アメリカ共和党大統領候補者たちが

医療カナビスに反対する本当の理由

Source: Chronicle Blog
Pub date: Oct 10, 2007
The Truth About Why Republican Candidates Oppose Medical Marijuana
Author: Scott Morgan
http://stopthedrugwar.org/chronicle_blog/
2007/oct/10/the_truth_about_why_republican_c


ジョン・マッケン上院議員(アリゾナ)、 ルドルフ・ジュリアーニ前ニューヨーク市長、ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事の3人の共和党大統領候補は、今週相次いで、医療カナビス患者や供給者に対する連邦政府の戦争を続けると公言し不評を買った。

予想されていたとはいえ、なぜ3氏そろって人々の支持のない医療カナビスへの戦争を継続しようとするのだろうか? ドラッグ政策論争になると、共和党の主流派政治家たちは決まって強硬路線を売りものにするのが常ではあるとはいえ、医療カナビスに対する 世論の支持が大多数 になっている現状を考えると、彼らの思いやりのない姿勢は政治的に愚かにしか見えず、裏には何らか事情が隠されているように思われる。

そうした事情を解く最初の手がかりは、彼らの議論が実際的には論点が、誰から見ても狭く単純な点にある。医療カナビスに対する見方で3氏に共通しているのが、「他の代替の医薬品」が利用できるのだからそれを使うべきだという主張で、実質的には、彼らの医療カナビスに反対する議論はこの一点に集約されているといっても過言ではない。従って、この唯一の論点を言い終わると、彼らはすぐに次の話題に移ろうとする。

しかしながら、この説明では彼らの真の動機が分かったとまでは言えない。ロムニー候補が車椅子の患者に「化学合成カナビス医薬品」を使えばよいのではと語っていたが、このことは明らかに、彼がカナビスに医療効果あることを理解していたことを示している。実際、「他の代替の医薬品」はしばしはマリノールなどの合成カナビノイドを指しているので、議論はカナビスに医療効果があるかどうかについて交わされたわけではない。つまり、カナビスに医療効果があることについては暗黙に了解されていたことを意味している。

ここで次の問題は、患者や薬をどのように入手して使うべきかということになるが、ジュリアーニ候補とロムニー候補とも、患者が代替処方医薬品が体に合わないという訴えに対して答えに窮してしまった。もし、彼らが本当に患者の立場に立っていたならば、そうした副作用にある処方医薬品は脇に置いて、患者自身がやっと見つけ出したユニークな薬の存在のほうに注目しているはずだが、実際には、そうした患者からの新情報は無視して要点を外した話に終始している。

こうして考えていくと、マッケイン、ジュリアーニ、ロムニーの3候補とも、医療カナビスについて他の人たちとは違う特別な情報を持っているわけではなく、皆が知っている事実の範囲内で話をしていることになる。彼らは、患者の話を直接聞き、医師が推薦していることも知っているので医療カナビスを誤解しているわけでもない。

つまり、彼らの本当の関心事は、カナビスの医療効果などとは全く別のところにある。それを知る手掛かりは次の発言の中に隠されている。

「しかし、私には、医療カナビスを合法化しようとする運動が、社会全体にカナビスを広めて究極的な合法化を狙っている少数の人たちに先導されているように見えます。これは間違った道です。」 (ロムニー候補

「私は、カナビスを医療利用できるようにしようとする動きが、本当はカナビスの合法化を目指しているものだと確信しています。それ以外に理由はありません。」 (ジュリアーニ候補

これは、共和党大統領候補や、さらにホワイトハウス麻薬撲滅室のジョン・ウォールターズ長官らが、なぜ医療カナビスに反対しているのかをすべてを物語っている。

すべての反医療カナビス陣営は、たた単に、完全なカナビスの合法化を阻止することに共同戦線を張っているだけで、彼らは、カナビスの医療価値について真実を話せば、普通の人たちがカナビスの方へ向いてしまうことを恐れている。彼らはカナビス・ロビーを心底恐れているために、たとえ医療カナビス政策が不人気で明らかな欠点を抱えていようとも、彼らにとって、譲歩することなどは鼻から許されていないのだ。

その当然の帰結として、彼らの攻撃の対象は医療利用も含めてカナビスを合法化しようとしている運動家たちに向けられる。皮肉なことに、実際に医療カナビスを支持しているグループの大半はアメリカ看護協会やアメリカ公衆衛生協会などのような 主要な医療機関 で、しかも嗜好用途の合法化を支持しているわけでもないにもかわらず、それらの大多数のグループは無視されて、マリファナ・ポリシー・プロジェクト (MMP)のような全面合法化を目指している一部のプログループばかりが引き合いに出されることになる。

言うまでもないことだが、全面合法化議論の中で医療カナビスの真実が政治的人質に取られる現状では、カナビス運動家は自らの結果よりも患者の恩恵を第一に考えなければならない。また幸運なことにインターネット・ビデオの出現で、こうした活発化する長丁場の議論を有権者は最前列で目撃することができる時代になっている。おそらく、医療カナビス戦争の次の犠牲者は、深刻な病に苦しむ患者たちを生贄にしてドラッグ戦争を遂行しようとしている候補者たちだ。

医療カナビスに反対する人たちは、これまで次のような理由をよく主張してきた。
  1. カナビスは危険な中毒性のドラッグで、健康に著しい脅威となる
  2. 若者に悪いメッセージを送ることになる
  3. カナビスの医療効果を示す証拠がない
  4. ゲートウエイドラッグになる
  5. 合法的な代替医薬品が利用可能
  6. 医療カナビス運動はドラッグ全面合法化の口実
しかし、これらの理由は実証研究などで次々論駁され、現在は、この記事のように、焦点は下の 5、6 に絞られてきている。 4のゲートウエイドラッグという主張も相変わらず繰り返されているが、医療カナビスに関しては、特に神経障害の患者たちの多くはモルヒネなどを経験したうえでカナビスの方が副作用も少なく効果が高いことを実感して知っているわけで、ゲートウエイになるという主張がいかにナンセンスなのかをよく表している。

現在では、5の代替医薬品についてもさまざまな問題が指摘され衆知されてきたことで説得力を失いつつある。また、最後の「全面合法化の口実」という主張は、カナビスや医療カナビスの事情を余り知らない人たちに一定の説得力があり反対政治家や活動家の定番になっているが、これまで実際に医療カナビス運動の先頭に立って合法化を求めてきた人たちの多くが病気で苦しむ病人自身や医療関係者だったことを考えれば、この主張がいかに実態を無視したこじつけであるかがわかる。

「全面合法化の口実」という主張の背景には、現在の医療カナビスに対する 世論の支持が70% に達していることで、誇張や嘘をついてでもその趨勢を食い止めなければならないというカナビス反対派たちのあせりや危機感が横たわっている。

アメリカの医療カナビス年表、患者と政府、研究と規制
神話 医療カナビスは嗜好目的の口実
アメリカ連邦麻薬局、DEAの医療カナビス神話に反駁

それよりも重要な問題は、カナビスの医療目的はOKだが嗜好目的はNOと考えている人が多いことで、これは一つには、現在の医療カナビス議論が重度の疾患や症状を対象にしているために、それ以下の症状や予防的な医療の恩恵までは考慮されていないことに起因している。実際には、カナビスによる恒常性の維持機能 などは予防医療に大きな効果が見込まれており、嗜好と医療利用は「医食同源」と同じような意味で明確に区別できるわけでもない。

また、これまでの経験から、医療カナビスだけを合法化してもさまざまな問題が派生してくることが知られている。例えば、カナダやアメリカの10州以上が医療カナビスを合法化しているが、多くは 病気の種類を限定 しているために、それ以外の病気の患者が恩恵を受けられなかったり、一律に量的制限 されたりしているので必要量が不足する患者が出たり、尿テストで 職場を解雇 されたり、栽培しているカナビスを 強奪 されたり、殺害 されるといった問題が起こっている。

これらはすべて医療用途は認めて嗜好用途は認めないとする前提から派生しているもので、医療用途での恩恵自体を狭める結果をもたらしている。医療カナビス研究で著名なレスター・グリンスプーン博士は、「アルコールに適応されていると同様の規制でカナビスのあらゆる利用を可能にすることが、カナビスの医療利用の恩恵を最大限に引き出す唯一の方法だ」 と書いている。つまり、カナビスが全面合法化されなければ、医療カナビスも真に合法化されたことにはならない。

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