カナビス・ドラッグテストのAからZまで

NORML Report
The ABCs of Marijuana and Drug Testing
Updated: Aug 22, 2006
Paul Armentano, NORML Senior Policy Analyst
http://www.norml.org//index.cfm?Group_ID=6991



子供が成長するときには、物事を基礎となるABCから学び始めて、段々と理解を深めてどのように生きていったらよいのか知恵を獲得するものだが、職場でドラッグテストを受けなければならないような現在の陰湿なジョージ・オーウェル的監視社会の中で、カナビス・ユーザーとして人生をうまく生き抜いていくためには、さらに別のABC、つまりドラッグテストのAからZまでを学んでおくことが重要になってきている。


A 窶 混ぜもの (adulterant)

混ぜものとは、採取した尿サンプルに別の物質を入れて、結果が陰性になるように細工することを意味する。こうして得られた陰性は、俗に「偽陰性」とも呼ばれる。混ぜものとしては、洗剤、ビザイン(グルタルアルデヒド)を始め、硝酸エステルのような酸化剤、例えば、クレアー などさまざまな化学物質が使われているが、ドラッグテスト産業側の対策も進んでおり、簡単に発覚してしまう。しかしながら、リスクを厭わない人向けに、監視の目をかいくぐって入れれば成功間違いなしと称する新手の混ぜものも次から次へと登場している。


B 窶 血液検査 (blood testing)

血液検査は、精神不活性の 代謝物 を検知する 尿検査 と違い、直接体内の違法ドラッグの存在の有無を調べるために行われる。長期ヘビー・ユーザーの場合は、感度のよい血液検査ではカナビス摂取後24時間以上にわたってTHCの残存が確認されることもあるが、ほとんどの場合は数時間過ぎれば感知されないレベルまでTHCは代謝されてしまう。このように血液検査は感知可能時間が短いので、職場で使われるのは大半は事故などを起こしたケースで、直前にカナビスを摂取していなかったかどうかを調べる場合に限られている。従って,時間が経ってからの血液検査には余り神経質になる必要はない。


C 窶 クレアチニン (creatinine)

クレアチニンは、筋肉で自然に生成されるクレアチンという物質が代謝してできる化合物で、ある範囲のレベルで尿に含くまれている。クレアチニンのレベルは、pH、、比重などで調べられるが、尿検査では、クレアチニンのレベルを測定することで、サンプルが事前の多量の水分摂取で希釈されているかどうかがチェックしている。これに対抗して、ドラッグテストをかいくぐろうと指南する人たちは、ラボで希釈が判明しないように、ビタミンBやリボフラビン、あるいは、サプリメントのクレアチンを摂取するなど、いくつかの方法で成功していると主張している。


D - 利尿剤 (diuretic)

利尿剤は、尿の排出を促す物質の総称で、その中には、カフェイン、クランベリージュース、解毒作用があるとして販売されているハーブティーなども含まれる。だが、 も尿検査対策に有効として使かわれる点では似ているが、水は利尿剤とは言わない。確かに、検査直前に利尿剤入りの液体を飲めば、サンプル中のカナビス代謝物の濃度が薄くなって検知閾値より下がることもあるが、注意しなければならないのは、この効果は一時的なものに過ぎないことだ。カナビスの 一次代謝物 は油脂性なので、利尿剤でいくら水分を排出したところで一緒に洗い流されるわけではない。このために、短時間の利尿効果が過ぎてしまえば、尿中の代謝物の濃度ももとに戻ってしまう。慎重な検査官はこのことを知っているので、尿の再提出を求められれば簡単に検知されるようになってしまう。


E 窶 酵素増倍免疫測定法 (EMIT)

EMITは、酵素-増倍-免疫-測定法(enzyme multiplied immunoassay technique)の頭文字をとった用語で、分析のコストが最も安いこともあって、職場では最もよく採用されている。しかし、EMITではドラッグ以外の物質にも反応して検査結果が不正確になることもあるので、主に、精密検査対象者を絞りこむための予備検査として使われてる。EMITではたいていの場合、閾値を1ml当たり 50ナノグラム の設定でTHCの代謝物 THC-COOH を検知している。この条件では、一般的に言って、週に1〜2回程度の少量ユーサなら、テスト前に2〜3日ほど中断すれば引っかかることは余りない。


F- 疑陽性 (false positive)

疑陽性とは、違法ドラッグの代謝物検査で、合法的な処方医薬品やケシの実のような物質に陽性反応を示すことを言う。しかし、カナビスの代謝物は非常にユニークな物質であるために、カナビス検知検査で疑陽性になることは滅多にない。例外として知られているのが抗潰瘍薬プロトニックス(パントプラゾール・ナトリウム)で、カナビス陽性反応を示す。予備検査で行われる EMIT では、市販薬の非ステロイド系鎮痛解熱剤イブプロファンはカナビス以外のドラッグで疑陽性になることもあるが、最新の検査機器ではカナビスが陽性になることはない。また、市販の風邪薬などでは、アンフェタミン検査で疑陽性が出ることもある。いずれにしても通常、会社側では、疑陽性も含めて陽性になったすべての従業員に対して、GCMS による精密なテストを受け直して再確認するように定めている。


G - ガスクロマトグラフィー質量分析 (GCMS)

GCMSは、ガスクロマトグラフィー質量分光分析(gas chromatography/mass spectrometry)の頭文字をとった用語で、一般には 「確認テスト」 と呼ばれている。アメリカ連邦の施設を含む大半の職場で実施されているドラッグテストでは、予備的な EMIT テストで陽性になった場合には、疑陽性 の可能性を除去するためにGCMSで確認テストを受けることが定められている。カナビス分析のGCMSでは、通常、1ml当たり 15ナノグラム の閾値で代謝物を検知するように設定されている。このテストでは、頻繁にカナビスを使っているユーザーの場合は、最後にカナビスを中断してから2〜3週間、あるいはさらに長期にわたって陽性反応が検出される。


H 窶 毛髪検査 (hair follicle testing)

毛髪検査は、血液から髪の毛などの毛包に漏れ出したドラッグ代謝物の存在を調べる検査法で、長期にわたって検知可能なことに特徴がある。だが、精度が不安定だとする批判もある。例えば、人種によっては、髪の毛の黒い人たちの方が陽性になりやすく、また、加齢で白髪になるほど代謝物の吸収が少なく陰性になりやすい。研究によれば、カナビスの代謝物は、コカインなどのドラッグに比較して毛包に漏れることは少なく、時々カナビスを使う程度のユーサーでは余り検知されることはない。また、最新の研究では、ヘビーなユーザーであっても、髪の湿度を高く保てばカナビスの代謝物の分解が早まり、陰性になる確率が高くなることが示されている。


I 窶 ヨウ素 (iodine)

ヨウ素は、急に 尿検査 を受けるように命令されたときなどによく使われる 混ぜもの で、ドラッグテストをごまかすために用いられる。研究では、ヨウ素によってモルヒネなどの代謝物は破壊されやすいことが分かっているが、カナビスの代謝物に対しては余り効果がないことも示されている。


J 窶 エセ科学 (junk science)

アメリカでは多くの職場でドラッグテストが行われるようになってきたが、実際にその防止効果を立証するような科学的なデータはないといっても過言ではない。全米科学アカデミーが行った精緻なレビューでは、「ドラッグテストを実施して、ドラッグの使用を防止できたという例は全くなく、現在までのところ、ドラッグテスト・プログラムの採用によって、ドラッグの使用を断念させたり、リハビリが促進したといったことについて、確たる証拠を示した本格的な科学対象研究はひとつもない」 と指摘している。


K 窶 クレアー (Klear)

クレアーは、混ぜもの のブランドネームで、何年にもわたりドラッグテスト対策商品として市場で最も人気があった。しかし、ドラッグテスト産業の方でも、時間をかけてクレアーを分析して、正体を硝酸カリウム化合物だと突き止めた。この発見で、多くのラボでは尿サンプル中の硝酸カリウムの有無も確認するようになった。現在では、大半のラボが、カリウム陽性反応が出た場合は自動的にドラッグも陽性だと判定するようになっている。これに対抗してマーケットには、成分を変えたニュークレアー(NuKlear)という新型の製品が登場してきている。


L 窶 ラシックス (Lasix)

ラシックスは、利尿剤のフロセミドの商品名で、混ぜもの としては強力な市販医薬品のひとつに上げられている。医師の処方に依らないラシックスの長期使用は健康を害する可能性もあるが、突然のドラッグテストに際しては非常にポピラーで20年以上も使われて続けている。


M 窶 代謝 (metabolite)

ドラッグの代謝物は、摂取した精神活性物質が体内で化学変化して生成される化合物で、自体は必ずしも精神活性を持っているとは限らない。職場のドラッグテストで使われる 尿検査 や 毛髪検査 などは、摂取されたドラッグそのものではなく、主に、不活性な代謝物(THC-COOH)の存在を調べている。


N- ナノグラム (Nanogram)

ナノグラムは、1グラムの10億分の1(1/1,000,000,000)で、ドラッグテストでは、この顕微鏡オーダーの単位で分析が行われる。例えば、通常、 EMIT では1ml当たり50ナノグラム、 GCMS では15ナノグラムを閾値として使っている。閾値は検知感度の下限を示す値で、検査で閾値以上であれば陽性と判定される。


P 窶 パパイン (papain)

パパインは、果物のパパイヤの中から見付かった酵素で、法医中毒学ジャーナルの最近号に掲載された研究において、尿に添加するとカナビスの代謝物の存在を低減させ、標準的なラボ手順では検出されなくなることが示され、その後、ドラッグテスト予備軍たちの間で人気が高まっている。


Q 窶 クエスト・ダイアゴノスティク社 (Quest Diagnostics)

クエスト・ダイアゴノスティク社は、現在のところ、ドラッグテスト関連では最大の会社で、年間800万以上の検査を行っている。2005年には、クエスト社のバリー・サンプル科学技術部長が議会で、ドラッグテストの結果に影響を及ぼすことを目的とした商品の製造と販売を犯罪として扱うようにすべきだと証言を行っている。はたして、次は、水(H2O)までリストに加えられることになるのだろうか?


R 窶 ロナルド・レーガン (Reagan, Ronald)

ロナルド・レーガンは第40代のアメリカ大統領で、現代アメリカのおける職場のドラッグテスト・プログラムを一気に広げた張本人と言われている。レーガンは、1986年に大統領令12564号に署名し、連邦の職員に対して公私にわたって 「ドラッグ・フリー」 であることを強制した。これが契機となって、嫌疑のない従業員にまでドラッグテストを実施することが私企業にも広がっていった。


S 窶 唾液検査 (saliva testing)

唾液検査では、血液検査 と同様に、不活性の代謝物 を調べるのではなく、体内に現存するドラッグそのものを検知する。THCの場合は口膣液中に見つかることは非常に稀れで、従って、唾液にもほんの僅かしか浸出しない。その結果、現在の唾液検査の技術では、ほとんどの場合、摂取後約1〜2時間を越えて検知されることはなく、時には、直後であっても全くひっからないこともある。


T 窶 THC-COOH

THC-COOHは、体内でTHCが化学変化して生成される主要な代謝物で、職場でのドラッグテストの検知対象になっている。ドラッグの代謝物の多くは水に解けるので急激に体外へ排出されるが、THC-COOHの場合は油脂性であるために非常にゆっくりと排出される。たまにカナビスを使う程度のユーザーの尿では摂取後数時間くらいしか検知されないが、常用ユーザーの場合は、通常、標準的な尿検査でも数日から数週間にわたって検知される。



U 窶 尿検査 (urinalysis)

アメリカでは年間に5500万回のドラッグテストが実施されていると推計されているが、そのおよそ90%が尿検査で行われている。しかし、尿検査では、カナビスも含めてドラッグそのものを検知するのではなく、摂取時期不明な過去のドラッグ使用で生成された非活性の代謝物の存在しか分からない。このため、しばしば、会社側やテスト関係者たちからも欠陥のある不正確な検査であると指摘されている。カナビス・ユーザーには運の悪いことに、カナビスの代謝物であるTHC-COOHは油脂性で排出されにくく、常用ユーザーの場合は、数日から2〜3週間も尿中で検知されてしまう。だが、逆に運の良いことに、標準的な尿検査では尿をいろいろな方法で薄めることで比較的に簡単に結果に影響をあたえることができる。


V 窶 フォン・ラブ裁判 (von Rabb)

連邦最高裁は、1989年に初めて、職場で嫌疑のない従業員に対してもドラッグテストを行っても違憲にはならないという判決を下した。この裁判は財務省従業員組合vsフォン・ラブで争われていたもので、従業員に対して理由なくドラッグテストを強制しても、合衆国憲法修正第4条の理由のない捜査からの保護規定に抵触しないとする判決が5対4で下された。これを契機に、遮るものもなくなり、必要もない職場でのドラッグテスト・プログラムが空前の規模で広がることになった。また、それ以降、連邦最高裁は、高校生のスポーツ選手たちのドラッグテストだけではなく、音楽やチェス・クラブの課外活動に参加する非スポーツ系の高校生にもドラッグテストを認めるまでになってしまった。


W 窶 水 (water)

急にドラッグテストを受けなければならなくなった時には、「水を飲む」という鉄則を思い出すべきだ。連邦保健社会福祉省が議会で行った最近の証言によれば、尿検査前に多量の水(3リットル以上)を飲むことが、最も簡単で安上がりで、最も効果的に検査に影響をあたえる方法であり続けている。危険だが、切羽詰まっている場合は、提出するサンプル試料に直接水を加える方法も行われている。


X 窶 不明 (unknown)

尿検査 や 毛髪検査 で陽性の結果が出ても、それは、ユーザーに何らかの機能障害があったことを示しているわけでもなく、また、いつドラッグを摂取したかも示していない。こうしたことから、連邦司法省ですら、ドラッグの代謝物のドラッグテストの結果は,陽性でも 「最新の摂取状況や使用の頻度・量、または損傷の度合を示していない」 と認めている。


Y 窶 黄色反応 (yellow)

希釈したことがバレるのは、多くの場合、尿を薄めたことで試料の色も薄くなってしまうことで発覚する。しかし、幸いなことに、水などと一緒にビタミンBを摂取することで自然の色を回復することができるので、疑い深い検査官の注意をそらすことができる。


Z 窶 亜鉛 (zinc)

THCの 代謝物 が尿検査で調べられるといっても、体内からの代謝物の排出は、尿ではなく、もっぱら大便を通じて行こなわれる。硫酸亜鉛はTHC代謝物と結合して大量に肝臓で濾過され、その後結合したまま便に至ると言われている。しかしながら、実際のところ、硫酸亜鉛を使って体内システムをバイパスしようとする目論見は、肯定と否定が入り交じった結果になっている。