1月のある晩、出先から帰ると、寒空の下、玄関の前に若い男が立っていた。
「大麻被害者センターのシラサカさんですか?」と言う。
「大麻被害者じゃなくて、大麻取締法被害者だけど。」
そう答えると、若者は「すいません」とちょっと頭を下げ、「相談したいことがあって来たんですけど」とのこと。遠路はるばる、九州の某県から電車を乗り継いで来たという。当局の人間ではないようだ。ある方法で私の住所を調べたのだそうだ。用件の想像はついたので、お引き取り願おうとも思ったが、本当に九州からならかわいそうな気もしたので、とりあえず家の中に入れた。
居間でコーヒーを飲みながら話を聞くと、父親が癌で、大麻を試させたいのだという。若者本人も大麻の経験はあり、THCのサイトなどを読んで、大麻が癌にも効果があることを知り、分けてもらいたいと思って訪ねてきたとのこと。
前もって連絡もなしに突然このように訪ねて来られたのは、THCを始めてからこれで3人目だ。
その若者が名乗った名前が本名なのか、本当に九州から来たのか、本当に父親が癌なのか、私には確認する術もない。はっきり言って、あまりにも非常識だろう。私の長男とさほど年齢も変わらないだろう若者に、私の言葉は説教じみていたと思う。そもそも私は今は大麻を持っていない。「少しでいいので」と言われても、ないものはないし、仮に父親の病のためだとはいえ、持っていそうな者を紹介したり仲介したりすれば、発覚したとき、それだけで幇助の罪が問われる。私はまだ執行猶予中でもある。
なぜ前もってメールで連絡をくれるなりしないのだろう。メール1本くれればお互いに時間を無駄にせずに済むことなのに。そう言うと、若者は、
「メールとかするの、ヤバイかと思って」
とのこと。話が逆立ちしてないだろうか。
相談対応でも感じることだが、自分の事情しか考えていない者が多いように思う。「仕事もあるので逮捕されるのは困る」とか。逮捕されて困らない者はいないだろう。何度ものメールの往復で急場を凌ぐ対応などをアドバイスしたまま、それきり連絡がなくなり、その後どうなったのか報告もくれない相談者が多い。
若者は、お金の持ち合わせもあまりなく、泊まるところもないと言う。夕飯を食わせ、地酒を振る舞い、一晩の寝床を提供し、翌朝、最寄の駅まで送ってやった。
その後、若者からは礼のメールすらない。これを読んではいるのだろうか。
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[はじめに]
大麻取締法では、大麻の医薬品としての施行を禁止している。
大麻取締法第四条で、「大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること。」「大麻から製造された医薬品の施用を受けること。」を禁止している(1)。
1987年に厚生省依存性薬物情報研究班がまとめた報告で、「マリファナの薬効はきわめて不安定で一定の効果が期待できない」と述べている(2)。
このことから、大麻取締法制定時に、治療薬として有用でない、と判断しこのような項目を加えたものと思われる。
しかし、近年大麻の医薬品としての有用性が再評価され(多発性硬化症・HIV・癌の症状緩和など)、カナダ・オランダ・ドイツ・オーストラリア・イスラエル・米国のいくつかの州などで医療大麻の使用が可能となっている(3)。
我が国が大麻の医薬品としての使用を禁止していることは、世界の常識からかけ離れた、患者の治療の権利を著しく侵害する行為である。
[本文]
1.大麻の薬理作用
大麻にはカンナビノイドと呼ばれる薬理作用を持つ物質が含まれている。最も効果のある物質はデルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)で、その他にカンナビノール(CBN)、カンナビジオール(CBD)などがある。CBDには向精神作用が無い。
カンナビノイドは細胞表面に存在するカンナビノイド受容体を介して作用し、カンナビノイド受容体にはCB1とCB2という2種類が同定されている。人の体内でカンナビノイド様の作用を持つ内因性カンナビノイドが存在し、2-arachidonyl-glycerolとanandamideが同定されている。
CB1は主に神経細胞に存在し、CB2は免疫細胞などに存在することが知られている。医薬品としての大麻の効果は主にCB1を介したものと考えられる(22-23)。
大麻の作用する受容体や内因性カンナビノイドについての研究が進み、大麻製剤の創薬の可能性が広がってきており、我が国においても今後研究が必要な分野であると考える。
2.多発性硬化症
大麻は多発性硬化症の症状緩和に効果がある。特に痙縮(神経の障害により起こる筋肉のこわばり)、痛み・排尿障害・睡眠障害に効果がある。
1997年の報告では、英国と米国の多発性硬化症患者に対してアンケートを行い、およそ30%の患者が多発性硬化症の症状緩和があると回答した(4)。
2003年、英国で630人の多発性硬化症患者に対して多施設共同のランダム化試験が行われ、大麻抽出物と大麻の主成分である(THC)の経口投与が多発性硬化症の疼痛に効果があると報告された。大麻抽出物で61%、THCで60%の患者が疼痛の軽減を申告した(5)。
2005年、リバプール大学のグループが、大麻抽出物の口腔内スプレーについてのランダム化試験を行い、多発性硬化症の痛みと睡眠障害に効果があると報告している(6)。
頻尿などの排尿障害に効果があるという報告もある(7)。
その他にも数多くの論文が報告されている(8-12)。
多発性硬化症の痙縮や疼痛は、患者のQOL(Quality of life:生命の質)を著しく損ない、また有効な薬剤が少なく、大麻製剤は患者にとって非常に有用である。また英国やカナダの患者団体も大麻の使用を推奨している。
3.HIV/AIDS
大麻はHIV(人免疫不全ウイルス)患者の症状緩和に効果がある。特に、HIV感染および抗ウイルス療法に伴う食欲低下や吐き気、またHIVによる末梢神経障害に対して効果がある。
北米ではHIV患者の3分の1以上が症状緩和の為に大麻を使用しているというデータがある(13-16)。
患者の多くは、食欲低下、不安、痛み、抑うつ、吐気に効果があると回答している。
2007年、コロンビア大学の研究グループは、大麻およびTHC製剤のプラセボ対象試験を行い、大麻とTHC製剤の使用でHIV患者の食欲増強と体重増加を認め、大麻で睡眠障害の改善を認めた(17)。
2007年、San Francisco General Hospitalとカリフォルニア大学のPain Clinical Research Centerの研究グループは、HIVに関連する痛みを伴う末梢神経障害(HIV-associated sensory neuropathy: HIV-SN))に対する大麻喫煙の効果について報告し、大麻喫煙で日常の痛みが平均34%程度軽減し、痛みが30%以上軽減した患者は全体の52%であった(18)。
また、大麻により免疫細胞であるCD4、CD8 T細胞の数が減少したり、免疫機能が低下したりと言った、重篤な副作用はない(19-21)。
HIV感染は抗ウイルス薬の多剤併用療法で長期の生存が可能となってきた。しかし、抗ウイルス薬の中断により、速やかに薬剤耐性ウイルスが出現してくることが知られており、厳格な内服の継続が必要である。副作用のため内服を中断してしまうことは、患者の生命にかかわる。大麻製剤は抗ウイルス薬の副作用を軽減することが明らかであり、HIV患者にとって非常に有用かつ必要な薬剤である。
4.癌
大麻は、抗癌剤の副作用による吐き気、癌患者の食欲低下、疼痛に効果がある(22-23)。
1970年代から80年代にかけて、抗がん剤の制吐剤として、大麻製剤の試験が行われ、効果が確認された(24-26)。
近年、大麻製剤よりも効果がある選択的5-HT3拮抗薬が開発されたため、あまり用いられることは無いが、選択的5-HT3拮抗薬の効果が無い場合に付加的に用いることは有用であると思われる。
大麻に食欲増進作用があることは広く知られているが、癌患者に対しても少数例での検討されており、食欲低下に効果あったとする報告がある(27-28)。
癌患者では、癌の末期の消耗や抗癌剤の副作用の為に食欲が低下することが良くある。食事が出来ないことは患者のQOLを著しく損なうことから、 大麻製剤は有用な薬剤である可能性が高い。
幾つかの臨床研究で、通常の治療で効果が無い癌の痛みに対してカンナビノイドが効果あったとする報告がある(29-31)。
慢性疼痛に対する研究で、THCやCannabidiolが侵害受容性疼痛よりも神経障害性疼痛に対して効果があった(32)ことから、癌の疼痛においても神経障害性疼痛に対して特に効果がある可能性が高い。
神経障害性疼痛は、モルヒネなどのアヘン製剤を含む各種鎮痛剤で効果が出にくい。このような疼痛に対し大麻製剤が有用な薬剤である可能性があり、実際に現在米国で臨床試験を行っている(33)。
大麻が実験室レベルであるが、いくつかのがん細胞株に対して障害性を持つと言う報告がある(34-35)。
グリオーマに対してTHCを局所投与し効果があったという症例報告がある(36)。
大麻の抗癌作用については、まだ研究段階であるが、今後注目される分野である。
5.サティベックス
「サティベックス(英語表記:Sativex)」は大麻からの抽出物で、THCとCBDを主成分とし、口腔内スプレーで薬剤を投与する。GWファーマシューティカルズplc.が、米国において開発し、大塚製薬株式会社が米国における開発・販売に関するライセンス契約を締結した。多発性硬化症においては、鎮痛効果が認められており(37)、カナダで承認・販売されている。今後、米国で「オピオイド系薬剤による治療で効果の見られない末期がんの患者の疼痛治療」第Ⅱ/Ⅲ相試験が行われる予定である。日本の製薬企業も大麻製剤に注目していることから、海外の治験だけではなく日本でも行えるようにするべきである。
[結論]
以上、大麻が効果ある疾患について主なものを述べたが、他の疾患についても、神経疾患などを中心に、数多く報告されている。
副作用については重篤なものはなく、また、大麻よりも依存性の強いアヘン製剤が医薬品として問題なく扱えていることなどから、医療用大麻製剤は大きな社会問題無く管理できるものと考える。
さらに、大麻の薬効はユニークで他の薬物で代替出来ない作用を持つことから、大麻の医薬利用は患者にとって非常に有益である。
大麻を医薬品として研究・利用できるようにするべきであり、大麻取締法第四条の改正を求める。
[参考文献]
(1) 大麻取締法
(2) 依存性薬物情報研究班,依存性薬物情報シリーズNo.1 大麻(CANNABIS),昭和62年3月.
(3) Wikipedia, Legal and medical status of cannabis.
(4) Consroe et al. The perceived effects of smoked cannabis on patients with multiple sclerosis. European Journal of Neurology 38: 44-48, 1997.
(5) Zajicek J et al. Cannabinoids for treatment of spaciticity and other symptoms related to multiple (CAMS study): multicentre randamised placebo-controlled trial. Lancet, 362, 9395, 2003.
(6) Rog et al Randomized, controlled trial of cannabis-based medicine in central pain in multiple sclerosis. Neurology 65: 812-819, 2005.
(7) Brady et al. 2004. An open-label pilot study of cannabis-based extracts for bladder dysfunction in advanced multiple sclerosis. Multiple Sclerosis 10: 425-433, 2004.
(8) Wade et al. A preliminary controlled study to determine whether whole-plant cannabis extracts can improve intractable neurogenic symptoms. Clinical Rehabilitation 17: 21-29, 2003.
(9) Consroe et al. The perceived effects of smoked cannabis on patients with multiple sclerosis. European Journal of Neurology 38: 44-48, 1997.
(10) Meinck et al. Effects of cannabinoids on spasticity and ataxia in multiple sclerosis. Journal of Neurology 236: 120-122, 1989.
(11) Ungerleider et al. Delta-9-THC in the treatment of spasticity associated with multiple sclerosis. Advances in Alcohol and Substance Abuse 7: 39-50, 1987.
(12) Denis Petro. Marijuana as a therapeutic agent for muscle spasm or spasticity. Psychosomatics 21: 81-85, 1980.
(13) Woolridge et al. Cannabis use in HIV for pain and other medical symptoms. Journal of Pain Symptom Management 29: 358-367, 2005.
(14) Prentiss et al. Patterns of marijuana use among patients with HIV/AIDS followed in a public health care setting [PDF]. Journal of Acquired Immune Deficiency Syndromes 35: 38-45, 2004.
(15) Braitstein et al. Mary-Jane and her patients: sociodemographic and clinical characteristics of HIV-positive individuals using medical marijuana and antiretroviral agents. AIDS 12: 532-533, 2001.
(16) Ware et al. Cannabis use by persons living with HIV/AIDS: patterns and prevalence of use. Journal of Cannabis Therapeutics 3: 3-15, 2003.
(17) Haney et al. Dronabinol and marijuana in HIV-positive marijuana smokers: caloric intake, mood, and sleep. Journal of Acquired Immune Deficiency Syndromes 45: 545-554, 2007.
(18) Abrams et al. Cannabis in painful HIV-associated sensory neuropathy: a randomized placebo-controlled trial. Neurology 68: 515-521, 2007.
(19) Chao et al. Recreational drug use and T lymphocyte subpopulations in HIV-uninfected and HIV-infected men. Drug and Alcohol Dependence. (E-pub ahead of print), 2008.
(20) Abrams et al. Short-term effects of cannabinoids in patients with HIV-1 infection: a randomized, placebo-controlled clinical trial. Annals of Internal Medicine 139: 258-266, 2003.
(21) Fogarty et al. Marijuana as therapy for people living with HIV/AIDS: social and health aspects 19: 295-301, 2007.
(22) Hall W et al. 2005. Cannabinoids and cancer: causation, remediation, and palliation. Lancet Oncol 6: 35-42.
(23) Walsh D et al. 2003. Established and potential therapeutic applications of cannabinoids in oncology. Support care cancer 11: 137-43.
(24) Carey MP et al. 1983. Delta-9-tetrahydrocannabinol in cancer chemotherapy: research problems and issues. Ann Intern Med 99: 106-14.
(25) Poster DS et al. 1981. Delta-9-tetrahydrocannabinol in clinical oncology. JAMA 245: 2047-51.
(26) Ungerleider JT et al. 1982. Cannabis and cancer chemotherapy: a comparison of oral delta-9-THC and prochlorperazine. Cancer 50: 636-45
(27) Bhargava HN. 1978. Potential therapeutic applications of naturally occurring and synthetic cannnabinoids. Gen Pharmacol 9: 195-213.
(28) Lane M et al. 1991.Dronabinol and prochlorperazine in combination for treatment of cancer chemotherapy-induced nausea and vomiting. J Pain Symptom Manage 6: 352-59.
(29) Noyes R et al. 1975. The analgesic properties of delta-9-tetrahydrocannabinol and codeine. Clin pharmacol Ther. 18: 84-89.
(30) Noyes R et al. 1975. Analgesic effect of delta-9-tetrahydrocannabinol. J clin Pharmacol. 15: 139-43.
(31) Staquet M et al. 1978. Effect of nitrogen analog of tetrahydrocannabinol on cancer pain. Clin pharmacol Ther. 23: 397-401.
(32) Notcutt W et al. 2004. Initial experiences with medical extract of cannabis for chronic pain: results from 34 "N of 1" studies. Anaesthesia. 59: 440-52.
(33) 大塚製薬ニュースリリース
(34) Guzman m. 2003. Cannabinoids: potential anticancer agents. Nat Rev Cancer. 3: 745-755.
(35) Galve-Roperh I et al. 2000. Anti-tumoral action of cannabinoids: involvement of sustained ceramide accumulation and extracellular signal-regurated kinase activation. Nat Med. 6: 313-19.
(36) Guzman M et al. 2006. A pilot clinical study of delta-9-tetrahydrocannabinol in patients with recurrent glioblastoma multiforme. Br J Cancer. 95: 197-203.
(37) Rog DJ et al. Young Randomized, controlled trial of cannabis-based medicine in central pain in multiple sclerosis, Neurology 2005, 65, 812.
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アメリカ民主党の大統領候補オバマ氏は、大麻の非犯罪化を支持しているそうだ。カナビス・スタディハウスに掲載されたNORMLの記事で知った。オバマ氏自身が2004年にノースウエスタン大学で語っている様子がワシントン・タイムズでビデオ公開されている。
オバマ氏は大麻の非犯罪化を支持する一方、全面的な合法化については否定的だそうだ。
大麻の社会的な扱いを論じるとき、「非犯罪化」とか「合法化」などの言葉が用いられる。大麻を肯定する立場の人からも「オランダは大麻が合法化されている」といった言い方を聞くことがあるが、オランダでも大麻は規制薬物であり、一定の条件下で個人使用目的の所持や販売が犯罪とされずに認められているといった状況のようだ。「合法化」ではなく「非犯罪化」だ。
「非犯罪化」と「合法化」。なかなか分かりにくい話だと思う。オランダではコーヒーショップで一回5グラムまでの大麻売買が容認されているが、売るための栽培は禁止されているというからますます分かりにくい。
このような状況は、現在の国際条約の規制から生じている問題ではないだろうか。薬物政策研究者のTakuさんの論稿では次のように触れられている。
1961年の単一条約については逐条コメンタリー(Commentary on the Single Convention on Narcotic Drugs 1961)が出されている。4条「一般的責務」(General Obligations)に対するコメンタリー23では、
「政府は、法的権限なしに個人使用のため薬物を所持した場合、禁固刑を科することを控える(refrain)ことがありうることを疑う余地はない。それに対し、そのような権限なしに配布を目的とする所持に対しては、禁固刑や他の自由の剥奪(deprivation of liberty)を伴う罰により処罰されなければならない」
United Nations(1973), Commentary on the Single Convention on Narcotic Drugs 1961 .
と述べている。つまり単一条約の趣旨として、個人使用目的での所持と配布目的での所持を区別すると同時に、前者に対しては禁固刑を控える権限を各国政府が持っていることがコメンタリーとして付されているのである。
非犯罪化とは、規制対象とされた薬物であっても、個人使用目的の所持の場合は刑罰の対象としないということのようだ。しかし、個人使用目的の所持を非犯罪化しても、その個人に配布する行為は犯罪のままだ。需要を認めながら供給を認めないような話だ。オランダのコーヒーショップは、非犯罪化された需要に対応する、非犯罪化された供給のシステムと言えるのではないだろうか。もちろんその前提には、大麻がソフトドラッグであり、危険度の高い薬物ではないという認識があってのことだ。オランダ政府も自国内にアヘン窟を作るつもりはないだろう。中国にアヘン窟を作ったイギリスの場合、個人使用目的の大麻を非犯罪化しながら、供給の非犯罪化がなされていないので、却って問題が複雑になってしまった側面があるようだ。
2004年1月のダウングレードに伴う非犯罪化によって、リクレーショナル用途にカナビスを使う人たちはそれなりの恩恵を受けたが、そのかわり栽培や供給の罰則が強化され、医療カナビスを栽培したり供給したりしていた人に対する刑罰は逆に重くなってしまった。また、それまでは医療カナビス患者に同情的だった一般ユーザーたちは自分が逮捕されなくなったことで医療カナビスに興味を示さなくなった。
一方、供給源を確保しない中途半端な非犯罪化は、カナビスをますます犯罪組織に頼らざるをえない状況を生んだ。それに伴い供給源が大型化し、警察の集中取締りも頻繁に行われるようになった。しかし、そのことが原因になってカナビスが品薄になり、残った犯罪組織は一獲千金のチャンスとばかり、危険な混入物を混ぜて重量を増やして利益獲得に走った。
異物混入バッズは、一般の人たちの健康を脅かすばかりではなく、THC4MSの逮捕で医療カナビス供給源を断たれた医療カナビス患者たちもそうした危険なカナビスに頼らざるをえなくなり、健康への懸念をさらに倍加する結果となってしまった。このように、中途半端な非犯罪化のしわ寄せは、最も弱い医療カナビス患者に集中して重くのしかかることになった。
オランダの場合も、完全な合法化ではなく非犯罪化ではあるが、ユーザーの供給源としてコーヒーショップが認められ、さらに国による医療カナビスの供給も行われており、イギリスのような醜い混乱状態は起こっていない。オランダの非犯罪化政策もいろいろな問題を抱えているとは言え、イギリスとの違いは非常に大きい。最も弱い者を置き去りするどころか、さらに深刻な状況に追い込んでしまったイギリスの非犯罪化政策は、それ自体がひとつの不正義と言える。
引用元:もう失うものは何もない 逮捕など恐れない カナビスで痛みに耐えるミュージシャン/カナビス・スタディハウス
大麻がさまざまな疾病に治療効果があることは、数多くの研究からも明らかになっており、嗜好目的で使用してもアルコールやタバコほどの害はないことも明らかだ。この問題の根本的な解決は、国際条約での大麻規制のあり方を見直すことから始まるのではないだろうか。個人的な大麻使用の容認は、そのための供給までを視野に入れて考える必要がある。生産・流通・供給までを制度的に管理し、その過程から犯罪組織を排除すれば国際条約の目的は果たせるだろう。制度的な管理とは、合法化に他ならない。
オバマ氏は大麻の「全面的な合法化」は支持しないと語ったそうだ。なぜ「全面的な合法化」を支持しないのか、オバマ氏の言う「全面的な合法化」とはどのような意味を指しているのかよく分からないが、少なくとも我が国の宗主国であるアメリカ様の大統領候補が、個人使用目的の大麻所持を犯罪とはしないと表明していることは、とても意味のあることだと思う。
選挙権はないので一票を投じることはできないが、ぜひバラク・オバマ氏に大統領に当選してほしい。そして、日本の厚生労働省に大麻を見直すよう命令してほしい。
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厚生労働省の情報公開に対して行っていた異議申立のうち1件について、内閣府情報公開・個人情報保護審査会から答申書のコピーが届きました。完全勝利です。この件です。
内閣府情報公開・個人情報保護審査会事務局宛意見書
「ダメ。ゼッタイ。」ホームページの大麻情報のネタ元は、15年以上前の米国製薬物標本の説明書ですが、その原本を厄人の天下り財団ダメセンも、厚労省も持っておらず、今やコピーしか存在しないシロモノです。その薬物標本の説明書には医学的根拠など最初からありません。その説明書には「本書に収録された主な分野及び掲載された薬物のいずれにつきましても、完璧な分析を行ったものではありません。記述はあくまで人々の注意を喚起し、問題の特定に寄与することを目的としています。従って、特定物質などに関する詳細情報をご希望の向きは直接お問い合わせ下さい」と書かれている。医学的な情報ではなく、政治的な情報なのである。
厚生労働省は、この説明書の翻訳が日本の公的大麻情報の根拠ではあまりにもお粗末なので、公的文書ではない、担当者個人が自分の勉強のために収集しただけだと言い張り、ごまかしておきたかったのでしょう。
公正な判断を下して頂いた内閣府情報公開・個人情報保護審査会委員、名取はにわ氏、北沢義博氏、高橋滋氏に、心より感謝申し上げます。
★ ★ ★
府情個第112号
平成20年1月24日
白坂和彦様
情報公開・個人情報保護審査会
答申書の写しの送付について
下記の事件については、平成20年1月24日に答申をしたので、情報公開・個人情報を審査会設置法第16条の規定に基づき、答申書の写しを送付します。
記
諮問番号:平成19年(行情)諮問第68号
事件名:「平成17年度覚せい剤等撲滅啓発事業の事業計画書の提出について」等の一部開示決定に関する件
--------改ページ-----------
府情個第111号
平成20年1月24日
情報公開・個人情報保護審査会
答申書の交付について
行政機関の保有する情報の公開に関する法律第18条の規定に基づく下記の諮問について、別紙答申書を交付します(平成19年度(行情)答申第398号)。
記
諮問番号:平成19年(行情)諮問第68号
事件名:「平成17年度覚せい剤等撲滅啓発事業の事業計画書の提出について」等の一部開示決定に関する件
--------改ページ-----------
(別紙)
諮問番号:平成19年(行情)諮問第68号
答申番号:平成19年度(行情)答申第398号
答申書
第1 審査会の結論
「厚生労働省所管の財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター「ダメ。ゼッタイ。」ホームページの運用・管理に関する全ての文書及び同ホームページ中の大麻に関する記述の根拠を示す全ての文書」及び「財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ運用に関し、厚生労働省が同センターに委託している内容、事柄を示す全ての文書」(以下「本件請求文書」という。)の開示請求につき、別紙1に掲げる文書を特定し、一部開示した決定については、別紙2に掲げる文書(以下「本件文書」という。)を対象として、改めて開示決定等をすべきである。
第2 異議申立人の主張の要旨
1 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し、平成19年1月11日付け厚生労働省発薬食第0111016号により厚生労働大臣(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)について、その取り消しを求めるというものである。
2 異議申立ての理由
異議申立て人の主張する異議申立ての理由は、異議申立書及び意見書の記載によると、おおむね以下のとおりである。
(1)異議申立書
厚生労働省の委託により運営されている財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター(以下「センター」という。)の「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ(以下「ホームページ」という。)に掲載されている大麻に関する情報は、世界各地で研究報告されている大麻の科学的な分析と著しく異なるため、センター及び厚生労働省の担当部局である監視指導・麻薬対策課(以下「担当課」という。)の担当者に対し、その記載の根拠及び出典について明らかにし、また情報を見直すよう求めてきた。
センター及び担当課の担当者との話で分かったことは、ホームページの大麻に関する記述のほとんどは、14年以上前に米国から輸入していた薬物標本の説明書を翻訳したものだということである。その説明書は、「薬物乱用防止教育指導者読本」(以下「指導者読本」という。)としてまとめられ、同センターで販売されており、ホームページの大麻情報は、ほぼ指導者読本を丸ごと掲載したものである。
この指導者読本こそが、ホームページに記載されている大麻情報の根拠・出典であり、その原文である本件文書のコピーを所有していると、異議申立人の問い合わせに対して担当課の担当者は回答している。
今回の行政文書開示決定通知書には、本件文書が入っていないので、以下2点を申し立てる。
ア センターのホームページに掲載されている大麻情報の原典である英語版の開示を求める。
イ 今回の原処分において、開示実施文書に本件文書が含まれていない理由について説明を求める。
(2)意見書
ア 経緯
平成16年6月15日、センターにホームページに書かれている大麻情報の根拠と出典を示すよう、文書で問い合わせを行った。
同月25日、出典は、主に本件文書であり、発行年月日は不明との回答を得た。
平成18年6月12日、現在の医学的・科学的知見とは相容れない、大麻の有害性を誇張捏造するホームページの記述が改まる様子がないので、センターに問い合わせたところ、改訂の予定はないが、指摘の内容については、厚生労働省の担当部局にも連絡するとのことであった。
同月14日、ホームページの記述についてセンターに問い合わせたところ、本件文書は、10年ほど前まで輸入していた薬物標本の説明書であり、その原文は保管しておらず、記述の確認はできないとのことであった。また、本件文書の翻訳は、ホームページに転載されているだけでなく、指導者読本として、センターで販売されていたことも分かった。
同月15日、担当課に電話をし、ホームページの大麻情報は研究データの出典を示せないどころか、原本も残っていない古い米国製の薬物標本の説明書なので、記述を見直してほしい旨、申し入れた。
同月23日、担当課の担当者から電話があり、センターに連絡してホームページの大麻情報の原本がないがもう一度よく探してほしいと要請したところ、コピーが出てきたとのことであった。当該担当者は、センターからファックスでコピーを送ってもらったとのことであり、この原本のコピーがホームページに書かれている大麻情報の根拠であるとのことであった。ホームページには、大麻の害として「心拍数が50%も増加し、これが原因となって脳細胞の細胞膜を傷つける」といった記述があるが、そのデータの出典については、英語の原本コピーにも書かれていないとのことであった。それではデータの根拠・出典が明らかになったことにはならず、真偽の確認もできないので、データの根拠を示すよう、重ねて申し入れを行った。
同年9月5日、再度、当該担当者に連絡をとったところ、同僚たちにも調べてもらっているが、データの出典は未だわからないとのことであった。
イ 本件文書について
本件文書は、異議申立人の問い合わせに対応するため、担当課の担当者が仕事として、厚生労働省が運営を委託しているホームページを管理するセンターに照会して入手した文書である。
本件文書は、ホームページに記載されている大麻情報の英語原文である。記載されているデータの根拠を示すよう申し入れ、当該担当者は同僚にも協力を得て、出典を探したと回答している。
本件文書は、国民からの問い合わせによって、当該担当者が勤務中に仕事として入手した文書であり、当該担当者はセンターから厚生労働省宛のファックスで本件文書を得ている。
担当課は、異議申立人が問い合わせるまでホームページの出典を知らなかったのであり、これは仕事として入手した文書以外のなにものでもなく、本件文書が個人の所有物だという主張は、情報管理のずさんさを自ら立証するにほかならない。
ウ 諮問庁の説明に対する反論
(ア)諮問庁は、本件文書は、個人の資料収集の一環として行ったものであり、上司の指示等によるものではなく、あくまで個人の勉強のためであると説明するが、当該担当者は、国民からの問い合わせに対応するため、仕事として、勤務時間中に税金で賄われている通信費及び事務用品を使い、本件文書を入手している。
(イ)諮問庁は、本件文書は、既に販売されている指導者読本の原本の一部であり、改めて組織的に検討、回覧等を行う必要がない文書であることから、担当者から他の関係職員に配布したり、上司に報告することなどしていないと説明するが、本件文書が指導者読本の原本の一部であることは、異議申立人の問い合わせによって初めて分かったことである。国民からの問いかけを上司にも相談しないのであれば、説明責任どころか、「国民本位の効率的で質の高い行政」など実現できるわけがない。
(ウ)諮問庁は、本件文書は、収集後、担当者の個人ファイルに編てつされ、担当者の机の中に保管されており、上司を含め、同僚もその存在を知らず、したがって保存・廃棄については担当者の判断で処理できる性質のものであると説明する。同僚や上司に説明報告することなく、ホームページの大麻情報には根拠がないという国民からの問い合わせによって判明した問題点を改善できるのか。
(エ)諮問庁は、念のため、行政文書ファイル管理簿で本件文書について検索してみたところ、該当する文書は存在しなかったと説明するが、これは、ホームページで国民に周知されている大麻情報の根拠文書を知らなかった、またその根拠を把握していなかったということである。
(オ)ホームページの運営をセンターに委託している厚生労働省には、国民に周知されている内容が医学的・科学的に適切であるかどうか確認する責任と義務がある。
ホームページに掲載されている情報の根拠を把握し、担当部署として適切に管理することは当たり前のことであり、その上で、本件文書を開示するよう求める。
第3 諮問庁の説明の要旨
異議申立人は、本件文書の開示と、開示実施文書に本件文書が含まれなかったことに関する説明を求めているものと考えられ、以下、その主張について諮問庁の考えを述べる。
1 本件異議申立ての経緯について
本件異議申立ては、異議申立人である開示請求者より、平成18年12月11日付でされた本件請求文書の開示請求に対し、原処分について、開示実施文書のほか特定の文書の開示を求める旨、平成19年1月22日付で提起されたものである。
2 異議申立人の主張について
異議申立人は、本件開示請求について以下のように主張しているものと考えられる。
(1)平成18年6月23日、ホームページの大麻に関する記述の根拠について、担当課へ問い合わせたところ、ホームページの大麻に関する記述のほとんどは、センターで販売している指導者読本の英語版の原文を翻訳したものであり、本件文書のコピーを所持していると回答された。しかし、今回の行政文書開示決定通知書には、本件文書が入っていない。
(2)そこで以下の2点を申し立てる。
ア ホームページに掲載されている大麻情報の原文である本件文書の開示を求める。
イ なぜ今回の決定通知書に原文が入っていないのか、説明を求める。
3 諮問庁の考え方
(1)異議申立人は、上記2のとおり、本件文書の開示と、原処分に本件文書が含まれてなかったことに関する説明を求めているものと考えられ、以下、その主張について、諮問庁の考えを述べる。
(2)本件文書は、担当課の担当者が、センターより入手したが、個人の資料収集の一環として行ったものであり、上司の指示等によるものではなく、あくまで個人の勉強のためである。
本件文書は、既に販売されている指導者読本の原本の一部であり、改めて、組織的に検討、回覧等をする必要のない文書であることから、担当者から他の関係職員に配布したり、上司に報告することなどしていない。
本件文書は、収集後、担当者の個人のファイルに編てつされたが、当該個人ファイルは、担当者の机の中に保管されており、上司も含め、同僚もその存在を知らなかった。したがって、保存・廃棄については、担当者の判断で処理できる性質のものである。
なお、念のため行政文書ファイル管理簿でも検索してみたところ、該当する文書は存在しなかった。
したがって、本件文書は、法2条2項に規定する「行政文書」に該当しないことは明らかである。また、本件文書の翻訳版である指導者読本は、一般に市販されているものであり、同様に「行政文書」には該当しない(法2条2項1号)。
なお、本件文書は、上述のように「行政文書」には該当しないものの、情報提供として、上記指導者読本と併せて、平成19年1月24日、諮問庁より異議申立人宛て送付したところである。
4 結論
以上により、異議申立人の主張には理由はなく、原処分を維持すべきものと考える。
第4 調査審議の経過
等審査会は、本件諮問事件について、以下のとおり、調査審議を行った。
1 平成19年2月16日 諮問の受理
2 同日 諮問庁から理由説明書を収受
3 同年3月26日 異議申立人から意見書を収受
4 同年4月24日 審議
5 同年11月20日 諮問庁の職員(厚生労働省医薬食品局総務課医薬情報室長ほか)からの口頭説明の聴取
6 平成20年1月22日 審議
第5 審査会の判断の理由
1 本件請求文書及び原処分における文書の特定について
本件開示請求は、厚生労働省所管の財団法人であるセンターのホームページの運用・管理に関する全ての文書及び同ホームページ中の大麻に関する記述の根拠を示す全ての文書並びにホームページ運用に関し、厚生労働省が同センターに委託している内容、事柄を示す全ての文書の開示を求めるものであり、処分庁は、現処分において、別紙1に掲げる文書を特定し、一部開示決定をしたものである。
異議申立人は、原処分における開示実施文書に本件文書が含まれていないとして、本件文書の開示を求めており、これに対して、諮問庁は、本件文書は行政文書に該当しないとしていることから、以下、本件文書の行政文書該当性について検討する。
2 本件文書の行政文書該当性について
(1)本件文書の内容等について
当審査会において、諮問庁から本件文書のページを受けて確認したところ、本件文書は、Drug prevention resources,Inc.が作成・出版した「DRUG EDUCATION MANUAL」という名称の冊子の表紙、中表紙、目次及び「CANNABIS」という標題の下での3ページにわたる記述部分の写しであり、当該部分には、大麻に含まれる成分やその有害作用等について記載されていることが認められる。また、これと併せて、諮問庁から指導者読本及びセンターのホームページに掲載されている大麻に関する記述部分の資料の提示を受けて確認したところ、指導者読本の大麻に関する記述の一部が本件文書の記述内容を翻訳したものであること、またセンターのホームページにおける大麻に関する記述は、本件文書の翻訳部分を含めて指導者読本に記載されている大麻に関する記述内容をそのまま利用して作成したものであることが認められる。
諮問庁によれば、指導者読本は、米国で作成された本件文書を含む薬物情報の説明書の翻訳に、日本の関係資料を付加して、一般的な薬物乱用防止の啓発資料として、平成9年3月にセンターが作成・発行したものであり、センターにおいて有償で頒布しているとのことである。また、本件文書を含む米国の薬物標本の説明書について、センターでは、現在、当該薬物標本を輸入しておらず、標本に添付される説明書の入手は困難とのことであった。
(2)本件文書の入手の経緯等について
諮問庁の説明並びに異議申立人の異議申立書を及び意見書によれば、以下の事実を認めることができる。
本件文書は、担当課の担当者が、異議申立人からの問い合わせを受けた後に、センターからホームページの大麻に関する記述部分の原典であるとして入手したものである。
また、当該担当者はセンターから本件文書を入手した後の平成18年6月に、異議申立人に対して、そのコピーを所有している旨回答していることから、異議申立人は、同年12月の本件開示請求の前に、諮問庁の当該担当者から本件文書を入手した事実を知らされていたと認められる。
さらに、当時、担当課には8係があり、センターの啓発等事業は啓発推進係が担当していたところ、本件担当者はいずれの係にも属さない主査として、その分掌事務の一つとして麻薬、向精神薬、覚せい剤、大麻等に関する諸外国の文献収集に関する事務を担当していた。また、同課には、一般国民からの苦情等への対応を担当する係はなく、苦情等の内容に応じて関連のある係等において処理することとされており、本件においては、当該担当者が、本件文書を使用して苦情対応を行っていた。
(3)本件文書の行政文書該当性について
上記(2)の事実関係を前提として、本件文書の行政文書該当性について検討すると、本件文書は、特定個人から所管業務についての苦情を受けて、その苦情内容の真偽、事実関係を確認する等の目的で、外国の文献収集の担当者が入手したものであることから、本件文書は、職務上取得された文書であると認められ、また、その後、本件文書を使用して苦情対応を行ったことが認められることから、本件文書は、その時点において、組織共用文書の実質を備えた状態にあったというべきである。
したがって、本件文書は、法2条2項に規定する行政文書であると認められるため、これを対象として、改めて開示決定等をすべきである。
(4)本件文書の保管状況等に係わる諮問庁の主張について
諮問庁は、本件文書は、既に販売され公になっている指導者読本の原本の一部であり、改めて組織的に活用するために、検討、回覧等する必要がない文書であることから、本件文書の入手後においても当該担当者から他の関係職員に配布したり、回覧等はしていないことや、担当課の共用文書棚ではなく、当該担当者の個人ファイルに編てつされ、保管されていたことから、本件文書は、法2条2項に規定する行政文書には該当しないと説明する。
しかしながら、上記(3)のとおり、本件文書の保管状況等にかかわらず、本件文書が実質的には担当課において業務上必要な文書として利用された状況にあったことは否定できないものであり、これら諮問庁の主張は、採用することができない。
なお、諮問庁は、本件文書の翻訳版である指導者読本が行政文書に該当しないと説明するが、そのことは、本件文書自体の行政文書該当性の判断を左右するものでないことは言うまでもない。
3 本件開示決定の妥当性について
以上のことから、本件請求文書の開示請求につき、別紙1に掲げる文書を特定し、一部開示した決定については、厚生労働省において、その外に開示請求の対象として特定すべき文書として本件文書を保有していると認められるので、これを対象として、改めて開示決定等をすべきであると判断した。
(第3部会)
委員 名取はにわ、委員 北沢義博、委員 高橋滋
--------改ページ-----------
1 「大麻」(依存性薬物情報研究班 依存性薬物情報シリーズ№1 昭和62年3月)のうち、「Ⅱ大麻とは」、「Ⅴ大麻乱用の臨床」の部分
2 「大麻乱用による健康障害」(依存性薬物情報研究班 依存性薬物情報シリーズ№9 平成10年12月)のうち、「Ⅳ大麻精神病」の部分
3 「薬物依存」(佐藤光源、福井進編著。目でみる精神医学シリーズ―5、世界保健通信社)のうち、「第13章 大麻依存」の部分
4 「Cannabis : a health perspective and research agenda」(WHO/MSA/PSA/97.4)
5 覚せい剤等撲滅啓発事業「契約書」(平成17年4月1日)
6 「平成17年度覚せい剤等撲滅啓発事業の事業計画書の提出について」(平成17年3月31日付麻覚総119号)
7 「平成17年度覚せい剤等撲滅啓発事業の事業実績報告について」(平成18年4月10日付麻覚総第2号)
8 覚せい剤等撲滅啓発事業「平成17年度補助金等支出明細書」
--------改ページ-----------
別紙2
「DRUG EDUCATION MANUAL」(Drug prevention resource, Inc.)のうち、表紙、目次及び「CANNABIS」の部分
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大麻報道センター(旧大麻取締法変革センター)が提出した提言・要望書・意見書です。
●主要11政党と衆参国会議員70名に郵送 2010年12月13日
国会における大麻の科学的検証についての要望書
●放送倫理検証委員会(BPO)宛 2009年12月25日送付
「NHKによる一連の大麻関連番組に関する意見と要望」
●国連麻薬委員会宛 2008年3月10日提出
A Proposal for Reforming Cannabis Control under the International Treaties
●日本政府(薬物乱用防止推進本部関係省庁)宛 2008年2月27日提出
「国際条約による大麻規制の見直しを求める提言」[pdf 27.83KB]
●厚生労働省と(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター宛 2007年5月31日提出
「ダメ。ゼッタイ。」ホームページに記述されている薬物情報の見直しについての要望書
添付資料PDF:【「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ 薬物データベース: 薬物別解説/大麻について」に対する医学的検証】(301.15KB)
●(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター宛 2007年5月14日提出
薬物情報を見直す委員会についての要望書
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麻薬単一条約について
1960年までに、国際連盟時代を含めて麻薬の国際統制に関する6つの異なる条約と3つの改正議定書が施行されていました。念のため列挙しますと、ハーグアヘン条約(1912)、ジュネーブ国際アヘン条約(1925)、1925年協定(1925)、麻薬生産の制限および流通規制のための条約(1931)、1931年協定、(1931)、危険薬物の非合法通商の抑制のための条約(1936)、またこれらの条約および協定の改正のための1946年・1948年・1953年の議定書となります。
1961年の麻薬単一条約(1961 Single Convention on Narcotic Drugs)の制定の主たる目的は、これらばらばらに制定されていた条約と議定書をひとつにまとめ、国連の麻薬統制の基準を簡潔かつ強化することにありました。
この単一条約の主眼は以下のようになります。本条約の第4項には「医療と科学目的に麻薬の生産、製造、輸出、輸入、流通、取引、使用、所持を排他的に限定する」と書かれています。つまり、麻薬物質の供給量を科学や医療目的に必要な分にだけ制限させ、逆にえば、この目的での麻薬物質の流通を効果的に継続かつ統制することが主眼であったといえます。
この条約では麻薬性物質を大きく4つのカテゴリーに分けています。
スケジュール1は、コデインより強いか、あるいはモルヒネと同等程度の中毒誘発性あるいは中毒継続性を持つ物質、あるいは大麻・大麻樹脂・コカインと同等の中毒性を持つ物質が含まれています。スケジュール2には、コデインより弱い中毒性、あるいはDextropoxyphene(アヘン系の鎮痛剤)と同程度の中毒性を持つ物質が含まれています。またスケジュール3は、中毒性がなくかつ中毒性のある物質に容易には転換できない合法的に医療目的で使用される物質が、スケジュール4は逆に強い中毒性があり他の薬物による治療による相殺ができず、かつ健康上の理由から医療目的での使用から消去されることが望ましいと考えられる物質が含まれます。
したがってスケジュール1にカテゴリー化されている物質は、大麻も含め必然的にこのスケジュール4にもカテゴリー化されています。
大麻がこのスケジュール4にカテゴリー化されているのは、1957年のWHOによる大麻の「身体的中毒性」を持つという定義に依っています。
しかしながら、この当時大麻の依存性についてどこまで科学的に把握できていたかは疑問が残ります。事実、1965年のWHOによる大麻の依存性に関する定義では、大麻の身体的依存性はほとんどないと述べられています。大麻がなぜスケジュール4に分類されているのかについては、その中毒性云々というよりも、むしろ当時大麻が主に娯楽用として使用されており、医療目的での用途がはっきりとしていなかったため、単一条約の主旨である麻薬性物質の用途を医療目的にのみ限るという基準から外れていたためと研究者の間では考えられているようです。
参考文献:Bentham, M. (1998) The Politics of Drug Control, Macmillan Press LTD.
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アクセス数の増加に伴い、ここのところサーバーのエラーが頻発しているようです。エラーログを見てビックリです。
サーバーがエラーになる関係で、ブログランキングへの更新通知機能もおかしくなっています。サーバーが落ちたりすると、何かあったのでは、と心配する人がいるようなので、単にサーバー負荷の問題だよん、と、お伝えしておきます。
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3月に開催される国連麻薬委員会と日本政府に対し、薬物政策、とりわけ大麻の扱いについて、提言を提出する予定です。以下は野中さんによる原案です。フォーラムのコーナーにも同じ草稿を掲載してありますので、みなさまのご意見や感想をお寄せ下さい。尚、フォーラムのコーナーに海外からの機械的な迷惑投稿が絶えないので、書き込みはユーザー登録をした方に限る設定に変更しました。誰でも投稿できる談話室でのご意見や感想も歓迎です。
ご意見などを参考に最終原稿を仕上げ、日本語原文と英語訳を付し、国連麻薬委員会と日本政府に提出し、海外で同様の問題に取り組むNGOなどとも意見と情報を交換したいと思います。よろしくお願い致します。
国際条約による大麻の規制の見直しを求める提言
━ 第51会期国連麻薬委員会に向けて ━大麻取締法被害者センター
1.はじめに
大麻は1961年の麻薬に関する単一条約(麻薬単一条約)及び麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(麻薬新条約)によって、けし、コカ樹などと共に規制されている植物であるが、近年の研究によって、大麻の有害性は、ヘロインやモルヒネ、コカインのみならず、現在は規制の対象外であるアルコールやたばこより低いことが報告されている。
大麻の適切な使用が、ストレスや精神の緊張の緩和を促し、体内の様々な器官での恒常性維持機能を高める働きをもたらすことは広く知られている。大麻は古くから医薬品として用いられており、多発性硬化症に伴う神経因性の疼痛やオピオイド系薬剤による治療で効果の見られない末期がんの患者の疼痛、AIDS患者の進行性食欲減退や体重減少などの症状を伴う消耗症候群、依存性薬物の依存症など、様々な疾病の治療に有効であり、実際に、大麻が治療薬として認められ、処方されている国もある。
先進諸国の間では、大麻の有害性に関する最新の科学的知見に基づいた正当な評価、個人の価値観を尊重する考え方などに基づいて、薬物の害削減政策として、個人的な使用目的の大麻の少量の所持については、逮捕しない政策を採用している国が多いが、栽培を禁止している国際条約との軋轢により、犯罪組織への莫大な不正利益の供給や取締りに費やされるコストの増大、各国の国民の薬物政策への信頼性の低下など、様々な問題が生じており、現在の国際条約を改めるよう求める声が上がっている。
一方、わが国においては、国際条約による規制を理由に、大麻取扱者を除いて、大麻の所持や栽培が量や理由の如何を問わず、懲役刑をもって全面的に禁止されており、正当な手続きを行って、大麻取扱者免許取得を申請しても交付されない状況が続いている。こうした現在のわが国の大麻政策がもたらす社会的な損失は甚大であり、重篤な人権侵害を引き起こしている。
国連は、2008年を「反省と熟慮の年」(Year of Reflection)とすることを明言しており、過去10年間の薬物政策を総括し、新しい政策を話し合う会議が開催される。そこで、古い国際条約に起因する大麻問題の解決と大麻取締法の抜本的な改正に向けて、以下のとおり提言する。
2. わが国の大麻政策の現状と問題点
2.1 大麻政策の現状
・大麻取扱者を除いて、大麻の所持や栽培、配布が、量や理由の如何を問わず、懲役刑をもって全面的に禁止されている。
・医療用途の大麻の施用や施用を受けることを全面的に禁止している。
・薬物乱用防止教育として、大麻の健康への影響に関する、ことさらに害を誇張した、事実に基づかない誤った情報を流し続けている。
・麻薬単一条約は、産業用途(繊維と種)あるいは園芸用途に限られた大麻草の栽培には適用されないにも拘らず、産業利用目的で、正当な手続きを行って、大麻栽培者免許取得を申請しても、大麻が国際条約により規制されている植物であることを理由に交付されない。
・不正大麻撲滅運動と称して、野生の大麻草までも撲滅の対象とした活動を行っている。
2.2 大麻政策の問題点
・大麻の有害性はアルコールやたばこより低いことが明らかにされているにも拘らず、個人的な使用や非営利目的の大麻の所持や栽培、配布を懲役刑をもって禁止することによって、大麻使用者に重篤な人権侵害を行っている。
・大麻使用者を犯罪組織と結び付け、覚せい剤などの、より危険なハードドラッグとの接触の機会を増加させ、犯罪組織に、不正利益を供給している。
・アルコールやたばこより安全な代替として大麻を選択することが認められていない。
・大麻の取締りに費やす労力や費用が、大麻の実際の有害性に見合っておらず、税金を浪費している。
・医療用途の大麻の施用や施用を受けることを全面的に禁止することによって、患者の生存権を著しく脅かしている。
・アルコールやたばこ、覚せい剤などの、より危険な依存性薬物の依存症の治療に大麻を使用することが認められていない為、患者の依存性薬物からの脱却を困難にしている。
・薬物乱用防止教育として、大麻の健康への影響に関する、ことさらに害を誇張した、事実に基づかない誤った情報を流し続けることにより、主として、未成年者を含む若年層に、政府による薬物に関する情報への信頼性を著しく低下させ、深刻な混乱を引き起こしている。
・繰り返し環境に利用でき、環境問題を改善する貴重な資源である大麻の栽培者免許の取得を過剰に厳しく制限することにより、持続可能な社会の発展と構築を著しく妨害している。
・麻薬新条約には、「第14条 2 締約国は、麻薬又は向精神薬を含有するけし、コカ樹、大麻等の植物であって自国の領域内において不正に栽培されたものにつき、その不正な栽培を防止し及びこれらの植物を撲滅するための適当な措置をとる。その措置をとるに当たっては、基本的人権を尊重するものとし、また、歴史的にみてその証拠がある場合には伝統的かつ正当な使用について妥当な考慮を払うとともに、環境の保護についても妥当な考慮を払う。」と規定されているにも拘らず、環境の保護について妥当な考慮を払うことを怠り、野生の大麻までも撲滅の対象としている為に、重篤な環境破壊を引き起こし、税金を浪費している。実際に、アサカミキリという昆虫が絶滅の危機に瀕している。
3 日本政府への提言
上記のような、大麻政策の現状と問題が、古い国際条約による大麻の規制に起因していることに鑑み、日本政府に対し、第51会期国連麻薬委員会に向けて、以下の2つを提言する。
Ⅰ.第51会期国連麻薬委員会において、国際条約による大麻の規制を最新の知見と照らし合わせ、薬学的、医学的、社会学的な観点から再検証するよう働きかけることを求める。
Ⅱ.第51会期国連麻薬委員会において、世界の全ての成人の個人使用目的及び非営利的目的の為の大麻の栽培と所持の権利を制定するよう提議することを求める。
以上
謝辞
私達に、最新の科学的知見を与えてくださった全ての研究者に感謝の意を表します。
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12月25日に発売された実話ナックルズX vol.3に書いた原稿です。この原稿を書いた時点では、一緒に吸った学生12名は送検されていませんでした。が、その後送検され、不起訴処分となり、裁判にはなりませんでした。一緒に吸ったことがあるというだけでは罪など問えないことを知りながら、取締当局はみせしめとして送検したのだろうと思います。アメリカ連邦政府の猿真似、ハームプロダクション政策とでも申しましょうか。
関東学院大学ラグビー部の部員が、合宿所の押し入れで大麻栽培にトライして逮捕された。英国遠征で買ってきた大麻もあったらしい。守りの甘いラガーマンだとは思うが、どこかの大学のレイプ事件のような意味での被害者はいない。今回の事件で最も被害を受けたのは大学ラグビーではないだろうか。大麻取締法違反の被害は、逮捕によって起きる。
マスコミは当局発表を垂れ流して大騒ぎしている。学生に大麻の種を売った店にも捜索が入った。一緒に吸っていた部員が十数名いて、大麻には使用罪がないので、警察は「譲り受け」や「共同所持」で書類送検を検討しているという。
現在は規制対象外の「種」や「使用」を弾圧するための当局の大宣伝に、マスコミがえらやっちゃよいよいと踊っているのである。
取締当局はどうしても大麻を弾圧したいらしいが、弾圧は悪循環しか招かない。店で種を買っていた者はネットで海外から買うだろうし、自分で栽培していた者をブラックマーケットに追いやるだろう。それは覚せい剤などのホントにヤバイ薬物との接点をわざわざ当局が提供するようなものだ。海外からの種の流入を止めることなどできるわけがない。
必要なのは、弾圧ではなく、正しい知識の普及と教育であり、理に適った管理であり、それを具体化する政策である。日本の薬物政策は、米国の共和党政権による麻薬撲滅政策の猿真似に過ぎない。ナンシー・レーガンがノリノリだったという「Just Say No」を「ダメゼッタイ」と翻訳しただけだ。莫大なコストがかかるだけで、米国の薬物弾圧政策は破綻している。
オランダでは、薬物使用による個人と社会へのダメージをできるだけ小さくするための害削減政策が採られ、欧州の薬物政策はその流れにある。
米国民主党の大統領候補は全員が医療大麻を支持している。政権が変われば米国の大麻政策にも変化が現れるだろう。政権を変えて政策を変える。日本にも必要なことだろうと思う。
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過日、内閣府に設置された「薬物乱用対策推進本部」に電話して、前回の国連麻薬員会で日本がアメリカと共に「薬物の害を削減する政策」に反対した理由を取材した。
内閣府ではその件について関知していないとのこと。個々の政策は担当の省が行っており、推進本部はその調整を行う機能なので、政策を作るのではないそうだ。
内閣府は、前回の国連麻薬委員会で、日本がハームリダクション政策に反対したことを把握していない。
詳しくは後日。
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2.各国の個人使用目的での大麻所持に対する罰則規定
第1章で述べたように、個人使用目的での大麻所持に関する罰則規定は、原則的に各国の憲法および法体系の原則に基づいて規定される余地がある。これを反映するように、以下にみるように基本的には禁止行為とされてはいてもその罰則規定は様々である。本稿ではこれをなるべく俯瞰的に把握できるよう、関係法律、罰則(法律上の罰則規定)を挙げたうえで、その実際の運用状況を付記として要約した。
ドイツ
○関係法律:BtMG s.29, s.31 a・1994年3月29日の憲法裁判所の決定
○罰則:禁固5年以下もしくは罰金刑。ただし刑罰は「少量」の場合には減免される。
○付記:憲法裁判所は、大麻所持に対する罰則が憲法に準じたものであることを認めつつ、各州は個人使用目的での所持の場合でかつ、少量の場合は不起訴とするべきとし、その少量の規定は各州の判断に任せている。他に不起訴要件として、第三者を巻き込んでいないこと・未成年者を巻き込んでいないこと・個人使用目的であることなどが挙げられる。
各州の「少量」の規定については以下の通り。
・シュレースヴィッヒ・ホルシュタイン州:30グラム
・ヘッセン州とノルトライン=ヴェストファーレン州:10グラム
・ハンブルグ州:10グラムあるいはマッチ箱1つ分程度
・ベルリン・ブレーメン・ザーランド州:10グラム
・バイエルン・バーデン=ヴュルテンベルク州:6グラム
フランス
○関係法律:公衆衛生法(Code de la sante publique)Art.L.3421-1・刑法 Art. 222-37・法務省2005年4月8日付通達書。
○罰則:使用については禁固1年以下もしくは罰金。所持は禁固10年以下。
○付記:2005年の通達により、個人使用目的での所持は、使用と同じように罰することになった。逮捕者は24時間もしくは48時間の拘留の後、初犯でありかつ常習者でなく起訴が妥当であると思われない場合は、警告のみで釈放されることが多い。常習者の場合、起訴されるか、あるいは医療・社会福祉機関への送致命令が下される。ヨーロッパでは所持に対して比較的厳しい法運用を行っている国といえる。
イギリス
○関係法律:薬物乱用法1971 s.5・1984年警察・刑事証拠法(Section 24 of PACE 1984)・2003年9月通達の全国警察本部長・副本部長組織による大麻取締におけるガイダンス(ACPO Cannabis Enforcement Guidance, September 2003)
○罰則:2年以下の禁固刑。
○付記:2004年1月のクラスCドラッグへの移行に伴い、上記ガイダンスでは、警察官の判断により、未成年者が利用する場所で所持していた場合、常習者であると近隣の人々によって確認された場合、近隣への迷惑行為を伴っていた場合、17歳未満の使用者(警察署にて適切に指導する必要から)の場合などを除き逮捕には慎重であるよう指導されている。
ACPOガイダンス原文
[http://www.ukcia.org/pollaw/acpoguidelines/default.html]
スペイン
○関係法律:Law 1/1992, Art 25-28
○罰則:公共の場での使用・所持は刑事罰でなく、行政処分によって罰せられる。
○付記:実際に個人使用目的での大麻所持は、逮捕・起訴の対象としては扱われていない。
イタリア
○関係法律:イタリア共和国大統領令309/90, Art.75(DPR)
○罰則:行政処分
○付記:初犯であり、かつ今後繰り返し使用する意図がない場合は警告のみ。2006年に行政処分の適用が厳格化され、大麻所持の再犯者には運転免許の停止と一日夜間の外出禁止などの行政処分が下される
(参考[http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/europe/4695368.stm])。
ポルトガル
○関係法律:Law 30/2000, Art.2, n.o 1
○罰則:行政処分
○付記: 10日分の使用量(25グラムの大麻あるいは5グラムの大麻樹脂)以下の所持の場合は、コミュニティーサービス・免許停止・罰金などの行政処分が適用される。それ以上の場合は10日間の留置。上記法律のArt.5, n.o 1により、薬物依存抑止委員会により、依存状態や問題行動の程度に応じ治療が求められる。
オランダ
○関係法律:アヘン法Art.3C・アヘン法指令
○罰則:1976年以降30グラムまでの所持は1か月以下の禁固刑。もしくは2,250ユーロの罰金。30グラム以上の所持は、最高4年の禁固。
○付記:アヘン法指令では、個人使用目的での5グラム以下の所持は、法的優先性が低いと規定され逮捕されることはない。AHOJ-G規準(A:アルコールを出さない H:ハードドラッグの販売を行わない O:騒音など近隣への迷惑行為を行わない J:未成年者へ販売しない G:500グラム以上の在庫を持たない)を満たすコーヒーショップでの1回あたり5グラム以下の売買は捜査対象とはならない。
ベルギー
○ 関係法律:1998年4月17日付指令(Directive de 17 avril 1998)・2003年5月16日付内閣指令 (Directive ministerielle de 16 mai 2003)・ 2005年1月付司法省および司法局による指令(Directive commune de la Ministre de la Justice et des autorites judiciaires du 25 janvier 2005)
○罰則:公共の秩序を乱す行為を伴う場合、禁固3か月から1年。
○付記:2003年の指令により、非合法薬物の使用に対する刑法の適用は最終手段として扱われるべきであると規定された。1回の使用量および24時間以内の使用量として規定される3グラムまでの所持は、個人使用目的として規定される。初犯の場合75-125ユーロの罰金。初犯から1年以内での再犯の場合130-250ユーロの罰金。さらに同じ年に再犯の場合、8日間の拘留と250-500ユーロの罰金。
フィンランド
○関係法律:刑法第50章1および2a
○罰則:罰金もしくは6か月以下の禁固刑
○付記:10グラム以下の大麻樹脂、15グラム以下のマリファナ所持は、5-10日間の拘置に処せられる。警察による捜査、事件化が猶予されることは稀である。(参考:地方行政裁判所において、オランダ人医師によって処方されたフィンランド人の大麻の医療目的での使用を認める判決が下され、それを受けて2008年1月現在、社会保健省は医師の処方に基づく医療使用に関するガイドラインを作成中)
デンマーク
○関係法律:大統領令NO.698/1993 s.27(1) ・2004年の法令No.445 S.3(1)・2004年の検察官指令35
○罰則:罰金もしくは2年以下の禁固刑
○付記:2004年の法令制定以後、それまで警告のみであった単純所持に対し法運用が厳格化され、70ユーロの罰金が科されるようになった。
参考:[http://www.drugpolicy.org/library/041207copenhagen.cfm]
スイス
○関係法律:1924年制定の連邦薬物法(Swiss Federal Narcotics Law:LStup)
○罰則:罰金あるいは1年以下の禁固
○付記:州(canton)によって法運用に差があり、売買などに対して西部フランス語圏では比較的厳しい法運用がなされているが、個人使用目的の所持で罰せられることはない。2007年を含め過去に数回連邦議会で大麻合法化の法案が提出されているが否決されている。
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昨年9月にTHCをNPOとして位置付けて再起動し、10月にサポーター専用サイトで臨時総会を開きながら、そのままになっていました。すいません。
各議題についてなどの報告を書きましたので、サポーター登録して頂いた方はアクセスしてみて下さい。
THCのサイトはXOOPSというプログラムを使って構築していますが、大麻とは全く関係ない知人にボランティアで作ってもらったものの、いまいち使い方が分からず、英語版や「検証:ダメゼッタイ」などの関連サイトを含めて統合したいと思いながらそのままになっています。
今後、英語版などを通して海外のNGOなどとの交流や情報交換、意見交換なども行いたいと思っています。
また、紙媒体の資料なども書き起こしの人手がなく、公開できないままになっているものなどもあります。
サポーター登録は気が引けるけど、何か手伝えることがあれば手伝ってもいいよ、という方、いらっしゃいませんか?
ウェブ系の作業(XOOPS,MT,Wordpress等)、英訳、書き起こしなど、力を貸して頂ける方がいらっしゃいましたらぜひご連絡下さい。
よろしくお願い致します。
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[要約]
大麻が法律で禁止されている大きな理由として、大麻使用が暴力や犯罪行為を引き起こすことがよく挙げられる。しかし、複数の論文や報告書で、大麻と暴力や犯罪行為の間に明らかな因果関係はないと報告されている。主要な論文・報告書では、大麻は暴力や犯罪行為を引き起こさない、もしくは、引き起こすとしてもアルコールやコカインと比べ、低い頻度である、と結論付けられている。
暴力・犯罪傾向が理由で大麻を禁止することには正当性がない。
[本文]
2007年、ビクトリア大学中毒研究センターの研究チームは、薬物中毒治療を受けている被験者を対象に、暴力行為を犯す直前の数時間にコカイン、アルコール、大麻を使っていた頻度を調べ報告した(1)。
また、攻撃性、衝動性、法の軽視度合のような暴力行為に結び付く個人的な特質も計算に入れて評価を行った。
その結果、「多変量解析したところ、アルコールとコカインの使用は暴力と有意な関連が認められ、その薬理的効果が暴力行為を引き起こしていることが考えられた。しかし、大麻の使用頻度については、暴力行為と有意な関連は認められなかった。」としている。
2005年、Blondellらは、外傷を持つ900人の患者のドラッグ陽性率を検討し、「大麻単独使用では入院を要するような暴力あるいは非暴力のどちらの傷害とも関連性はなく、これに対して、アルコールとコカインは暴力関連の外傷を引き起こす」、と報告している(2)。
2002年に発表されたカナダ上院の報告書で、大麻と犯罪について検討を行っている。カナダでのアルコールや薬物と犯罪の関連は、アルコールが24%と最も高く、次いでコカイン8~11%であった。大麻は3~6%と少なかった(3)。大麻が非合法であり、反社会的環境に存在することや大麻の使用自体が犯罪であることも考えると、「大麻使用者が、大麻使用以外の犯罪を犯すことは、稀な例を除いてない。」と結論している。
2002年に発表されたイギリスのドラッグ乱用諮問委員会の報告書で、「大麻の作用はリラックスや社会的引きこもりを起こす傾向があり、暴力傾向やアルコールで見られる脱抑制とは異なる。このことは、大麻が他者や自分に対する暴力を引き起こすことが稀であることを示している。これに対して、アルコールは、故意の自損行為や家庭内の事故や暴力の主要な原因になっている」としている(4)。
[結論]
・犯罪傾向を引き起こす主要な薬物は、大麻よりむしろアルコールである。
・大麻自体の作用で、暴力・犯罪傾向を引き起こすことは稀なケースを除いて無い。
・大麻が非合法であるため、大麻取締法違反という犯罪が存在する。また、反社会的環境で取引されることが多いため、犯罪に巻き込まれがちである。このことは、大麻の所持・使用を合法化(制度的管理)することで解決される。
・暴力・犯罪傾向が理由で大麻を禁止することに科学的な正当性はない。
[参考文献]
1) Macdonald S et al. Predicting violence among cocaine, cannabis, and alcohol treatment clients. Addictive Behavior, 33: 201-5, 2008.
2)
Blondell R et al. Toxicology Screening Results: Injury Associations Among Hospitalized Trauma Patients. Journal of Trauma Injury, Infection, and Critical Care, 58: 561-70, 2005.
3) Canadian Special Senate Committee on Illegal Drugs. Cannabis: Our Position For A Canadian Public Policy. Volume 1, Chapter 7, 2002.
4) United Kingdom's Advisory Council on the Misuse of Drugs. The Classification of Cannabis Under the Misuse of Drugs Act of 1971. 2002. See specifically: Chapter 4, Section 4.3.6.
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