無視され続ける重大ニュース

カナビスの煙には肺癌を抑える抗癌作用がある

タシュキン教授の講演から

Source: Counter Punch
Pub date: 03 May 2008
Subj: The Greatest Story Never Told
Author: Fred Gardner
http://www.counterpunch.org/gardner05032008.html


カナビス喫煙では肺癌にならないばかりか、抑制効果すらある……
UCLAの先駆的研究者タシュキン教授が40年がかりでたどりついた結論


http://jp.youtube.com/watch?v=GJmQ16cGBHU


アメリカ人の3人に一人が癌に侵され、死亡原因の第2位になっている。その癌の中でも最も多くの人々の命を奪っているのが肺癌だ。そうした背景の中で、私は、2005年に 「カナビス喫煙では肺癌にならないばかりか、抑制効果すらある」 というピューリツアー賞並の特ダネ・ニュースをカウンター・パンチのほかいくつかのメディアで詳しく伝えた。

だがピューリツアー賞は冗談にしても、大手マスコミはこぞってこの重大ニュースの無視を決め込んで葬り去った。そればかりではなく、報道が不十分または検閲の対象となったニュースを毎年選出して発表していることで知られるカリフォルニア大学ソノマ校の 「プロジェクト検閲」 (Project Censored) からさえも選ばれなかった。医療カナビスの第一人者トッド・ミクリア医師は苦虫を噛みつぶした表情で、「プロジェクト検閲からも検閲された」 と落胆していた。

アメリカ人の生命に直接関係するこのニュースは決して取るに足らないものではない。それも、この分野では中心的な研究者として知られるカリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部のドナルド・タシュキン教授が、カナビスの煙の成分について調べた結果、呼吸器組織の細胞にダメージを与えることはあっても悪性細胞になることを防いでいる、つまり、カナビスには抗癌作用があることを明らかにしたもので、これをビッグニュースと言わずして何をビックニュースと言うのだろうか。

タシュキン教授は、2008年4月4日にカリフォルニア州パシフィック・グローブのアシロマール・カンファレンス・センターでペイシェント・アウトオブタイムの主催で開かれた 『第5回カナビス治療に関する臨床カンファレンス』 で、30人以上のMDと多数のPhD、看護師、医療カナビス関係者を前にして、これまでの研究についての講演を行い、あらためて大きな反響を呼び起こした。


タシュキン教授の研究の軌跡

タシュキン教授への信頼感には特別のものがある。1970年代からカナビスの煙に対する研究に取り組み、その毒性について明らかにしてきた。カナビスの煙が上気道の細胞を傷つけている写真を論文に発表して衝撃を与えた。

また、タバコの煙の成分で最も肺癌に関係しているとされるベンゾピレンが実際にはカナビスの煙のほうが50%も多く、タールの量も4倍になることを最初に見出したのもタシュキン教授の研究チームだった。さらに、カナビス・スモーカーは非喫煙者に比べて、咳、喘鳴、痰が多いことをデータで最初に示してもいる。

カナビスの悪害を見出すことを使命としているアメリカ政府のドラッグ乱用研究所(NIDA)も、タシュキン教授のカナビス研究を何十年にわたって支援してきた。大規模な住民ベースの患者対照研究を行えば、長くヘビーにカナビスを吸っているほうが肺や上気道の癌になりやすいことを明確に証明できるはずだというタシュキン教授の提案にも喜んで実施を認めた。

しかしながら、タシュキン教授のチームが発見したことは、この仮説が誤っているということだった。

研究チームでは、カリフォルニア州ロサンゼルス郡の癌監視プロジェクトに登録されている1212人の癌患者と、年齢や性別や生活環境がマッチする1040人の癌に患かっていない対照群の人についてインタビューして違いを比較した。カナビスの喫煙量については、生涯に吸ったカナビスのジョイント本数を 「ジョイント年」 という単位を使って、毎日1本づつジョイントを何年間吸ったことに相当するかで比較した。

その結果、ヘビーなユーザーとしては生涯のジョイント本数が22000本(60ジョイント年)以上のヘビーユーザーでも、中からヘビーな11000から22000本のユーザーでもガンになるリスクは増加せず、カナビスの使用量が増えても肺癌や咽頭癌の発生率が高くならないことが分かった。これは、タバコの量が増えるほど癌のリスクも大きくなるのとは全く違っていた。また、カナビスも吸っているタバコ・スモーカーでは、タバコのみのスモーカーよりも若干ながらも肺癌のリスクが低くなることも示された。


価値のない研究?

この研究結果については、2005年6月の国際カナビノイド研究学会(ICRS)の年次カンファレンスで概要が発表され、翌年5月のアメリカ胸部学会国際カンファレンスで全体像が報告された。

カナビス使用と肺および上気道消化管の癌リスク:住民ベースの対照研究結果』 と名づけられた正式の論文は、ガン疫学・バイオマーカーと予防 (Cancer Epidemiology Biomarkers & Prevention) ジャーナルの2006年10月号で出版された。

しかし、この発見は、政府からは出版する価値のあるものだと看做されず、NIDAの出版物のリスト(NIDA Notes)には何も掲載されていない。NIDAは通常、プレス・リリースを発表して研究の成果を強調するのが常になっているが、この研究については何も発表されないので、マスコミの担当者たちはこれがブロックバスター級の大ニュースだは思いもしなかった。

私は、友人のロサンゼルス・タイムズの記者にタシュキン教授の発見を書くようにすすめたが、カナビス関係の別の記事を書いたばかりだし、編集長もそうそうカナビスには興味を示さないからという返事だった。タシュキン・スクープは、今でも手のとどくところに置かれたままになっている。

一方、今年の1月に、ニュージランドの研究チームがタシュキン教授の結果とは真っ向から対立する研究を発表して幅広いメディアの関心を集めた。ロイター通信社は、「カナビスの癌のリスクはタバコより大きい」 というヘッドラインを掲げた記事を配信し、世界の大手マスコミ各社も直ちにそれに追随した。フォックス・ニュースなどは 「ジョイント1本のリスクはタバコ20本相当」 と続いた。

この研究は、肺癌の79人の喫煙者を対象に行われた小規模なもので、しかもそのうちカナビスを吸っていた人は21人しかいないが、マスコミでこのことを問題にしたところはなく、報道が加熱するに従ってこのニュージランドの研究がいっそう重要性を帯びてくるという展開をみせた。


ニュージーランド研究にはインチキの匂いがする!

タシュキン教授は、今回の講演でニュージランド研究の方法論についての批判も展開した。細縁の丸眼鏡をかけた70を過ぎた教授は、カリフォルニアの著名な建築家ジュリア・モルガンがデザインしたレッドウッド(セコイア)の気持ちの良いチャペルで、顔を紅潮させながら次のように語っている。

「データの解釈にあたって認知的不協和が見られます。これは、研究者たちの間にあらかじめ出来上がったモデルがあったためだと思われます。研究者としての尊厳を守りたいのならば、ここに来て自分を弁護してほしい。実際には、彼らは、私たちが肺癌との関係を求めて使った研究デザインを真似した別の論文も発表しているのです。彼らのタバコに関する発見は、服用量が増えるに従ってリスクも高くなり、誰にでも納得できるものです。」

「最もタバコの喫煙量の多い人のリスク倍率は24倍になっています…… では、カナビスではどうなっているか? 少量または中程度の喫煙者ではリスクが増えることはなく、逆に基準よりも少し下がっている。だが、カナビス・グループの上位3分の1に限定してみるとリスクが6倍になると言うのです。…… さらに驚くべきことは、その数字のベースになったケース群と対照群の人数がそれぞれ14人と4人と圧倒的に少ないのです。」(参考

タシュキン教授は、ニュージーランドの研究チームは 「統計的なごまかし」 を使っていると言う。「カナビスを365本吸ったスモーカーの肺癌のリスクが、タバコ7000本の人と同等だなどとは全く信じがたい。サンプル数が少ないことで巨大なインフレ見積りになっているのです。」

「彼らは、ニュジーランドではカナビス喫煙が蔓延しているので、ヘビー・ユーザーのリスクを示したこの研究は理にかなっていると述べていますが、彼らの対照群の88%はカナビスを吸ったことさえないのです。これに対して、われわれのロサンゼルスの研究では、カナビスを吸ったことのない対照群は36%に過ぎません。なぜ彼らの対照群ではカナビス経験者が少ないのでしょうか? 何かインチキの匂いがする!」

UCLA医学部教授の強烈な言葉が会場に響いた。


カナビスの抗増殖性作用と呼吸機能低下の抑制作用

タシュキン教授の今回の講演でさらに印象深かったのは、カナビスによって傷ついた細胞が悪性にならずに済んでいるという話だった。教授のよれば、THCには抗増殖性作用のあることが、脳癌や乳癌、前立腺癌、肺癌の細胞株や動物モデルで観察されていると言う。

すでに、THCが、傷ついた細胞が再生することなく死亡させるアポトシスを促進したり、腫瘍の成長に必要な血管形成を邪魔したりすることは知られているが、カナビスに含まれる他の抗酸化物質も細胞の悪性病変に対抗する役割を果たしているようだとも話している。

また、教授は、タバコの喫煙者の間ではよく見られるもう一つの病気である慢性閉塞性肺疾患(COPD)についても多くの時間を費やして説明した。慢性気管支炎と肺気腫に代表されるCOPDは,アメリカでは病死原因の第4位を占めている。

空気汚染とタバコの煙がその原因として知られているが、吸い込むと炎症反応を引き起こして肺機能を減退させる。COPD患者は、加齢とともに気道をきれいに保つのが困難になってくる。

タシュキン教授の研究チームは、8年以上にわたって加齢による肺機能の低下についてさまざまなグループで大掛かりな追跡コホート調査を行っているが、タバコのみの喫煙者では機能低下が加速されるのに対して、カナビス・スモーカーの場合には、たとえタバコを併用していても非喫煙者グループの低下率と変わらないことを見出している。

「タバコは、吸えば吸うほど機能低下率も大きくなっていくのです。これに対して、カナビスは全然そうはならない。低下率は普通なのです。私の研究でも他の研究でも、カナビスの常用喫煙がCOPDを招くという考え方を支持していません。」

この事実を知れば、カナビスを吸うことに対する懸念も小さくなるだろう。

2006年10月に正式発表された論文:
Marijuana Use and the Risk of Lung and Upper Aerodigestive Tract Cancers: Results of a Population-Based Case-Control Study M.Hashibe1, H.Morgenstern, Y.Cui, Donald Tashkin, Z.Zhang, W.Cozen, T.Mack and S.Greenland, Cancer Epidemiology Biomarkers & Prevention Vol. 15, 1829-1834, October 2006

2005年6月の国際カナビノイド研究学会(ICRS)の年次カンファレンスについての記事:
カナビス喫煙、ガンの危険なし、カルフォルニアの患者対照研究  (2005.7.11)
Smoking Cannabis Does Not Cause Cancer Of Lung or Upper Airways, Tashkin FInds; Data Suggests Possible Protective Effect  O'Shaughnessy's, Autumn 2005
Study: Smoking Marijuana Does Not Cause Lung Cancer  Counter Punch, July 2, 2005

2006年5月のアメリカ胸部学会国際カンファレンスについての記事:
カナビス喫煙と肺ガンは無関係、ロスアンジェルスの大規模研究  (2006.5.23)
カナビスの喫煙と肺がんは無関係、過去最大の患者対照研究  (2006.5.25)
煙の中に消えたカナビスの肺がん神話  (2006.6.9)
Abstract from the American Thoracic Society International Conference 2006. Marijuana Use and Lung Cancer: Results of a Case-Control Study

2008年1月のニュージーランドの研究についての記事:
最近のニュージーランドの肺癌リスク研究、6倍の根拠はたった14症例  (2008.2.6)
科学を装う反カナビス研究と報道、新聞には書かれない不都合な根拠  (2008.2.9)
反カナビス科学報道の嘘と脅し戦術  (2008.3.10)

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