親が子供に
ドラッグテストしてはならない7つの理由
Source: Alter Net
Pub date: 7 Aug 2008
7 Reasons Parents Should Not Test Kids for Drug Use
Author: Lindsay Lyon, U.S. News & World Report
http://www.alternet.org/drugreporter/94304/ 7_reasons_parents_should_not_test_kids_for_drug_use/?page=entire
インディアナポリスに住むキム・マンラブさん(56)と奥さんは、自分のティーンになる子供がカナビスとアルコールを乱用し始めたことに気づいた。そこでどうするのが正しいかを考えて、市販されているドラッグテストのキットを購入して、自宅で抜き打ち尿テストを実施することにした。
マンラブさんは当時を思い出しながら、「キットを買えば、自分たちでも使えると思ったのです」 と言う。確かに数ヶ月はその努力が報われてきているように見えた。ドラッグテスト・キットはインターネットで入手した。結果は、息子のデビッド(15)がアルコール・フリーになり、次第にカナビスのレベルも下がってきていることを示していた。このことで、マンラブさんたちは、子供がドラッグを止めた兆候が出てきたと解釈した。
だが、そうではなかった。息子は、ドラッグテストに反応しない処方医薬品やLSDなどに変えただけだった。やがて両親はそれに気づき、息子を治療施設に入院させた。「もう自分たちの手には負えなくなってしまっていたのです。」
シンナーやエアゾルは検知対象になっていない
「息子は、施設のプログラムは完全にやり終えたのですが、ハイになりたいという欲求は、結局、彼の人生を奪うほどのものだったのです」 と無念の表情で言う。
デビッドは、毎週行われる 尿テスト ではシンナーやエアゾルは検知対象に登録されていない(専門家も認めている)という友達の誘惑に負けて、ある日の午後、コンピューターの埃を除去するエアゾル・ダスターを吸い、水中だと水圧でラッシュ(急激なハイ)が高まると聞いていたので自動車でプールに行った。
だが、起こったのはラッシュではなく、揮発性物質の吸引で最も恐ろしい 「揮発物吸引突然死症候群」 だった。デビッドは心臓発作を起こして溺れ死んだ。16才だった。
家庭用のドラッグテストの落とし穴
子供のドラッグを中止させたり防止させたりするために家庭用のドラッグテストを使おうとする親が増加しているが、マンラブさんのケースはその落とし穴をよく表している。無数とも言えるテストキットが利用できるようになってきているが、専門家たちの懸念にもかかわらず、親にとってはそれに抗することはますます難しくなってきていると言う。
ボストン子供病院の未成年ドラッグ乱用プログラムの責任者を務めるシャロン・リービ小児科医は、「親御さんに家庭用ドラッグテストを使うこと薦めたことはありません。誤った結果を招くことがあるからです」 と話している。
しばしば、テストは予防になると宣伝されていたりもするが、実際に子供たちをドラッグから遠避ける効果があることを示した証拠は全くないと言う。リービ医師と同じ意見はあちこちから聞こえる。アメリカ小児学会は2007年に、ドラッグテストの実施が害をもたらさないという確証が得られない限りは、家庭や学校でのテストには反対するという声明を繰り返し発表している。
これについては、マンラブさんも過去を振り返りながら頷いている。「まっすぐ専門家のところに行くべきでした。今では疑問の余地もありませんが、すぐに助けを求めようとしなかった当時のことを思うと、とても恥ずかしく決まり悪くなります。」
親がドラッグテストしてはならない7つの理由
専門家たちは、ドラッグテストはプロにまかせるべきで、マンラブさんたちが間違えた基本的な理由について次の7つを指摘している。
- 判断ミスを招くことがある
現在は、インディアナ州のドラッヅ乱用予防専門家として働いているマンラブさんは、自分たちがデビッドのドラッグ使用に始めて気づいてから外部に助けを求めまでの6か月に、小さな問題を大きくしてしまったと言う。
「この遅れがわれわれに決定的な結果をもたらしてしまいました。もっと早い段階に外部の専門家の助けを求めていたら、最悪の結果を回避して違った状態になっていたと思います。」
- テストでインチキすることが簡単
リービ医師は、尿テストを誤魔化す方法 がいろいろあるので、本当は子供が問題を抱えているに、親たちは陰性反応を見て間違って安心してしまうことがあると言う。「私の臨床経験からすれば、親は常に愚かなのです。」
さらに、親たちは普通、子供が実際に採尿している現場を見ようとはしないが、専門のテスト施設では、ごまかしができないように係官が付き添って、尿が正しく収集されていることを確認するようになっている。
オハイオ大学医学部でドラッグ乱用テストを実施している小児科のピーター・ロジャース教授は、「われわれは、十分にコントロールされた環境 でテストしています。それが、ドラッグテストを信頼できる経験の積んだプロに任せるべき一番の理由なのです」 と言う。
- 疑陽性がミスリードを招く
中には、ケシの実、冷やした医薬品、あるいは多量の抗生物質の摂取であっても疑陽性を示すテストもある。このために親たちは、違法ドラッグを使っていないティーンを誤って判断してしまう結果を招いてしまう。
- 不適切なキットでは適切な結果は得られない
リービ医師は、家庭用キットは扱いが難しいのに、医薬品ラボでのきちんとした扱い訓練など求めることを前提にしていない、と言う。
さらに、親たちは、オピエート(ヘロインなど)とオピオイド(オキシコドンなど)のように似た名前のドラッグの違いについて全くと言ってよいほど区別する知識を持ち合わせていないとも指摘している。不適切なキットを使えば、結果には意味がなくなる。
マンラブさんは、「子供が実際に使っているドラッグに本当に詳しくない限りは、暗闇の中で写真を撮ろうとしているようなものなのです」 と言う。
- 常時監視は難しい
大半のドラッグはすぐに体外へ排出されてしまうので、子供がたまに使っているような場合にはその直後の数日以内にテストしなければならないが、そのために常時監視するようなことは非常に難しい。
- キットの費用が高い
家庭用キットは、しばしば、専門ラボに行くよりも費用がかかる。価格には相当に大きな幅があるが、マンラブさんは、6回分の尿テスト・キットに50ドルを費やしていた。
- 親であって、警察ではない
専門家の中には、家庭でドラッグテストを実施することが親子関係に悪い影響を与える可能性があると懸念する人もいる。自身でもドラッグを乱用する息子(現在な21才で何も使っていない)を持っていたロジャース教授は、「ドラッグテストをすることで、子供との関係を良くできると本当に思っている親などいるのでしょうか? 親は親であって、警察ではないのです」 と言う。
|
全米アカデミー小児科委員会、学校でのドラッグテスト政策を激しく非難 (2007.3.15)
アメリカ小児科学会、学校でのドラッグテストに再度反対する声明 (2007.12.20)
学校のドラッグテストはゲートウエイ、生徒は探知期間の短いハードドラッグを選ぶ (2007.9.4)
ドラッグテストは高校生アスリートのリスクを高めている (2007.10.25)
アメリカ・インディアナ州、処方医薬品の過剰摂取死亡が激増 (2008.6.30)