものでもない。

むしろ、カナビスと統合失調症の関連を否定するキール大学の最新研究が紹介されたことが驚きだった。

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