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アルコールとの併用リスクと害削減
カナビスとアルコールを併用あるいはミックスして使うというのは、お互いの効果が影響しあうような使い方を意味している。当然のことながら、カナビスを単独で使って酔うのとは違った状態になる。確かに、好ましい効果が重なり合って気持ちがよくなることもあるが、単独使用では起こらないような危険な状態に見舞われることもある。
そうした状況の典型例がいわゆる 「グりーンアウト」(green out) などと呼ばれるバッドトリップで、極端な吐き気、立ちくらみよる転倒、失神などを起こす。
オーストラリアの国立ドラッグ&アルコール研究センター(NDARC)の 研究 によると、カナビスを使っている学生の3分の2以上(68%)が同時にアルコールも使っており、24才以上の大人ではおよそ90%になるという。
学生の調査では、カナビスで何らかの問題を起こした中では、アルコールとカナビスの併用によるグリーンアウトが主要な問題の一つになっており、12%が経験している。
アルコールを先に飲むとグリーンアウトしやすい
どのような場合にグリーンアウトしやすいのか一般的に予想することは難しいが、特徴的なことの一つは、カナビスとアルコールを使う順序によって影響が違うことで、カナビスを先に吸うよりも、アルコールを先に飲んでから後でカナビスを吸うほうがグリーンアウトしやすいことが知られている。
この理由についてはよく分かっていないとされているが、おそらく、カナビスの吸引による血圧の低下が関係している。一般的にカナビスを最初に吸った後の10分くらいは、血圧が低下し脈拍が速くなることがよく知られている。特に初心者や久しぶりに吸った場合などでは自覚できるほどになることもあり、しばしば動悸が激しくなって苦しくなることもある。しかし、この現象は吸い初めだけで、継続して吸ってもその度に出てくるわけはない。
また、血圧は座っているときは上昇し、立つと減少するとも言われている。このために、座っている状態から急に立つと血圧が下がり、立ちくらみやめまいを起こすこともある。
カナビスを先に吸った場合は、数分以内にピークが来るので、酔い遅いアルコールの効果とは重なり合うことはなく、お互いの効果が影響しあうことはない。従って、グリーンアウトするリスクが特に高まることはないと思われる。また、カナビスを追加して吸った場合も、最初のような血圧の低下や脈拍の上昇は起こらないのでグリーンアウトしにくいと思われる。
これに対して、すでにアルコールに酔った状態でカナビスを吸ってピークが来た場合は全く違っている。まず、血液中にアルコールがTHCの吸収を早めてピークを鋭くする可能性がある。それに従って、血圧や脈拍も急激な影響を受けてグリーンアウトしやすくなると考えられる。またアルコールにも酔っているので、体のバランスを崩して転倒しやすくなる。
体重65kgの男性の書いた体験談 によると、缶ビール5本とパイプで3服のカナビスで3度も短時間意識を失って転倒しており、グリーンアウトはカナビスの吸った量にはあまり関係しないことが分かる。
基本的には、カナビスとアルコールを同時に使わないほうが良いが、やむおえない場合は、アルコールを飲みながらタバコのようにカナビスを吸うのではなく、カナビスのハイの中で少量のアルコールを味わうように心がけたほうがよい。
運転における併用リスク
自動車の運転 に関しても、カナビスとアルコールを併用すると、「相乗的」 に運転リスクが高まることがいろいろな研究で示されている。
注意しなければならないのは、酔っているという自覚がない程度の少量のアルコールであっても運転能力に影響するということで、アルコールまたはカナビスを単独に使った場合とは全く違う状態になる。
時には、運転時の尿テストを避ける騙しのテクニックとして、少量のアルコールを飲んでおくという方法が使われることも知られている。アルコールは呼気テストでチェックされるので、ドラッグを使っているときに僅かに臭う程度にアルコールを飲んでおけば、警察がそれに気づいてアルコールテストをすることになるが、ドラッグテストまではされずにアルコールのリミット以下で放免されることになる。
しかし、このような騙しテクニックでドラッグテストを回避したとしても、事故のリスクまでかわすことはできない。
併用の長期的影響
カナビスとアルコールの併用を長期間にわたって続けていると、単独使用とは違った影響が出てくることが示されている。
2003年の スエーデン研究 では、未成年の時にカナビスとアルコールを併用していると、単独使用の人に比較して、大人になってからもカナビスとアルコールを乱用しやすく、問題を起こすリスクが高くなるとして、未成年の併用を注意すべきだと報告している。
また、カナビスとアルコールを併用していると カナビス依存性のリスクが高まる という研究もある。カナビスを常用していても何ら依存性の兆候が出てこない人のほうが多いが、一部の人(9%、IOM報告)では、少量の使用でも依存性になることが知られている。この研究では、アルコールの多量使用が関連していると結論づけている。
さらに、2008年に発表された ラットの動物実験 では、THCを単独で投与した場合には起こらないが、THCをアルコールと一緒に使うと脳の神経細胞が広範囲に細胞死することが示されている。
いずれにしても、「常習的併用あるいはアルコールの多量使用は、カナビス・ユーザーをカナビス依存症にするリスクを増やす可能性があるので、カナビスを安全に使おうとすれば、依存症状が出るのを避けるためにアルコールの消費を制限したほうがよい」 ことになる。
特に、統合失調症などの疾患を抱えている人は、もともとアルコールを多量に使う傾向が強いのでカナビスの依存症にも陥りやすい。少なくとも併用はやめて、カナビスを吸うときにはアルコールは飲まず、アルコールを飲むときにはカナビスを吸わないようにしたほうがよい。
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ストーンし過ぎて、失神寸前で動けなくなってもある感覚がシャープになって新鮮な経験をすることもある。また、トリップ中に友人から電話で飲みに誘われた時などに、「グリーンアウト」 しているからと断ったりする場合にも使われる。
しかしもっと狭義に、吐いたり、立ちくらみで転倒したり、失神したりすることを指して使われる場合には、おそらく臨床的にアルコールの 「ブラックアウト」 と対比して使われて出したのではないかと思われる。
しかし、アルコールのブラックアウトは、その時の行動が記憶から失われて後から思い出せないような状態を指し、グリーンアウトの酔い過ぎた状態とは根本的に異なる。