アメリカの医療カナビス年表

患者と政府、研究と規制


Source: The Ohio Patient Network
Subj: Therapeutic History of Cannabis
A Timeline of Marijuana Research and Regulation
http://www.ohiopatient.net/pdfs/history_of_mmj_research.pdf


  • FDA (Food and Drug Administration):食品医薬品局
  • DEA (Drug Enforcement Administration):麻薬取締局
  • NIDA (National Institute of Drug Abuse、ナイダ):国立ドラッグ乱用研究所
  • HHS (Health and Human Services):保健福祉省
  • NIH (National Institutes of Health):国立衛生研究所

1839 ウイリアム・オショネシーが 『インディアン・ヘンプのガンジャの調合薬について』 と題する40ページの論文を発表して、近代西洋医学にカナビスをもたらした。
1894 カナビスの長期的使用に関する初めての近代的な研究である「インディアン・ヘンプ調査委員会報告書」が発表された。結論では、たとえ長期使用者であっても健康の害になるような副作用はごく僅かと報告。
1800s
  〜
1937
カナビスは、チンキ剤などの調合医薬品の成分として広く使われていたが、しばしば、他の配合成分との関係で、効果が不安定で結果が予期できないこともあった。

1914 薬物に対する処方規制を目的としたハリソン法が成立。
1937 マリファナ税法が成立。この法律によって、カナビスの所持に税金が課せられるようになった。また、この法律については、1969年の最高裁で、自己負罪(自分を有罪にしようとすること)に逆らう権利を認めた合衆国憲法に違反すると裁定されている。 [1] 
1941 カナビス医薬品が、アメリカ薬局方と医薬品総覧から削除される。
1942
  〜
1966
このころは、カナビスの利用は散発的で一部の特定グループに限定されていた。カナビスの公式な研究も行われることはなかった。

1964 イスラエルのマッカラム博士に率いられた研究チームが、THC分子をはじめて単離。
1967 食品医薬品局(FDA)が、ハーバード大学医学部のアンドリュー・ワイル博士に、「人間のカナビス使用の安全性に関する基礎研究」を許可。
1968 保健・教育・福祉省の翼下にあるFDAは、今後、ドラッグの非医学的使用については起訴を担当しないことになり、司法省下にBNDD(麻薬・危険薬物取締局、現DEA)を設けて権限を移した。

1970 薬物規制法が成立。以前のドラッグ規制法の全てを撤廃して統合し、単一の法に改めた。
  • 5段階の分類表を使って、ドラッグの依存性と乱用可能性を分類
  • カナビスは最も厳しい第1分類(医療使用は不可)
  • カナビスの研究をするには、BNDD(DEA)の認可が必要
  • エドワード・ケネディなどの幾人がの上院議員が反対
  • カナビスの適正な分類を決定するために委員会が設置された
  • 1970 キース・ストロープが、NORNL(マリファナ法改革をめざす全国組織)を設立。
    1972 リチヤード・ニクソン大統領に任命された「マリファナとドラッグの乱用に関する連邦委員会」(通称、シャファー委員会)が、『マリファナ、誤解のシグナル』と題する報告書を発表し、カナビスの非犯罪化を提言。 [2] 
    1972 ガンの化学療法に伴う吐き気の治療に、カナビスが有効であるという事例報告。
    1972 NORMLが、規制薬物法でのカナビスの分類を変更するように行政訴訟を起こした。だが、BNDDは、国際条約義務違反になるとして聴聞会の開催を拒否。
    1973 BNDDが、権限を強化したDEA(麻薬取締局)に格上げされる。
    1974 保健・教育・福祉省、「マリファナ、ヘルス・レポート 1974」を出版。
    1974 進行した緑内障を患うロバート・ランダールが、治療にカナビスが有効であることを発見。
    1974 ワシントンDC控訴審、BNDDが、国際条約義務違反になるという理由でカナビスの再分類の検討を拒否したことを不当と判決。

    1975 ハーバード大学医学部のサレーン、ジンベルグ、フライ博士が、FDAから、ガン患者にカナビスの活性成分であるTHCを使った研究の許可を得る。THCはある程度治療の役に立ったが、数人の患者はカナビスを吸ったほうが効果があるとして研究から脱退。 [3] 
    1975 ロバート・ランダールとアリス・オレアリーが、ワシントンDCのアパートでカナビスを栽培して逮捕される。
    1976 ロバート・ランダールのカナビス栽培に対する刑事責任を問う裁判で、ワシントンDC最高裁のジェームス・A・ワシントン裁判官は、「医療の必要性」を認めて検察の主張を却下した。判決により、ランダールはアメリカで唯一合法カナビス・ユーザーとなった。
    1977 連邦控訴審は、1974年のNORMLのカナビスの分類変更の申し入れに対して、DEAに聴聞会を開くように命令。
    1978 FDAのコンパショネートINDプログラム(温情にもとずく治験新薬プログラム)で、ロバート・ランダールが最初の合法カナビスの受給者になった。彼の受け取っていた政府の合法カナビスは、ミシシッピー大学で栽培され、ノースカロライナの連邦ドラッグ乱用研究所(NIDA、ナイダ)で紙巻シガレット状に巻かれてパックされたもの。(現在の合法カナビスも同様にして作られている)
    1979 国立ガン研究所が資金を提供し、吐き気に苦しむ15人のガン患者を対象としたTHC二重盲検実験がFDAから認可を受けた。この研究では、THCまたはプラセボで軽減のみられない患者に対しては、救済措置としてカナビスを喫煙させてもよいということになっていたが、一部の患者ではTHCよりもカナビスのほうが効果のあることが示された。

    1978
      〜
    1983
    34の州で、カナビスの医療研究と医療使用を認めた州法が通過。州法の内容にはいくつかのパターンがあったが、ニューメキシコ、ジョージア、ミシガン、ニューヨーク、カリフォルニア、テネシーの各州では、カナビスを使った治療プログラムも含まれていた。
    1979
      〜
    1983
    これらの州の研究チームは、FDAの認可を受けて、ガンの化学療法に伴う吐き気の治療にカナビス喫煙を使った臨床実験を実施したが、一部の患者では、経口THCピルよりもカナビス喫煙のほうがより効果のあることが示された。

    1982 NIDAのウイリアム・ポーリン局長が、アメリカのすべての図書館に書簡を送り、カナビスに関するこれまでのNIDAの文書を蔵書から破棄するように要請。
    1982 アメリカ学術研究会議の薬物乱用と行動習慣に関する委員会が『マリファナ政策の分析』と題する報告書を発表。「カナビスの成分が各種の疾病の治療に役立つという予備試験データは揃っている。」 [4] 
    1985 FDA、経口投与型のTHCピルの医療使用を許可。
    1986 THCピルの製造と販売がFDAから私企業のユニメッド製薬に引き継がれれ、THCピルは、規制薬物法の第2分類(医師の処方と書面による厳格な管理)に加えられた。商品名はマリノール。
    1986 DEA、カナビスの医療利用についての聴聞会を開くことに合意。
    1988 DEAの行政法の判事であるフランシス・ヤング裁判官が、カナビスの医療可能性に関する聴聞会の結果をまとめた 『マリファナの再分類について』 と題する報告書を発表し、分類の変更を支持。 [5] 
    1989 DEAのジャック・ラーワン局長が、ヤング裁判官の勧告を拒否し、医療カナビスを 「邪悪なイカサマ」 だと非難。
    1989 国立精神衛生研究所の研究チームが、人間の脳内にエンドカナビノイド・レセプター・システムがあることを発見。

    1990 ステーブ・Lが、ロバート・ランダールの支援でエイズ患者としては初めてNIDAから合法カナビスの支給を受けるようになった。しかし、1ヵ月後に死去。
    1990 ロバート・ランダールに対して、FDAは、コンパショネートINDプログラムをN-of-1プログラムにすることを打診。この方法は、いろいろな治療法を適用してどの治療法が一番有効かを判定するもので、しばらく続ければ、カナビスを処方医薬品とするのに十分なデータを集めることができるという理由だった。しかし、ランダールは、このFDAの提案が自分で医療カナビスを用意しろという意味だと考えて、断った。
    1991 アメリカの1000人以上のガン専門医を対象に実施したハーバード大学の調査で、70%の医師が、自分の患者で制吐剤としてカナビスを使っている人が少なくとも一人はいると回答。また、患者のカナビスの使用について経過を観察したり、話合いをしたことがあると答えた。
    1991 第3回巡回控訴審が、FDAに対して、長年にわたって続づけられてきたカナビスの医療使用禁止措置を再考するように命じた。
    1991 ロバート・ランダールがMARS(マリファナ・エイズ・リサーチ・サービス)を設立して、エイズ患者のコンパショネートINDプログラム申請に必要な書類作成を無駄なく確実にできるように支援。
    1991 FDAの医薬品審議官を務めるカーチス・ウエイト博士が、INDプログラムを受けている患者がまだいるにもかかわらず、差し止めでFDAの研究が停滞していると指摘。 [6] 
    1992 エイズ患者の殺到を恐れて、コンパショネートINDプログラムが打ち切られた。この措置で、申請中の28人が却下、すでに適応を受けていた13人だけに以降も合法カナビスの提供が続けられることになった。10年後の生存者は7人。
    1994 FDAが、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のドナルド・アダムス博士に、エイズの消耗症候群の治療にカナビスを使う実験を認可。だが、DEAは、流用の恐れがあるとして、研究にカナビスを使うためのライセンス申請を拒否。 [7] 

    1995 アダムス博士が研究に使うカナビスをNIDAに申請したが、DEAと同じ理由で拒否された。これによって、国立衛生研究所の承認システムを通じて、正式にプロトコル評価を受けて資金提供された研究として実施する以外に方法がなくなったが、国立衛生研究所もアダムス博士の申請を却下した。
    1995 ジョン・ガットマンが、カナビノイド・レセプター・システムの発見でカナビスの医療利用に道が開かれたとして、DEAに対して、カナビスの規制薬物法分類を変更するように新たに申立てた。
    1996 カリフォルニア州とアリゾナ州で、カナビスの医療利用を合法化する住民条例が有権者の圧倒的多数の賛成で通過。カリフォルニアでは、215住民条例の通過にともなって、カリフォルニア大学サンディエゴ校に医療カナビス研究センターが設立された。また、患者が合法的にカナビスを購入できるカナビス・バイヤーズ・クラブの開設が拡がった。

    1997 ホワイトハウス麻薬撲滅対策室のバリー・マカフェリー長官が、カナビスの医薬品としての利用価値を調査するために、全米医学研究所(IOM)に100万ドルを提供し、18ヵ月間ですべての科学テータを検証するように要請。
    1997 国立衛生研究所が、IOMの検証と同様の目的で、カナビスの医療価値を評価する作業部会を編成。部会のなかに設けられた特別専門グループが、カナビス治療の可能性が見込まれるとして、NIDAはFDAの承認した研究にカナビスを提供すべきだと結論を出した。 [8] 
    1997 アダムス博士が申請していた、エイズ患者のカナビスとタンパク質分解酵素のプロテアーゼ抑制相互作用に関する薬力学評価研究に対して、国立衛生研究所から、認可と97万8000ドルの資金、さらにNIDAからも、カナビス供給保証を獲得した。
    1997 モンタナ大学のエサン・ルッソ博士が、偏頭痛の治療にカナビスを医療的に使う研究プロトコルを作成しFDAに提出したが、FDAは、国立衛生研究所の特別委員会の勧告とは正反対に、まず先にNIDAからカナビスの供給を受けることが必要だとする新しい制約を設けて強要した。
    1997〜
    1998
    FDAのオーファンドラッグ開発局は、エイズの消耗症候群の治療用オーファンドラッグとしてカナビス喫煙を使うことを目指した3つの異なる研究計画の申請をすべて却下した。オーファンドラッグ(みなしご薬)とは、患者数が少なく利益の見込めない薬のことで、どこの製薬会社も開発しようとしない研究に対して、国が補助して開発を促すようになっている。

    1998 ルッソ博士が、2つの異なる研究プロトコルを国立衛生研究所とFDAに認可申請したが、両方とも却下される。
    1998 連邦議会が、カナビスの医療使用を認めるかどうかの適正な決定は、FDAの規則にもとづいた科学的プロセスによるべきだと決議。

    1999 FDAが、1997年の国立衛生研究所の特別専門グループなどから出ていた幾多の勧告を無視して、科学者が医学研究用にNIDAからカナビスの供給を受ける際に必要な新ガイドラインを発表。 [9] 
    1999 全米医学研究所(IOM)が、『医薬品としてのマリファナ、科学ベースによる評価』 を発表。「カナビノイドの治療価値は、化学療法の制吐剤やエイズの食欲増進剤にとどまらず極めて広い可能性を持っている」 と結論。 [10] 

    2000 作家でエイズ患者としても知られるピーター・マクウイリアムズが、逮捕後に、カナビスを吸うためには裁判を受けることが必要だと強要され、嘔吐で喉を詰まらせて死亡。
    2000 第1回カナビス治療に関する全国臨床カンファレンスがアイオワ大学で開催される。

    2001 ロバート・ランダルがエイズで死去。生涯を通じて視力を失うことはなかった。
    2001 連邦最高裁は、規制薬物法に「医療の必要性」の条項が含まれていないことを理由に、国の家宅捜査を受けたカリフォルニアの医療カナビス・ディスペンサリーがそれを盾にして弁護を行うことはできないと裁定。
    2001 カナビス治療学ジャーナルがハワース・プレスから発行開始。編集はルッソ博士が担当。

    2002 マリノール、規制薬物法の第2分類から規制の緩い第3分類(医師の処方で専門薬局で購入)へと格下げ。
    2002 オハイオ・ペイシェント・グループが、全国66件の世論調査を分析した 『人々の意見、医療カナビス世論調査 1996〜2002』 を発表。全体では68%がカナビスの医療使用を支持していることが明らかにされた。暮に行われた雑誌タイムによる世論調査でも、回答者の80%以上が医療カナビスを支持していることが報道された。
    2002 ルッソ博士とメリー・リン・マーザ看護マスターは、コンパショネートINDプログラムを受けている4人の現存患者を調査して、カナビス治療学ジャーナルで、カナビスの長期使用による副作用がほとんど見られないと発表。
    2002 DEAが、カリフォルニア州法のもとで合法的に運営している医療カナビス・ディスペンサリーを強制捜査。その中には、終末期患者のホスピスにもなっているWAMM(Wo/Men’s Alliance for Medical Marijuana)も含まれていた。連邦法により、数人の役員が裁判で投獄された。
    2002 カリフォルニア最高裁が医療カナビス215条例を支持し、カリフォルニアで処方されている他の医薬品と同様に、カナビスを扱うことを求めた。
    2002 ジョン・ガットマン博士を代表とするCRC(カナビスの分類変更を求める連合)が、カナビスには医療価値がないとするDEAの決定は権限の乱用であり害毒になっているとして、カナビスを規制薬物法の第1分類から外すように申し立てを行った。

    2003-3 ホワイトハウス麻薬撲滅対策室のジョン・ウォルターズ長官が、「カナビスの喫煙が安全で医療効果があるなど言っている研究は今までない」 とプレスリリースで主張。 [11] 
    2003-4 DEAは、アメリカでカナビスの医療使用が受け入れられているという事実を認めるべきだと主張したCRCの申し立てを受理した。 [12] 
    2003-9 オランダで医療カナビス処方開始。同時期にカナダでも保健省が医療カナビスの提供を開始。



    1.  ウイリアム・ウッドワード

    このマリファナ税法がカナビスの医療使用の禁止を目的にしていないことは明白ですが、制限が余りにも多く、その影響はカナビスの医療利用をも阻むものです・・・この薬には将来の研究によって多大な恩恵が見込まれますが、この法は、そうした公共の利益を奪ってしまう恐れがあります。

    -- マリファナ税法の審議でアメリカ医学界の代表として発言。1937年


    2.  シャーファー委員会

    大多数の個人ユーザーに対しても、社会への実際的な影響についても、カナビスが害を引き起こす可能性は比較的低く、ユーザーを捜出して厳罰で臨むような社会政策が正当化できるほどのものではない。

    -- マリファナとドラッグの乱用に関する連邦委員会 『マリファナ、誤解のシグナル』 1972年


    3.  ノーム・ジンベルグ

    われわれの研究では、カナビスではなくTHCを使うことにしました。カナビスを使ったプロトコルでは認可を得ることが不可能だからです。実際、THCプロトコルで承認を獲得するのにも2年間の不断の努力が要求されるほどでしたから、カナビスの喫煙プロトコルでFDAから認可を取り付けることは永遠にできないと思います。

    -- カナビスではなくTHCで研究許可を取得したことについて。1975年。


    4.  アメリカ学術研究会議

    予備的研究によれば、カナビスやその派生・類似薬物には、緑内障による眼圧の上昇の治療や、ガンの化学療法に伴う深刻な吐き気や嘔吐のコントロール、ぜんそくの治療などに役立つ可能性が示されている。

    また、カナビスの成分であるカナビジオール(CBD)を使った一部の予備研究では、あるタイプのてんかん発作を始め、けいれん性の疾患や神経障害などの治療にも有用性を示すエビデンスが出ている。

    -- 薬物乱用と行動習慣に関する委員会 『マリファナ政策の分析』 1982年。


    5.  フランシス・ヤング

    天然のカナビスは、現在治療効果の知られている薬物中でも最も安全なものの一つであり、規制薬物法の規定に従って、カナビスを第1分類から第2分類に移すことが必要である。

    患者の苦しみとこの薬の持っている恩恵との間に、DEAが立ちはだかることは、道理に適わなず恣意的で偏っていると言わざるを得ない。

    -- DEA行政法判事の判決。1988年


    6.  カーチス・ウエイト

    われわれは、治験新薬プログラムに加わり現在も生存している患者一人一人について過去まで遡って調べていたが、臨床試験の差し止め命令が出てしまった・・・

    カナビスや、LSD、資本の少ないベンチャーによる薬物製品など、あらゆる種類の幻覚系薬物については、それを研究をしたいという要望が提出されている。だが、その多くは棚上げにされたままになっている。どのようにしたらその壁を破って自由に研究することができるようになるのか、答えを知っている人はいまのところいない。われわれは、その答を求めてあちこちに呼び掛けを始めている。

    -- FDAの医薬品審議官、FDAの研究が停滞していることについて。1991年。


    7.  ジーン・ハイスリップ

    DEAでは、アダムス博士が申請している研究の登録プロセスについては、FDAの適切な決定が出されない限り先へすすめるつもりはありません。この件に関しては、偽善的で医学を装った政治的な動機を持った活動から社会を守りたいという、当方と同じような関心と見解をFDAも共有していると確信しております。

    過去の例とカナビス擁護者たちの執拗さを考えれば、もしこの研究でカナビスに僅かでも効果が認めらると、カナビスには少なくともマリノールと同等の効果があると証明されたので、医療価値があると吹聴する輩が出てくるに違いありません。

    -- DEAの次席補佐官がFDAのデビッド・ケスラー長官に宛てた書簡。1994年。


    8.  国立衛生研究所

    カナビスには、少なくとも一部の疾患に関して十分な可能性が見込まれ、新しい対照研究を行う価値がある。いずれにしても、国立衛生研究所の基本姿勢とすれば、提出された臨床研究計画に問題がなければ認可をサポートするようになっている。

    研究が、アメリカの規制基準であるFDAのプロトコル承認とDEAの薬物規制をクリアできれば、NIDAは、研究者にカナビスとそれに見合うプラセボを提供する義務を負う、というようにすれば、カナビスに関するさまざまな仮説の検証に取り組む新しい研究がたくさん出現するだろう。

    -- カナビスの医療価値を評価する作業部会特別専門家グループ。1977年。


    9.  リック・ドブリン

    食品医薬品局からカナビスの研究の認可を受けようとすれば、保健福祉省のガイドラインやNIDAの独占供給体制のために、たとえ研究が民間の資金で行われようと、プロトコルの承認には政府の別の機関の査察も受けなければならないようになっている。規制薬物法の第1分類の薬物でこのような制約があるのはカナビスしかない。

    -- カナビス研究に対する保健福祉省のガイドラインについて。1999年。


    10.  全米医学研究所

    製薬会社が医薬品を開発する上で、規制薬物法の分類は決定的な重要性をもっている。一般に、会社は、規制が市場でシェアを獲得する阻害要因となると考えている。

    その理由としては、入手方法が制限されること、医師が規制薬物を処方したがらないこと、後ろめたいことをしていると感じること、乱用の可能性を調査するために余分な費用がかかること、連邦や州の規制手続きによる多額な出費と遅延が余儀なくされること、などが考えられる。

    もっとも、こうした見方を広く支持するような実証的な証拠が簡単に見つかるというわけではないが、少なくとも医師を対象とした大規模な調査が一件行われている。それによれば、医師たちの間では、DEAのような規制機関からの直接または間接的な圧力を感じて、オピオイドの処方を控える傾向のあることが示されている。

    当研究所では、1995年に、法的問題と研究者や製薬会社に聞かれる不満の声を分析した結果、規制薬物の臨床研究と開発を促すために、規制薬物法を変更して障害になっている壁を取り除くことを提言している。・・・

    カナビノイドの治療価値は、FDAがマリノールの認可対象とした化学療法の制吐剤やエイズの食欲増進剤の2疾患にとどまらず極めて広い可能性を持っている。

    カナビノイドが市場的に利益が見込めるシナリオとすれば、医薬品の必要性がまだ十分に満たされていない分野にある。例えば、カナビノイド・レセプターのアゴニストによる鎮痛治療ニーズなどは間違いなく大きい。アメリカで、1997年に処方薬や売薬として販売された鎮痛剤の市場規模は44億ドルに達している。

    -- 、『医薬品としてのマリファナ、科学ベースによる評価』 1999年。


    11.  ジョン・ウォルターズ

    カナビスの喫煙が安全で医療効果があるなど言っている研究は今までない。医薬品を装ってカナビスの喫煙を合法化しようとする行為は科学的にも無責任であり、わが国の持っている高度な医薬品認証基準にも合致していない。

    衰弱した病状にある国民には、科学が提供できる最善な医薬品をとどけるべきであり、一部の利益グループのロビー活動や政治的妥協の結果もたらされたものであってはならない。

    -- ホワイトハウス麻薬撲滅対策室長官のプレスリリース、2003年3月。


    12.  ジョン・ガットマン

    DEAが、われわれCRC連合の申し入れを受理したということは、もはやアメリカにおいて、カナビスの医療使用が受け入れられているという認識が無視できないほど大きくなり、法的にも議論すべき問題になってきていることを彼らも分かっているからです。連合の申し入れは、カナビスが規制薬物第1分類に属するような薬物ではないことを示す、科学的な医学エビデンスを多数備えています。

    申し入れには、保健福祉省が参考すべき必要なデータも揃えてありますし、DEA側でもすでに6ヵ月を費してそれを検討しています。われわれは、DEAを促して、一刻も早く科学的で医学的な検証をするように保健福祉省に求めていきます。それをさらに加速させるには、医療カナビスに対する世間の支持が力になります。

    -- DEAがCRC連合の申し入れを受理したことについて。2003年4月。