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第1章 カナビスの植物学
マリファナがカナビス草 (Cannabis sativa) と呼ばれる草からつくられるのはよく知られている。
この草は中国のヒマラヤ北部にその源を発するといわれている。
そこからインドや中近東、アフリカ、ヨーロッパへと拡まっていったらしい。
日本では、神武天皇の時代に繊維用としてこの草の栽培が始まったと伝えられている。
いずれにしろこの草は繊維のアサの原料にもなるので、マリファナ喫煙の習慣のない国々にも拡がり
現在では世界中いたるところで生育している。
この章では、この草(通称カナビスという)の植物学的な分類・性質・外観、及び栽培法について詳しく述べよう。
1 カナビスの植物学上の分類
カナビスはユニークな草である。多数の変種(植物の分類は門・網・目・類・属・種・変種の順に行われる)
を持っているのにもかかわらずその種は一つしかない。
各々の変種は外形上目立った違いはないが、各々がつくり出す樹脂の質と量、つまりドラッグとしての効力の点で異なり、
その違いは生育する地理的条件に大きく左右される。中でも最も効力の強い樹脂を含有するのが、カナビス・インディーカである。
これはインド産のカナビスで、その樹脂のかたまりは日本やアメリカ、ヨーロッパなどではハシシとして知られている。
その効力は、日本やアメリカ産の変種(カナビス・ジャポニカ、カナビス・アメリカーナ)
からつくったものに比べて5〜10倍強いといわれている。
カナビスの名前は正式には Cannabis sativa Linn. と呼ばれる。cannabis という名はラテン語の“hemp”つまり
“砂糖きびに似た”からきており、hemp 属に含まれることを表わしている。
sativa は種の名前で、ラテン語の“植えられた”“蒔かれた”に相当し、植物の生育が多年生の根からではなく、
種子からはじまることを表わしている。また、Linn.というのは、リンネ式の植物分類法に基づいている事を示し、
植物学の父といわれる18世紀スウェーデンの Carl von Linne に因んでつけられたものである。
実はCannabis sativa という名も、彼によって1753年に命名された。
また Cannabis sativa に japonica とか americana とかいう言葉がついていれば、
それは Cannabis sativa の中の変種を表わしており、限定された地域に生育しているものを意味している。
したがって、Cannabis sativa japonica といえば、各々の語はそれぞれ属・種・変種を表わし、
全体としては日本産の植物を指し,普通はカナビス・ジャポニカと言われる。
また特に変種を区別する必要のないときは、カナビス・サティバ、あるいは単にカナビスと言う。
植物学上興味あることに次のような事実がある。
例えば、カナビス・インディーカの種子を日本にもって来て蒔いたとしよう。
すると、カナビス・インディーカは芽を出し成長するが、気候や土壌の違いが原因して
ほんの数世代後にはジャポニカーナと何ら変わらなくなってしまうのである。
このようにカナビスの各々の変種は容易に別の変種へと変化することができる。
植物としてのカナビスは、アサ繊維の原料などとして非常に古くから知られており、
商業的に利用されるようになってから長い歴史がある。
商業的にカナビスを用いている人たちはカナビスをドラッグとして使うことはめったにない。
カナビスは、商業上から言えば、種々の塗料やニスやリノリュームの一成分であるオイルの源として利用され、
また植物自体は麻糸・麻ロープ・麻布、あるいはある種の紙の原料などにもなる。
また種子(実)はハトのえさや七味トウガラシにも使われている。
植物分類上、カナビスは hemp 属に入れられることは前にも述べたが、
それ以上大きく分類するとどの類に入るかは確定していない。
ある植物学者たちはカナビスがカエデなどを含むクワ科の Moraceae 類に属すると主張しているが、
また別の植物学者たちは、カナビスのユニークさからカナビスが自ら単一の類を形成していると考え、
それを Cannabinacae 類と名付けている。
しかしながら、アサの製品を生み出す植物とマリファナを生み出す植物が同じであることを否定する人は一人もいない。
つまり、アサのもとになる植物はすべてマリファナになりうるわけである。
2 カナビスの植物としての性質
カナビスは一年生の草で、木質部をほとんどもたない葉の多い植物である。春から秋にかけて生育し、冬になると枯れる。
そして、次の年は種子から再び芽を出す。カナビスは、前のシーズンの根から芽を出す草ではないので、種子は重要な役割をもっている。
また、カナビスは雌雄異株の植物で、その生殖にはオス株とメス株の両方の植物が必要である。
中には一本の植物の中にオスの部分とメスの部分を共有している中間株、つまり三倍体もあるが、全体とすれば少ない。
両株とも花のついた頂芽を持ち、ドラッグとしての精神作用素を含有した樹脂を産する。
メス株に比べるとオス株はあまり樹脂を含んでおらず、
従ってドラッグとしての効力は弱く、植物の精神効果を求めている人たちにはあまり役立たない。
だが、繊維はもっぱらオス株からつくられる。
オス株のカナビスもメス株のカナビスも、成熟前はほとんど同じように見える。だが、植物が成熟してくるに従って、
生殖器の部分が全く異なった特徴をもってくる(図1参)。開花期になると、オス株は広く分散した総状の雄花
(ガク片は5枚、おしべは5本)を咲かせ、花粉、つまり小さな精子をつくる。
一方メス株は集繖状の雌花を咲かせるが、無柄で小さく、花弁(花びら)がないのであまり花らしくない。
種子(子房)はガク片に包まれて実をつくり、その上端からは2本の花柱(めしべ)が出ている。
この花柱は花粉がやってくるのをじっと待っている。
花粉は他の植物のように昆虫によって運ばれることはめったになく、微風に乗って運ばれる。
昆虫はこの植物に対してはほとんどきまって何もしないのである。
一度気まぐれな風が花粉を雌花のところに運ぶと、生殖が始まり、しばらくすると種子が成熟して地上に落ちる。
こうして再生サイクルが続けられるのである。
カナビスはメス株とオス株とでは、メス株のほうが丈夫である。オス株は普通ひとたび生殖過程へ関与してしまうと枯れてしまう。
カナビスの栽培法が非常に発達しているインドでは、オス株がメス株に授粉するチャンスは絶対に与えない。
いったん性別の見分けがつくようになるとオス株は取り除かれてしまうのである。
(受精用のオス株は別のところで育てられ、後で花粉を振りかけて授粉させる。)
インドでは“ガンジャ”ドクターと呼ばれる人がいて、畑を行き来してオス株を除去すると同時に、
メス株がより多くの樹脂をつくるように下部の枝をはらってしまう。
インド人たちは受精していないメス株が一層良質の樹脂を産すると考えているのである。
カナビスは信じられないほど丈夫な種子から芽を出すが、種子が土や枯葉で軽くおおわれて保護されれば発芽率は高くなり、
拡がっていく。このような条件の下では樹脂は増加する傾向があり、その効力は一層めざましいものになる。
カナビスは不安定な土地の方がよく育つので、沖積平野はカナビスの生育に非常によい土壌を備えている。
逆に、日陰でがっちり安定した土地では植物の再生自体が許されず、従って子孫は絶えてしまう。
一般的に言って、タンポポやよもぎなどの草がよく育つ所であればカナビスもまた非常によく育つ。
逆に、土が固く、大きな木が繁っているような所にはふつう生えない。
商業目的でカナビスを栽培しようとする人たちは、底土が湿っていて雨の多い寒冷または温和な土地に育った植物を好む。
そのような土地に育った植物は柔らかく繊維質に富んでおり、従って商品価値が一層高くなるからである。
これに対して、乾燥した暑い土地に育った植物は、繊維質はもろいが樹脂量が豊富で密度の高いねばねばした樹脂を産する。
粘着性の強い樹脂ほどドラッグとしての効力も大きいので、
マリファナ使用者達は商業的に麻を育てるのに最も好ましくない土地で育った植物の方を好むわけである。
カナビスという草は、あらゆる種類の土壌に育つので至る所に生えている。条件の悪い土地にでも育てることができる。
例えば、屋根の上や裏庭でも育てようと思えば育てることができる。
だが、変わった場所で育ったカナビスということで有名なのはなんと言っても Marijuana Newsletter
に載った“マンハッタン・シルバー”だろう。あるとき、マンハッタンに住むマリファナユーザーが警察の突然の手入れを受け、
びっくりしてカナビスの種子を下水に流してしまった。種子は下水本管に達し、そこで発芽した。
しかし、芽は日光を受けずに育ったので緑色というよりは銀白色の植物になってしまったのである。
カナビスは丈夫でどこにでも育つ草なので、ドラッグ用のカナビスを自分で確保したいと思う人は、
逮捕されやしないかとあまり心配する必要はない。栽培法もとくに難しいことはなく、
一握りの種子があれば誰でも一年分ぐらいのカナビスは簡単に確保できるからだ。
カナビスには天敵がほとんどないので、いったん根が付いてしまうと成長が妨げられることはめったにない。
昆虫はカナビスの授粉には関与しないばかりか、食物としてカナビスを食べることもほとんどない。
従って、カナビスはバッタやキリギリスなどの害虫の攻撃をほとんど受けない。
非常に小さな虫が葉を食い荒らすこともあるがそれで枯れることはめったにない。
またクモは草の根元に巣をはるが植物自体をいためることはない。
カナビスは、一般に天候変化には普通以上に強いとはいえ濃い霧に殺られることもある。
またしつこいつる植物や強い他の草によっても枯れることがある。
しかし、カナビスの真に重大な唯一の敵は人間である。人間はカナビスを根絶しようとしていろいろな努力をしているからである。
だが、カナビスの再生・増大のサイクルは人間が見つけ出して根こそぎにする速さよりも早いので、簡単に根絶されることはない。
カナビスは生殖・再生力が強く、草自体も丈夫なので生存していくためにはほとんど何もいらないのである。
3 カナビスの外形
カナビスが生えているのを見たことがあれば、その姿は忘れ難いものである。カナビスは一風変わった草のようにさえ見える。
カナビスの茎はわずかに中空で角ばっている。背丈は非常に高くなり、10m以上になることもあるらしい。
しかし普通は1〜3mぐらいである。もし各々の植物が混んで生えていなければ、一本のカナビスにたくさんの小枝が繁る。
この場合、茎の成長がおさえられ、繊維質が少なくなるので、商業目的で育てようと思う人には欠点になる。
ところがドラッグ使用者達にとってはこれが長所になる。
というのは、まばらに植物が生えていると、枝や葉がたくさん生え、それだけ樹脂の浸出が多くなるからである。
従って、カナビス・スモーカー達はカナビスを育てるときには植物がまばらに生えるように育てる。
これに対して商業目的の生産者達は、草と草とが混むように育てる。
十分に成長しきったカナビスの茎の径は、普通1〜4cm位であり、また大きいものでは時には〜10cm位にもなる。
この茎にはうね状の筋が縦に伸びており、10〜50cmごとにはっきりとした節をもっている。
カナビスは植物全体としては目立った特長をもっていないが、部分的には非常に明確な特徴をもっている。
その一つは葉の形である。葉はいくつかの小葉からできている(図1、次ページ参)
1枚の葉についている小葉の数は常に奇数で、3〜11枚である。
それぞれの小葉は長いカヌー形で、両端が尖り長さは5〜15cm位である。
外側の2枚の小葉は内側にある葉よりも常に小さい。小葉のふちはギザギザでノコギリ状をしている。
また、明確な主葉脈が中央部を走り、それを中心に葉脈が分岐して斜め方向に伸びている。
葉の表側はダーク・グリーン、裏側はライト・グリーン色をしている。
カナビスの主根と枝根は非常に多様な形をしている。普通は地上の茎の長さの10分の1程の長い主根がある。
この根から枝根が拡がり、植物を土地にしっかりと結び付けている。
また、メス株のカナビスが花を咲かせると、その部分には明るい黄緑色の実が不規則なかたまりをつくる。
実の表面には薄い皮(ガク片)があり、種子を被っている。種子は周囲に稜をもった卵形で、
まだらなレース状の模様をした表面をもっている。一つ一つの種子は近づけてみると非常によく似ている。
種子自体にはほとんど樹脂分が含まれていないが(従ってドラッグとしてはあまり使われない)
それを包む皮には充分な樹脂が含まれており、よいドラッグになる。というのは、ガク片(皮)の先端の葉脈から樹脂が分泌し、
実の頭を覆って種子が飛び出さないようにおさえているからである。
授精が終わり、種子が十分に成熟すると、樹脂の分泌がとまり、ガク片が開いて種子が落ちる。
従って、授精後の植物よりも授精前の植物の方が樹脂の分泌がが多く、ドラッグとしてよいわけである。
植物が多量の樹脂を含んでいると、触った感じが湿っぽくなる。一般的に言うと、真昼、暑くなったときに樹脂は葉に集中し濃縮する。
北アフリカのように暑くて乾燥した気候の下で生育したカナビスは、樹脂分が多く、
真昼には植物につゆがついたように見えるほどだという。ドラッグユーザー達のあいだでは刈り入れは昼間の方がよいといわれている。
また、カナビスは非常に特徴のあるにおいを持っており、一度嗅げば忘れ難い。そのにおいは出来たての麻ロープのにおいをしている。
植物が密集していて大きいとにおいも強烈でときには気持ちが悪くなるほどである。
4 カナビスの栽培法
カナビスを育てる方法は非常にたくさんある。育てるのが余りに単純すぎて、どういう方法が最上なのか述べることはできない。
地面に棒を刺して穴をつくり、その中に種子を落とし、土をかぶせるだけでも充分に育つし、また一握りの種子を土の上に蒔き、
その上を自動車で踏みつけて種子を固定してやれば、一部は発芽して大きくなるだろう。
カナビスが世界で二番目にポピュラーな陶酔物になっているのはこのためかもしれない。貧乏人の二つの財産である忍耐と時間、
それに一握りの種子さえあれば、たとえヘビー・スモーカーが吸っても数ヵ月はもつほどのカナビスを簡単に、
誰でも育てることができるのである。これに比べれば、酒類の場合はいくつかの化学過程を経た後、
わずかばかりの原酒を得ることができるだけで非常に高価なものである。
カナビスはどこでも育てることができるばかりか、十分に育ったら引き抜いて乾燥させるだけで吸う用意ができてしまうのである。
ユーザーがみんな自分で植物を育てるようになれば、カナビスの密売組織などはいっぺんにつぶれてしまうだろう。
なんともユニークで驚くべきものではないか!
農業技術の進歩とともに、より一層巧妙なカナビス栽培法が工夫されてきた。
注意して世話してやれば90%を越える種子が大きな植物になる可能性を持っている。
普通、種子を蒔くのは2〜4月で、刈り入れは9〜10月である。
植物は夏を越さないと充分成熟していないので、樹脂量が少なく、品質のよい製品は得られない。
それまで待てない場合は下枝部を必要なだけとり、上部は残しておくようにする。そうすれば秋には品質のよいものが得られる。
〈発芽〉
種子の中には無精卵もあるから全部が発芽するわけではない。だが、授精した種子ならどの種子も発芽する可能性をもっている。
一般的に言って、大きくて黒っぽく、質量感のある種子の方が大きな植物に育つ可能性が高い。
確実に授精した種子が得ようとすれば、刈り入れの時、オス株の花粉をメス株にふりかけて、数日してから種子を採取する。
効果的に発芽させるためには、まず種子を比較的きれいな水に一晩浸しておくべきである。種子にとって理想的な床は、
洗いざらした細かい砂と細かくちぎった水ごけ類でつくったものである。もし、これが利用できなければ普通の土でもかまわない。
苗箱の中身は水はけがいい程度にしっかりと固める必要がある。次に床に十分な水をやり、深さ1cm位の溝を適当な間隔で作り、
溝の中に種子を2〜3p間隔で蒔いてゆく。そして溝をうずめて水をやり、苗床の上部を透明のビニールで覆う。
これを充分に暖かく、日光の当たる庭などに放置する。この後は実生(みしょう)が最初の葉を出すまで、
たまに水をやるほかは何もやる必要はない。
種子はこのような苗床を使わなくとも充分に発芽する。例えば、水に浸したペイパー・タオルを2〜3重に重ねて
平たいプラスティク容器に入れたものでもよい苗床になる。その上に種子を置き、さらにその上に5〜6重にペイパー・タオルを置く。
ペイパー・タオルが浸るまで容器に水を入れ、そのあとで余分な水は流してしまう。
容器にビニールをかぶせ、暖かい場所に置いておくと種子は芽を出す。
カナビスは丈夫な草であり、6日以内には新しい生命が現われるだろう。2週間以内にははっきりとした葉が現れ、移植する時機がやってくる。
〈移植〉
一般論から言えば、移植は植物の成長を刺激して、よく育つようにする。移植時、植物の成長は一時的に止まるが、
いったん新しい環境に適応すれば、植物は充分に成長し、花を咲かせるようになる。
土質は移植前の土質に似ているほうがよい。少なくとも移植の1週間前には30〜40cmの深さに土を耕し、肥料をやっておくとよい。
そうすれば、他の草やガラクタなどの不必要なものは取りのぞけるし、肥料は土壌を肥沃にする。
移植する前日には苗床に水をやっておく必要がある。土壌をゆるめ、根に与えるダメージを最小にして植物を抜くことができる。
移植は、日光の強いときや風の強い日は避けて、曇りの日か夕方やるようにする。
苗箱を移植する場所にもっていき、移植ベラで根には土をつけたまま静かに抜いてやる。
それを、あらかじめ作っておいた穴の中に入れ、しっかりと固定し、水をやる。
各々の植物の間隔は少なくとも30cm以上離せば、丈夫で葉の多い植物に育つ。つまり、あまり混まないようにするわけである。
そうすれば充分に成長する余地もあり、日光も充分にあたる。
移植後48時間が植物にとって一番重要な時間である。ピンとしていて健康そうに見えれば、その後は順調に成長するだろう。
植物がみんな死んでしまったように見えたときは、少なくとも2週間はそのままにしておくべきである。
というのは、時には最初の葉を捨てて、新しい葉をつけて自ら生き返ることもあるからである。
移植する場所は注意して選ばなければならない。理想的な気候のところであれば、植物は相当に大きくなるから、
木の枝や電線には邪魔されないようにしなければならない。また、植物には最大限の太陽が必要である。
植物の周りに鏡かアルミホイルを置いておくと、植物は一層元気に育つだろう。
〈世話〉
いったん根がつけば、植物は自分で育ち、ほとんど世話をする必要はない。しかしながら、植物の成長を刺激するために追肥をやるとよい。
カナビスの場合は、溶解性の窒素肥料が最上の肥料であることがわかっている。
インドでは肥やしがポピュラーな肥料になっているらしいが、これも良い方法である。
しかし、あまり肥料をやりすぎると、かえって植物を弱くしてしまうので注意しなければならない。
植物の頭部の葉を最大限に多くするために、インドでは、植物が1mぐらいになったとき下部の枝を払ってしまう。
この方法は、樹脂の浸出を促し、効力のある植物をつくるといわれている。
ときに、つる状の植物が絡んで植物をダメにしてしまうことがあるので、取り除かなければならない。
クモや昆虫は普通、植物には何のダメージも与えないが、時に小さい虫が葉を食い荒らすことがあり、
その時は殺虫剤などはあまり使わずに再び移植した方がよい。殺虫剤がついたカナビスを吸ったりするのは好ましくないからである。
〈人工栽培法〉
天井が3m以上で暖かいところなら、カナビスを育てることができる。1本の植物に対してバケツ1杯ほどの土が必要であるが、
より大きなスペースがあれば、より大きな、葉の多い植物を育てることができる。
例えば、暖かい地下室に古い湯船でもあれば、カナビスを育てるにはよい場所になる。
室外で育てるときに必要な道具は、やはり室内で育てる場合でも必要である。根本的な違いはライティングの問題である。
温室などの場合でなければ人工の光源が必要になる。肥料や土壌は室外の場合と同じである。
評判から言えば赤外光を出す電球が最も良いらしいが、温室用のライトでも白熱電球でも十分に適していることが分かっている。
電球はあまり植物に近づけて、局部だけ高温にしてはいけない。最低30cm以上は離すべきであろう。
また、植物が大きくなるにしたがって、光の量も多くする必要がある。植物に当てる光の量は太陽の場合と同じ密度にすればよい。
つまり、植物の数が多く、また一本一本が大きければ、電球の数もたくさん必要になるわけである。
また、人口栽培法のひとつとして水培法と呼ばれる方法もある。
これは、土の代わりに滋養分を含んだ水溶液に根を浸して、植物を育てる方法である。
カナビスの場合、次のような金属製の箱で水栽培するのが最上である。つまり、長さ約3m、幅約1.2m、深さ約60cmで、
内部はさびないように処理し、片端にやや高めの水の取り入れ口、もう片端にやや低めの取り出し口をつけたような箱である。
箱の中には土の代わりに鉱物や結晶などを混ぜてつくった混合物で満たす。
この時、バクテリアや腐敗菌がついていないものを使わなければならない。箱の片端には水をかき回すための循環ポンプを取り付け、
もう一方には肥料と水のために小さなヒーターをつけるとよい。カナビスの育て方の要点はいままでと同じである。
いずれの場合でも、カナビスはいったん根が付いたら、自分自身で育っていってくれるので、ほとんど世話はいらない。
つまり、難しいことはほとんどないのである。注意を要するのは発芽と移植の段階であるが、これも必ずしも必要というわけではない。
というのは、刈り入れるときには、いくつかの種子が土の上へ落ちることは間違いないし、
また植物を全部刈りいれずに一部を残しておけば、自然に種子が回りに落ちるからである。
しかも、カナビスは土から滋養分を持ち去ることはあまりないから、次のシーズンもそのままで充分に育つのである。
冬に根を引き抜き、土を熊手などでかき回しておけば、なおよいだろう。
また、実験的に他のタイプの土壌を持ってきて混ぜてやると面白い。次のシーズンに植物がより丈夫で大きくなったなら、
それはこの実験の結果であろう。これを何回か繰りかえせば、最良の状態が分かってくるかもしれない。
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