ジョイントがあれば薬はいらない

強固な痛みと闘う母親の日記

Source: Peterboroughnow.co.uk
Pub date: 3rd August 2006
Subj: If I smoke a joint, I don't need to take any of the many tablets I'm given
Author: Rachel Wareing
http://www.thehempire.com/index.php/cannabis/news/
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ヘレンとトムは、ロンドンの北130キロにあるピーターバラ(人口16万人) に住む模範的な市民だ。警察のやっかいになったことはないし、行儀の良い3人の子供も育てている。他人に対しても思いやりを持って接するように努めている。

でも、この普通のカップルには秘密がある。毎日決まって法律を犯しているのだ。ヘレンもトムも医療目的でカナビスを吸っている。最近では自給するために栽培も始めた。

26才になるヘレンは、強い痛みで何もできなくなるという珍しい神経の病気を抱えている。医者は多発性硬化症の疑いがあると言っている。

彼女は、病気が始まってから、しつこい痛みと落ち込んだ気分を和らげるために、毎日、27種類もの処方医薬品のカクテル療法を続けてきた。しかし、今度はその処方薬が、眠気、イライラ、悪夢や幻覚、胃のむかつきなど別の問題を引き起こしてしまった。


カナビスがヘレンの人生を変えた

彼女は、ジョイントを吸うと痛みはすぐに治まって、ごく日常的なこともできるようにしてくれると言う。

「たくさんの薬を飲むと気持ちが悪くなってしまいます。でも、ジョイントを吸えば、薬は必要がなくなります。子供たちとも遊ぶことができるし、食事を作ったり、髪にブラシをかけたりできるようになるんです。」

「髪にブラシしていると子供のようにはしゃいてしまいます。バカみたいに聞こえるかもしれませんが、そんなたわいないことでも私には特別のことなのです。」

彼女にカナビスを教えたのがトムだった。一年前に知り合ってすぐのことだった。


トムとカナビスの出会い

トム(25)は13才のときからずっとカナビスをずっと使ってきた。医療目的だと言う。「子供のころから感情や体に問題があって大変だったのです。」

「13才のとき、鉄道の橋の上に座りながら自殺しようか思いつめていたのですが、その時、友達がジョイントをくれたのです。本当に気持ちが穏やかになりました。それ以来ずっと吸うようになったのです。ハイになるためではありません。ノーマルな気持ちになれるからなんです。」

トムはヘレンと一緒になって彼女の世話をするかたわら3人の子供たちの面倒も見るようになった。しばらくしているうちに、カナビスがヘレンの状態にも助けになるのではないかと思うようになった。

ヘレンもカナビスをやったことはあったが、病気が悪くなって以来やったことはなかった。トムの勧めにも最初は慎重で躊躇していた。しかし試してみると、完全に気持ちが変わった。

「彼女にはまさに天啓だったのです。ジョイントを吸ったら別の人になったようでした。落ち込んだ気持ちは立ち直って、普通のママと同じように子供たちと遊んだりできるようになったんです。」


自給のための栽培

国の保健政策の変更でヘレンに思わぬ払い戻しがあった。彼女は、そのお金で栽培器具を買って自分たちで植物を育てられないかとトムにもちかけた。カナビスの栽培はトムの長年の夢だった。

カナビス・ユーザーのトムにとって、ドラッグ・ディーラーと接触しなければならないことが苦痛だった。

「これまでも何回か非常に厭な状況に追い詰められたことがあります。隠れた場所で危険なディーラーに会わなければならないし、ナイフを突きつけられたり、取引がうまくいかなかったときなどは後で家まで押しかけてきて脅されたりしました。」

「そんな目にあったり、連中とかかわったりするのは全く御免です。顔見知りになんかなりたくありませんし、他のドラッグをやりたいとも思いません。」

トムは、また、自分で育てることには医療的なメリットもあると考えている。

「カナビスを売って儲けようとする連中はお金のことしか気にかけません。植物を早く育てるために有害な化学肥料や農薬をたくさん使うことも厭いません。本当に危険です。吸っている煙にどんな恐ろしい化学薬品が入っていてもわからないのです。」

「その点、自分で育てれば少なくとも何を使うかをコントロールできます。」


試行錯誤と新しい発見

トムは栽培を重ねるうちに、カナビスには医療ユーザーにより適した品種があることに気がついた。自分で栽培することで、自分に適した種を確保することができるようになった。

また、ピーターバラには、同じように医療目的で自分のカナビスを育てているグループがあることを知った。グループは10人ほどで、収穫したカナビスを分け合っていた。しかし、トムに意見のよれば、それは氷山の一角のことで、市には困難を抱えた同じような人たちが何百人もいると言う。

今では、トムとヘレンは、自分達の寝室のなかに特別のケースをつくり栽培用の照明を使って幾種類かの植物を有機栽培で育てている。照明で使う電力は冷蔵庫と同じぐらいだと言う。

室内栽培の経験はなかったので、最初は行きあたりばったりだった。「図書館からハウツー本を借りてくるわけにはいかないし、本当に大変でした。」

「やっては失敗するの連続でした。難しかったのは、いろいろ試めせるほどたくさんの種を使えなかったことです。もし、警察の手入れでも受ければ、失敗した小さな植物まで全部数えられて販売目的で栽培していたとされる恐れがあるのです。本当はどうなのかは関係ありません。」


子供たちの前では絶対に吸わない

二人は、子供たちの前ではカナビスを吸ったことはないと言う。しかし、供給を確実にするために屋根裏でもっとたくさん栽培したいとも思っている。

捕まるのではないかという恐れにはいつも悩まされている。ドアがノックされたばけでもパニックになってしまうこともある。

「販売目的で栽培していたとされれば14年も刑務所に入れられる恐れがあるのです。そうなったら、ヘレンや子供たちは施設に入れられてしまいます。家族は引き裂かれ、誰も助けてくれません。」

「こんな状況は不公平です。自然に生えているものを栽培して、それがヘレンの困難を解消し、人生のクォリティを保ってくれているんです。彼女の使っていた医薬品の錠剤の脇にジョイントを置いた写真を使って、「あなたならどっちを選ぶ?」と書いたポスターを作って、夜中に町中に貼り出したいと思ったこともあります。」

「私たちのような人間もいることを、ただみんなに知ってもらいたいのです。」


カナビスで国の医療サービスは多額の費用を節約できる

ヘレンは2006年の3月から日記をつけて自分の状態を記録し続けてている。その一部を抜粋すると、

3月15日
頭痛と背中のうずきと手足の痛みで目覚めた。
今着ている服を身に着けるだけでも苦悶の連続だった。
一日中泣いていた。年を取ったような気がした。
水曜夜、ジョイントを吸うとすぐに気分が回復してきた。

3月23日
息子の学校で特別の集会があった。下までも歩いていけない気がした。痛みで動けそうもない。
紅茶を飲みながらジョイントを吸った。痛みが引きはじめてポジティブな気持ちになってきた。
おかげで、学校にいって素敵な集会にも参加できた。
今日は立派なママを演じられてとてもうれしかった。

4月23日
痛みが襲ってきて夜中の3時まで眠れなかった。いつまで続くんだろうと泣きつづけた。
まだ未成熟な植物から弱いジョイントをトムに作ってもらい、吸って効きかたを確かめてみた。
たった1本しかなかったけれども効いた。今は早く次のもほしい。
弱くても1本のジョイントから得られる安堵感は、本当にカナビスの恵みを教えてくれる。
同じように苦しんでいる人たちにジョイントを1本だけでも分けてあげられたらと思う。
きっと、どんなに助けになるかわかる。そうしたら政府だって何かをしなければならなくなる。

5月23日
お医者さんが私の磁気共鳴診断の写真(MRI)を見て、大きな手術が必要だと言った。
大きく開いて、24時間は集中治療室で過ごした後、1週間は一般病棟ということだった。
2ヶ月は喫煙はダメと言われた。
でも、7週間も8週間もカナビスをやらないなんていうことはできそうにない。
手術の後でカナビスがどう効くか興味がある。

5月30日
お医者さんがくれる錠剤の数がさらに増えた。今までもらっていた一つは量が増えた。
新しい薬はとても高価なものらしく、薬局にもストックがなく取り寄せになった。
午後、トムにもらいに行ってもらった。
薬局では1255ポンド(27万円)もすると言われた! それも1種類だけの値段。
他にも8種類使っているから、全部の値段を考えると恐ろしくなってしまった。
全額保健だけれど、カナビスを合法化すれば、国の負担は何百万ポンドも節約できるのに。

6月6日
気分は最低。でも、私よりももっと苦しんでいる人がいることもわかっている。
それに比べたら、頼もしい夫と3人の元気な子供に恵まれている自分がどんなに幸運なことか。
でも、本当は、それ以上のことがあるかどうかはわからない。
子供が学校から帰ってくるのが待ち遠しい。
宿題も手伝ってやりたい。でも、薬のせいでよろけて気分も悪くて手伝ってやれない。
トムが友達に会いに行く途中でジョイントを1本持ってきてくれた。
今の私には1本でも天国だ。紅茶を飲みながら久しぶりにポジティブな気持ちになった。
これからのことも考えられる。
夕食もたくさん食べられたし、久しぶりに自分の食べる分も自分で取り分けることもできた。
でも、一番うれしかったのは、4才の息子と遊んでいるときに 「ママっておもしろい」 と言われたことだった。子供たちと遊べるのが愛とおしい。


カナビスに対する医学関係者の意見は割れている

医療カナビスの使用の利益と欠点に対する専門家の意見にはいろいろある。

イギリス医師会の広報官に尋ねると、「1997年に 『カナビスの治療使用』 という報告書を発表していますが、イギリス医師会としては、利益があると認められる症状を持つ患者さんに対してカナビノイドを処方して研究できるように法律を改正することを提言しています」 という答えが返ってきた。

2005年3月には、内務大臣がドラッグ乱用諮問委員会(ACMD)に対して、カナビスの害に関する新しい証拠を検証し、カナビスをC分類からB分類に戻すべきかどうかを諮問している。調査結果の報告書には次のような指摘が書かれている。
  • カナビスは精神病を悪化させて統合失調症を引き起こす可能性がある。また、一部ではそうした病気のトリガーになる。
  • カナビスの喫煙は、慢性気管支炎などの肺の病気になる可能性を増加させ、肺ガンを引き起こすおそれもある。
  • 一部の人はカナビスに中毒になって、やめると禁断症状にみまわれる。
しかしながら、最終的には、B分類の覚醒剤ほど害があるとは考えられないとして、カナビスに関してはC分類のままとどめるべきだという結論に達している。


それでも供給は違法のまま

カナビスは、C分類にダウングレードされたが、所持や栽培や売買は依然違法のままになっている。
  • 供給、売買、栽培、取引の最高刑は懲役14年。従来C分類はどれも5年だったが、睡眠薬のGHB(ガンマヒドロキシ酪酸)や精神安定剤のバリウムなども含めて重くなった。
  • 所持の最高刑は5年が2年の懲役に減刑された。
  • 成人の場合、カナビスの所持だけで逮捕されることはほとんどなくなった。大半の所持犯は警告とカナビスの没収で済まされる。
しかし、再犯や公共の場所での喫煙、また、公共の秩序が脅かしたり、学校など子供の施設の近くでカナビスを所持したりすれば、逮捕されて、注意勧告を受けたり起訴されることもある。