インドカナビスの州内の取引を取り締まるための措置は、現在の憲法では制約があって連邦政府にはやりにくく、 むしろ州政府によって行わなければならないようになっている。しかも、医学目的などを除いてすべての取引を禁止しようとすれば、 州当局はたいていの場合行政力を確保し、必要な法律の制定に対処する政策をせまられている。 従って、こうした目的を達成するためには、インドカナビスの取引を規制する適当な内容を持った全国統一の麻薬法を提案することが 望まれている。
特別の連邦法がないために、麻薬局はインドカナビスの取引に対して何の戦いも遂行することができない……。 この薬は多くの州に拡まり、乱用も増加している。従って麻薬局はいろいろな州に対して、その地方のマリファナ法を今すぐに 積極的に施行することが必要である、と強調してきた。
この問題に対処するための連邦法がないので、当然、州や都市がこの人殺し草(lethal weed)の絶滅のために 積極的な方策を講ずるべきである。従って、社会協調精神を持ったすべての市民が財務省の提唱する運動に熱心に参加し、 マリファナ法の施行を強く嘆願することが望まれる。
フロリダで若いマリファナ中毒者が家族全員を殺す事件が起こった。当局者達がその大量殺人のあった家に着くと、 若者は家の周りをよろよろ歩いていた。彼は斧で自分の父、母、二人の兄、妹の計5人を殺したのである。 彼はぼーっとしているようだった……彼は自分が大量殺人を犯した記憶を持っていなかった。 当局者は普段の彼が気の確かな、むしろ物静かな若者なのを知っていたが、そのときの彼はあわれなほど狂っていた。 みんなは理由を考えた。その少年は、友達が“muggles”と呼んでいたものをずっと吸っていたと語っていた。 “muggles”とはマリファナを意味する子供の用語である。
しかしながら、この法案の形態は、植物の産業・医学・科学上の利用に対して何ら妨げになるものではない。 麻の繊維やそれから作られる製品(麻糸や細い縄)は、成熟した植物の害のない茎から作られるので、 この法案の条文の中では“マリファナ”という用語を、成熟した茎及びその混合物・製品とは切り離して使うことにして、 これらの製品の全てを法の及ぶ範囲から完全に除外できるようになっている。 また、マリファナの種子も、栽培目的や、塗料業者が塗料やその溶剤の基になるオイルをとるために使われ、取引されているが、 種子は茎と違い、マリファナ成分を含んでいるので、残念ながら完全に除外することはできない。
『10年前は、南西部あたりでしかこの問題を耳にしませんでした。しかし、ここ2〜3年の間でマリファナが 国家的な脅威になってきたのです。……われわれはいくつかの州で州法を統一しようとしてきましたが、 最後の州でその法が採用されたのがつい先月なのです』
『この種子は、ハトのえさには欠くことのできない成分なのです。何故かと申しますと、ハトのえさの重要な成分 であるオイルを含んでいるからです。しかも、今までに、これに代わるような別の種子は見つけ出されていません。 もし、カナビスの代わりに別のものを使ったなら、小バトの性格が変わってしまう傾向が出てきます』
(1)マリファナ税法制定4年前に禁酒法が廃止されていること。 (2)禁酒法やハリソン法の場合、対象になった人は、有色人種ばかりではなく多数の白人が含まれていたが、 マリファナ税法の場合は主に有色人種であったこと。 (3)禁止を求める運動が社会の内部から出てきたものではなく、麻薬局が率先して世論操作をしていたこと。
ニューヨーク市長としての私の努めは、市民の健康・安全・福祉に対して、害になりうるようなことを予見し、 それを未然に防ぐようにすることである。最近、学童さえも含めて市民の多数がマリファナを吸っていると言ううわさが流れているので、 私は、医学的な重要問題が起こったときいつもするように、ニューヨーク医学会のアドバイスを求めた。 私は、学会の勧めに従ってマリファナに対する徹底した社会学的・科学的な研究を行う特別の委員会を選任し、 この研究の資金として3つの財団から基金を確保した。 私が初めてマリファナに関心を持ったのは、何年も昔、私が下院議員だった頃、 議員としてパナマに赴任する兵隊達の間でのマリファナ使用について聞いた時であった。その時私は、この薬が比較的無害であり、 パナマ地区における非行や犯罪に、せいぜいほんのわずかしか関与していない、という軍の調査委員会の報告に強い印象を受けた。……
(1)社会学的研究――カナビス喫煙習慣の拡がり方とカナビスの入手方法;どの地区のどの人種・階層・人間のタイプに最も多いか; ある特定の社会状況がカナビスを使わせる要素になりうるか; カナビスの使用と犯罪行為・反社会的振舞いとの関連はどうか。 (2)臨床的研究――人間に対するカナビスの生理的・心理的効果;肉体的・精神的な異常を生じるか; 他の薬物耽溺に対する治療法上の可能性。
カナビス・スモーカーの振舞いは、ほとんどの場合、友好的で社交的である。攻撃性や好戦性は普通見られない。…… カナビス・スモーカー達は、はっきりとした犯罪グループの出身ではなく、また、カナビスと暴力犯罪との間には直接的な関連は 見られない。…… “Tea-pads(カナビスが吸われるアパートなどの室のこと)”は、売春宿とは直接的な関連を持っておらず、 また、カナビス自体は性的欲求に対して特別な興奮効果を持っていない。…… ニューヨーク市の学童達の間では、組織的な取引きは行われておらず、このグループの喫煙は限定的で 孤立したものである。…… モルヒネの禁断現象に比べれば、カナビスはなんの精神的・身体的苦痛も伴わずに、その使用を中断することができる。…… カナビスは人間の基本的なパーソナリティーを変えることはない。カナビスは抑制力をゆるめるので、潜在的に持っている考え方や 感情を引き出すが、カナビスを使っていない時の性格とまったく異なった性格を引き出すようなことはない……。 カナビスに耐性があることを示す証拠はない。…… 研究全体としては、カナビスがモルヒネのような耽溺性の薬ではなく、もし、耐性があったとしても 非常に限られたものである、という結論が得られた。さらに、何年間もカナビスを吸っている人達でも、 薬のためだと思われるような精神的・身体的な異常は何も示さない。…… カナビスによってもたらされる抑制力・抑圧のゆるみ、多幸状態、相応性、思考のより自由な拡がり、食欲の増加等は、 治療法上の可能性を示唆している。……
長年、医学者達は、カナビスを危険なドラッグであるとみなしてきた。 最近、「マリファナに関するニューヨーク市長委員会」によって作成され、77人の囚人に対して17人の医者達が行った精神分析の結果 をあつかった『ニューヨーク市におけるマリファナ問題』という本が出版されたが、このように狭く、 全く非科学的な基盤に基づいたものなので、この本は、マリファナの害を過小評価し、おおざっぱで不適切な結論を引き出している。 この本はすでに社会に悪い影響を与えている。ある研究者は、マリファナを吸っていた16歳の息子を持つ悲劇的な両親のことを 述べている。その少年には、時々、両親の素人目にも分かるような著しい精神の悪変が見られた。 両親は、彼がマリファナを吸っていることに気づき、彼を医者のところへ連れていったのである。 少年はラガルディア報告についての記事が載っていた雑誌を読み、それがきっかけになってマリファナを吸うようになったと言っていた。 この雑誌は Down Beat という音楽雑誌で“Light Up, Gates, Report Finds ‘Tea' a Good Kick” 「ティーを吸おう。ラガルディア報告書は、ティーがグッド・キックであることを認めた」というタイトルでこの報告書について 論じたものであった。 マリファナを売っていてつかまった被告の弁護をしている或る刑事弁護士は、被告の無罪を立証するものとして、 すでにこの報告書を使っている。 この本は不当にも、この麻薬が身体的・精神的・道徳的な頽廃をもたらさず、さらに77人の囚人からは連続使用による 永続的な悪影響が見られなかったと述べている。このような発表は、すでに法の施行目的に対して大きなダメージを与えている。 しかし、行政の担当者達は、この非科学的で無批判な研究を無視し、社会のどこにマリファナがあろうとも、 脅威として見なし続けることが望まれる。
『マリファナについてあなたと話していたとき、マリファナ使用の真の危険性は、多くの人が徐々にヘロインなどの 本当の耽溺性薬物を使うようになってくることだと伺いましたが、本当でしょうか?』
『それが最大の問題です。マリファナの使用に関してわれわれが持っている最大の関心は、 長い間マリファナを使っていると、徐々にヘロインの使用に陥るということです』
『マリファナ中毒者がヘロインやコカインやアヘンの使用者へと進むかどうか怪しい気がしますが?』
『ええ、私もそのような例は聞いたことがありません。それらは全く別のものだと思います。 マリファナ中毒者はそういう方向には進みません』
『マリファナを使っている人たちは、まったく新しい層の人たちです。アヘン使用者はだいたい35〜40歳であるのに対し、 彼らは20歳ぐらいでヘロインやモルヒネについては何も知りません』
『アメリカで起こった最もサディスティックで恐ろしい犯罪、例えばSEX殺人とかそういったたぐいの犯罪の多くが マリファナ使用者のせいにされてきましたが、それは本当のことなのですか?』
『今までそういう例がありました。われわれは、マリファナの使用者たちによる悲惨な事件をいくつか経験しました。 ですが当然、すべての犯罪をマリファナの影響だと考えることはできません。 今まで、多くの野蛮な犯罪がマリファナのせいにされてきましたが、私には、犯罪を行うに当たって、 マリファナが支配要素(controlling factor)になっていたとは思いません』
(1)以前に、この少年の親類の何人かが精神病院に入れられたことがある。 (2)犯行の1年ほど前(たぶん、若者たちのカナビス使用が話題になる前)警察は彼が異常な振る舞いをするので 拘禁しようとしたことがある。 (3)犯行の直後、彼はパラノイド型の精神分裂症の症状を示し始めたのである。
『どこでもやっていますよ。司法省でも、ホワイト・ハウスでも、議会でも。吸っている人を全く知らない上院、下院議員 なんていません。私が個人的に知っている上院議員たちは、マリファナを吸う子供を持ち、また本人たちも家で吸ったことがありますよ』 (Rolling Stone 誌 1972.5.11号)
(1)バッド・トリップ---情緒不安定の人に危険である (2)精神病---バッド・トリップの激しい形態であって発狂することもある (3)危険なドラッグへの踏み石---LSD、アンフェタミン、バルビツール酸誘導体の使用を促す (4)精神的依存性---特に未成年に対する影響 (5)野心の喪失---大望や率先力が失われる (6)長期使用による害の可能性 (7)国際条約の無視---カナビスを合法化すれば、1961年に67カ国によって締結されたカナビスの輸出入・国内販売の禁止 を決めた条約を破ることになる。
(1)1969年、カリフォルニア州だけで60,000人がカナビス関係で逮捕され、その告訴費用は約1億ドル、 または裁判官や保護観察官(刑の宣言または執行猶予中のものを監督する人)はカナビスの法律を施行するのに2割の時間を 費やすほどになってしまった。 (2)その結果、他の犯罪に対する労力が損なわれることになった。 (3)若者たちを機械的に犯罪者にしてしまうことで若者たちは良心の呵責を感じなくなってしまい、 法全体を軽視する傾向が生まれてきた。 (4)親子間、世代間の不信感を助長し、カナビスが断絶のシンボルになってしまった。 (5)カナビス使用者たちを、危険な密売人に近づけ、危険なドラッグとの接触を余儀なくさせてしまった、等々。
(1)カナビスの個人的な所持と使用は合法。 (2)1オンス(27g)以上を公然と所持していた場合、およびカナビスを公然と使用した場合は没収または罰金。 (3)金銭を得ることを目的とした栽培、売買は従来通り重罪。
物事は時とともに変わるのである。それもほとんどの人が考えているよりも早く。かつてはマリファナと同様に全くタブーであった 堕胎を禁止する法律はすでに崩壊し始めている。結局、今日のポット・スモーカーたちは明日の法の作成者になるのだ。 マリファナの法律は、ここしばらく、まだ戻ってこない潮を待って座礁している船のように見える。