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国際条約による大麻の規制の見直しを求める提言
- 大麻の可能性を活かせる社会の構築に向けて -
大麻取締法被害者センター
概要
大麻は1961年の麻薬に関する単一条約(麻薬単一条約)及び麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(麻薬新条約)によって、けし、コカ樹などと同様に規制されている植物であるが、近年の研究によって、大麻の有害性は、ヘロインやモルヒネ、コカインのみならず、現在は規制の対象外であるアルコールやたばこより低いことが報告されている[1,2,3]。
大麻の適切な使用が、ストレス[4]や精神の緊張の緩和を促し[5]、体内の様々な器官での恒常性維持機能を高める働きをもたらす[4]ことは広く知られている。また、大麻は古くから医薬品として用いられており、多発性硬化症に伴う神経因性の疼痛[6]やオピオイド系薬剤による治療で効果の見られない末期がんの患者の疼痛[7]、AIDS患者の進行性食欲減退や体重減少などの症状を伴う消耗症候群[8]、アルコール依存症[9]など、様々な疾病の治療に有効であり、各種運動障害などの治療、依存性薬物の依存症[10]、神経保護作用薬[11]、精神疾患治療[12]などへの応用が期待されている[5,7]。実際に、大麻や大麻からの抽出物を主成分とした薬剤が治療薬として認められ、処方されている国もある[7]。
先進諸国の間では、大麻の健康への影響に関する最新の科学的知見、個人の価値観を尊重する考え方などに基づいて、薬物の害削減政策(ハームリダクション政策)として、個人的な使用目的の大麻の少量の所持については、逮捕しない政策を採用している国も多いが、栽培を禁止している国際条約との軋轢により、犯罪組織への莫大な不正利益の供給や取締りに費やされるコストの増大、各国の国民の薬物政策への信頼性の低下など、様々な問題が生じており、現在の国際条約を改めるよう求める声が上がっている。
一方、わが国においては、禁止政策(ゼロトレランス政策)に基づいて、大麻が国際条約によって規制されている植物であることを理由に、大麻の個人的な使用目的や非営利的目的の為の所持や栽培が、懲役刑をもって全面的に禁止されている。また、医療上の目的の為に、大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること、大麻から製造された医薬品の施用を受けることさえも懲役刑をもって全面的に禁止されている。また、もっぱら産業上の目的の大麻の栽培のために、大麻栽培者免許の取得を正当な手続きを行って申請しても交付されない状況が続いている。こうした現在のわが国の大麻政策がもたらす社会的な損失は甚大であり、取締りに費やされる多額の税金の浪費や犯罪組織への不正利益の供給、国民の薬物政策への信頼性の低下、持続可能な社会の構築と発展の著しい妨害など様々な問題を引き起こし、末端の使用者に懲役刑を課すことや重病患者の生存権を著しく脅かすことなどで重篤な人権侵害をも引き起こしている。
現在のわが国の大麻政策が引き起こす様々な問題が、古い国際条約による大麻の規制と政府の古い情報に基づく大麻の有害性の過大評価や認識の誤りに起因することは明らかである。現在の国際条約による大麻の規制は、大麻に関する最新の知見と照らし合わせて考えると論理的整合性を欠く内容であり、これを改めなければ大麻問題の根本的な解決や適正に機能する薬物政策の実行は不可能である。2008年、国連は、この1年を「反省と熟慮の年」(Year of Reflection)とすることを明言しており、過去10年間の薬物政策を総括し、新しい政策を話し合う会議が開催されることから、古い国際条約に起因する大麻問題の解決と大麻取締法の抜本的な改正に向けて、日本政府に対し以下のとおり提言する。
Ⅰ.国際条約による大麻の規制を最新の知見と照らし合わせ、薬学的、医学的、社会学的な観点から再検証するよう国連事務総長と麻薬委員会に働きかけることを求める。
Ⅱ.世界の全ての成人の個人使用目的及び非営利的目的の為の大麻の栽培と所持の権利を認めるよう国連事務総長と麻薬委員会に提議することを求める。
Ⅲ.禁止政策(ゼロトレランス政策)から害削減政策(ハームリダクション政策)への転換[21]の試みを行うことを求める。
1. 国際条約による大麻の規制の現状と問題点
1.1 国際条約による大麻の規制の現状
大麻は1961年の麻薬に関する単一条約(麻薬単一条約)、1961年の麻薬に関する単一条約を改正する1972年の議定書により改正された同条約及び麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(麻薬新条約)によって、ヘロインやモルヒネ、けし、コカ樹などと同様に厳しく規制されている[13,14]。大麻がこのように厳しく規制されている根拠は、1957年のWHOによる大麻の「身体的中毒性」を持つという定義に依るものである。
1.1-1 1961年の麻薬に関する単一条約(麻薬単一条約)による規制の目的と内容
・麻薬単一条約の目的
麻薬単一条約は、人類の健康及び福祉に配慮し、麻薬の医療上の使用が苦痛の軽減のために不可欠であることやこの目的のための麻薬の入手を確保するために適切な措置を執らなければならないこと、麻薬の中毒が個人にとって重大な害悪であり、人類に対する社会的、経済的な危険を伴うものであることを認め、国際協力によって、麻薬の生産、製造、輸出、輸入、分配、取引、使用及び所持を医療上及び学術上の目的に制限するために、それまでの非常に複雑な体系となっていた9つの協定及び議定書を統合し、普遍的に受けいれられる国際条約を締結することを目的として制定された。
・麻薬単一条約による大麻の規制の内容
麻薬単一条約によって、大麻は特に危険な特性を有するものとして、附表I及び附表Ⅳに分類され、ヘロインやモルヒネと同等に最も厳しい規制を受けている。大麻がこのように分類されているのは、1957年のWHOによる大麻の「身体的中毒性」を持つという定義に依る。大麻に関する主な規制は以下のような内容である。
-第二十二条栽培に適用される特別規定
1 締約国は、自国又はその領域における一般的状況から判断して、けし、コカ樹又は大麻植物の栽培を禁止することが公衆の健康及び福祉を保護し並びに薬品が不正取引に向けられることを防止するために最も適した措置であると認めるときは、栽培を禁止しなければならない。
2 けし又は大麻植物の栽培を禁止する締約国は、学術上又は研究上の目的のためその締約国に必要とされる少量を除くほか、不正に栽培された植物を押収し、かつ、廃棄するために適当な措置を執らなければならない。
-第二十八条大麻の統制
1 締約国は、大麻又は大麻樹脂の生産のための大麻植物の栽培を許すときは、大麻植物につき、けしの統制について第二十三条に規定する統制制度と同様の統制制度を適用しなければならない。
2 この条約は、もっぱら産業上の目的(繊維及び種子に関する場合に限る。)又は園芸上の目的のための大麻植物の栽培には、適用しない。
3 締約国は、大麻植物の葉の悪用及び不正取引を防止するために必要な措置を執るものとする。
-第三十六条刑罰規定
1 (a)各締約国は、その憲法上の制限に従うことを条件として、この条約の規定に違反する栽培並びに薬品の生産、製造、抽出、製剤、所持、提供、販売のための提供、分配、購入、販売、交付(名目のいかんを問わない。)、仲介、発送、通過発送、輸送、輸入、輸出その他この条約の規定に違反すると当該締約国が認めるいかなる行為も、それが故意に行なわれたときは処罰すべき犯罪となることを確保し、並びに重大な犯罪に対しては特に拘禁刑又はその他の自由を剥奪する刑による相当な処罰が行なわれることを確保する措置を執らなければならない。
-第三十九条この条約が要求する措置より厳重な国内統制措置の適用
この条約のいかなる規定にもかかわらず、締約国は、この条約で定める措置より精細左又は厳重な統制措憧を執ること特に、附表Ⅲに掲げる製剤又は附表Ⅱに掲げる薬品に対し、附表Iに掲げる薬品に適用きれるすべての統制措置又はこれらのうち公衆の健康及び福祉を保護するために必要であり又は望ましいと認める統制措置を適用するものと定めることを妨げられないものとする。
-大麻が附表I及び附表Ⅳに分類されていることによって、その他、様々な規定の適用を受ける[13]。
1.1-2 麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(麻薬新条約)による規制の目的と内容
・麻薬新条約の目的
麻薬新条約は、麻薬及び向精神薬の不正な生産、需要及び取引が大量であり、かつ、増加傾向にあることを憂慮し、麻薬及び向精神薬の不正取引の大きな規模及び範囲並びにそのもたらす重大な結果に対処するために、1961年の麻薬に関する単一条約、1961年の麻薬に関する単一条約を改正する1972年の議定書により改正された同条約及び1971年の向精神薬に関する条約に定める措置を強化し及び補完することの必要性、不正取引に係る国際的な犯罪活動の防止を目的とする刑事問題に関する国際協力のための効果的な法律上の手段を強化することが重要であることを認め、特に不正取引の防止を目的とし、不正取引の問題全般の種々の部面、特に麻薬及び向精神薬の分野におけるそれまでの条約に定められていなかった部面について考慮する包括的、効果的及び実効的な国際条約を締結することを希望して制定された。
・麻薬新条約による大麻の規制の内容
大麻は、麻薬新条約第1条によって麻薬として定義されている[(n) 「麻薬」とは、1961年の麻薬に関する単一条約及び1961年の麻薬に関する単一条約を改正する1972年の議定書により改正された同条約の付表Ⅰ及び付表Ⅱに掲げる天然又は合成の物質をいう。]。大麻に関する主な規制は以下のような内容である。
-第3条(犯罪及び制裁)
1 締約国は、自国の国内法により、故意に行われた次の行為を犯罪とするため、必要な措置をとる。
(a)
(i) 1961年の条約、改正された1961年の条約又は1971年の条約の規定に違反して、麻薬又は向精神薬を生産し、製造し、抽出し、製剤し、提供し、販売のために提供し、分配し、販売し、交付(名目のいかんを問わない。)し、仲介し、発送し、通過発送し、輸送し、輸入し又は輸出すること。
(ii) 1961年の条約及び改正された1961年の条約の規定に違反して、麻薬を生産するためにけし、コカ樹又は大麻植物を栽培すること。
(iii) (i)に規定する行為のために麻薬又は向精神薬を所持し又は購入すること。
(iv) 麻薬又は向精神薬の不正な栽培、生産又は製造のために用いられることを知りながら、装置、原料又は付表I若しくは付表IIに掲げる物質を製造し、輸送し又は分配すること。
(c) 自国の憲法上の原則及び法制の基本的な概念に従うことを条件として、
(ii) 麻薬又は向精神薬の不正な裁培、生産又は製造のために用いられており又は用いられることを知りながら、装置、原料又は付表I若しくは付表IIに掲げる物質を所持すること。
(iii) この条の規定に従って定められる犯罪を実行し又は麻薬若しくは向精神薬を不正に使用することを方法のいかんを問わず公然とあおり又は唆すこと。
(iv) この条の規定に従って定められる犯罪に参加し、これを共謀し、これに係る未遂の罪を犯し、これをほう助し、教唆し若しくは援助し又はこれについて相談すること。
2 締約国は、自国の憲法上の原則及び法制の基本的な概念に従うことを条件として、自国の国内法により、1961年の条約、改正された1961年の条約又は1971年の条約の規定に違反して麻薬又は向精神薬を個人的な使用のために故意に所持し、購入し又は栽培することを犯罪とするため、必要な措置をとる。
4
(a) 締約国は、1の規定に従って定められる犯罪の実行につき、これらの犯罪の重大性を考慮した拘禁刑その他の形態の自由を剥奪する刑、罰金刑、没収等の制裁を科する。
(b) 締約国は、1の規定に従って定められる犯罪につき、有罪判決又は処罰のほかに、犯罪者が治療、教育、後保護、更生、社会復帰等の措置を受けることとすることができる。
(c) (a)及び(b)の規定にかかわらず、締約国は、軽微な性質の事件について適当な場合には、有罪判決又は処罰に代わるものとして、教育、更生、社会復帰等の措置を講ずることができるものとし、また、犯罪者が薬物の濫用者であるときは、治療及び後保護の措置を講ずることができる。
(d) 締約国は、2の規定に従って定められる犯罪につき、有罪判決若しくは処罰に代わるものとして又は有罪判決若しくは処罰のほかに、犯罪者の治療、教育、後保護、更生又は社会復帰のための措置を講ずることができる。
-第14条(麻薬植物の不正な栽培を撲滅し並びに麻薬及び向精神薬の不正な需要を無くすための措置)
1 締約国がこの条約によりとる措置は、1961年の条約、改正された1961年の条約及び1971年の条約の規定であって、麻薬及び向精神薬を含有する植物の不正な栽培を撲滅するため並びにこれらの麻薬及び向精神薬の不正な需要を無くすために適用されるものよりも緩やかなものであってはならない。
2 締約国は、麻薬又は向精神薬を含有するけし、コカ樹、大麻等の植物であって自国の領域内において不正に栽培されたものにつき、その不正な栽培を防止し及びこれらの植物を撲滅するための適当な措置をとる。その措置をとるに当たっては、基本的人権を尊重するものとし、また、歴史的にみてその証拠がある場合には伝統的かつ正当な使用について妥当な考慮を払うとともに、環境の保護についても妥当な考慮を払う。
-第24条(この条約が要求する措置よりも厳しい措置の適用)
締約国は、不正取引の防止のために必要であり又は望ましいと認める場合には、この条約の定める措置よりも精細な又は厳しい措置をとることができる。
-大麻が第1条によって麻薬として定義されていることによって、その他、様々な規定の適用を受ける[14]。
1.2 国際条約による大麻の規制の問題点
・現在の国際条約による大麻の規制は、1957年のWHOによる大麻の「身体的中毒性」を持つという定義に依るものであるが、当時、大麻の依存性についてどこまで科学的に把握できていたかは疑問が残る。事実、1965年のWHOによる大麻の依存性に関する定義では、大麻の身体的依存性はほとんどないと述べられており、また、1997年のWHOによる大麻に関する報告書では、「これまでのところ、退薬症候群の生成について一般的な合意がない。」と述べられている[8]。また、近年の大麻に関する研究には著しい進歩があり、信頼性の高い研究によって、大麻の有害性は、ヘロインやモルヒネ、コカインのみならず、現在は規制の対象外であるアルコールやたばこより低いことが報告されている[1,2,3]。このような大麻に関する最新の知見と照らし合わせて考えると現在の国際条約による大麻の規制は論理的整合性を欠く内容であり、これを改めなければ大麻問題の根本的な解決や適正に機能する薬物政策の実行は不可能である。
・現在の大麻に関する知見は、大麻が健康に重大な害をもたらす危険な薬物であると考えられ、医療目的での用途がはっきりとしていなかった麻薬単一条約制定時とは大きく異なり、大麻の適切な使用が、ストレス[4]や精神の緊張の緩和を促し[5]、体内の様々な器官での恒常性維持機能を高める働きをもたらす[4]ことは広く知られている。また、大麻は、多発性硬化症に伴う神経因性の疼痛[6]やオピオイド系薬剤による治療で効果の見られない末期がんの患者の疼痛[7]、AIDS患者の進行性食欲減退や体重減少などの症状を伴う消耗症候群[8]、アルコール依存症[9]など、様々な疾病の治療に有効であり、各種運動障害などの治療、依存性薬物の依存症[10]、神経保護作用薬[11]、精神疾患治療[12]などへの応用が期待されている[5,7]。実際に、大麻やイギリスGW製薬で臨床研究され、カナダで医薬品として認可され使用されている「サティベックス(Sativex®)」など、大麻からの抽出物を主成分とした薬剤が治療薬として認められ、処方されている国もある[7]。
・先進諸国の間では、大麻の健康への影響に関する最新の科学的知見、個人の価値観を尊重する考え方などに基づいて、薬物の害削減政策(ハームリダクション政策)として、個人的な使用目的の大麻の少量の所持については、逮捕しない政策を採用している国も多いが、栽培を禁止している国際条約との軋轢により、犯罪組織への莫大な不正利益の供給や取締りに費やされるコストの増大、各国の国民の薬物政策への信頼性の低下など、様々な問題が生じている。
・わが国においては、大麻の有害性はアルコールやたばこより低く、治療薬として有効であることが報告されているにも関わらず、禁止政策(ゼロトレランス政策)に基づいて、大麻が国際条約によって規制されている植物であることを理由に、大麻の個人的な使用目的や非営利的目的の為の所持や栽培が、懲役刑をもって全面的に禁止されている。また、医療上の目的の為に、大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること、大麻から製造された医薬品の施用を受けることさえも懲役刑をもって全面的に禁止されている。また、もっぱら産業上の目的の大麻の栽培のために、大麻栽培者免許の取得を正当な手続きを行って申請しても交付されない状況が続いている。こうした現在のわが国の大麻政策がもたらす社会的な損失は甚大であり、取締りに費やされる多額の税金の浪費や犯罪組織への不正利益の供給、国民の薬物政策への信頼性の低下、持続可能な社会の構築と発展の著しい妨害など様々な問題を引き起こし、末端の使用者に懲役刑を課すことや重病患者の生存権を著しく脅かすことなどで重篤な人権侵害をも引き起こしている。
2. わが国の大麻政策の現状と問題点
2.1 大麻政策の現状
・大麻が国際条約で禁止されている物質であることを理由に
-禁止政策(ゼロトレランス政策)に基づいて、大麻の個人的な使用目的や非営利的目的の為の所持や栽培、配布が、量や理由の如何を問わず、懲役刑をもって全面的に禁止されている。
-医療上の目的の為に、大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること、大麻から製造された医薬品の施用を受けることさえも懲役刑をもって全面的に禁止されている。
-「大麻は危険な薬物である」という固定観念に基づき、極端に大麻の有害性を誇張した科学的根拠のない情報を流し続けている[15]。また、このような情報を用いて、薬物乱用防止教育や裁判を行っている。
-産業利用目的で、正当な手続きを行って、大麻栽培者免許取得を申請しても交付されない。
-不正大麻撲滅運動と称して、野生の大麻草までも撲滅の対象とした活動を行っている。
2.2 大麻政策の問題点
・大麻の有害性はアルコールやたばこより低いことが明らかにされているにも関わらず、個人的な使用や非営利的目的の大麻の所持や栽培、配布を懲役刑をもって禁止することによって、大麻使用者に重篤な人権侵害を行っている。
・大麻使用者を犯罪組織と結び付け、覚せい剤などの危険なハードドラッグとの接触の機会を増加させ、犯罪組織に莫大な不正利益を供給している。
・アルコールやたばこより安全な代替として大麻を選択する権利が認められていない。
・大麻の取締りに費やす労力や費用が、大麻の実際の有害性に見合っておらず、税金を浪費している。
・医療上の目的の為に、大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること、大麻から製造された医薬品の施用を受けることさえも懲役刑をもって全面的に禁止することによって、患者の生存権を著しく脅かしている[16]。
・アルコールやたばこ、覚せい剤などの、より有害性の高い依存性薬物の依存症の治療に大麻を使用することが認められていない為、患者の依存性薬物からの脱却を困難にしている。
・薬物乱用防止教育と称して、極端に大麻の有害性を誇張した科学的根拠のない情報を流し続けることにより、主として、未成年者を含む若年層において、政府による薬物に関する情報への信頼性を著しく低下させ、深刻な混乱を引き起こしている。
・裁判で、大麻の有害性を立証する資料として、極端に大麻の有害性を誇張した科学的根拠のない情報を採用している為に、事実誤認による重篤な人権侵害を引き起こしている[17]。
・繰り返し利用することが可能な環境問題を改善する貴重な資源である大麻の栽培者免許の取得を過剰に厳しく制限することにより、持続可能な社会の構築と発展を著しく妨げている[18,19]。
・環境の保護について妥当な考慮を払うことを怠り、野生の大麻までも撲滅の対象としている為に、重篤な環境破壊を引き起こし、税金を浪費している。実際に、アサカミキリという昆虫が絶滅の危機に瀕している[20]。
3. 日本政府への提言
大麻の有害性と現在の大麻の規制による弊害を比較すると、規制による弊害のほうが遥かに大きく、現在の大麻の規制は適正に機能するものであるとはいえない。わが国における大麻政策の現状と諸問題が、古い国際条約による大麻の規制に起因することに鑑み、日本政府に対し以下の3つを提言する。
Ⅰ.国際条約による大麻の規制を最新の知見と照らし合わせ、薬学的、医学的、社会学的な観点から再検証するよう国連事務総長と麻薬委員会に働きかけることを求める。
Ⅱ.世界の全ての成人の個人使用目的及び非営利的目的の為の大麻の栽培と所持の権利を認めるよう国連事務総長と麻薬委員会に提議することを求める。
Ⅲ.禁止政策(ゼロトレランス政策)から害削減政策(ハームリダクション政策)への転換[21]の試みを行うことを求める。
以上
参考文献
1.House of Commons Science and Technology Committee: Drug classification: making a hash of it? Fifth Report of Session 2005-06 HC 1031
(http://www.publications.parliament.uk/pa/cm200506/cmselect/cmsctech/1031/1031.pdf)
2.David Nutt, Leslie A King, William Saulsbury, Colin Blakemore: Development of a rational scale to assess the harm of drugs of potential misuse
The Lancet - Vol. 369, Issue 9566, 24 March 2007, Pages 1047-1053
(http://www.ukcia.org/research/developmentofrationalscale/DevelopmentOfARationalScale.pdf)
3.Jack E. Henningfield, PhD for NIDA, Reported by Philip J. Hilts, New York Times, Aug. 2, 1994 "Is Nicotine Addictive? It Depends on Whose Criteria You Use."
(http://drugwarfacts.org/addictiv.htm)
4.Robert Melamede:Harm reduction-the cannabis paradox
Harm Reduction Journal Date: 22 September 2005
(http://www.harmreductionjournal.com/content/2/1/17#B2)
5.渡辺和人,木村敏行,舟橋達也,山折 大,山本郁男:大麻文化科学考(その15) 第15章 大麻からの創薬 -治療薬への応用-
Kazuhito Watanabe,Toshiyuki Kimura,Tatsuya Funabashi,Satoshi Yamaori,Ikuo Yamamoto:A study on the culture and sciences of the cannabis and marihuana XV
北陸大学 紀要 第28号 (2004) pp.17~32
(http://www.hokuriku-u.ac.jp/library/pdf/kiyo28/yaku2.pdf)
6.H.M. Meinck, P.W. Schonle, and B. Conrad:EFFECT OF CANNABINOIDS ON SPASTICITY AND ATAXIA IN MULTIPLE SCLEROSIS
J Neurol (1989) 236: 120-122
7.大塚製薬News Release2007年2月14日
(http://www.otsuka.co.jp/company/release/2007/0214_01.html)
8.WORLD HEALTH ORGANIZATION:Cannabis : a health perspective and research agenda
英文 (http://whqlibdoc.who.int/hq/1997/WHO_msa_PSA_97.4.pdf)
日本文 (http://www.asayake.jp/thc2/)
9.Tod H. Mikuriya:Cannabis as a Substitute for Alcohol:A Harm-Reduction Approach
Journal of Cannabis Therapeutics, Vol. 4(1) 2004
(http://www.mikuriya.com/cw_alcsub.pdf)
10.Taku Yamaguchi, Yumi Hagiwara, Hiroyuki Tanaka, Takayuki Sugiura, Keizo Waku, Yukihiro Shoyama, Shigenori Watanabe and Tsuneyuki Yamamoto:Endogenous cannabinoid, 2-arachidonoylglycerol, attenuates naloxone-precipitated withdrawal signs in morphine-dependent mice
Brain Research Volume 909, Issues 1-2, 3 August 2001, Pages 121-126
11.Carol Hamelink1, Aidan Hampson1, David A. Wink, Lee E. Eiden, and Robert L. Eskay:Comparison of Cannabidiol, Antioxidants, and Diuretics in Reversing Binge Ethanol-Induced Neurotoxicity
Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics. 2005
(http://jpet.aspetjournals.org/cgi/reprint/314/2/780.pdf)
12.Wen Jiang, Yun Zhang, Lan Xiao, Jamie Van Cleemput, Shao-Ping Ji, Guang Bai and Xia Zhang:Cannabinoids promote embryonic and adult hippocampus neurogenesis and produce anxiolytic- and antidepressant-like effects
The Journal of Clinical Investigation. 115(11): 3104-3116 (2005)
(http://www.jci.org/articles/view/25509/pdf)
13.1961年の麻薬に関する単一条約
英文 (http://www.unodc.org/pdf/convention_1961_en.pdf)
日本文 (http://asayake.jp/modules/report/index.php?page=article&storyid=625)
14.麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約
(http://www.houko.com/00/05/H04/006.HTM)
15.(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター:
大麻について (http://www.dapc.or.jp/data/taima/1.htm)
大麻の症状 (http://www.dapc.or.jp/data/taima/3.htm)
大麻の身体的影響 (http://www.dapc.or.jp/data/taima/3-1.htm)
大麻の身体的影響(詳細) (http://www.dapc.or.jp/data/taima/3-3.htm)
大麻の精神的影響 (http://www.dapc.or.jp/data/taima/3-2.htm)
16.医療大麻裁判
(http://www.iryotaimasaiban.org/index.html)
17.平成16年(う)第835号 大麻取締法違反被告事件 捜査報告書 大阪高等検察庁 検察官検事 藤田義清
(http://asayake.jp/modules/report/index.php?page=article&storyid=103)
18.中国新聞 2002年8月27日:「えーっ大麻で町おこし!? かつて一大産地 広島県大朝町」油や繊維素材で再評価 法の壁 栽培は当面ダメ
19.毎日新聞 2006年8月30日:「見直される環境にやさしい大麻草」
(http://www.new-age-trading.com/media/mainichi20060830/index.html)
20.アサカミキリ 学名:Thyestilla gebleri 分類: コウチュウ目 カミキリムシ科
環境省カテゴリ: 準絶滅危惧(NT)(http://www.jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=07170943591)
21.Drugs – facing facts: The report of the RSA Commission on Illegal Drugs,Communities and Public Policy March 2007
(http://www.rsadrugscommission.org.uk/pdf/RSA_Drugs_Report.pdf)
- 大麻の可能性を活かせる社会の構築に向けて -
大麻取締法被害者センター
概要
大麻は1961年の麻薬に関する単一条約(麻薬単一条約)及び麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(麻薬新条約)によって、けし、コカ樹などと同様に規制されている植物であるが、近年の研究によって、大麻の有害性は、ヘロインやモルヒネ、コカインのみならず、現在は規制の対象外であるアルコールやたばこより低いことが報告されている[1,2,3]。
大麻の適切な使用が、ストレス[4]や精神の緊張の緩和を促し[5]、体内の様々な器官での恒常性維持機能を高める働きをもたらす[4]ことは広く知られている。また、大麻は古くから医薬品として用いられており、多発性硬化症に伴う神経因性の疼痛[6]やオピオイド系薬剤による治療で効果の見られない末期がんの患者の疼痛[7]、AIDS患者の進行性食欲減退や体重減少などの症状を伴う消耗症候群[8]、アルコール依存症[9]など、様々な疾病の治療に有効であり、各種運動障害などの治療、依存性薬物の依存症[10]、神経保護作用薬[11]、精神疾患治療[12]などへの応用が期待されている[5,7]。実際に、大麻や大麻からの抽出物を主成分とした薬剤が治療薬として認められ、処方されている国もある[7]。
先進諸国の間では、大麻の健康への影響に関する最新の科学的知見、個人の価値観を尊重する考え方などに基づいて、薬物の害削減政策(ハームリダクション政策)として、個人的な使用目的の大麻の少量の所持については、逮捕しない政策を採用している国も多いが、栽培を禁止している国際条約との軋轢により、犯罪組織への莫大な不正利益の供給や取締りに費やされるコストの増大、各国の国民の薬物政策への信頼性の低下など、様々な問題が生じており、現在の国際条約を改めるよう求める声が上がっている。
一方、わが国においては、禁止政策(ゼロトレランス政策)に基づいて、大麻が国際条約によって規制されている植物であることを理由に、大麻の個人的な使用目的や非営利的目的の為の所持や栽培が、懲役刑をもって全面的に禁止されている。また、医療上の目的の為に、大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること、大麻から製造された医薬品の施用を受けることさえも懲役刑をもって全面的に禁止されている。また、もっぱら産業上の目的の大麻の栽培のために、大麻栽培者免許の取得を正当な手続きを行って申請しても交付されない状況が続いている。こうした現在のわが国の大麻政策がもたらす社会的な損失は甚大であり、取締りに費やされる多額の税金の浪費や犯罪組織への不正利益の供給、国民の薬物政策への信頼性の低下、持続可能な社会の構築と発展の著しい妨害など様々な問題を引き起こし、末端の使用者に懲役刑を課すことや重病患者の生存権を著しく脅かすことなどで重篤な人権侵害をも引き起こしている。
現在のわが国の大麻政策が引き起こす様々な問題が、古い国際条約による大麻の規制と政府の古い情報に基づく大麻の有害性の過大評価や認識の誤りに起因することは明らかである。現在の国際条約による大麻の規制は、大麻に関する最新の知見と照らし合わせて考えると論理的整合性を欠く内容であり、これを改めなければ大麻問題の根本的な解決や適正に機能する薬物政策の実行は不可能である。2008年、国連は、この1年を「反省と熟慮の年」(Year of Reflection)とすることを明言しており、過去10年間の薬物政策を総括し、新しい政策を話し合う会議が開催されることから、古い国際条約に起因する大麻問題の解決と大麻取締法の抜本的な改正に向けて、日本政府に対し以下のとおり提言する。
Ⅰ.国際条約による大麻の規制を最新の知見と照らし合わせ、薬学的、医学的、社会学的な観点から再検証するよう国連事務総長と麻薬委員会に働きかけることを求める。
Ⅱ.世界の全ての成人の個人使用目的及び非営利的目的の為の大麻の栽培と所持の権利を認めるよう国連事務総長と麻薬委員会に提議することを求める。
Ⅲ.禁止政策(ゼロトレランス政策)から害削減政策(ハームリダクション政策)への転換[21]の試みを行うことを求める。
1. 国際条約による大麻の規制の現状と問題点
1.1 国際条約による大麻の規制の現状
大麻は1961年の麻薬に関する単一条約(麻薬単一条約)、1961年の麻薬に関する単一条約を改正する1972年の議定書により改正された同条約及び麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(麻薬新条約)によって、ヘロインやモルヒネ、けし、コカ樹などと同様に厳しく規制されている[13,14]。大麻がこのように厳しく規制されている根拠は、1957年のWHOによる大麻の「身体的中毒性」を持つという定義に依るものである。
1.1-1 1961年の麻薬に関する単一条約(麻薬単一条約)による規制の目的と内容
・麻薬単一条約の目的
麻薬単一条約は、人類の健康及び福祉に配慮し、麻薬の医療上の使用が苦痛の軽減のために不可欠であることやこの目的のための麻薬の入手を確保するために適切な措置を執らなければならないこと、麻薬の中毒が個人にとって重大な害悪であり、人類に対する社会的、経済的な危険を伴うものであることを認め、国際協力によって、麻薬の生産、製造、輸出、輸入、分配、取引、使用及び所持を医療上及び学術上の目的に制限するために、それまでの非常に複雑な体系となっていた9つの協定及び議定書を統合し、普遍的に受けいれられる国際条約を締結することを目的として制定された。
・麻薬単一条約による大麻の規制の内容
麻薬単一条約によって、大麻は特に危険な特性を有するものとして、附表I及び附表Ⅳに分類され、ヘロインやモルヒネと同等に最も厳しい規制を受けている。大麻がこのように分類されているのは、1957年のWHOによる大麻の「身体的中毒性」を持つという定義に依る。大麻に関する主な規制は以下のような内容である。
-第二十二条栽培に適用される特別規定
1 締約国は、自国又はその領域における一般的状況から判断して、けし、コカ樹又は大麻植物の栽培を禁止することが公衆の健康及び福祉を保護し並びに薬品が不正取引に向けられることを防止するために最も適した措置であると認めるときは、栽培を禁止しなければならない。
2 けし又は大麻植物の栽培を禁止する締約国は、学術上又は研究上の目的のためその締約国に必要とされる少量を除くほか、不正に栽培された植物を押収し、かつ、廃棄するために適当な措置を執らなければならない。
-第二十八条大麻の統制
1 締約国は、大麻又は大麻樹脂の生産のための大麻植物の栽培を許すときは、大麻植物につき、けしの統制について第二十三条に規定する統制制度と同様の統制制度を適用しなければならない。
2 この条約は、もっぱら産業上の目的(繊維及び種子に関する場合に限る。)又は園芸上の目的のための大麻植物の栽培には、適用しない。
3 締約国は、大麻植物の葉の悪用及び不正取引を防止するために必要な措置を執るものとする。
-第三十六条刑罰規定
1 (a)各締約国は、その憲法上の制限に従うことを条件として、この条約の規定に違反する栽培並びに薬品の生産、製造、抽出、製剤、所持、提供、販売のための提供、分配、購入、販売、交付(名目のいかんを問わない。)、仲介、発送、通過発送、輸送、輸入、輸出その他この条約の規定に違反すると当該締約国が認めるいかなる行為も、それが故意に行なわれたときは処罰すべき犯罪となることを確保し、並びに重大な犯罪に対しては特に拘禁刑又はその他の自由を剥奪する刑による相当な処罰が行なわれることを確保する措置を執らなければならない。
-第三十九条この条約が要求する措置より厳重な国内統制措置の適用
この条約のいかなる規定にもかかわらず、締約国は、この条約で定める措置より精細左又は厳重な統制措憧を執ること特に、附表Ⅲに掲げる製剤又は附表Ⅱに掲げる薬品に対し、附表Iに掲げる薬品に適用きれるすべての統制措置又はこれらのうち公衆の健康及び福祉を保護するために必要であり又は望ましいと認める統制措置を適用するものと定めることを妨げられないものとする。
-大麻が附表I及び附表Ⅳに分類されていることによって、その他、様々な規定の適用を受ける[13]。
1.1-2 麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(麻薬新条約)による規制の目的と内容
・麻薬新条約の目的
麻薬新条約は、麻薬及び向精神薬の不正な生産、需要及び取引が大量であり、かつ、増加傾向にあることを憂慮し、麻薬及び向精神薬の不正取引の大きな規模及び範囲並びにそのもたらす重大な結果に対処するために、1961年の麻薬に関する単一条約、1961年の麻薬に関する単一条約を改正する1972年の議定書により改正された同条約及び1971年の向精神薬に関する条約に定める措置を強化し及び補完することの必要性、不正取引に係る国際的な犯罪活動の防止を目的とする刑事問題に関する国際協力のための効果的な法律上の手段を強化することが重要であることを認め、特に不正取引の防止を目的とし、不正取引の問題全般の種々の部面、特に麻薬及び向精神薬の分野におけるそれまでの条約に定められていなかった部面について考慮する包括的、効果的及び実効的な国際条約を締結することを希望して制定された。
・麻薬新条約による大麻の規制の内容
大麻は、麻薬新条約第1条によって麻薬として定義されている[(n) 「麻薬」とは、1961年の麻薬に関する単一条約及び1961年の麻薬に関する単一条約を改正する1972年の議定書により改正された同条約の付表Ⅰ及び付表Ⅱに掲げる天然又は合成の物質をいう。]。大麻に関する主な規制は以下のような内容である。
-第3条(犯罪及び制裁)
1 締約国は、自国の国内法により、故意に行われた次の行為を犯罪とするため、必要な措置をとる。
(a)
(i) 1961年の条約、改正された1961年の条約又は1971年の条約の規定に違反して、麻薬又は向精神薬を生産し、製造し、抽出し、製剤し、提供し、販売のために提供し、分配し、販売し、交付(名目のいかんを問わない。)し、仲介し、発送し、通過発送し、輸送し、輸入し又は輸出すること。
(ii) 1961年の条約及び改正された1961年の条約の規定に違反して、麻薬を生産するためにけし、コカ樹又は大麻植物を栽培すること。
(iii) (i)に規定する行為のために麻薬又は向精神薬を所持し又は購入すること。
(iv) 麻薬又は向精神薬の不正な栽培、生産又は製造のために用いられることを知りながら、装置、原料又は付表I若しくは付表IIに掲げる物質を製造し、輸送し又は分配すること。
(c) 自国の憲法上の原則及び法制の基本的な概念に従うことを条件として、
(ii) 麻薬又は向精神薬の不正な裁培、生産又は製造のために用いられており又は用いられることを知りながら、装置、原料又は付表I若しくは付表IIに掲げる物質を所持すること。
(iii) この条の規定に従って定められる犯罪を実行し又は麻薬若しくは向精神薬を不正に使用することを方法のいかんを問わず公然とあおり又は唆すこと。
(iv) この条の規定に従って定められる犯罪に参加し、これを共謀し、これに係る未遂の罪を犯し、これをほう助し、教唆し若しくは援助し又はこれについて相談すること。
2 締約国は、自国の憲法上の原則及び法制の基本的な概念に従うことを条件として、自国の国内法により、1961年の条約、改正された1961年の条約又は1971年の条約の規定に違反して麻薬又は向精神薬を個人的な使用のために故意に所持し、購入し又は栽培することを犯罪とするため、必要な措置をとる。
4
(a) 締約国は、1の規定に従って定められる犯罪の実行につき、これらの犯罪の重大性を考慮した拘禁刑その他の形態の自由を剥奪する刑、罰金刑、没収等の制裁を科する。
(b) 締約国は、1の規定に従って定められる犯罪につき、有罪判決又は処罰のほかに、犯罪者が治療、教育、後保護、更生、社会復帰等の措置を受けることとすることができる。
(c) (a)及び(b)の規定にかかわらず、締約国は、軽微な性質の事件について適当な場合には、有罪判決又は処罰に代わるものとして、教育、更生、社会復帰等の措置を講ずることができるものとし、また、犯罪者が薬物の濫用者であるときは、治療及び後保護の措置を講ずることができる。
(d) 締約国は、2の規定に従って定められる犯罪につき、有罪判決若しくは処罰に代わるものとして又は有罪判決若しくは処罰のほかに、犯罪者の治療、教育、後保護、更生又は社会復帰のための措置を講ずることができる。
-第14条(麻薬植物の不正な栽培を撲滅し並びに麻薬及び向精神薬の不正な需要を無くすための措置)
1 締約国がこの条約によりとる措置は、1961年の条約、改正された1961年の条約及び1971年の条約の規定であって、麻薬及び向精神薬を含有する植物の不正な栽培を撲滅するため並びにこれらの麻薬及び向精神薬の不正な需要を無くすために適用されるものよりも緩やかなものであってはならない。
2 締約国は、麻薬又は向精神薬を含有するけし、コカ樹、大麻等の植物であって自国の領域内において不正に栽培されたものにつき、その不正な栽培を防止し及びこれらの植物を撲滅するための適当な措置をとる。その措置をとるに当たっては、基本的人権を尊重するものとし、また、歴史的にみてその証拠がある場合には伝統的かつ正当な使用について妥当な考慮を払うとともに、環境の保護についても妥当な考慮を払う。
-第24条(この条約が要求する措置よりも厳しい措置の適用)
締約国は、不正取引の防止のために必要であり又は望ましいと認める場合には、この条約の定める措置よりも精細な又は厳しい措置をとることができる。
-大麻が第1条によって麻薬として定義されていることによって、その他、様々な規定の適用を受ける[14]。
1.2 国際条約による大麻の規制の問題点
・現在の国際条約による大麻の規制は、1957年のWHOによる大麻の「身体的中毒性」を持つという定義に依るものであるが、当時、大麻の依存性についてどこまで科学的に把握できていたかは疑問が残る。事実、1965年のWHOによる大麻の依存性に関する定義では、大麻の身体的依存性はほとんどないと述べられており、また、1997年のWHOによる大麻に関する報告書では、「これまでのところ、退薬症候群の生成について一般的な合意がない。」と述べられている[8]。また、近年の大麻に関する研究には著しい進歩があり、信頼性の高い研究によって、大麻の有害性は、ヘロインやモルヒネ、コカインのみならず、現在は規制の対象外であるアルコールやたばこより低いことが報告されている[1,2,3]。このような大麻に関する最新の知見と照らし合わせて考えると現在の国際条約による大麻の規制は論理的整合性を欠く内容であり、これを改めなければ大麻問題の根本的な解決や適正に機能する薬物政策の実行は不可能である。
・現在の大麻に関する知見は、大麻が健康に重大な害をもたらす危険な薬物であると考えられ、医療目的での用途がはっきりとしていなかった麻薬単一条約制定時とは大きく異なり、大麻の適切な使用が、ストレス[4]や精神の緊張の緩和を促し[5]、体内の様々な器官での恒常性維持機能を高める働きをもたらす[4]ことは広く知られている。また、大麻は、多発性硬化症に伴う神経因性の疼痛[6]やオピオイド系薬剤による治療で効果の見られない末期がんの患者の疼痛[7]、AIDS患者の進行性食欲減退や体重減少などの症状を伴う消耗症候群[8]、アルコール依存症[9]など、様々な疾病の治療に有効であり、各種運動障害などの治療、依存性薬物の依存症[10]、神経保護作用薬[11]、精神疾患治療[12]などへの応用が期待されている[5,7]。実際に、大麻やイギリスGW製薬で臨床研究され、カナダで医薬品として認可され使用されている「サティベックス(Sativex®)」など、大麻からの抽出物を主成分とした薬剤が治療薬として認められ、処方されている国もある[7]。
・先進諸国の間では、大麻の健康への影響に関する最新の科学的知見、個人の価値観を尊重する考え方などに基づいて、薬物の害削減政策(ハームリダクション政策)として、個人的な使用目的の大麻の少量の所持については、逮捕しない政策を採用している国も多いが、栽培を禁止している国際条約との軋轢により、犯罪組織への莫大な不正利益の供給や取締りに費やされるコストの増大、各国の国民の薬物政策への信頼性の低下など、様々な問題が生じている。
・わが国においては、大麻の有害性はアルコールやたばこより低く、治療薬として有効であることが報告されているにも関わらず、禁止政策(ゼロトレランス政策)に基づいて、大麻が国際条約によって規制されている植物であることを理由に、大麻の個人的な使用目的や非営利的目的の為の所持や栽培が、懲役刑をもって全面的に禁止されている。また、医療上の目的の為に、大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること、大麻から製造された医薬品の施用を受けることさえも懲役刑をもって全面的に禁止されている。また、もっぱら産業上の目的の大麻の栽培のために、大麻栽培者免許の取得を正当な手続きを行って申請しても交付されない状況が続いている。こうした現在のわが国の大麻政策がもたらす社会的な損失は甚大であり、取締りに費やされる多額の税金の浪費や犯罪組織への不正利益の供給、国民の薬物政策への信頼性の低下、持続可能な社会の構築と発展の著しい妨害など様々な問題を引き起こし、末端の使用者に懲役刑を課すことや重病患者の生存権を著しく脅かすことなどで重篤な人権侵害をも引き起こしている。
2. わが国の大麻政策の現状と問題点
2.1 大麻政策の現状
・大麻が国際条約で禁止されている物質であることを理由に
-禁止政策(ゼロトレランス政策)に基づいて、大麻の個人的な使用目的や非営利的目的の為の所持や栽培、配布が、量や理由の如何を問わず、懲役刑をもって全面的に禁止されている。
-医療上の目的の為に、大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること、大麻から製造された医薬品の施用を受けることさえも懲役刑をもって全面的に禁止されている。
-「大麻は危険な薬物である」という固定観念に基づき、極端に大麻の有害性を誇張した科学的根拠のない情報を流し続けている[15]。また、このような情報を用いて、薬物乱用防止教育や裁判を行っている。
-産業利用目的で、正当な手続きを行って、大麻栽培者免許取得を申請しても交付されない。
-不正大麻撲滅運動と称して、野生の大麻草までも撲滅の対象とした活動を行っている。
2.2 大麻政策の問題点
・大麻の有害性はアルコールやたばこより低いことが明らかにされているにも関わらず、個人的な使用や非営利的目的の大麻の所持や栽培、配布を懲役刑をもって禁止することによって、大麻使用者に重篤な人権侵害を行っている。
・大麻使用者を犯罪組織と結び付け、覚せい剤などの危険なハードドラッグとの接触の機会を増加させ、犯罪組織に莫大な不正利益を供給している。
・アルコールやたばこより安全な代替として大麻を選択する権利が認められていない。
・大麻の取締りに費やす労力や費用が、大麻の実際の有害性に見合っておらず、税金を浪費している。
・医療上の目的の為に、大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること、大麻から製造された医薬品の施用を受けることさえも懲役刑をもって全面的に禁止することによって、患者の生存権を著しく脅かしている[16]。
・アルコールやたばこ、覚せい剤などの、より有害性の高い依存性薬物の依存症の治療に大麻を使用することが認められていない為、患者の依存性薬物からの脱却を困難にしている。
・薬物乱用防止教育と称して、極端に大麻の有害性を誇張した科学的根拠のない情報を流し続けることにより、主として、未成年者を含む若年層において、政府による薬物に関する情報への信頼性を著しく低下させ、深刻な混乱を引き起こしている。
・裁判で、大麻の有害性を立証する資料として、極端に大麻の有害性を誇張した科学的根拠のない情報を採用している為に、事実誤認による重篤な人権侵害を引き起こしている[17]。
・繰り返し利用することが可能な環境問題を改善する貴重な資源である大麻の栽培者免許の取得を過剰に厳しく制限することにより、持続可能な社会の構築と発展を著しく妨げている[18,19]。
・環境の保護について妥当な考慮を払うことを怠り、野生の大麻までも撲滅の対象としている為に、重篤な環境破壊を引き起こし、税金を浪費している。実際に、アサカミキリという昆虫が絶滅の危機に瀕している[20]。
3. 日本政府への提言
大麻の有害性と現在の大麻の規制による弊害を比較すると、規制による弊害のほうが遥かに大きく、現在の大麻の規制は適正に機能するものであるとはいえない。わが国における大麻政策の現状と諸問題が、古い国際条約による大麻の規制に起因することに鑑み、日本政府に対し以下の3つを提言する。
Ⅰ.国際条約による大麻の規制を最新の知見と照らし合わせ、薬学的、医学的、社会学的な観点から再検証するよう国連事務総長と麻薬委員会に働きかけることを求める。
Ⅱ.世界の全ての成人の個人使用目的及び非営利的目的の為の大麻の栽培と所持の権利を認めるよう国連事務総長と麻薬委員会に提議することを求める。
Ⅲ.禁止政策(ゼロトレランス政策)から害削減政策(ハームリダクション政策)への転換[21]の試みを行うことを求める。
以上
参考文献
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(http://www.publications.parliament.uk/pa/cm200506/cmselect/cmsctech/1031/1031.pdf)
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(http://www.ukcia.org/research/developmentofrationalscale/DevelopmentOfARationalScale.pdf)
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(http://www.harmreductionjournal.com/content/2/1/17#B2)
5.渡辺和人,木村敏行,舟橋達也,山折 大,山本郁男:大麻文化科学考(その15) 第15章 大麻からの創薬 -治療薬への応用-
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(http://www.hokuriku-u.ac.jp/library/pdf/kiyo28/yaku2.pdf)
6.H.M. Meinck, P.W. Schonle, and B. Conrad:EFFECT OF CANNABINOIDS ON SPASTICITY AND ATAXIA IN MULTIPLE SCLEROSIS
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9.Tod H. Mikuriya:Cannabis as a Substitute for Alcohol:A Harm-Reduction Approach
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10.Taku Yamaguchi, Yumi Hagiwara, Hiroyuki Tanaka, Takayuki Sugiura, Keizo Waku, Yukihiro Shoyama, Shigenori Watanabe and Tsuneyuki Yamamoto:Endogenous cannabinoid, 2-arachidonoylglycerol, attenuates naloxone-precipitated withdrawal signs in morphine-dependent mice
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11.Carol Hamelink1, Aidan Hampson1, David A. Wink, Lee E. Eiden, and Robert L. Eskay:Comparison of Cannabidiol, Antioxidants, and Diuretics in Reversing Binge Ethanol-Induced Neurotoxicity
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12.Wen Jiang, Yun Zhang, Lan Xiao, Jamie Van Cleemput, Shao-Ping Ji, Guang Bai and Xia Zhang:Cannabinoids promote embryonic and adult hippocampus neurogenesis and produce anxiolytic- and antidepressant-like effects
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(http://www.jci.org/articles/view/25509/pdf)
13.1961年の麻薬に関する単一条約
英文 (http://www.unodc.org/pdf/convention_1961_en.pdf)
日本文 (http://asayake.jp/modules/report/index.php?page=article&storyid=625)
14.麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約
(http://www.houko.com/00/05/H04/006.HTM)
15.(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター:
大麻について (http://www.dapc.or.jp/data/taima/1.htm)
大麻の症状 (http://www.dapc.or.jp/data/taima/3.htm)
大麻の身体的影響 (http://www.dapc.or.jp/data/taima/3-1.htm)
大麻の身体的影響(詳細) (http://www.dapc.or.jp/data/taima/3-3.htm)
大麻の精神的影響 (http://www.dapc.or.jp/data/taima/3-2.htm)
16.医療大麻裁判
(http://www.iryotaimasaiban.org/index.html)
17.平成16年(う)第835号 大麻取締法違反被告事件 捜査報告書 大阪高等検察庁 検察官検事 藤田義清
(http://asayake.jp/modules/report/index.php?page=article&storyid=103)
18.中国新聞 2002年8月27日:「えーっ大麻で町おこし!? かつて一大産地 広島県大朝町」油や繊維素材で再評価 法の壁 栽培は当面ダメ
19.毎日新聞 2006年8月30日:「見直される環境にやさしい大麻草」
(http://www.new-age-trading.com/media/mainichi20060830/index.html)
20.アサカミキリ 学名:Thyestilla gebleri 分類: コウチュウ目 カミキリムシ科
環境省カテゴリ: 準絶滅危惧(NT)(http://www.jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=07170943591)
21.Drugs – facing facts: The report of the RSA Commission on Illegal Drugs,Communities and Public Policy March 2007
(http://www.rsadrugscommission.org.uk/pdf/RSA_Drugs_Report.pdf)
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