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6.1 組織病理学

初期の動物での研究は、大麻の煙への長期の高用量の曝露が実質性肺傷害を生じる可能性があること示した(Fleischman et al., 1979; Rosenkrantz & Fleischman, 1979)。後の実験的研究の調査結果は、高用量大麻の曝露が慢性閉塞性気管支炎の発生と関係しており、タバコの煙によって生じるような浸潤性悪性腫瘍の危険性を導くことを示唆する。大麻の呼吸への影響に関する縦断的研究において、総計1802人の大麻を喫煙している被験者が6年間追跡された。年齢、タバコの喫煙、調査に先立つ徴候の発生を調整した後(※訳注1:大麻曝露の有無と病気の発生との相関を見るために大麻以外の因子を調整している。)、この研究により'慢性的な咳'(RR of 1.73)'喘鳴'(RR of 2.01)の危険性が増加していることが分かった(※訳注2RR:Relative Risk 相対危険度のこと。コホート研究から導き出される指標。ある曝露因子により発病確率が曝露されなかった時の何倍になるかを示す。)。1年あるいはそれ以上にわたる1日1本未満の大麻タバコの消費と同程度低い曝露で、呼吸機能の有意な(※訳注3:統計学的に有意な)低下があった(Sherrill et al., 1991)。組織病理学的な変化は主に末端の気道に起こり、急性および慢性炎症、線維症、肺胞細胞過形成を含んだ(Rosenkrantz & Fleishman, 1979)。

霊長類について行われた、後の前向き研究は、例えば細気管支扁平上皮化生や細気管支周囲性/ 間質性線維症などのような変化を発見した。これらのsmall airway(細い気道)の変化の重症度は大麻の曝露の用量と期間に関連があり、煙への高い用量とより長い曝露はより大きな変化を導き、局所的な異型性を伴う異型細胞過形成も見られた(Tashkin et al., 1987)。

ヒトの研究において、長期の大麻喫煙に起因する主要な呼吸障害が気管と主気管支の上皮の受傷であることが示されている。ドイツで行われた研究において、T細胞リンパ球数が慢性的な大麻喫煙者でより低く、そのために、口腔と咽頭の扁平上皮癌を発達させる可能性が増加していることが判明した(Wengen, 1993)。動物と人間の研究の調査結果の違いは、おそらく、人間の観察が気管支鏡検査法によって行うことができる観察に限られているという事実によるであろう。 呼吸器症状がなかった若年成人について行われた人間の気管支鏡検査法研究は、重度の大麻喫煙者の間での上気道の組織学的変化の証拠を発見した。これらの変化には、基底細胞過形成、層形成、杯状細胞化生と基底膜肥厚が含まれる(Roby et al., 1991; Tashkin et al., 1987)。一般に行われた少数の調査は大麻とタバコの間に相加的な影響がないことを示す(Gil et al., 1995; Sherill et al., 1991; Tashkin et al., 1987)が、一つの研究、Tucson研究は、相加的な影響を示した(Bloom et al., 1987) 。しかし、追跡調査において、同じ相加的な影響は見つからなかった(Sherman et al., 1991)。相加的な影響がタバコと大麻の喫煙の間にあるのかどうかは未だに明らかではなく、そして、さらにこの問題を調査するためにより多くの研究が行われる必要がある。大麻の消費から生じている組織学的異常は、喫煙される巻きタバコ一本につき、タバコより深刻であった(Wu et al., 1988)。

死亡の時点で呼吸総体症状がなかった大麻喫煙者について行われる剖検は、細気管支周辺と肺胞腔の中の色素性のマクロファージによる局所的浸潤、肺胞壁の中の局所的線維症の形で変化を見つけた。この研究において、これらの変化へのタバコの相関的な寄与は1つのケース(タバコを吸わなかった人のではあるが)を除いて確信をもって突きとめることができなかった(Fligiel et al., 1991)。

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