政府の詭弁 8

カナビスは無謀運転を促す

Your Government Is Lying To You About Marijuana
http://norml.org/index.cfm?Group_ID=5515#alleg8
updated: Jul 19, 2005


詭弁 8
「最近のある調査では、無謀運転の検問の際、アルコールの場合を別にすれば、45%の人からカナビスの陽性反応が出ている。」

真実
政治家や警察の手にかかると、さも重大問題が顕在化してきているように見えるが、カナビスの陽性反応は摂取してから数週間残存するので、実際にはカナビスの影響下(摂取後数時間)で運転する人が増えてきたことを示すデータとは言えない。いずれにしても、もっと重要な問題は、交通事故でカナビスがどのような役割を演じるのかという点にある [55]

アルコールが交通事故のリスクを高めるということはよく検証されているが、カナビスについてはよくわかっていない。カナビスに酔っていると精神運動機能がやや損なわれることは示されているが、そうした障害はそれほど深刻なものではなく、長く続くものでもない [56]。また、運転シュミレーターを使った実験によると、障害が現れると、たいていの被験者が明らかにスピードを落として緊急事態への対処時間を増やすように反応する [57]

こうした障害は、ドライバーの血中THC濃度が低くアルコールと併用していなければ、実際の路上事故では目立った役割を演じることはない。例えば、1992年の全米ハイウエイ安全局は、死亡事故を起こしたドライバーで 「THCのみが少量検出された人の場合、過失程度はドラッグをやっていない人よりも低かった [58]」 と報告している。

1993年に行われたオランダ・マーストリヒト大学精神薬理学研究所の調査では、実際の運転能力に与えるカナビスの影響は 「THCだけを吸引した場合、摂取量と運転能力の低下の間には有意な関係が認められたが際立っているというほどでもない・・・THCの路上での影響はアルコールの血中濃度0.08%の場合を越えることはなく、多くの医薬品の場合と特段変わるところもなかった [59]」 と評価を下している。

また、2002年には事故過失について7つの調査が個別に行われ、全体で7934人の運転者に対して、薬物接収とその体内レベルが事故の過失どのような相関があるか総括されたが、その結果、血中にカナビノイドが検出されたドライバーが、ドラッグをやっていない人よりも過失路上事故が多いというような証拠は見付らなかった [60]

昨年、2004年に行われたドラマーらの分析再評価では、「最近のカナビスは、過去のTHCA(COOH基を持った不活性成分)を含んだ以前のカナビスと違い、THCの濃度が上がっているので、運転者のカナビスによる機能障害による自動車の衝突リスクは高くなっていると思われる [61]」 と示唆している。

加えて、摂取後1〜3時間にTHC血中濃度が最も高くなるが、5ng/ml以上の場合は事故のリスクが高まるとした上で、「5ng/ml以上のTHC血中濃度のリスクは、0.15%のアルコール血中濃度(酩酊初期)と同等 [62]」 とも述べている。しかしながら、今年になってドイツの研究チームが87の実験調査を統計分析(メタ・アナリシス)したところ、カナビスにはそのような障害の上昇は見られず、「5ng/mlのTHC血中濃度は・・・実験結果全体ではもっと少なく、アルコール血中濃度0.05%と同等の能力低下 [63]」 としている。

いずれにしても、アルコールと違い、カナビスの事故リスクは特に強く酔っていなければ限定にしか現れない。カナビスの影響下の被験者は総じて、自分の機能低下について自覚しており、注意が必要な場合はスピードを落として危険を回避しようとするが [64]、これに対してアルコールの影響下の運転手は反対の反応を示し、酔いの度合に比例してさらに危険な行動をとる傾向がある [65]

以上をまとめれば、現在のところ、路上の交通事故の要因となるカナビスの役割については、定量的にはよくわかっていないと言える。とは言っても、特にアルコールと比較すれば、カナビスは自動車事故で際立った役割を演じているわけではない [66]。2002年に発行されたカナダ上院の精緻な報告書 「カナビス:カナダ社会政策における立脚点」 には 「特に摂取量が少ないカナビスだけの使用の場合は自動車の運転能力にほとんど影響を与えない」 と要約されている [67]

このように、カナビスが無謀運転を促しているという政府の主張を支持する明確な証拠はない。従って、運転の問題をカナビス禁止の根拠に使うのはおかしいということになる。しかしながら、だからといって、この事実が運転中にカナビスを吸っても問題がないということを意味しているわけでもない。カナビスの影響下にあるときには、運転すべきではないという原則には何ら変わりはない。