◆ 4.化学と薬物学
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4.7 薬物動態

THCは経口摂取より喫煙による摂取のほうがより速く吸収される。各々の一服は、肺の肺胞嚢を囲んでいる毛細血管のベッドを通して循環系に届けられる薬の小さな大量瞬時投与を意味する。Huestis他(1992)は、大麻タバコ(1.75パーセント~3.55パーセントのTHC含有量)を吸っている人で大麻喫煙の一服の後でTHCの検出可能な量の計測(7~18mg/ml)を報告した。被験者間でかなりの可変性があったが、経験豊かなユーザーが1.32、1.97と2.54パーセントのTHCを含んでいる大麻タバコを喫煙したときには、ピークの濃度で100mg/ml以上 (Ohlsson et al., 1980; Perez-Reyes et al., 1982; Huestis et al., 1992)に達することが明らかになった。明らかに、喫煙の力は、どれくらいの薬の量が吸収されるかについてかなりの影響を与える。一服の回数、間隔、保持する時間と肺気量が、この可変性に寄与する。

大麻は耐性がない人によって喫煙されたとき、生理的、行動性の影響は速く現れる。Huestis他(1992)は、ピークの効果は低い(1.75パーセント)または高い(3.55パーセント)用量のシガレットの喫煙の開始から17.4±4.8と13.8±4.2分後に起こると発見した。最大の効果は、大麻喫煙の最後の一服の後の4~6分の範囲に記録された。

THCの血漿中濃度は、その高い脂溶性に従って脂肪組織に薬が再分布して速く下降する。ピークの血中濃度とピークの薬理効果の間の遅れは、中枢神経系への侵入と、以降のTHCの脂肪組織による迅速な取り込みとの遅れと関係がありそうである(Barnett et al., 1982; Barnett et al., 1985)。

一般に、行動性、生理的影響は、使用の4~6時間後にはベースラインレベルに戻る。THCの血中濃度は薬によって引き起こされる影響の前にピークに達し、そして、THCの血中濃度と薬理学的影響の間の分離を導く。この時間の不一致が研究者に生物の流体と組織でのTHCとその代謝物質を測るための技術を向上させ(Cook, 1986; King et al., 1987; Gjerde, 1991)、THCの濃度と大麻によってもたらされる生理的、行動性及び遂行能力の変化との間の関係を確立する薬物動態学的/薬力学的モデルを開発することを導いた(Chiang & Barnett, 1984)。

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4.8 研究の不足

内在性カンナビノイドシステムの果たす役割を構成する、さまざまな神経化学的プロセス(例えば合成、放出、不活性化、貯蔵、その他)を特定することは、このシステムの生理的役割を発見するために重要である。この知識は大麻の使用が内在性システムをどのように変化させるのかどうかを理解する基礎となるであろう。もう一つの優先事項は、多様な構造的特徴を持つカンナビノイドアゴニストとアンタゴニストの有力な範囲の開発である。これらは、潜在的な治療的カンナビノイド剤の開発を探るために必要である。血中カンナビノイド濃度と行動に関する影響の関係を明らかにさせ、慢性的な使用の薬物動態学と子宮内曝露に引き続く胎児性代謝をよりよく理解するための継続的な努力がなされなければならない。

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