ドラッグ・テスト・TIPS
職場での突然の尿検査にどう対処するか
California NORML
Drug Testing Tips - Dealing With Urinalysis on Short Notice
http://www.norml.org/index.cfm?Group_ID=4934
NORMLは職場でドラッグを使うことには強く反対しているが、また、特に主にカナビス摘発目的の尿検査は誰に対しても強制されるべきではないとも考えている。
しかし、とりあえずドラッグ検査の法律上の不当性を主張することを脇に置けば、まず、尿検査から自身を守る最良の防御方法は体をクリーンにしておくことだ。だが残念なことに、カナビスの場合は使用を中断してから、たまに使う人で1〜5日、常用している人で1〜3週間、ヘビー・ユーザーで4〜6週間も尿検査で陽性反応が出てしまう。
尿検査では、直接カナビスの活性物質のTHCが検出されるわけではなく不活性の代謝物が判明するだけなので、陽性反応が出たからといってもただちに仕事に支障があることを示すものではないが、今日の反ドラッグ・ヒステリーの状況下ではこの事実は職場では全く考慮されない。
もし求職活動中なら、検査されることを前提にカナビスはやめたほうが賢明だ。しかしながら、それ以外の場合はほとんど突然に検査に直面することになる。保証はできないが、そんなとき緊急用のアドバイスとしてこのTIPSが何らかの役に立つかもしれない。
●言い訳は通用しない
尿検査の結果は絶対に正しいとはとても言えるものではないが、陽性結果に異議をとなえるのは難しい。「擬陽性」の場合は、再検査に応じてくれるラボならば陰性になることも多いが、すべてのラボが再検査をしてくれるわけではない。
標準的な検査方法では、まずサンプルを免疫学的検定法 (EMITR or RIAR) にかけて陽性が出れば、次に精度の高いガスクロマトグラフ質量分析器 (GCMS) を使って結果の再確認が行われる。実際には、これで、擬陽性が比較的高い率で 「擬陰性」 にかわり、ドラッグの使用が検知されないことになる。
検査の感度は、検体の代謝物の濃度設定で調整される。例えば、アメリカ運輸省では1ミリリットル当たり50ナノグラム (ng/ml) を標準閾値にしている。
カナビス検査を擬陽性にするような物質は知られていない。抗炎症薬イブプロンがカナビス・テストの検出妨害薬としてよく使われているが、本当に妨害するかどうか定説はない。薬局で販売されている医薬品でアンフェタミンなどの違法物質に免疫検査の擬陽性を引き起こすものも多くあるが、ガスクロマト検査は妨害を受けない。
カナビスの「間接喫煙」という言い訳は、閾値が50ng/mlの場合は通用しない。間接喫煙で陽性になるにはヘビー・ユーザーの間近で何時間も過ごすという極端な環境でなければならず、ほとんど場合は有り得ない。しかし、閾値が25ng/ml以下の場合は、間接喫煙で陽性になることも知られている。
●体内洗浄
尿検査を通過するための一般的な作戦としては、まず、水分をたくさん摂取してサンプル尿中のドラッグの濃度を薄めて検査の閾値以下になるようにすることだ。検査の1〜2時間前に膀胱に小便が一杯貯まるように、できるだけ水分を飲むようにする。水分としては水が良い。噂ではヒドラスチスや酢、ナイアシン、ビタミンCなどが効くとされているが証拠はない。しかしながら、カナビスだけの免疫検査の場合は、高容量のアスピリンが検査感度を下げる可能性があることも知られている。
多くの人が、検査前の数日間にたくさん水分を摂って運動をして汗を流しているが、これが役に立つという明確な理由はない。しかし、朝一番の尿には就寝中にドラッグの代謝物が蓄積されるので、それを提出するようなことはしてはならない。また、小便の始めの部分と終わりの部分は濃いので、流れの中間の部分だけ採取するようにするとよい。
検査前に水を飲むときには、マルチビタミン剤などで多量のビタミンB-2 (50-100 milligrams) を一緒に摂取すると良い。この目的は、尿を黄色にしておいて、尿の色が薄く水ぽくなるまで水を飲む目安にするためだ。黄色いままだと検査官に疑われる。たまに水ぽい尿サンプルを拒否するラボもあるが、たいていは尿採取のやり直しになる。従って、検査の結果が確定するまでは不用意にドラッグを再開してはならない。
利尿剤を利用して体液の排出を促進することもできる。コーヒーやクランベリー・ジュースや一部の健康食品には弱い利尿作用がある。また、薬局では、月経時の水分滞留を解消するピルも販売されている。
もし検査までに時間の余裕がないときは、やむなく、高血圧の治療に広く処方されている強力な利尿剤を使うこともできる。しかし、フロセマイドのような強力な利尿剤は、メキシコなどでは薬局で購入できるが、アメリカでは処方箋が必要になっている。また、このような利尿剤は、糖尿病や妊婦など一部の人には危険を伴い、一定期間以上使っていると体調を悪化させる可能性もある。尿検査では、利尿剤の検出も可能だが、スポーツ選手以外は滅多にチェックされることはない。
次の方法は、ハイタイムスに掲載された、軍の元ドラッグ・テスト係官・ロバート・フリーマンの記事によるものだが、利尿剤ラシックス (フロセマイド) 80ミリグラムを多量の水とともに飲み、2〜3回小便をしたあとで検査をうける。余りカナビスを吸っていなければ、2、3日の余裕しかなくても、運よく体外排出に成功することもあるという。
しかしながら常用している場合は、どの方法をやるにしても、最低で1〜2週間の余裕がないと無理だ。
●隠蔽 (ドラッグ・スクリーン)
特定の物質を摂取すれば体内で化学変化が起きてドラッグ使用を偽装できると言われてきた。現在では、ドラッグをスクリーンして隠蔽させると称する製品がヘッド・ショップやハイタイムス誌上などで売っているが、確実な科学的根拠は全くと言ってよいほどない。
一般に解毒剤として知られる活性炭は、長期ユーザーが数日から数週間続ければ代謝を多少促してくれるようだ。理論的には、食品の乳化剤として使われているレシチンも長く使えば効果があると考えられるが、立証されてたことはない。
高価なハーブティーや粉末も尿クリナーとして販売されているが、きちんとした医学的な根拠があるわけではない。多くの人は効かなかったと言っているが、よく効いたと言う人も一部にはいる。別途行われた実験によると、そのような成功例はスクリーン効果そのものではなく、利尿作用のせいだろうとされている。
●差替え・異物混入
尿を希釈することは効果があるが、特にヘビー・ユーザーの場合は100%信頼できるわけではない。一部の人たちは、クリーンな尿とそっくり差替えたり、尿サンプルに異物を混入させたりしている。道徳的にどうかということを別にしても、こうした改ざんは、被験者が監視され、服を脱がされる可能性もあることを考えれば非常にリスキーだ。カンニングには言い訳は許されない。
それでもと言う大胆な人には、アビー・ホフマンの本 (Steal This Urine Test) に完全図解付きで、クリーンな尿を入れた偽装ポリ袋の装着法が紹介されている。クリーンで脱水粉末化した尿も売られている。しかし、検査では尿の温度も調べられるので、提出するサンプルの温度には気を付ける必要がある。
検査をダマすトリックとしてはサンプルに異物を混入させるという手がある。だが、この方法は、ラボが不信を抱けば検査で異物がバレてしまうので、最後の手段にしか使えない。大抵の異物は通常の免疫検査では検出されないが、他の検査では必ずしもそうとは言えない。
とっさの場合は、目薬のバイシンを混入すれば、免疫検査をダマせる可能性もある。他の異物としては、洗剤、漂白剤、塩、クリニング液などがあるが、ほとんどのものが臭いや目視検査で簡単にバレてしまう。雑誌の広告などでは専用の混入物も販売されているが、100%信頼できるわけでもなく、どれも検出されるリスクも高い。
販売されている多くの混入物は、検査で陽性になったら返金すると保証しているが、こうした保証が検査の結果まで約束してくれるわけではない。しばしばベンダーは、お客の苦情は無視して、製品の信頼性を誇張して宣伝している。
どの程度まで本当かどうかはわからないが、多くのラボが混入物検査を実施していると公言している。
●血液・唾液検査
交通事故などでは血液検査が使われることもある。これは、尿検査よりも血液検査のほうがその時点での体内のTHCの影響状態をよくチェックできるからだ。しかし、他の代謝物にもよく反応してしまうという欠点もある。一般に、血液検査では喫煙後数時間の陽性反応を検出するのに使われるが、ヘビーな長期ユーザーの場合は数日間にわたって検出されることもある。
また、感度は悪いが唾液検査も行われている。唾液検査の場合は喫煙後2〜4時間の陽性反応を検出するのに使われる。現在はまだ一部で実験的に行われているに過ぎないが、将来は呼気飲酒検査のようにロードサイドで使われるようになるかもしれない。しかし、直前に、唾を吐き、ソフト・ドリンクを飲んで口を洗えば少しは陽性を防げるだろう。
状況で、血液・唾液検査と尿検査を選択できるのであれば、尿検査を選ばないほうがよい場合もある。例えば、最近数日はカナビスを使っていたが、検査時にはやっていなかった場合は血液や唾液検査を選んだほうが陰性になる確率が高くなる。
一方、尿検査の場合は、吸った直後の影響下にあるかどうかわからないので、尿検査のほうが有利かもしれない。しばらくぶりに喫煙した場合は、数分間経たないと尿検査では陽性にならない。
●毛髪検査
気味の悪い新しいテクノロジーに毛髪検査がある。ドラッグ使用を数ヶ月、ロングヘアの人の場合はさらに長期にわたって検出できるとされている。スキンヘッドの人でも体毛をサンプルに取られる。毛髪検査はコカインの検出感度が高いが、カナビスに関する感度については定説は確立されていない。
毛髪検査は、髪の色の濃さによって感度が異なり、濃いほうが検出されやすいのでアメリカでは人種差別につながる恐れもあり、どの人にも適用されているわけではない。FDAや科学界は毛髪検査に批判的だが、職場で使われなくなったことはない。
また、毛髪検査は使っているシャンプーの種類によっても影響を受ける可能性がある。実験では、一応、Head ShouldersR (Fine/Oily), NeutrogenaR, RaveR のほうが PertR (Oily/Fine), PrellR (Normal, Normal/Oily) よりもドラッグ濃度が低くなることが示されている。
●法的挑戦
採用見込みや見習い従業員の場合は、本雇用前の事前ドラッグ・テストに異議を申し立てる法的権利はない。しかし、本雇用された従業員の場合は、状況によっては、労働法や地域の条例などを拠り所にドラッグ・テストに法的異議を申し立てることができる。
上司の判断で検査可能にした契約には、自分には検査を拒否する権利があると強く抗議して、サインは避けるべきだ。もし、検査が不当だと考えるなら、法的手段に訴えることもできる。サンフランシスコやバークレーなどの裁判管轄区は、安全が第一とされる現場以外では、勤務中のドラッグ・テストを禁じている。
法律に関する情報はNORMLでも一部用意しているが、オクラホマシティのバタフィールド・ジャイ基金でも有益な情報が得られる。ヘッドショップやヘンプショップでもドラッグ・テストについての情報を提供しているところもある。
●自己テスト
ドラッグ中毒の治療を行っているクリニックでは、有料で尿検査を実施してくれるところも多い。ホーム・テストキットなども販売されている。注意しなければならないのは、尿のドラッグ・レベルは毎日変動しているということで、自己テストで陰性だからといってまったく安心できるというわけでもない。
ドラッグ尿検査が不当な理由
●プライバシーの侵害
尿検査は個人の身体プライバシーにまで侵入してくる。全員尿検査では、ごく少数のドラッグ中毒とされる人を特定するために、大多数の責任を持った従業員のプライバシーを侵害することになる。それも、実際には、ドラッグ中毒とされた人の多くが、節度を超えてドラッグを乱用しているなどとはとても言えない人たちなのだ。
アメリカ政府が強要しているドラッグ・テストは、本来、合衆国憲法修正第4条で禁止された、不法な捜査や押収、「相当な根拠」に基づく捜査令状の必要性により制限されるべきものだ。しかし、通常は、修正第4条は私企業のドラッグ・テストにまで適用されていないのが現実だ。
●尿検査の確実性の欠如
どの検査も100%信頼がおけるものではない。尿検査を実施しているラボを調査した研究によれば、管理体制が貧弱なところの検査の誤り率が極めて高いことが判明している。一方、管理体制がしっかりしたラボでは、擬陽性のリスクを最小限にするために安全基準を設けているが、それでも1万あたり1人の誤り率がある。政府が尿検査の対象を何千万人もの労働者にまで拡大しようとしているが、結果として、多くのひとが不当にドラッグ中毒で告発されることになってしまう。
尿検査についての最も大きな誤解は、一般に、労働者がドラッグの影響で仕事に支障をきたしていることが判明するはずだと思われていることだ。尿検査でわかるのは過去のドラッグ使用の有無であって、必ずしも現在の仕事のパフォーマンスとは関連しているわけではない。
また、尿検査は、体内残留機関の長いカナビスに対する感度が偏って高いために、2〜3日しか残留しないコカインやヘロインようなもっと危険なドラッグの利用を促進してしまう。LSDなどの場合は滅多に検出されることすらない。それと同時に、大半の検査では、アメリカで最も乱用されているドラッグであるアルコールが全く考慮されていない。
このように、尿検査は本質的に欠陥を抱えたテクノロジーといってよく、就業中のけしからぬ飲酒を大目にみながら、仕事後で大半が他人の迷惑にもならないカナビス使用を断罪するという不公平な扱いを助長する結果を招いている。
●尿検査は信頼できる指標を提供しない
これまで行われた調査で、尿検査には、職場の安全と生産性を向上させる効果のあるとは科学的に示されたことはない。また、研究によれば、陽性になった労働者の大多数が、仕事の確実性において他の人と全く変わらないことも示されている。 (John Horgan, "Test Negative," Scientific American, March 1990; Dr. John Morgan, "Impaired Statistics and the Unimpaired Worker," The Drug Policy Letter, May/June 1989).
ドラッグ・テストに対する専門家の医学的コンセンサスとすれば、本質的に、尿検査はドラッグによる機能障害を計る信頼できる検査指標にはならない。 Consensus Report, National Institute on Drug Abuse, Journal of the American Medical Association, Nov. 8, 1985)
さらに、アメリカ医師会のジョージ・ランドバーグ博士などは、ドラッグ・テストを 「ケミカル・マッカーシズム(化学による緑狩り戦略)」 だと指摘しいる。 (editorial, Journal of the American Medical Association, Dec. 5 1986).
●パフォーマンス測定可能で侵害的でない別の検査法が存在する
化学残留物を調べるドラッグ・テストの欠点を回避して、仕事に対する実際の集中力や反応時間を測定するコンピュータ・シュミレーションを使ったパフォーマンス検査も開発・販売されている。この検査では、ドラッグや疲労、ストレス、病気などの影響による仕事への悪影響の程度をテストできる。 (Performance Factors, Denver, Col.).
このような代替えも利用できるの、職場でのドラッグ・テストの必然性は全くない。
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