カナビス・チンキ液

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Cannabis Tinctures

技術的には、チンキ液とはアルコールをベースにした溶剤のことをいう。カナビスは油性物質で水には溶けないので、通常チンキ状の液体になっている。チンキはアルコール抽出原液を水に希釈しものだが、効果が弱いだけで原液とは基本的には同じものと言ってもよい。アンティーク・コレクターの間では別のものとして扱われているが、どちらも同じように包装され流通していたので、ここではそれらを総称してチンキ液と呼んでいる。

液体のカナビス・チンキは、コップ半分のお湯に何滴というような医師の指示に従って患者が自分で処方したり、調合薬として成分の一つとして混ぜて使われていた。

イーライリリー社のチンキ・ボトル No. 17。ボトルは高さ１２センチ直径５センチ。このボトルの紙ラベルは色褪せているが、ほとんど破損しておらず状態は良好で次のように書かれている。---毒劇物、１１８cc、チンキ１７型、カナビス（カナビス・サティバ）、生理試験済、アルコール分９３％。鎮痙、鎮痛、睡眠用。１回の服用量は１０〜３０ミニム（０.６〜２cc）で必要に応じて加減のこと。イーライリリー社、アメリカ・インディアナポリス。

インディアン・カナビス。オハイオ州シンシナティ・Wm・S・メリル社。コルク栓琥珀色ボトルで高さ１５センチ（ストッパーは含まず）。ボトル首部の小さなラベルには次のように書かれている。「劇毒性インデイアン・カナビス、輸入インド麻、カナビス・サティバ（インディーカ種）、アメリカ薬局方 、植物の花部から抽出した液体。オハイオ州シンシナティ・Wm・S・メリル社研究所」。適度の服用で脊髄神経系を刺激して麻酔効果があり筋肉の傷みを取り除く。泌尿組織の炎症にも有効でとくに淋病に効果がある。カナビス・インディーカは、片頭痛、月経困難症、アルコール中毒による不眠症に推奨されていた。服用量は２〜２０ミニム。（年代不詳）

カナビス・チンキ。シャープ＆ドーム社。
Classic Pharmaceuticalsサイト（http://www.classicpharm.com/canbot.html#ads） から許可を得て掲載。

ロイド社特製カナビス医薬品のラベル。一般にはカナビス・インディーカのほうがカナビス・アメリカーナよりも効力が強いと思われていたので、本質的には同じものであっても別の商品に仕立てる必要があった。オハイオ州シンシナティ・ロイド図書館の好意で掲載。

ロイド社特製ボトル。１９１４年製造。ラベルには次のように書かれている。

特製医薬品/カナビス、アルコール分７４％、ロイド兄弟社、オハイオ州シンシナティ。
特殊適応症：　不眠を伴う神経衰弱・憂鬱傾向、精神症・妄想症、健忘症。
通常適応症：　とくに上記症状に伴う腹痛、骨盤内器官の不調不快、多尿、テネスムス、膀胱炎。
服用量：　特製溶液3ss. 水3iv.（R. Sp. Med. Cannabis, gtt. v to 3ss. Water, 3iv.）

１３×５センチのボトル。ラベルには、特別医薬品、カナビス、アルコール分８１％、ロイド兄弟社、オハイオ州シンシナティ、と書かれている。この写真では、長い間にコロイド液が蒸発して粘ったタールが残っている。裏面のラベルには思わず気持ちが緩んでしまいそうな記述がみられる。(オークション出品者による)

効力は弱い医薬品として分類さているが、この医薬品は極めてひろい範囲で利用できる。胃痛の緩和、骨盤からくる痛みなど、上記のような疾患のほか、脳や神経系に起因する症状のヒステリー症患者、女性の軽い落込みや、特に痛みを伴う生理不順にも使われている。また、高熱が長く続いた後の情動不安を伴う精神錯乱や中枢神経系髄膜炎にも処方されている。

痛みを伴う胃の機能障害には、その対処薬の効果を補強するのに非常に役に立つ。胃液の分泌を抑制せしたり胃腸の活動を乱したりしない。腸内の突然の痛みにも効く。また、異常な性欲を緩和し、淋病　性病索　持続勃起症　精液漏などに良い結果をもたらし、そうした症状が引き起こす不安症を和らげる。有痛性排尿困難、痙性狭窄症、痛みを伴う尿排泄、排尿時の焼けるような痛み、多尿症にも薬効がある。不眠症、とくに不快な夢を伴う短眠症の治療薬としても使われる。１８９８年製。

毒劇物。
解毒するにはからし催吐剤を使用。多量のお湯や強い紅茶やコーヒーで飲む。患者を横にさせず絶えず動いているようにすること。

パーク・デビス社製のチンキ・ボトル。このカナビス抽出ボトルは、いろいろな理由で、カナビス・アンティークの中でも最も有名で最も欲しがられているものになっている。持っていればそれだけで自慢の種になる。人気だけではなく、その形状的な美しさや技術的高さなどさまざまな面で、このボトルは植物関係の医学用品でも頂点に位置する。