異物混入バッズのリスク
処理済ウィードが出回っている?
Source: Soft Secrets 2006-No.4
Subj: Question marks surrounding processed weed
Author: Jan Sennema
Web: http://www.soft-secrets.nl/_public/SSUK2006-04.pdf
処理済ウィード? 最初に聞いたときには笑える冗談かと思った。確かにウィードは重さで取引されるので、重量を増やそうとするのは分かるのだが、天然の植物にどうやって細工して重さを増やことができるのか? まさか、バッズにキャベツのみじん切りを混ぜたりするのだろうか? でもすぐバレてしまう。
しかし、利に聡い人間たちの工夫にはとどまるところはない。いつごろからか、カナビスに精通しているオランダの専門家でさえも肉眼でごまかしを見分けられないという処理済ウィードが出回っているという噂がまことしやかに囁かれるようになった。
当然のことながら、無関心ではいられない。もし話が本当ならば、スモーカーはダマされるだけにとどまらず、予測できない健康リスクに晒されるという深刻な問題に直面することになるからだ。
ソフト・シークレットでは、ある関係者から2種類のサンプルを入手することができた。彼によると、1種類は細工されていて、もう1種類は細工されていないと言う。肉眼でみる限りは、どちらも同じ様に見えた。しかし、ルーペで拡大して見ると違いのあることが確認できた。
どのような日用品であれ取引される商品である限り、製品は薄められたり、何かを混入されることは付き物かもしれない。品薄になれば、すぐに流通経路のどこかで密かに製品を薄めて荒稼ぎしようとする輩が出てくる。
消費者をダマすこのような手口は、「犯罪」という例外的な分野に限られることでもない。そのようなペテンは、スーパーマーケットでもたくさん見られる。それが合法である場合すらある。例えば、安い「くずチキン」 に水と栄養分を添加して加工したチキン肉を売っても完全に合法とされているが、それをおいしいチキン製品と称してあちこちのスーパーで売っている。
誠実さは当てにできない
合法的な商品取引の世界で誠実さが当てにならないとすれば、当然のことながら、地下経済の世界では誠実さなど期待しても全くの無駄というものだ。だが、事の成り行き次第で、異物の混入したドラッグが嫌われる場合もあるが、混入が当たり前と見られることもある。
特に、ハードドラッグの場合は、さまざまな物が多量に混入されていることがよく知られている。今では、カフェインやマンニトール、イノシトール、フルクトース、ブドウ糖、ビタミンE、さらにアトロピンなどを混ぜられたクラックやアンフェタミンは、混ぜ物が混入されていないほうが珍しい。
ハシシにも以前から普通に異物が混入されてきた。混入は生産地で行われることもあるが、消費地のディーラーによるものもある。カナビスの低品質の下葉が混ぜられたりするのは当然のこととして、動物の脂肪、石鹸、ヘンナ、靴研きクリーム、パラフィン、砂、などの場合もある。ラクダの糞が混ぜられているという話もある。
また、特にインドやネパールから持ち込まれるハシシについては、昔からアヘンの混入されていると言われてきたが、オランダでは、ハシシよりもアヘンのほうが高価なので、実際にはボーナスとして喜ばれることすらある。
オランダ産のハシシであるネダーシも意外な物質が混入されていることもある。もとグローショップのオーナーでいろいろな情報を提供してくれているハーマンは、次のような話を教えてくれた。「ある時、お客さんが何とも素晴らしく美しいポルーンハシシを持ってきたんだ。最初は、スゲェいい色だと感心していたんだけども、ルーペで見たら、何とストーンウォッシュされたカーキ色のジーンズの繊維がすりつぶされて万遍なく混ぜられていた。」
素人の目には見えない
ハシシは、異物を簡単に練り込めるので混入対象としては完璧な条件を備えているが、これに比べるとバッズへの混入は少し難しい。しかし、それでも利益を上げようとしてあれこれやるずる賢い連中もいる。
カナビスの取引においては、これまでも、ウィードも純天然の製品ばかりではないことが知られてきたが、注意しておかなければならないのは、ここで言っている混入物は、残留農薬やどこの農場でも使っているようなおかしな化学物質を意味しているわけではないことだ。
アルメールスタッドでコーヒーショップをやっているアーウインに処理済ウィードのことを知っているかと尋ねると、「そいつは、ローマより古いぜ」 と簡潔な答えが返ってきた。「ときどきコーンスターチのようなものが混ぜられたウィードも見かけるけど、素人が簡単に見分けることはまずできないね。」
その通りなら、熟練したプロならすぐに混入を見破れるということにもなる。その辺の事情を知る人たちの話によれば、このようなウィードを大量にコーヒーショップに持ち込むのはまず無理なので、主に輸出用が対象になっているらしい。
輸出用ウィード
確かにそのようで、ドイツのヘンプ関係の新聞ハンフジャーナルの9月号の記事では、オランダから持ち込まれた一部のウィードには注意するように読者に警告を発している。
「現在のオランダでは、価値のないウィードを多量に輸出して荒稼ぎする方法ができあがっている。ウィードは、ポリネートして活性成分のあるトリコーム腺毛を取り出した残りかすに、何らかの方法で異物を混入してそれらしく見せかけたもので、効力はほとんどない。においは余りしないが、青っほい感じがする。」
「吸った最初は変わったところはなく、灰も普通に見えるが、実際には何も効力はない。近ずけてよく観察すると、カナビスのトリコーム腺毛とは全く異なる粉が付着しているのが分かる。このまやかしの粉の正体は化粧用のタルカム・パウダーではないかと思われる。一見するとスーパー・ウィードのように見えて、高いのも納得してしまうが、全くのペテンだ。最初に、ポリネートで稼いで、次に、かすにパウダーをまぶして増量し、そして最後に、効きもしないウィードを売り付けて儲けでいる。」
高度なトリック
詐欺師たちはこれまでも、確実に儲かるオランダのウィードを使って、さらなる利益を得ようとさまざまな工夫を凝らしてきた。増量に使われる物質とすれば、鉄屑、スターチ、コーラ、砂糖水などの他、特にカナビスにホワイト・ウイドウなどのホワイト品種が出てきてからは、増量と白い霧のようにみせかけるために小麦やベーキングパウダーがよく使われるようになった。同様に、増量のために収穫前に換気扇でセメントの粉を漂わせて植物に付けるようなことも行われる。
また、カナビスに精通したベテランから聞いた話によると、カナビスの茎の中にできるパルプを乾かしてから粉にしてバッズに振りかけることも行われている。これだと、混入するのもカナビスなので疑われこともなく増量ができる。この方法は、クリーンでスマートなやり方といえるが、明らかにホワイト品種以後のここ数年で使われるようになったトリックだ。
さらに上をいくトリックもある。例えば、1キロバッグの中に古い25ギルダー硬貨を何枚が入れておくというやり方も知られている。硬貨の重さは1枚約20グラムなので、その分だけ詰め込むウィードを少なくすることができる。人間の心理の裏をかいたこのトリックは、引っかかった人間に騙されたとは思わせずに、お金を見て得くしたと思わせることを意図している。こうした手口で人を嫌な気分にさせず騙せれば、もうりっぱな芸術家といえるだろう。
巧妙なペテン
オランダ人の商売の伝統からすれば、こうした芸術的なトリックは余り悪意のない陽性のペテンとみることもできるが、現在オランダのあちこちで取りざたされている混入ウィードは、何かもっと深刻な問題を含んでいる可能性がある。
そのことを調べるためにハーマンの協力してもらった。彼はオランダのカナビスパイオニアたちの間でもよく知られてた存在で、15年ほど前にグローショップの経営の傍らカナビスの卸売も手がけるようになった。彼は多くの人脈を持っているが、その一人が処理済ウィードを作っているグループを知っていると言う。
その筋から2種類のサンプルをアレンジしてもらったが、一つが未知の物質を混入されたもので、もう一つが混入のないナチュラルなものだった。
「このビジネスにかかわって以来、しばしば、細工されたウィードにはお目にかかるよ」 とハーマンは言う。「でも、振って粉がパラパラ落ちてくるようならすぐ分かるけど、そんなお粗末なものじゃないんだ。当然、肉眼では見えないし、相当倍率の高いルーペでやっと違いが分かるぐらいで、とても小さい。知合いによると、壁紙用の接着剤じゃないかと言っていたけれど、ポリマーの一種かもしれない。」
確かに、壁紙の接着剤というのは理にかなっているかもしれない。もともと接着剤の原料は木などに存在するセルロースで、水分と結び付いて付着し、乾燥すると透明になってしまう。さらに悪いことに、カナビスにもセルロースが含まれているので分析して区別するのは難しい。
取締りによる品薄が拍車
ハーマンによると、こうした新世代の混入ウィードは、オランダ南部のリンブルグ州にある「黄金の三角地帯」での栽培者に対する取締りが強化されて、市場が品薄になったことが直接の原因だと言う。
「これまでは、どこでもある程度は仕入れていたんだけど、最近は、たまに出てくるぐらいでめっきり減っている。その分だけ「処理」される可能性も増えるわけだ。収穫されたばかりのウエット・ウィードを買い付けに行くときに、磁石を持っていって鉄が含まれていないかチェックするバイヤーさえいるという話もあるよ。処理されたウエット・ウィードを買って、いったん乾燥してしまうと後から文句も言えないからね。」
警鐘は、突然ウエット・ウィードが大量に買い占められたのがきっかけで、いっせいにオランダ中に鳴り響いた。「南部から始まり、石油流失のように広がって行った」 とハーマンは言う。
「普通は、ウエット・ウィード10Kgの取引値段は、トリムして乾燥させたもの2Kgと同じとして扱われている。ウエット・ウィードのときに束にして何かの粉をまんべんなく付けるんだと思う。小さな葉はすぐに縮むので1日か2日で定着する。さらに1週間くらい乾燥させて製品にするわけだけど、サンプルをくれた人の話によると、そうして処理されたウィードの重量は10〜25%増えるらしい。」
膨大な量
やがて、卸売の値段が3ユーロ付近まで上昇し、明らかにその量が半端なものではないことが分かってきた。処理済ウィードの外見やにおいは、まともなウィードと差はなく、バイヤーにとっても見分けるのが極めて難しい。
「もしオレですら、処理されていることがほとんど分からないとすると、まずコーヒーショップのオーナーの99%は分からない。だからオランダでも非常に多量に売られていることは間違いない。70%のウィードがウエットだと仮定すれば、たぶんその80%は国外に流れるだろうけども、残りはコーヒーショップにたどり着く。」
ハーマンはこうした成り行きに大きな懸念を抱いている。当然、何も知らないで吸うユーザーの健康もそうだが、もっと大きな問題は、政府がことあるごとに圧力を加えようと待ち構えていることだと言う。もし、実際に膨大な量が出回っているとすれば、「悪魔のウィード再来」ということで、カナビス反対派はこれ幸いとばかりに強行路線の正統性を主張する可能性がある。
化学薬品の混入
ハーマンの話を裏付けるように、ブラバントやユトレヒト、リンブルグ、ヘルダーランド、ゼーランドなどの州からも似た話が伝わってきている。例えばゼーランドでは、新手の空恐ろしくなるような種類が出回っているらしい。
南ホランドでグローショップを営む「非常に信頼できる」と評判のオーナーからの話として聞いたところによると、数キロの「ラブリーなホワイト・ウィード」を手に入れて、小分けするために袋に手を突っ込んで作業をしていたら手に発疹ができたと言う。原因を調べたら、重量のある化学物質で作られた染料の粉がコーティングされていた。
当然のことながら、処理済ウィードの話を聞こうとすると、大半の人が匿名を条件にするのでどうしても話が偏りがちになってしまうが、別のところからも同じような話が聞こえてくる。リンブルグでグローショップをやっているアーンも、最近、混ぜ物の混入したウィードをお客さんから見せてもらった時の話をしていた。聞いてみると、これまでとは別の方法を使って処理されているらしかった。
「友達が2つのサンプルを持ってきて、どっちのほうが本物だと思う? と聞いてきたので選んだら、どうやら処理されているほうを選んでしまった。見た目にはおかしいところはないし、匂いにも違いはなかった。最初はペテンがあるなんて全く信じられなかったね。でも絶対に嘘をつくような奴じゃないので、顕微鏡で見直してみたんだ。そしたら、確かに奇妙な形をした粉のかたまりがくっ付いていた。」
アーンもウィードについてはとても詳しいが、信頼できないものは絶対に吸わないという信念を持ったハーマンと違い、自分で真実を確かめなければ気が済まない性格をしている。疑わしいサンプルでジョイントを巻いて吸ってみた。
「いっぷくですぐ分かったよ。シャープなケミカルな味がしたからね。ウィードに混入されていたのは、大手の化学薬品会社のDSMの製品で、1キロの袋で売られている薬品ということだった。ウエット・ウィードに振りかけて混ぜてからフリーズドライするらしい。」
研究所に分析を依頼
処理ウィードが出回っているのはどうやら確からしいが、いまいちスッキリしない。そこで、確定的な証拠を得るために、世界的にも有名なカナリサーチ(CannaResearch)にサンプルを持ち込んで、専門家の分析を依頼することにした。カナリサーチでは、ウィードに含まれている残留農薬の研究を長く続けているので、この依頼も研究の一環として喜んで受け入れてくれた。
だが、最初に言われたことは、普通の人が思っているより簡単な仕事ではないということだった。何万もの化学物質があるなかで手がかりもなく特定の未知の物質を見つけ出すのは何年もかかってしまうらしい。だが頼もしいことに、事前に疑わしい物質が分かっているサンプルなら、それよりもはるかに簡単に見付けることができると言う。そこで、処理済ウィードについてより信頼できそうな情報をカナリサーチに伝えた。
いずれにしても、最近の都市伝説がいよいよ本当に思えるようになってきた。
何かある
「サンプルの分析は完全にはほど遠い状態ですが・・・」 とカナリサーチのロンから連絡があった。「これまで分かったことは、確かに何かあるということです。全体の中から特定の混入物質にターゲットを絞って探すのは現実的ではありませんから、ある物質群、例えば重金属類などが含まれていないか確認して除外していく方法を採用しました。」
「このテストでは、サンプルに金属が含まれている兆候はありませんでした。しかし、この段階では化学物質全体の1%を除外できたに過ぎません。ですから、この結果だけを見てユーザーにリスクがないと言うわけにはいきません。また、このテストの他にも、2つのサンプル間にTHC濃度に際立った違いがあるか調べてみました。さらに、乾燥が急激に行われたかどうかも調べました。」
「THCレベルにはほとんど影響が見られませんでしたが、テレピンのような芳香性物質や一部のカナビノイドは破壊されていました。ですので、味や匂いは減退しているはずです。でも、その程度は、プロのベテラン・スモーカーならおかしいことに気づくかもしれませんが、おそらくドイツの若者だったら違いに気づかないで、ナイスなウィードでストーンしたと言うと思いますよ。」
これで本当に処理済ウィードがあることが確定的になった。かねてから、カナリサーチではカナビス製品に殺虫剤などの農薬が含まれていないか化学分析する設備を設けて、コーヒーショップが責任をもって流通できる商品の栽培を後押しする革新的なサービスを提供してきたが、間違いなく今後は、ウィードの未知の混入物を調べてもらおうと依頼するショップが出てくるだろう。
錯綜する曖昧さ
カナリサーチの結果についてはある程度予期したものだったが、処理済ウィードがユーザーに危険があるのかについては以前疑問のまま残されている。また、一部のコーヒーショップには処理済ウィードが出回っているという証言もあるので、疑惑は十分あるものの、依然その規模については全く謎のままで、今でも出回り続けているのかどうかについても分からない。
いずれにしても報告が曖昧で錯綜としているので、たとえ混入処理が疑われても、多額の金銭がからむショップにとっては思い切って捨てることは難しい。ましては、すべてのショップにそれを望むこともできない。また、さらなる曖昧さを言えば、ここで取り上げた混入方法以外にももっと別の多くの方法か使われている可能性もある。
しかし、私が話したコーヒーショップのオーナーのほとんどが、処理済ウィード問題はそれほど心配ないと考えている。たいていの取引に使われている1キロバッグの中身が同じ重さのまま小さくなれば簡単に分かるはずだと言う。だが、いつも1キロで取引されるとは限らないので、そんなことは言えないという人もいる。
必須になってきた顕微鏡
処理済ウィードの危険は目に見えないからといって、コーヒーショップのオーナーたちは無関心でいることは許されない。やらなければならない最初のことは、疑わしいウィードを掴まされることを防ぐために、取引にはいつも1キロバッグを使うことを徹底して要求することだ。
次に、栽培者とのしっかりしたネットワークを構築して信頼関係を築くことだ。そうすれば不確実性は少なくなり、新規参入しようとするサプライヤーを十分吟味することができる。
そして最後に、顕微鏡に投資することだ。もはや、不必要な贅沢品などといっていられなくなった。
望まれる認証制度
業界のご意見番ハーマンは、ヒーショップにとって今こそ、混入や残留問題などさまざまな問題に対して責任を感じて建設的な取組の第1歩を踏み出すべき時だと考えている。
「コーヒーショップのオーナーたちは、お客さんに販売するウィードに対して、毒性物質テスト済であることを示す認定証制度のようなものを作るべきだと思う。ドイツのワインのようにチェックすればいい。ワインの醸造者は、自分の作ったワインをラボに持っていってテストを受ける。1種類につき何ユーロかかかるけど、それでテスト報告書が取得できる。そして、そのワインが本当にそこで製造されたものなのかスポットチェックを受ける。」
「ドラッグ専門のトリンボス研究所のようなところなら、そんなテストを開発するのもそれほど難しくないと思うよ。市場では何かが起こっていることは間違いないのだから、このまま放っておくと遅かれ早かれ、再び政府のヒステリーに見舞われることになる。」
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