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5.3 大麻の中枢神経系への長期的影響

5.3.1 認知機能

1970年代にコスタリカ、ギリシャ、ジャマイカその他の国々で行われたいくつかの研究では、成人の被験者のグループで認知機能における慢性的な大麻使用の影響をほとんど示さないように見えた。これらの研究は認知機能を神経心理学的検査によって評価し、それらの多くはもともと北アメリカでの使用のために開発されており、その他の文化での使用のためには不適切であったかもしれない。しかし、改善された検査方法と電気生理学的な方法を利用している、より最近の研究(Fletcher et al., 1996)は、大麻の長期的な使用が認知機能の微妙で選択的な損傷を導くことを示した。これらは、言語学習、カードソーティング、聴覚的注意、音の識別、無関係な情報の除去を含む、注意と記憶のプロセスの様々なメカニズムに関する複雑な情報の組織化と統合を含む。
 長期間の使用は次第により大きな損傷を導くかもしれず、それは、使用の停止によって、少なくとも24時間 (Pope & Yurgelum-Todd, 1995)あるいは6週間 (Solowij et al., 1991, Solowij et al., 1995)回復しない可能性があり、潜在的に日常生活機能に影響を及ぼす可能性がある。

全ての個体が、等しく影響を受けるわけではない。個体差の根拠は調査され、特定される必要がある。青年期と若年成人、年齢と性別による違いにおける長期的な大麻使用の影響について述べる為には、そこにはまた、不十分な研究しかない。

5.3.2 脳機能と神経毒性

上記で言及された、認知機能における長期的な大麻使用の影響の再調査は、脳機能の撹乱の微妙な徴候の存在を明らかにした。しかし、これらは大麻による持続している中毒症の証拠(退薬効果)としても、あるいは、ニューロンへの永久的または構造的な損傷の徴候としても解釈されることが可能であった。これらの2つの可能性に関して、証拠は現在まではっきりした結論を許さない。

慢性的な大麻使用者の脳の著しい解剖学的変化という初期の主張は、高解像度コンピュータ断層撮影法を用いた後の研究によって、人間と霊長類のどちらにおいても立証されなかった(Rimbaugh et al., 1980;
Hannerz & Hindmarsh, 1983)。組織学的、電子顕微鏡的検査に基づいて、しかし、他の動物実験は慢性の大麻使用が海馬のニューロン減少のようなシナプスの形態変化をもたらすことを示唆した(Landfield et al., 1988; Eldridge et al., 1992)が、他の人達はどんな異常も見つけることができなかった(Slikker et al., 1992)。より微妙な機能的な変化は、陽電子放射断層撮影法(PET)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴画像法(MRI)のような映像技術によって、これらが慢性的な大麻使用者の研究により広く適用されるようになれば、もしかすると発見されるかもしれない (Volkow et al., 1991)。

大麻の長期的な影響の局所脳血流量(CBF)に関する少数の調査が行われている。
Tunving他(1986)は、10年にわたる慢性的な重度の大麻使用者において非使用者の対照と比較して、CBFの安静時のレベルの全体的な低下を示したが、局所的な血流量の違いは観測されなかった。CBFのレベルは、禁煙とともに通常の値に戻った。しかし、若干の被験者が最初の測定の前にベンゾジアゼピン(それはCBFを下げることが知られています)を与えられていたという点で、この研究には欠陥があった。もう一つの研究においてMathewと同僚(1986)は、使用者と非使用者の対照との間のCBFレベルでいかなる違いをも発見しなかった。

したがって、人は起こりうる細胞毒性を詮索する手段として、主に機能的な撹乱の持続性にまだ頼らなければならない。もしもそのような機能的な変化が身体からの大麻の消失のずいぶん後に続くならば、それらは永久的な損傷の証拠と解釈されるかもしれない。いくつかの研究は、たとえばラットへの慢性的な大麻投与の終了の一ヵ月後、学習と記憶の欠損を示した。同じように他の研究は受容体の発現低下あるいは神経伝達物質の変化を示した(Oviedo et al., 1993)。しかし、彼らは脳における大麻の残留レベルの実際の測定値を検査の時点で含めなかた。

例えば青年期の間のような重大な発達段階における慢性的な大麻使用の起こりうる影響を考慮して、これらの問題の再検討は、方法論的な争点の熟慮とともに、明らかに必要である。

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