学校でのドラッグ・テスト
反対する10の理由
NORML
JUST SAY NO TO RANDOM STUDENT DRUG TESTING
http://www.norml.org/pdf_files/Just_Say_No_Random_Student_Drug_Testing.pdf
1.
学校の抜き打ちドラッグ・テストは、生徒たちのドラッグ使用をやめさせることに失敗している。
全国ベースで生徒のドラッグ・テストの影響を知ることのできる政府の唯一の研究結果によると、「ここ数年で行われたアメリカの中等学校(中学および高校)でのドラッグ・テストの実施によって、生徒のドラッグ使用を阻止したり抑制することはできていない。」 [1]
研究は、894校の9万4000人の生徒のデータを集めて行われたもので、ドラッグ・テストを実施している学校と行っていない学校を比較すると、違法ドラッグを使用している生徒の割合はどの学年でもほぼ同じで変わらない、と結論を出している。さらに、アメリカ科学アカデミーは、「ドラッグ・テストの抑止効果が実証されたことはなく・・・現在までのところ、科学的に適正な対照研究を使って、抜き打ちドラッグ・テストが効果的にドラッグ使用を阻止してリハビリを促進するという結論を導き出されたことはない。」 [2]
2.
学校の抜き打ちドラッグ・テストは、生徒と先生の信頼関係をむしばんでいる。
抜き打ちドラッグ・テストの実施を義務化している地域では、生徒の学校に対するネガティブな態度がより大きく顕在化していることが研究で明らかになっている。 [3] このことは、教育環境での生徒とスタッフの信頼関係を失わせ、結果として、生徒の学業の他の面でも悪影響を及ぼす。 [4]
ドラッグ・テストは、生徒が違法な行動をしていないという前提からではなく、潔白が証明されない限りドラッグを使っているだろうという嫌疑から行われている。これでは、大人の側が自分たちの子供を信用していないというメッセージを送っていることになってしまう。
3.
学校の抜き打ちドラッグ・テストは、生徒たちを無茶な飲酒やハード・ドラッグへとエクカレートさせてしまう。
イギリスの著名なジョセフ・ロウントリー・ファンデーションに掲載された2005年の報告書によると、「一部の生徒たちを、カナビスのような比較的検知期間の長いものから、もっと早く体外へ排出されてしまうドラッグへと移行させてしまい」 当初の抜き打ちドラッグ・テストとは意図に反した逆の結果をもたらしている。そうしたドラッグには、アルコールのほか、さらに危険なコカインやヘロインも含まれている。 [5]
4.
学校の抜き打ちドラッグ・テストは、主に、ドラッグ乱用問題を抱えていそうな生徒をターゲットにしている。
たとえ、ターゲットを定めないでドラッグ・テストを実施しても、課外活動に熱中しているような生徒まで巻き込んでしまう。リスクの淵におかれた生徒にとってはそうした活動に参加することで救われる可能性があるのに、ドラッグ・テストをやられるのではないかという恐怖心から活動に参加しなくなってしまう。
5.
学校の抜き打ちドラッグ・テストは、生徒の課外活動への参加意欲を低下させ、リスクの多い生徒であるほど違法ドラッグやアルコールに追いやってしまう。
アメリカ小児アカデミーの学校保険委員会の議長ハワード・タラス博士によると、「ドラッグ・テストは、ドラッグを常用したり使ったことのある生徒たちの課外活動への参加意欲を削いでしまっている。そうした健康的な活動への参加できないと、青少年は学校をドロップ・アウトしたり、妊娠したり、ギャングに加わったり、ドラッグを追い求めて乱用したりするなど危険な行動に陥りやすい。」 [6] としている。
こうしたことを反映して、アメリカ教育協会やアメリカ公衆衛生協会、アメリカ小児アカデミー、アルコール依存症とドラッグ乱用に関する国家協議会なども含め多数の機関が、放課後の活動に参加を希望する生徒に強制している抜き打ちドラッグ・テスト政策に反対している。
6.
学校の抜き打ちドラッグ・テストは、多額の費用がかかる。
ドラッグ・テスト政策の実施には、しばしば、数百から数千ドルの用具を必要とする。このために、ほとんどが連邦資金に頼ることになる。しかし、納税者の税金をこのような効果の立証されていない政策につぎ込む合理性はなく、代わりに、子供たちの健康や安全を保つために役立つことの分かっている教育カウンセラーや放課後の課外活動に費やすべきだ。
7.
学校の抜き打ちドラッグ・テストは、侵害的で屈辱的である。
ドラッグ・テストは屈辱的で、正当な法手続きと無罪推定という昔から続くアメリカの基本原則に背く侵害的な行為になっている。生徒は自分の意志に反して証拠を強制的に提出させられ、公立学校資格の必須保護条件であるプライバシー権まで剥奪されることになる。
先生や学校関係者であっても、大半が、自分の監督官からドラッグ・テストで尿を提出することを命令じられるとたじろいでしまう。生徒の場合となんら違いはない。
8.
ドラッグやアルコールは、まず生徒と親の問題で、学校関係者が第一に立ち入ることではない。学校は子供を教育するところで警察ではなく、学校関係者は親の代理人でもない。未成年の飲酒やドラッグ問題は、基本的に親と子供の間で扱うようにしておくのが最善の結果を生む。
9.
ドラッグ・テストは、機能障害の程度や最近の使用状況や頻度を判定できるわけではない。
尿分析は、ドラッグそのものを検知するものではなく、体内で代謝された残留物の存在を調べるに過ぎず、ドラッグによる機能障害の程度を測定するのに適しているわけではない。アメリカ司法省によれば、ドラッグ代謝物の存在が確認されたとしても「それは・・・最近の使用状況や頻度、使用量、機能障害を表すわけではない。」 [7] 要するに、ドラッグ・テストで陽性を示したからといって、生徒のドラッグ利用状況について、両親や学校関係者に役に立つ情報はほとんどなにもたらさない。
10.
大半の学校はドラッグ・テストの実施を拒否している。
アメリカ全国では、95%の学校がスポーツ活動に参加している生徒に抜き打ちドラッグ・テストを実施しておらず、スポーツ関係以外の課外活動に参加している生徒に対してドラッグ・テストを実施しているのは2%に過ぎない。
参考文献
1 L. Johnston et al. Drug Testing in Schools: Policies, Practices, and Associations With Student Drug Use. 2003. University of Michigan, Institute for Social Research, Ann Arbor. http://www.rwjf.org/research/researchdetail.jsp ?id=1234&ia=131
2 National Academy of Sciences, Institute of Medicine. Under the Influence? Drugs and the American Workforce. 1994. National Academy Press, Washington, DC.
3 L. Goldberg et al. 2003. Drug testing athletes to prevent substance abuse: background and pilot study results of the SATURN (student athlete testing using random notification) study. Journal of Adolescent Health 32: 16-25.
4 Joseph Rowntree Foundation. Random Drug Testing of Schoolchildren: A Shot in the Arm or a Shot in the Foot for Drug Prevention? 2005. York Publishing Services, Layerthorpe.
5 Joseph Rowntree Foundation. “Review highlights lack of evidence to support random drug testing in schools.” February 23, 2005. http://www.jrf.org.uk/pressroom/releases/230205.asp
6 Howard Taras. “Drug testing in schools: Can it cause harm?” May 22, 2003. San Diego Tribune.
7 US Department of Justice, Bureau of Justice Statistics. Drugs, Crime, and the Justice System (NCJ- 133652). December 1992.
|