4.4 受容体
カンナビノイドアナローグの構造的な必要条件の認識は、脳におけるカンナビノイド受容体(レセプター)の探索を促した(Howlett et al., 1990)。有力な二環式カンナビノイドの放射標識された形態を用いて、Devane他(1988)は、3つの主要な特徴によって表される結合部位を特徴づけることができた:カンナビノイドアゴニストは高親和性で結合し、非カンナビノイドは結合しなかった、しかも、この部位は脳において非常に高い存在量で存在した。
さらに、Compton他(1993)は、作用の受容体に基づくメカニズムの必要な基準、受容体との親和性とさまざまな化合物の生物学的効力との間の非常に高い相関関係を示した。
この受容体は、人間を含むさまざまな哺乳類の種を通して類似したパターンで、脳のさまざまな領域に特異的に分布している。大部分の受容体は、大脳基底核、小脳、大脳皮質と海馬に存在する。この分布と大麻のいくつかの作用の間にはおおよその相関関係が存在するように見える。たとえば、海馬と皮質の結合部位は認知機能における大麻の繊細で神秘的な作用と関連があるかもしれず、一方大脳基底核と小脳のそれらは大麻によって引き起こされた運動失調と関係するかもしれない。
脳のカンナビノイド受容体に加えて、末梢型受容体は、脾臓内のマクロファージで特定された。末梢型受容体は、脳の受容体とは構造的に異なる。この観察は、他のまったくユニークな機能的な役割の受容体サブタイプが存在するかもしれないという可能性を示唆するので重要である。
4.5 内在性リガンドと内在性カンナビノイドシステム
カンナビノイド受容体の内在性リガンドは、最近特定された(Devane et al., 1988, and 1992)。
アナンダミドとして知られるそれは、いくつかの薬理学的分析における大麻の作用と類似した作用をするように見えるが、Δ-9-THCよりはるかに強力でなく、より短い持続時間しか持たない。
アナンダミドが、神経伝達物質または神経調節物質としての働きをするためには、適当な合成と代謝の経路がなければならない。合成は、ネズミの脳のホモジェネートで起こることが示された。アナンダミドは、脳、肝臓、腎臓と肺を含むさまざまな組織によって分解される。アナンダミドタイプの化合物の仲間が存在するかもしれないと言う証拠が判明している。
最近の神経科学における進歩がカンナビノイド神経化学システムの存在を示唆するが、脳でのその役割や他の神経化学システムとの関係は解明されていない (Mechoulam et al., 1994) 。今までのところ、主要な機能的な役割のための直接的な証拠はない;それは、したがって、内在性カンナビノイドシステムが機能において主に神経調節性であるということかもしれない。カンナビノイドシステムの操作の結果は、現在は推測的であるに過ぎない。脳における受容体の局在性とカンナビノイドの薬理学的作用に基づいて、少し例を挙げれば、認知、記憶、報酬、痛みの知覚や運動協調性での役割を予知することは、合理的である。現在、どのような範囲の大麻の使用が内在性カンナビノイドシステムを調節するプロセスを変えるかどうか明らかにされないままである。
4.6 アンタゴニスト
脳におけるカンナビノイド受容体のアンタゴニストの働きをする実験的な化合物が特定された(Rinaldi-Carmona et al., 1994)。この化合物は、カンナビノイドの薬理学的作用を防ぐか逆にする。それはカンナビノイド受容体に高度に選択的であるように見え、他のさまざまな脳の受容体とは結合しない。
このアンタゴニストの発見は、中枢神経系でのカンナビノイドの機能的な役割を研究するための価値ある手段を提供する。