福田改造内閣が発足した。福田首相ご自身は「安心実現内閣」と「自前の内閣」を評した。政権発足当初は安部氏の「居抜き内閣」で、自ら「背水の陣内閣」と言っていた。
今回の改造では、反福田に走りそうな麻生氏や、派閥領袖クラスを引き続き取り込み、国民の安心ではなく、福田首相自身にとっての「安心実現内閣」のように見える。
小泉一派をきれいに排除した布陣は、敢えてそのような組閣によって、却って自公政権後の政界再編に備えたのではないかという疑いを抱かせる。福田首相は改造前に小泉氏と会談したそうだが、今回の改造内閣には小泉一派を巻き込まないよう手打ちが済んでいた可能性はないだろうか。
植草一秀氏が「偽装CHANGE」勢力の動向を警戒するよう呼びかけている。偽装CHANGE勢力の提灯持ちのようなマスコミの報道にも警戒が必要だと思う。未だに小泉元首相の人気が高いそうだが、それもポピュリズムを基盤としたマスコミの印象操作によるところが大きいのではないか。植草氏もかねてから本質的な小泉批判を展開されていたが(だから冤罪で嵌められたのだろうと思うが)、森田実氏も小泉批判をテレビでコメントし、マスコミに干されたそうだ。
参照:「テレビ出演拒絶」は局トップ判断 評論家・森田実氏に届いた「ADからの書状」
植草氏の小泉政治批判はもともと明快だったが、最近の植草氏のブログでの論述は、何かふっきれた覚悟のような、頭脳の明晰さに裏打ちされた、透明な凄みすら感じる。
福田首相は自民党最後の総理大臣になるかもしれず、その後に「偽装CHANGE」勢力を据えようというシナリオすら臭うが、いずれにしても福田首相の改造内閣は、小泉一派を除く自民党を汚水処理場に流す「排水の塵内閣」であるように私には見える。
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関東学院大のラグビー部員らに大麻の種子を販売していた大阪市都島区の雑貨輸入販売「アンツインターナショナル」が、発芽防止の熱処理をしていない種子を密輸したとして神奈川県警は29日、同社社長の◆◆◆◆被告(34)ら3人(大麻取締法違反のほう助罪で起訴)を、関税法違反(無許可輸入)容疑で横浜地検に追送検する。
大麻種子密輸に同法が適用されるのは全国で初めて。
捜査関係者によると、◆◆被告らは2007年2月にオランダの大麻専門店から種子約1万粒を約350万円で買い付け、同年3月に関西空港着の航空機で持ち込んだ疑い。種は手荷物に隠していた。◆◆被告は「見つかっても、発芽することを知らなかったと言えば、逮捕されないと思っていた」と供述している。
県警は、◆◆被告らが05年6月~07年12月の4回、オランダで計約3万4000粒を買い付け、大阪市内の直営店やインターネットで、仕入れ価格の10倍に当たる10粒7000円~2万8000円で販売、約8000万円の利益を上げていたとみている。
熱処理済みの大麻種子は鳥のエサや香辛料に使われており、外見で区別できない未処理の種子は野放しに近い状態とされる。◆◆被告らは、客が栽培すると知りつつ種を販売したとして大麻取締法違反(栽培)のほう助罪で起訴されたが、県警は横行する密輸自体を封じ込めるため、関税法違反での立件を目指した。
(2008年7月28日14時34分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080728-OYT1T00408.htm
大麻の種の販売自体は違法行為ではないので、これまでは客が栽培すると知っていて売ると「幇助」として検挙されていました。検挙された種の販売元に顧客リストが残っていて、そのリストから家宅捜索に入られ、栽培が発覚して逮捕された人もいます。つい最近もそのような例での相談がありました。取り締まり当局は、顧客リストの記録だけでガサに入るようなので、これまでネットや店舗で種を買い、個人情報を伝えたことのある人は、注意したほうがいいと思いますよ。
大麻の種の販売自体は違法ではありませんが、発芽防止処理されていない種を輸入することは関税法で規制対象となっています。上の記事ではその関税法を初めて適用したと伝えていますが、今後、種の輸入についても規制を強化するという取り締まり当局の意思の表れでしょうね。
しかし、3年で8000万円の利益って、すごいですね。こんなに儲かるなら自分もやろうという人はきっと今後も出てくるでしょう。最近は営利目的の栽培で過去最大の押収量とか、大量の種の密輸などが摘発されていますが、個人が種を入手できないようにし、栽培できないように弾圧を強化すると、組織的で大規模な密輸や栽培が増えることになるだけでしょう。近頃の報道を見ると、既にそのような動きが出ているのだろうと思います。禁酒法があるからこそ、アル・カポネは儲かる。
で、何も解決しない。取り締まりを強化すると、捜査や裁判や刑務所の管理コストが増え、税金が無駄に使われるだけなのです。
大麻の医学的な研究すら禁じ、大麻の事実を全く検証もせず、ただひたすら弾圧のための弾圧が盲目的に続けられています。アメリカで大麻弾圧が始まったのは、禁酒法が廃止され、職を失った役人に新たな仕事を与える目的もあったようですが、敗戦国の日本は、占領国のアメリカに命じられるまま、禁酒法のバカバカしさを大麻に適用し、そのまま踏襲しているようなものです。未だに占領政策が続けられているわけです。
で、何も解決しない。取り締まりの強化によって日本の不利益を拡大し、ただ不幸を拡散するだけです。
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今月初め、カナビス・スタディハウスに次のような記事が掲載された。
■国別カナビス経験者数割合
米42%、NZ42%、蘭20%、日1.5% WHOのドラッグ使用状況調査
この調査から日本での大麻経験者数を推測することが可能なのだろうか。私はそれが気になっていた。掲載されている表を見ると、日本での調査対象は887人と少なく、明らかに大麻の経験がないであろう子どもたちの人口を統計的にはどう考えればいいのか。ネットで関連情報を探したりもしたが、よく分からないので、カナビス・スタディハウスのダウさんにメールで以下のように訊ねてみた。
しばらく前の記事、「国別カナビス経験者数割合 米42%、NZ42%、蘭20%、日1.5% WHOのドラッグ使用状況調査」ですが、この数値から日本での大麻経験者数を推測することは可能でしょうか?
日本での調査人数は887人ととても少なく、なぜこれほど少ないのかにも疑問が湧きましたが、この数字から日本人の大麻経験者数を推測することが可能なのかどうかについても知りたいと思いました。
また、日本での大麻経験者数を推測することができるような調査など、ご存知でしたら教えて頂けないでしょうか。
ダウさんから次のような回答のメールを頂いた。
調査人数の問題は、結局どのようにして母集団を決めたかということが最も大切で、偏った集団を1万人調査しても結果は偏ったものしかえられませんので、単純に人数を増やしても意味ありません。
今回の国連の調査は、世界各地で同じ質問内容で同時に聞き取り調査していることで、一国の状況を細かく云々する内容ではないと思います。例えば、コカインについては調べていますが、覚醒剤については調べていませんので、日本での問題は目立っていません。
日本の調査(私はほとんど知りません)では、以前からそれなりのことは行っているようですから、少なくとも母集団の選定は以前のやり方を踏襲していると考えてのよいのではないでしょうか。
それと、いずれにしても本当の数字などは誰にもわかりませんから、正確性ばかりに注目するよりも、もしその数字が正しければどのようなことが言えるのか検討することが重要なのではないかと思います。
日本の人口は1億2700万人ですから、その1.5%は190万人ということになります。もちろんこの数字は生涯経験者数ですから、最近1か月以内の使用者は、アメリカの統計などを参考にすれば15~20%ぐらいなので、日本でのオケジョナル・ユーザーは30~40万人ぐらいになります。
この数字は一見して少ないように見えますが、オランダのオケージョナル・ユーザーは30万人という調査すらありますので、絶対数ではそれほど違いはないわけです。
また、オランダではコーヒショップの年間総売上は20億ユーロ、税収は4億ユーロという報告もありますが、ユーロ換算150円として計算すれば、日本での現在のカナビス売上は、
20億ユーロ*150円 = 3000億円 になります。
また、日本でコーヒショップが認められて全国に広まりカナビス人口が増えて、オランダ人の使用率半分の使用率になったとすれば、人口比は、1億2700万/1600万 = 8倍ですから、業界全体の売上は、
20億ユーロ*8*0.5*150 = 1兆2000億円
税金は、4億ユーロ*8*0.5*150 = 2400億円
ということになります。
今回の国連調査の数値の正確性を問うよりも、その数値が正しいとしたらどのようなことが言えるか、という観点から述べられる推論。なるほど。胸のつかえが取れました。
大麻の個人利用を制度化し、取り締まりや裁判に費やしているコストがなくなることを考えれば、経済的なメリットはもっと大きな数字になるでしょう。
大麻取締法の問題を政治的な文脈で考える際、このような経済的なメリットは大きな意味を持つのではないでしょうか。
カナビス・スタディハウスとダウさんに改めて感謝。
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あるブログのコメント欄に、当方の記事アドレスがリンク先参照として書かれていると、読者がメールで知らせてくれた。アクセスしてみると、記事やコメントの内容は、週刊現代の記事に触れてのものだった。
2008年07月29日 ジャーニーズ・タブー崩壊か?「嵐」大野智「大麻で3P」報じた週刊現代
【現役雑誌記者によるブログ日記!by オフイス・マツナガ】
週刊現代 2008年8月9日 衝撃スクープ告白&決定的写真
ジャニーズ『嵐』リーダー「大麻で痴態」
(リンク先画像は1週間で入れ替えになるようです)
オフィス・マツナガさんの記事には、このニュースがアジアの複数の国でどう扱われているか紹介されていて面白かった。
この記事のコメント欄で大麻の使用罪が話題になり、ある書き込みで大麻に使用罪がないというのは「大麻愛用者の言い訳」だとして、大麻取締法第3条が引用されている。だが、この条文で規制しているのは、「大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない」ということで、あくまでも「研究のため使用してはならない」ということだ。だから尿検査で大麻反応が出ただけで逮捕されることはない。覚せい剤は尿検査で陽性ならそれだけで逮捕される。つまり大麻には覚せい剤の「使用」に相当する意味での吸引や喫煙を禁止する規定はない。それは厚労省所管の天下り財団が運営する「ダメ。ゼッタイ。」ホームページの記述を見ても分かる。
薬物乱用の基礎知識/薬物5法について
同ページの中ほどに、「薬物乱用に関する法律の規則」という表があり、各薬物の罰則についてまとめられている。覚せい剤、ヘロイン、モルヒネなどには使用罪があるが、大麻にはないことがこの表からも分かる。
また、大麻に使用罪があるかのような誤った報道に際して、事件を担当する麻薬取締官や刑事に取材し、大麻には使用罪がないこと、報道側の誤りであることを確認し、メディアに記事の訂正や削除をお願いし、対応してもらったこともある。
産経新聞の大麻報道との対話
「使用容疑でも調べる」産経記事は削除されました 2007-12-27
毎日新聞の大麻報道との対話
毎日新聞東京社会部曽田記者からの回答 2008-04-14
産経新聞の大麻報道との対話
大麻に使用罪はありません 2008-07-11
大麻に使用罪はないのだが、当局は「共同所持」という容疑で逮捕することもある。週刊現代の記事はコンビニで立ち読みしたが、プライベートな時間に撮影された他愛もない写真を晒されたタレントは、呼び出されてカラオケ店に来たとき、既に相当にアルコールで酔っていたらしい。で、記事によると、居合わせた者が持っていた大麻をそのタレントも吸ったらしい。それだけを取り上げて「共同所持」を問うのは無理だろう。あの気持ち良さそーな顔は、アルコールのせいかもしれないし、女のせいかもしれないし、大麻のせいではないかもしれない。
週刊現代は、行政や暴力団を含めた権力や権威に批判的な記事を書くことも多いようで、今回の記事もジャニーズというタブーに挑む意味があるのかもしれないが、どうも大麻については誤解があるようだ。海外の医療大麻の現実、研究すら禁じている厚労省の反国民的な施策、大麻取締法の矛盾などについてこそ、タブーを破ってほしい。
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シーン11 逮捕
手持ちの大麻がなくなってしまい、良介はソーマに電話をした。
「もしもし、ソーマさん?」
「おー、クボタさん。奥さんどうだった?」
「ええ、それが良く効いて。」
「ああ、それは良かった。俺も気になってたんだよ。」
「ところでもう無くなりそうなんですが、お会いできませんか?」
「いいよ。今日は家にいて暇だから、何ならうちに来るといい。」
良介は、ソーマの家を訪ねた。ソーマはワンルームマンションで一人暮らしをしている。
「クボタさん。どうぞ。入ってよ。」
「お邪魔します。」
男の一人暮らしにしては綺麗にしてある。インテリアは凝っていて、民族調の置物などが置いてある。
「奥さん、ガンジャが効いたんだって?俺も自分が譲ったものが病気の人に役立つことなんて初めてだから、なんだか嬉しくてね。」
「本当にありがとうございます。痛みが取れて、食欲も出てきて、退院の話まで出たところです。」
「マジで?よかったよ。じゃあ、忘れちゃうと困るから、まず渡しとくよ。奥さんの特効薬。」
ソーマは、透明な袋に入った乾燥した大麻を良介に渡した。
「ありがとうございます。助かります。」
そういって、良介は大麻を自分のカバンに入れた。
「クボタさんだから教えるけど、実はあれ、俺が栽培したものなんだよ。」
そう言って、ソーマは良介を部屋の押入れの前に案内した。
「ジャーン。この中でかわいいやつが育ってるのよ。」
ソーマは嬉しそうに良介に説明した。
と、その時、ドアのチャイムがなった。
「誰だ?こんな時間に。」
ソーマがドアを開けると、男達が7、8人立っていた。スーツの者が数人いて、残りは動きやすそうな服装をしている。殺気立った雰囲気だ。
「どちらさんでしょうか?」
「相馬 正か。我々は麻薬取締部だ。大麻取締法違反容疑で家宅捜索する。」
その中の一人が、ドアの隙間に足を入れて、閉められないようにし、言った。そして、捜査令状を相馬に見せ、男達は部屋に押し寄せるように入ってきた。部屋中を調べ始め、あらゆる引き出しを空け、その様子をカメラで撮影している。
「おい、お前ら、勝手に何してんだよ!ふざけんな!」
ソーマは青ざめて叫ぶ。良介は何が起こったのか分からず呆然と立ち尽くす。麻薬取締官の一人が部屋の押し入れを開けた。
「ありました。」
何人かが押し入れに集まる。
「押し入れを改造し栽培していたようです。本数は、えっと、いち、にい、さん・・・。18本です。」
「なるほど。写真を撮っといて。その後、抜いて調べる。」
男達は話し合っている。
家宅捜索の間、良介は取調べを受けた。
「あんた、名前は?」
「久保田良介です。」
「久保田さんね。相馬とはどういう関係?」
「知人です。今日はたまたま遊びに来ていました。」
「そうか。あんたも一応調べさせてもらう。いいね。」
そういって、麻薬取締官は良介を調べ始めた。良助は突然のことで、驚きと恐怖の為に麻薬取締官に素直に従う。麻薬取締官は良介のカバンを開けて、大麻の入った袋を発見した。
「これは何だ?」
良介は黙っている。
「まあいい。後でまとめて調べるからな。」
ソーマと良介と麻薬取締官は、リビングの机の前に集まった。体格のいい男が、ソーマと良助のそばに立つ。逃げたり抵抗したりした場合の為だろう。机の上には、刈り取られたばかりの大麻と、乾燥した大麻が並べられている。中には、間違えたのだろう、緑茶まで並べられている。
「これは大麻だね?」
麻薬取締官が、集められた大麻を二人に見せて尋ねる。
「何すかね?俺は見覚えがないけど。あ、これは緑茶っすかね?」
ソーマはしらばっくれる。
「そうか。これから検査試薬で調べるからな。調べるところを確認しとけよ。後から不正をしたと言われない為の確認だから。」
麻薬取締官は頑丈そうなアタッシュケースから検査試薬を取り出し、大麻を試薬に入れた。検査試薬は赤い色に変わった。
「どうだ?確認してくれ。赤い色になると陽性、これが色見本だ。どうだ?同じ色だろう?」
「そうっすか?微妙に違う色に見えるけど。」
ソーマは何とか言い逃れようとする。
「おいおい、ふざけたこというなよ。これはあくまで見本。まったく同じにはならんよ。とにかくこれは陽性だ。」
麻薬取締官は時計を確認し、言った。
「20時18分、現行犯逮捕。」
彼らの儀式らしい。
そして、
「ふたりにはこれからうちの事務所に来ていただく。そこでいろいろとお話を伺いましょう。」
と言い、麻薬取締官は二人を拘束した。そして、一団は車に乗り込んだ。
(つづく)
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ちょうど1年前、参院選の直前に、各政党にアンケートをお願いしました。予め各党の広報担当の方に電話で説明してから送付したのですが、あまりに直前だったせいか、はたまた相手にしてくれなかったのか、どこからも回答を頂けませんでした。次の衆院選がいつ行われるのか、内閣改造なんかしなくていいから、早く選挙をしてほしいと私は思っているのですが、その前に改めて各党にアンケートを送り、回答をお願いしようと思います。内容は昨年のものを下敷きにしますが、ご意見などありましたらお寄せ下さい。
大麻取締法に関する政党アンケート(2007-07-24)
現在、「大麻取締法被害者センター」という名称を変更すべく、スタッフ内で合意形成を図っているところです。が、掲示板を使ったのんびりペースの議事進行に加え、採決を始めたのに話を元に戻すアホな進行役のせいで、展開が間延びしております。すいません。私です。
事務局案をサポーター専用サイトで諮り、新名称が決まったら、行政への意見書提出と、主要政党アンケートを行います。
日本の衆院選と、アメリカの大統領選挙。この二つの選挙の行方は、大麻の社会的な管理のあり方を問う立場からも、とても大きな意味を持つだろうと思います。オバマさんは医療大麻について容認を表明しています。そのオバマさんが大統領になり、アメリカの医療大麻政策が変われば、日本で起こす訴訟、例えば、大麻の医療利用を懲役刑で禁じる違憲性について、再審請求に勝ち目も出てくるのではないかと期待しています。
「病気・病状」カテゴリーのブログを読んでいると、もし何の心配もなく大麻を使えたら、もっと苦痛を軽減できるのではないかと思える例がたくさんあります。同時に思うのは、やはり厚生労働省の反国民的な行政です。薬害を知っていて放置したり、年金を使い込んだり、記録がデタラメだったり、誰も責任を取らなかったり、それなのに「後期高齢者」の保険料は年金から天引きするとか、どこまで腐ってんだか、麻薬防止センターの天下り専務理事は、見直すと自ら明言したデタラメ大麻情報を放置したまま、渡りで4回も莫大な退職金を着服することになるとか、書いていてムカッ腹が立ってきます。
大麻取締法を所管する担当部局は、既に海外で医療大麻が利用されていることを知っているのですから、古くて見直しの必要がある公的大麻情報を放置し、今もって大麻の医療利用を懲役刑で禁じ続けているのは、行政の不作為であり、認識ある過失ではないでしょうか。
神様、天誅をお願いします。
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人気ブログランキングの「病気・症状」カテゴリーをお読みの方、初めまして。
多くの方が、ご自身の闘病経験、いま現在の様子などを発信されていて、胸が詰まる思いがしました。ご健康、ご多幸をお祈りします。
「大麻が癌の疼痛に効く」
これまで取り締まり当局のダメゼッタイ情報でしか大麻についてご存知ない方には、俄かに信じられないかもしれません。
でも、医学的な事実です。大麻には、懲役刑を以って規制しなければならなような危険性はありません。政府が周知している大麻情報は、根拠のない過剰な脅しでしかありません。
もし、逮捕される心配など何もなく、安心して大麻を利用できる社会環境であれば、どれほど多くの人たちが、病の苦痛を軽減することができるだろう。そう考えると、大麻取締法を所管する厚生労働省の反国民的な行政に、改めて憤りを覚えます。
カナビス・スタディハウスには海外の大麻研究について、文献や研究レポートが膨大に翻訳紹介されています。大麻の恩恵を受けた患者たちの証言も紹介されています。
医療カナビス 奇跡の薬草 患者たちの証言
カナビス・スタディハウス
ところが、日本では、大麻を医療的に使うことを大麻取締法で禁じています。厚労省は研究すらも禁圧しているのです。では、厚労省は大麻の有害性についてどれほどのデータを持っているかというと、医学的検証に耐え得るデータなど何も持っていないのです。
参照:厚生労働省が持っている大麻情報の全て[情報公開請求への回答]
しかも、担当部局の医薬食品局監視指導・麻薬対策課には、薬物に関する海外の研究データを収集する担当者がいるのに、です。その担当者に、私は電話でいろいろと参考になる情報を伝え、当の担当者も私たちのサイトを読んだそうです。
ところが、未だに、厚生労働省は大麻の薬学的研究すら禁圧し、マスコミを動員して個人的な栽培や所持を厳しく取り締まり、酩酊作用のない産業用大麻の栽培まで新規の申請は認めないのです。根性の腐った税金泥棒の糞役人と中指を立てて罵る者がいても、誰が止められるでしょう。
なぜ日本の大麻政策がこのような馬鹿げた意味不明の反国民的なことになっているのか。もともとは占領国に仕掛けられた大いなるトリックであり、トラップであると私は思っています。
アメリカは日本に比べて大麻規制が緩いと思われていますが、アメリカは大麻弾圧の総本山のようなものです。敗戦国の日本は総本山以上に馬鹿げた弾圧を続けている状況なのです。アメリカが「Just say No!」と言ったので、日本政府は「ダメ。ゼッタイ。」と訳したのです。アメリカが占領していない国、例えば欧州では、大麻は逮捕するほどの犯罪ではありません。
・逮捕された人たちの話 Qさん(フランス人)
・逮捕された人たちの話 NCさん(デンマーク人)
大麻は多くの病状に効果があります。ですが、日本では、自分の病を癒す目的の大麻栽培や所持を、懲役刑で禁じています。
厚生労働省は、国民の健康や福祉、幸福など、考えていないのです。
医療大麻の話を持ち出すのは、医療とは関係なく、ただ大麻を吸いたいだけなのに、言い訳・正当化しているだけだ、という、実につまらない、くだらない批判を聞くことがあります。
個人が嗜好用途として使ってもアルコールほどの危険はないし、多くの病に効くことも医学的に明らかなのです。そのような大麻を、医学的根拠もなく懲役刑にするのではなく、その可能性を活かせるように、研究や産業的活用も含め、大麻を社会的に管理しようと私たちは主張しています。
必要とする人、望む人が、安心して大麻を使い、病状を緩和できる日本社会を、私たちは望んでいます。
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シーン10 ひと時の幸せ
その後、良介は毎晩例の薬を持ってきた。それを眠る前に使い、痛みから解放され、ゆっくり眠ることができた。抗がん剤の吐き気にも効果があるようで、食事もとれるようになった。早苗は、食事が自分の生活にとってとても大事だったことを実感する。最初の頃は頭がふらふらすることもあったが、だんだん量を覚えてきて、気にならなくなった。
長島医師は良助が病室に大麻を持ち込んで早苗に使っていることを知っていた。そして、大麻の効果をこっそり観察していた。早苗には大麻がとても合っているようだ。副作用は目立ったものがない。「本当は自分で大麻を患者に処方したい。大麻の効果をもっと間近で見たい。しかし、これは日本では使用できない大麻なのだ。積極的に関わると、病院の職はおろか医師免許すら危うい。一人の患者の幸せと、自分の医者人生と、どちらが大切なのだ。」長島医師は結局黙って見ていることを選んだ。
早苗の治療は順調に進んだ。ある日二人は長島医師に呼ばれた。
「久保田さん、抗がん剤が効いて癌は小さくなっています。」
「そうですか。何だか先生から初めていい話を聞いた気がするな。良かったな、早苗。」
「痛みもいいみたいだし、そろそろ外泊でもしてみますか?」
「本当?うれしい。もう家に帰れないんじゃないかと思ってた。」
早苗は素直に喜んでいる。
「いやいや。久保田さん。外泊で問題がなければ、退院して外来で治療もできますよ。」
さっそく早苗は外泊をした。痛みが和らぎ、車いすに移るのもスムーズだ。やはり自分の家は病院とは違い、気持ちが落ち着く。良介はひとりでも掃除をしていてくれたようだ。
「天気もいいし、ちょっと外に出ようか?」
二人で近くを散歩する。よく晴れた日で、風が心地よい。
「何だか、恥ずかしいわ。」
「そんなことないだろ?」
「良介、本当にありがとう。」
「早苗こそ、治療を頑張ってくれてありがとう。家に帰ってきてくれてありがとう。」
夜は久しぶりに二人で食事をする。早苗は本当は自分でキッチンに立ちたかったけれど、さすがに疲れてしまって、出前を取った。でも、病院の単調な食事に比べれば、とても美味しい。辛い闘病生活の中、二人は生きていることの幸せを感じる。
「何だか幸せだと怖いのよね。あとから悪いことが起こりそうで。」
「何言ってるんだよ。」
(つづく)
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シーン9 大麻使用
良介は病院に早足で向かった。「法律が何だろうと、僕には早苗の幸せが一番大事なのだ。もし捕まるとしても、僕だけだ。」強い決意を胸にして。
病院に着くと良介は廊下で長島医師を捕まえた。
「先生。大麻を手に入れました。これから妻に使おうと思います。」
「えっ。久保田さん、本当に?」
長島医師は狼狽した。
「これしか方法はないと思って。」
「ちょっと待ってください。困ったな。確かに私が久保田さんにお話ししたことなんだけど。法的にまずいんだよな。許可はできないよ。」
「先生には迷惑をかけません。私が勝手にやることですから。先生は知らん顔していただければいいです。」
「ちょっと、久保田さん。まって、、」
良介は早苗の病室に入って行った。
「早苗、具合はどうだい?」
「うん。痛みはあるけど、気持ちは落ち着いているみたい。この間はごめんね。」
「いいんだ。気にしないで。僕が悪かったんだよ。ところで、いい薬が手に入ったんだ。知り合いからもらった。漢方薬みたいなものらしいけど、試してみてよ。」
「そうなの?」
早苗は、効くとは期待していなかったが、良介が自分のために薬を持ってきてくれたことをうれしく思った。
「タバコみたいに熱して吸うんだ。専用の機械もある。こうやって薬を詰めてスイッチを入れて、それからここから吸うんだ。」
良介は、機械に大麻を入れてスイッチを入れた。
「何か怖いな。むせないかな。」
「大丈夫。ちょっとくらくらするかも知れないからちょっとずつ吸って。」
早苗は恐る恐る大麻を吸った。数口吸ったところで、良介が止めた。
「まずはこの位にしておこう。どうだい?」
数分して、早苗は全身がジーンとして、皮膚感覚が鈍ってくるのを感じる。そういえば足の痛みも和らいでいる。
「効いてきたみたい。」
抗がん剤の吐き気もおさまっている。
「何だかお腹も減ってきたみたい。食べる物ある?」
「それは良かった。クッキーがあるよ。」
「おいしい。久しぶりにおいしいものを食べた気がする。」
良介は、驚いた。久しぶりに早苗が笑っている。まさか本当に大麻が効くとは。
「元気になったみたい。痛みも大分いいわ。足がほぐれた感じがする。ちょっと気分がいつもと違うけど、悪い感じじゃないみたい。この薬なんていうの?」
「名前は聞き忘れちゃったよ。今度聞いておく。」
苦痛から解放された早苗をみて、良介は涙ぐむ。
「よかった。本当によかった。」
早苗はその後いつの間にか寝てしまった。病気になる前の元気だったころの夢を見た。自分の足でどこまでも歩いていける、不安も絶望もなかったあの頃の夢。久しぶりにぐっすりと休むことが出来た。
翌日、早苗の気分は明るかった。食欲もあるし、気力も戻ってきたように感じる。長島医師が部屋に入ってきた。
「久保田さん、どうですか?」
「先生。今日は気分がいいみたい。痛みも和らいでいます。食欲もあって。」
「そうですか。それは良かった。」
早苗は良介の持ってきた薬のことは伝えなかった。病院の薬以外で良くなったことをつたえるのが悪いような気がしたからだ。
「次の抗がん剤治療はいつでしたっけ。早く良くなって退院したい。」
気持ちが前向きになっている早苗に長島は驚き、嬉しく思う。
「大麻が効いたのだろうか。しかし、これは良いことなのか。」長島医師は複雑な心境だ。
(つづく)
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!注意!
これはあくまでフィクションです。大麻の入手について書いてありますが、これは作者の創作で、実際にこのようなことはありません。さらに、大麻の所持・入手を勧めるものではありません。
シーン8 大麻入手
良助は自宅でコンピュータの前にいる。インターネットの検索エンジンに「医療大麻」と打ち込み、検索をクリックした。「医療大麻を推進する会」というサイトが出てきた。そこにアクセスする。
そこには、医療大麻に関する事がいろいろと書いてあった。どのような病気に効くのか、医療大麻の裁判など。日本でも医療大麻を使えるようにするべきだ、ということを主張している。
ページを見ると、早苗の痛みには確かに大麻が効きそうである。副作用は重いものはないようだし、早苗の病状を考えれば副作用よりもまず症状を取ってあげることが重要に思える。しかし、大麻取締法では大麻の医薬利用を禁止していることが書いてある。大麻取締法。この法律を良介は今まで気にしたこともなかった。
ページの最後に、メールアドレスが書いてある。良介は、メールを送った。
「突然のメールをすみません。相談にのっていただけませんでしょうか。妻が癌で、背骨に転移しています。そのために激しい痛みがあり、モルヒネなどの痛み止めが効きません。抗がん剤の副作用もあって、日に日に衰弱していっているようです。何とか痛みだけでも取ってあげたいと思っています。お返事ください。」
翌日、返事が来た。
「メール拝見しました。一度お会いしてお話ししたほうがよさそうですね。都合のよい日を教えてください。」
良介はすぐに返事を書き、医療大麻運動家と会うことになった。
レストランで待ち合わせをした。ゆったりとした自然食レストランだ。良介が席で待っていると、50代位の男性がやってきた。良介はもっと怖い感じの人を想像していたが、気さくで温厚な感じだ。
「はじめまして。上田と言います。」
上田は良介に名刺を渡した。「医療大麻を推進する会 上田 創一」と書いてある。
「久保田です。突然すみません。相談に乗っていただけて、感謝しています。」
「いいよ、いいよ。ああいうホームページを公表している以上、相談には乗らなきゃいけないと思ってるから。結構大変だけどね。」
上田は明るく笑った。言葉に関西のイントネーションがある。
「それで、奥さんの病気はどうなの?」
「メールにも書いたのですが、癌が背骨の神経を傷つけて、ひどい痛みがあるようなんです。モルヒネや通常の痛み止めはあまり効かなくて、医者もお手上げのようです。」
「それで大麻はどうか、というわけね。」
「そうです。医者が日本では使えないけど、海外では使われていると言っていました。」
「アメリカのカリフォルニアなんかは使えるよね。医療大麻のクラブハウスがあって、そこで吸ったりしていたよ。痛みにはいいみたいだね。エイズの患者とか、神経の難病の患者が吸ってたよ。」
「日本では難しいですか?」
「大麻取締法、第4条ってのがあって、医薬利用が禁止されてるんだよ。困ったもんだね。研究まで禁止していて。医者も言わないんだよね。弱腰なのか知らないのか。」
「何とかなりませんか?」
「僕は売人じゃないからね。はいどうぞ、ってわけにはいかない。吸う機械なら売ってあげるよ。これはベポライザーっていう新商品だけど、煙が出ないから病人でも大丈夫だろう。」
その後、上田は良介に電話番号を渡した。
「ここに連絡してみなよ。」
上田と別れたあと、良介はもらった番号に電話をかけた。
「もしもし。誰?」
後ろで大きな音楽が鳴っている。
「上田さんから聞いたんですけど。久保田と言います。」
「上田さんから?ああ、さっき連絡があったよ。クボタさんでしょ。俺、ソーマっていうんだ。」
「今から会えますか?」
「いいけど。じゃあ、渋谷のアナンダマイドっていうクラブに来てよ。そこでぶりってるから。」
「ぶりってるってなんですか?」
「野暮なこと聞くなよ。じゃあ、きるよ。」
渋谷の奥にそのクラブはあった。地下に続く薄暗い階段から、単調な重低音が響いている。階段を下りて扉を開けると、大音響でレゲエが流れてきた。良介はいかにも場違いな客だ。良介は店員に聞く。
「ソーマさんっています?」
「ソーマなら奥のカウンターにいるよ。」
奥に進むと、ドレッドヘアーの若い男性がグラスを傾けている。
「ソーマさんですか?」
「そうだけど。クボタさん?へー、この店にスーツ着てる人が来るのって珍しいよ。クールだね。」
ソーマはいぶかしげな眼で良介を見た。
「確かにあまりこういうところには来ないですね。上田さんにソーマさんと連絡するように言われたんですが。」
「ガンジャが欲しいんだって?上田さんの紹介だから大丈夫だと思うけど、クボタさん、そういうのやりそうにないね。」
「私がやりたいんじゃないですよ。」
良介は妻のことを話した。
ソーマは突然涙ぐみ、良介の手を取った。
「俺のばーちゃんも癌だったんだ。最後は痛みが強くてね。吸わせてやりたかった。後悔してるんだ。あんたには愛がある。信用した。売るよ。」
(つづく)
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シーン7 医療大麻
長島医師は医局で一人悩んでいた。
「早苗の痛みが何とかならないものか。」
その時、携帯電話が鳴った。
「長島、元気か?」
「田中か?久しぶりだな。」
「ちょうど先週アメリカ留学から帰ってきてな。来月から病院に復帰だよ。」
田中は長島の大学の同級生で麻酔科医だ。アメリカ留学に行っていた。
「いろいろと積もる話もあるし、飲みにでも行かないか?」
「ちょっと仕事で困っていて、乗り気じゃないんだけどな。」
「そういう時こそ飲まないと。だろ?」
「そうかな?」
長島と田中が飲み屋で話している。
「どうだった?留学は?」
「まあ、いろいろと大変だったよ。勉強にはなったけどな。アメリカもいいところと悪いところがあるね。やっぱり、飲み屋は日本のほうがいいな。ところで暗い顔してるな。仕事大変なの?」
「そうなんだ。お前麻酔科だったよな。相談していいかな。困っている患者がいて。マンマ(乳がん)のステージ4でケモ(抗がん剤治療)をやってるんだけど、腰椎メタで脊損があって、痛みがコントロールできないんだよ。」
「ニューロパシックペイン(神経障害性疼痛)か?モルヒネは効かないからな。抗痙攣剤は使ったのか?」
「使ったさ。少しは効くんだけどな。突発痛が出るとお手上げだよ。何かないかな。」
「うーん。無いこともない。というか、留学先でやっていた研究テーマがまさにそれだったよ。でも日本じゃ無理かもな。」
「何だよそれ。もったいつけるなよ。」
「いいけど勧めるわけじゃないからな。そこん所注意してくれよ。カンナビノイドだよ。」
「カンナビノイドって?まさか。」
「そう。大麻だよ。医療大麻。向こうじゃTHC(大麻の有効成分)の内服薬も出ているよ。臨床研究もやってる。MS(多発性硬化症)とか、脊損とか、ニューロパシックペインにいいようだ。でも日本じゃ法的に無理だろう?医師免許剥奪覚悟でやるか?」
「そうか。うーん。」
「まさか、やるつもりか?」
「うーん。」
長島は考え込んでしまう。
良介と長島医師が面談している。
「先生、早苗の痛みは何とかならないんですか。僕は見ているだけで辛くなってしまう。」
「正直に言うと、私も悩んでいます。医者がこういう風に言うとご家族はさらに不安になるでしょうね。すみません。」
「先生に謝られても。」
「無いこともない。無いこともないんですが、大きな問題がある。」
長島医師は独り言のようにつぶやく。
「先生、何ですかそれは?」
長島医師は姿勢を急に正し、良介を見つめた。
「いいですか?久保田さん。これから、一つの可能性を話します。ですが、日本では難しい。アメリカや欧米では可能だけど、日本ではできない治療がある。医薬品の法律や承認は国ごとに違っているからです。わかりますか?」
「わかるような、わからないような。日本では使えないけれど、海外では使える薬ということですか?」
「そうです。さらに、久保田さんが聞いたらちょっとびっくりするかもしれない薬です。いいですか?それは大麻です。」
「大麻ですか?あの、麻薬の?」
「そう。医療大麻です。大麻の成分が、奥様のタイプの痛みに効果があるという研究結果があります。」
「副作用とか、中毒になるとか、大丈夫なんですか?」
「モルヒネに比べれば、依存は問題にならないでしょう。副作用は、ひどいものは少ないようです。でも、日本で使うには法的にまずいんですよ。」
「そうですか。他にないんですか?」
「あとは、鎮静剤でボーっとしてもらうか。でも、ずっと寝てしまう感じで、お話なんかは難しくなりますね。」
「そうですか。」
「まあ、もうちょっと、考えましょう。」
良介は思い詰めたような顔で部屋を後にした。長島医師は複雑な顔で良介を見送った。
(つづく)
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シーン6 苛立ち
抗がん剤の治療が始まった。吐き気止めの点滴をまず行う。そのあとで看護師が抗がん剤のボトルに取り換えた。ぽたぽた落ちる点滴を見ながら、すっかり病人になっちゃったな、と早苗は悲しく思う。
抗がん剤の点滴の後、軽い吐き気が続き、早苗は食欲がわかない。食事が運ばれてきても匂いが不快に感じ、すぐに下げてもらう。全身が疲れてしまい、気力もなくなってきた。
痛みは相変わらず続き、モルヒネが飲み薬から点滴になった。モルヒネ以外にもいろいろな薬を試したが、痛みは結局80%位にしかならなかった。抗がん剤のため食欲もなくなり、痛みが続くことで、早苗は身も心も疲労してきた。本来明るい性格だが、さすがに苛立ちを隠せなくなってきていた。
長島医師は困っていた。どうも早苗の痛みは痛み止めの効きにくいタイプのようだ。神経が障害されておこる痛みはモルヒネが効かないことがある。癌の痛みの治療はモルヒネが中心であり、他の薬は補助的なものである。モルヒネが効かない痛みは、治療が難しい。
良介が夕方面会に来た。
「具合はどうだい?」
「どうもこうもないわ。食欲もないし、痛くて夜もゆっくり眠れないし。何だか落ち込んできた。もう、治療も止めて、死んでしまったほうが楽かも。」
「何を言ってるんだ。先生も看護婦さんも頑張って治療してくれているんだから、早苗も頑張らなきゃ。」
突然早苗の表情が変わった。
「何よ!あなたは私の苦しみが分からないくせに!頑張れって、いったいこれ以上何を頑張ればいいの?こんなに痛くて、こんなに辛くて。これ以上私が何をできるの!」
「ごめん。君の気持ちも分からずに。」
その時、早苗が突然苦しみだす。
「痛い、痛い、、足と背中が、、、。」
早苗は苦痛の表情を浮かべ、冷や汗をかいている。
良介はナースコールを押した。
「すみません、妻が突然苦しみだして、すぐに来てください。」
長島医師と看護師が部屋に入ってきた。
「どうしました?」
早苗が振り絞るような声で答える。
「急に電気が流れるように痛みが出て、、。いたた、痛い。」
「何をしていて痛みが強くなったのですか?」
「私としゃべっていて、ちょっと口論になって、そしたら急に痛くなったようです。」
良介が答えた。
「そうですか。旦那さん、ちょっといいですか?」
良介と長島医師は廊下に出た。
「早苗さんの痛みは痛み止めが効きにくいようです。興奮して、強い痛み発作が出たのでしょう。」
「先生、どうすれば。」
「今は痛みを取るのが難しそうなのと、興奮しているようなので、鎮静剤を使って眠ってもらったほうがいいでしょう。ゆっくり眠って休息をとったほうがよさそうです。久保田さんは今とても疲れているようだし。よろしいですか。」
鎮静剤を使い、早苗は静かになり、やがて眠ってしまった。眠っている時も眉間に皺をよせ、痛みは夢も中でも続いているようだ。良介は混乱していた。これからどうすればいいのか、自分に何ができるのか。しかし、無力感を感じるばかりだった。
(つづく)
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シーン5 乳癌の告知
放射線治療をしながら、いろいろと検査をした。
「こんなに検査するんだ。こういうのって検査漬けっていうのかな。」
早苗は思う。
長島医師がナースステーションで検査の画像を見ている。山のようなフィルムをあわただしく確認しながら、独り言を言っている。
「うーん。結構メタ(転移)しているな。若いのに・・・。肺に肝臓に、骨か。原発巣(初発の大本の部位)は、マンマ(乳房)か?バイオプシー(生検:癌の組織を取る検査)しないとな。」
長島医師が早苗の病室に入ってきた。
「久保田さん。検査の結果が大体出ました。詳しくはまたお話しするけど、どうもお乳のところに病気がありそうなんですよ。針で取って調べたいと思います。」
「お乳ですか?そういえばしこりのようなものがあります。痛くもないし、あまり気にしていなかったんだけど。」
「そうですか。ちゃんと麻酔して痛くないようにやります。これは、治療にかかわる大事な検査だからね。」
「わかりました。お任せします。」
注射針よりも太い針で乳房のしこりを一部切り取った。麻酔の注射が少し痛かったが、足の痛みに比べればどうということもなかった。数日後、検査の結果が出た。やはり、乳癌だった。
放射線治療が終了した。放射線が当たっていた部分は日焼けしたように色が黒くなった。検査を行い、骨の転移腫瘍は小さくなり、神経の圧迫も取れていた。痛みも軽くなったが、足の痺れるような痛みは残り、麻痺したままだ。モルヒネも効いているのかよく分からない。病院にいる緊張が薄れるにつれて、一向に取れない痛みに早苗は苛立ちを感じ始めた。
良介は長島医師に呼ばれた。早苗の病状と今後の治療についての説明だという。車いすに何とか移った早苗と面談室に入ると、長島医師と担当の看護師が座っていた。
「どうぞ、久保田さん。わざわざお呼び立てして申し訳ありません。どうぞおかけください。」
しばらく沈黙があり、長島医師が話し始めた。
「いろいろとわかったことがあります。今後の治療についてもお話します。まず、久保田さんの病気は、乳癌のようです。」
「乳癌ですか・・・、骨の腫瘍ではなかったのですか?」
納得いかない様子で良介が尋ねる。早苗は表情を失い、呆然としている。
「ええ、骨に転移しているのですが、元々は乳癌のようです。」
「そうですか。やはり癌だったのですね。」
早苗はいろいろな感情があふれ出て、かえって感情が無いような声で言った。
「驚かれたでしょうね。ショックだと思います。でも、癌といっても昔と違って治療がないわけではないんですよ。転移していると手術は難しいので、抗がん剤やホルモン剤を使います。まったく消してしまうことは難しいけど、良く効く薬も出てきました。希望を失わずに治療していきましょう。」
「わかりました。でも、私が一番辛いのは足の痛みです。これは治療でよくなるのですか?」
長島医師は、それは、私も悩んでいるところだ、と思う。
「痛みは、神経が傷ついて出ているものだと思います。乳がんの治療では良くならないかもしれない。時間がたてば良くなるかもしれないし、残ってしまうかもしれません。今はまず、痛み止めの使い方を工夫していくことにします。」
夫婦は病室に戻った。二人はしばらく言葉を失っていた。まず早苗が口を開く。
「やっぱり癌だったのね。治らないのかな。」
「そんな弱気なこと言うなよ。先生もいい薬があるって言っていただろう?とにかく治療を頑張るだけだよ。」
「そうね。ごめんね、心配掛けて。」
「また、言ってる。いいんだよ。早苗は今は自分のことだけ考えていれば。僕は君の夫なんだから。」
「ありがとう。」
早苗は、抑えていた感情があふれ出て、涙を流す。良介も心の中で涙を流す。
(つづく)
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シーン4 放射線治療
面談室で、良介と長島医師が話をしている。
「奥様のことで整形外科医とも話し合ったのですが、手術は難しいようです。」
「そうですか。どうすればよいのでしょうか。」
「まずは安静ですね。腰はコルセットで固定します。そして、腫瘍が原因ですから、その治療が必要です。放射線治療をすぐに行った方がいいでしょう。」
「妻にはどういえば。」
「そうですね。癌と聞くとショックを受けるでしょうね。でも、放射線治療をやるからには、告知したほうがいいですよ。少しずつ話していきますがいいですか?」
「分かりました。お任せします。」
早苗の病室に良介と長島医師が戻ってきた。
「久保田さん、ちょっとお話があるのですが。」
「何か悪い話ですか?」
この人は、勘のいい人のようだ。と長島医師は思った。
「病気と治療の話です。久保田さん、背骨が潰れてしまっていて、それが痛みや麻痺の原因みたいです。どうして、骨が折れてしまったのか、これが大事なことなのですが・・・。MRIをみるとどうも背骨の中に何か出来ているようです。」
「何か?悪いものですか?」
「うーん。でき物というか腫瘍というか、悪性かどうかはこれから調べていきますが、悪いものかもしれません。とにかく、早く治療した方が良いのは確かです。骨の腫瘍に放射線治療をやろうと思います。」
「私、死んでしまうんですか?」
「いえいえ、久保田さん、今は急なことだし、痛みも強いから、弱気になっているんですよ。とにかく治療しましょう。」
「分かりました。とにかく、痛みだけは取ってください。」
「痛み止めの治療も同時に行いますよ。モルヒネなども必要があれば使いますね。」
放射線治療が開始になった。治療は驚くほどあっけない。放射線を当てる位置を決めたら、機械の下に横になり、5分程したら終わってしまう。放射線は早苗の体を通り抜けていったのだろうが、熱さも痛みも無い。これを毎日、数週間続けることになる。
痛み止めの治療も始まった。消炎鎮痛剤とモルヒネの錠剤である。モルヒネを飲んだ後、早苗は眠気と軽い吐き気を感じた。しかし、陶酔してしまうようなことは無い。早苗は麻薬と聞いていたので、恐ろしいものを想像していたが、痛み止めで使う量ではそういう作用は無いようだった。
数日後、背中の痛みが軽くなってきた。痛み止めと放射線が効いてきたのだろう。しかし、両足のしびれるような痛みには効果がないようだった。相変わらず両足には感覚が無く、動かすことも出来ない。そして、長い時間正座をした後のようなジンジンと痺れるような痛みが常にある。
夕方に早苗の部屋に良介が来た。
「どうだい?落ち着いてきたかい?」
「うん。何とか。でも、まだ足が自分のものじゃないみたい。」
「きっと時間がかかるんだろう。あせらずやっていこう。」
「ごめんね、心配かけちゃって。仕事も早く切り上げたんでしょ?」
「・・・いいんだよ。それより、今は何とか病気をよくする事を考えようよ。」
その後、2人は他愛も無い話しをした。早苗は明るく普段どおりに振舞った。良介に心配をかけたくない、頑張って病気に勝たなくてはならない、と自分に言い聞かせていた。良介も笑顔で話しをした。良介は自分で早苗の病気の事を調べて、早苗の状態があまり良くないことを理解していた。しかし、早苗に暗い顔を見せると心配させてしまうかもしれないと考えていた。2人は、不安の中、お互いに明るく話をした。そして、お互いが無理に明るく話していることに気付いていた。2人は暗い話をかき消すように、面会時間が終わるまで話をした。
(つづく)
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シーン3 入院
整形外科医が話し合っている。
「L1から3(第1~3腰椎)の骨メタ(骨転移)で、L1が圧迫骨折しています。脊髄も圧迫されています。下肢は対麻痺で、感覚障害と痛みもあります。」
「メタはかなり多発しているね。原発は?」
「まだ分かりません。入院して一通り検査しようと思いますが。」
「うーん。難しいねぇ。これだけ骨メタがあると、オペ(手術)もリスクが高いし。麻痺が出て間も無いから、今後の事を考えるとすぐに治療をした方がいいんだけどね。」
「ラディエーション(放射線治療)でしょうか?」
「俺もそう思うね。原発も分からないし、内科に入院を頼むかな。」
腫瘍内科医の長島治郎が救急室に呼ばれた。長島医師は38歳、中堅の医師である。
「あ、どうも先生。この方なんですけど。」
整形外科医がMRIのフィルムを示す。
「ええ。電話で聞きました。骨メタで脊損になっているんでしたね。オペは難しいですか?」
「そうですね。メタが広汎で、オペはリスクが高くて出来そうも無いな。ラディエーションがいいと思いますが。」
「そうですね。分かりました。こちらで診ていくことにします。」
「よろしくお願いします。」
早苗は救急室のベッドで横になっている。その側に、呆然と血の気の抜けた顔で良介が座っている。そこへ、長島医師が現れた。
「こんにちは。内科医の長島と言います。入院の主治医になりました。よろしくお願いします。救急室はあわただしくて落ち着かないでしょうから、まずは内科の病棟に移りましょう。後でゆっくりお話しますね。」
早苗は内科の病棟に移った。内科の病棟は、救急室の慌しさと違い、明るくゆっくりとしていた。個室に入院となった。良介は長島医師に呼ばれて出て行った。清潔だが何も無い部屋で、一人寝ていると白い壁が寂しさを掻き立てる。看護師がやってきて、痛み止めの坐薬を入れてくれた。少し痛みは軽くなったようだ。気持ちも少し落ち着いてきた。
「一体自分はどうしてしまったのだろう。夫の様子や医者の話し振りも何だか隠し事をしているようだ。」
不安が頭をもたげてくる。
「ひょっとして、とても悪い病気なのかもしれない。」
早苗の頬を一筋の涙が伝った。
(つづく)
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